八八艦隊召喚   作:スパイス

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 皆様、遅ればせながら明けましておめでとうございます!
 投稿が遅くなってしまい、大変申し訳ありません!
 引き続きBGMは『ジパング』の『戦闘』でお楽しみ下さい。


第四話 ロデニウス沖海戦2

 中央暦1639年 4月26日

 ロデニウス大陸北側海上 連合艦隊旗艦『駿河』

 

 

 

 「あれが……未来の兵器……」

 

 連合艦隊司令部の首脳陣は、驚愕の気持ちでその兵器――対空ミサイルの攻撃に見入っていた。

 海上自衛隊の護衛艦から次々と放たれるそれは、垂直に発射されたかと思いきや、次の瞬間には弧を描きながら空へと飛翔していく。それは見ようによっては芸術的な美しささえ感じさせる光景であった。

 

 「あれは『SM-2、スタンダードミサイル』といって、艦隊を防衛するための防空誘導噴進弾だそうです。何でも、数十から百以上の目標を同時に攻撃出来るとか」

 

 連合艦隊参謀長の伊藤整一少将が言うと、未来の兵器を見ていた幕僚たちは口々に意見を述べはじめる。

 

 「数十の目標を同時にか……やはり未来技術はすごいな……」

 「やはり共同戦線を張って良かったな。これほどのものが見れるとは」

 「情報参謀が帰ってきたら、質問攻めにせにゃならんな」

 

 幕僚たちの声を横で聞きながら、司令長官の嶋田繁太郎大将は思った。

 

 (未来でこのような対空兵器が開発されている以上、それだけ航空機の脅威度が高いという事か……しかし百発百中の対空兵器があるからには、やはり航空機の能力には限界があるのかもしれん。

 頼むぞ、一つでも多く情報を持ち帰ってくれ、情報参謀……)

 

 嶋田はそう情報参謀に呼びかけた。

 

 

 同日同時刻

 ロデニウス大陸北側海上 ロウリア王国竜騎士団

 

 

 

 ロウリア王国竜騎士団団長のアグラメウスは、この時既に勝利を確信していた。

 海軍救援のために飛び立ったワイバーンは総数250騎。この世界では、ワイバーンは10騎で地上であれば1万人の歩兵を足止めできると言われているため、単純計算で25万人を相手取れるということになる。まして今度の相手は動きの鈍い軍船であり、効果的な回避行動などできる訳がない。

 海軍部隊からは「島の様に巨大な軍船が高威力の魔導兵器を発射して、我が部隊は危機的状況に陥っている!」と悲鳴のような救援要請が届いていたが、アグラメウスは「大方見間違えだろう」と思っている。

 仮に報告が本当だとしても、島のように巨大な目標であるならば、導力火炎弾を命中させるのは容易いことだ。

 これだけの数の我らを止められるものは、どこにも存在しない。クワ・トイネ公国どころか、伝説の魔帝軍だって滅ぼせる。

 そう思っていたが――

 

 「ん? あれは何だ?」

 

 目の良い竜騎士が真っ先に気づくと、他の竜騎士たちも気づきだす。

 しかしそれは、彼らにとってはかえって不幸であったのかもしれない。

 竜騎士たちが見つけた「それ」は、一瞬で竜騎士たちとの距離を詰める。

 

 「光の――矢!!?」

 

 彼らが叫んだ瞬間――

 

 ドドーン!! ズドドーン!! ガガーン!!!

 

 凄まじい爆発音が轟き、前衛のワイバーン隊が一瞬で爆炎に飲み込まれる。

 瞬く間に23騎が撃墜され、バラバラになって海に落ちていく。

 何が起こったのか誰も理解できぬまま、さらに数十秒後には12騎が、また次に18騎が、まるで虫けらか何かのように撃墜されていく。

 ありえないことだった。

 

 「何だ!? 何が起こっている!! 敵の攻撃か!!?」

 

 アグラメウスが狼狽して叫ぶ間にも、仲間たちは次々と墜ちてゆく。

 苦楽を共にした仲間や戦友が、そして何よりも世界最強の航空戦力であるワイバーンが、敵の攻撃に全く手出し出来ぬまま、ひたすら効率的に殺処分されていく。

 しかし、彼らも無策であった訳ではない。

 一握りのベテランは驚異的な動体視力で回避行動に移ろうとするが、光の矢はその動きを読んでいるかのようにワイバーンを追尾し、撃墜していく。しかも光の矢の爆発威力は凄まじいため、爆炎に巻き込まれて撃墜される者も一人や二人ではない。

 悪夢だった。

 

 『な、何なんだ!! これはぁぁぁ!!?』

 『助けてくれ!! ぐぎゃぁぁぁ――』

 『バカな!! 追ってくる!! うわぁぁぁ――』

 

 魔力通信機には部下や仲間の悲鳴がひっきりなしに届くが、アグラメウスにはどうすることも出来ない。

 ただ、この悪夢が早く過ぎ去ってくれと、祈るほかなかった。

 

 

 

 同日同時刻 同海域

 海上自衛隊 イージス艦『みょうこう』艦橋

 

 

 

 観戦武官として海上自衛隊に派遣された情報参謀の磯崎中佐は、圧倒された思いでいっぱいだった。

 というより、戦闘の推移が早すぎてついていけなかった、というのが正しいだろう。

 「対空戦闘!」と命令が発令されてからたったの数分で、この「護衛艦」は対空戦闘を開始し、そしてただひたすら効率的に敵の数を減らしていく。

 ほんの五分ほどで敵の数は250騎から100騎ほどに減少していた。

 帝国海軍の常識であれば、ありえない撃墜記録だった。

 

 「すごい……」

 

 磯崎は、ただそう言うことしか出来なかった。

 隣にいるアメリカ海軍の観戦武官、ロバート大佐も驚愕の表情を浮かべている。

 そうしていると、この『みょうこう』の艦長だという海原が近寄って話しかけてきた。

 

 「どうですか? 未来の戦闘を見たご感想は?」

 「正直に申し上げて『展開が早すぎてついていけない』と感じています。我が合衆国海軍で……いえ、我々の世界の常識であれば、対空目標をたった五、六分程で150騎以上撃墜するなど、夢物語に過ぎません。しかし、あなた方はそれをやってのけました。それも人的損害無しで、です」

 

 ロバートが「信じられない」という感情を滲ませながら答えると、海原は苦笑いして言った。

 

 「こうした戦闘が出来るのは、レーダーや通信技術の進化もむろん関係していますが、一番の理由は『C4I』などに代表される情報処理システムの登場が大きいでしょう。軍事上の機密ですのであまり申し上げることはできませんが、本艦に搭載されている『イージスシステム』は、艦載武器システムとしては世界最高水準の情報処理能力を発揮出来ます。こうした戦闘における情報の処理能力の速さ――人間でいうと『神経』の発達が、こうした戦闘展開を可能にしている一番の要因と言えるでしょう」

 「なるほど、やはり未来は凄いんですなぁ……」

 

 磯崎はそう海原の説明に相槌を打ちながら、感嘆の思いで艦橋を見回した。

 この海戦の前、磯崎は「CIC」とかいう戦闘管制室を見学したいと希望したのだが、「軍事機密に当たる」との理由で海原に断られてしまったため、艦橋にいるのだった。

 帝国海軍――第二次大戦時の軍艦では、戦闘は数百名から数千名の乗組員全員が一心同体となって行うのが当たり前だ。

 だからこそ、猛訓練で少しでも早く戦闘における対応ができるようにし、文字通り「以心伝心」となって艦を動かす。

 しかしいくら猛訓練で鍛えても、艦を動かすのが人間中心である以上、どうしても遅れや無駄、誤認の発生は避けられない。

 そこで高性能の機械――レーダーやソナー、高度な電子計算を行うコンピューター――を人間が操作することで、戦闘をより効率的に素早く行なってゆく。

 磯崎は新しい戦争の在り方を、見せつけられた思いだった。

 

 (とりあえずCICとかいう戦闘管制室の設置は急務だな。電波探知機や電波探信機の開発は我が国でもしているが、より人員や予算を増やすことも必要だと報告せねばならん。あと『ミサイル』という噴進兵器の開発や戦闘情報処理システムの開発も、上に具申しなくては……)

 

 磯崎は上に提出する報告書をどうするか、早くも考え始めていた。

 

 「対空ミサイル第一波、撃ち方終わりました。敵騎は尚も進撃しています」

 「よろしい、第二波の発射に入る!」

 

 CICより報告を受け取った海原は、直ちに第二波の対空ミサイルの発射を命じる。

 磯崎は「また発射シーンを見れるのか」と期待して窓に歩み寄った。

 

 

 同日同時刻 同海域

 ロウリア王国竜騎士団

 

 

 一通りの攻撃が終わるころには、味方は100騎ほどに減っていた。

 それでも味方の艦隊が見えたことで、残存部隊は落ち着きを取り戻し、編隊を再度組み直す。

 艦隊の上空に到達すると、団長のアグラメウスは全部隊に命じて、超低空飛行に切り替えさせる。

 彼の眼には、既に敵――戦艦『駿河』しか見えていなかった。

 

 「あいつか! あの船かぁーーーっ!!」

 

 アグラメウスは怒りと憎悪のこもった声で吼えると、部下に攻撃準備を命じる。

 確かに敵の軍船は驚くほど大きい。気を付けなければ遠近感が狂ってしまうほどである。

 それでもあれだけ大きければ、攻撃を加えるのは容易いはずだ――アグラメウスはそう考えていた。

 しかし敵は彼が考えるほど甘くはなかった。

 

 「――――っ!! 『光の矢』再度接近!!! ぐぎゃっ――」

 

 部下からの決死の報告に、アグラメウスは驚愕した。

 見れば、「光の矢」は巨大軍船の後方に居る軍船から飛んでくるようだった。

 瞬く間に、さっきと同じ地獄が出現する。

 

 「おのれぇぇぇ!! 別働部隊がいたのか!! 50騎は後方の敵を攻撃せよ!! 残りは私に続けぇぇ!!」

 

 アグラメウスは部下に指示を下し、残りの竜騎士を率いて敵に突進する。

 すると巨大軍船の舷側から、凄まじい勢いで大小無数の「火矢」が向かってきた。

 あるものは至近で炸裂して鋭い破片をまき散らし、またあるものは炸裂せずにワイバーンを絡め取って撃ち落としていく。

 瞬く間にワイバーンの数は減っていき、気づけば味方は2騎ほどしかいなかった。

 

 「くそっ!! だがここまで近づけばっ!!」

 

 アグラメウスはワイバーンに翼を広げさせて導力火炎弾の発射準備をさせるよう、残りの2騎にも合図を送った。

 しかし彼は怒りのあまり、その行動が自身の被弾面積を広げてしまうとは思いつかなかった。

 恰好の的となった3騎のワイバーンに、対空砲火が集中する。

 

 「く、くそぉぉぉ――」

 

 アグラメウスは、自身のワイバーンと共に散華した。

 

 

 

 「我々は……一体何と戦っているんだ……」

 

 ロウリア艦隊海将シャークンは絶望に染まった顔で、辛うじてそう呟いた。

 他の幹部や水夫達も、例外なく驚愕と絶望の表情をしている。

 竜騎士団が頭上に来た時、誰もが「勝った」と歓声を上げ、笑顔でワイバーンを見上げていた。

 しかし敵はその行為を「無駄だ」と嘲笑うかのように、ワイバーンを次々とよく分からない攻撃――おそらく魔導兵器――で撃ち落としていった。

 辛うじて巨大軍船に肉薄した僅かな数のワイバーンもすべて撃墜され、後方の敵に向かったワイバーンも同様の運命を辿ったとの報告が寄せられた。

 足が勝手に震えだし、のどは必死に呼吸をしようと浅い息継ぎを繰り返す。

 「何かを命令しなければ」という考えはあるが、頭がそれについていけない。

 そして、先ほど艦隊に絶望と悲劇を撒き散らした大砲が、再びこちらを向き始める。

 

 「ぜ、全船、敵に肉薄せよ!! 懐に飛び込めば勝機はあるはずだ!!」

 

 シャークンが喉から絞り出すように命令を発すると、艦隊はやけくそを起こしたかのように再び前進を開始する。

 ロデニウス大陸の歴史において、海戦を制するのは水夫同士による白兵戦と相場が決まっている。大砲の登場によりその戦法はやや廃れた感があるが、大砲そのものの数が少ない以上、嫌でも主戦法とせざるを得ない。

 敵の懐に突っ込めば、敵は同士討ちを恐れて大砲を撃たなくなるかもしれない。いや、4400隻の軍船を揃えて攻撃すれば、数で圧倒できるはずだ。

 シャークン以下の誰もがそう信じ、敵に近づいてゆく。

 自滅の道を歩んでいると、半ば理解しながら。

 

 

 

 「敵艦隊、進撃を再開しました! まっすぐこちらに突っ込んできます!」

 

 艦橋見張り員からの報告に、嶋田大将は唸った。

 敵は何が何でもこちらを攻撃するつもりらしい。あれほどこちらの力を見せつけたにも関わらず、大した執念だ――そう嶋田は思った。

 

 「長官、如何なさいますか? 一旦退いて態勢を立て直しましょうか?」

 

 参謀長の伊藤少将が、嶋田にお伺いを立てる。

 第一艦隊の各艦は、先ほどのワイバーンによる航空攻撃に対応するために陣形を若干乱しており、このまま敵に当たれば各艦が衝突する可能性があった。

 伊藤もそれを危惧しているのか、暗に「後退」を勧めてきた。

 だが、嶋田の考えは違った。

 

 「いや、このままいく。各戦隊に命令。反航戦だ! 敵艦隊の側方に展開して敵を叩く!

 第一、第二戦隊は右砲戦! 第五、第八戦隊は左砲戦!

 敵艦隊を両側から攻撃し、撃滅せよ!

 第一、第三水雷戦隊は敵艦隊の後方に回り込み、敵の退路を塞げ!

 海上自衛隊に連絡、『正面の敵を相手取られたし』だ。急げ!」

 

 嶋田の号令に、連合艦隊司令部の面々は一斉に動き出す。

 

 

 

 二時間後

 ロデニウス大陸北側海上 ロウリア艦隊だったもの

 

 

 海将シャークンは今や絶望を通り越して、諦観の境地に至っていた。

 敵は四方八方から好き勝手に攻撃を浴びせ、さながら辺りは狩場の様相を呈していた。

 巨砲による攻撃も圧倒的な破壊をもたらすが、シャークンが驚いたのは正面から攻撃してくる敵だった。

 自分たちと同じく一門しか大砲を載せていないにも関わらず、その速射能力は二秒に一発と恐るべきものであり、しかもただの一発も外していない。

 正確無比な砲撃と圧倒的な破壊力の砲撃のダブル攻撃により、味方の船は凄まじい勢いで減ってゆく。

 特に巨砲による攻撃は、味方を数十隻単位で破壊し、水夫もろとも水葬してゆく。

 

 「ちくしょう!! 化け物だぁぁ!! あんなのに勝てるかぁぁぁぁっ!!!」

 

 そういってシャークンの命令を無視し、独断で逃げを打つ者もいるが、敵は見逃してくれはしなかった。

 いつの間にか後方に回り込んでいた敵――帝国海軍水雷戦隊による砲撃により、あえなく沈められていく。

 無理矢理包囲の突破を図る船もいるが、高々5ノット程度の軍船が駆逐艦に速力で勝てるはずもなく、たちまち追いつかれて撃沈された。

 また、空からも敵のワイバーン――シャークンにはそれが『攻撃ヘリコプター』や『零戦』だと知らなかった――が攻撃を仕掛けてきて、味方を殲滅していった。

 結局、数の優位云々で倒せる相手ではなかったのだ。どうやっても勝てない。

 シャークンが撤退を命じようにも、退路も塞がれていては撤退もできない。

 かと言って降伏しようにも、ギムで捕虜を虐殺した自分たちロウリア人を、敵が許すとは思えない。良くてなぶり殺しにされるだろう。

 このまま部下と共に果てるのみか――そう考えた時、ふいに敵からの攻撃が止んだ。

 

 「どうした? なぜ攻撃を止めた?」

 

 シャークンが呟くと、一隻の敵船から大音声が聞こえてきた。

 

 『こちらは大日本帝国海軍連合艦隊、司令長官の嶋田繁太郎大将である! 

 貴軍は今や完全に包囲されている! 今降伏すれば、貴軍の将校、部下の生命は保障する!!

 降伏するのであれば、マストに白旗を掲げて欲しい!!

 十分以内に回答を寄こされたし!!』

 「降伏勧告か……」

 

 シャークンが呟くと、幹部の一人が叫ぶように言った。

 

 「シャークン様! 今ここで降伏しても殺されるだけです!! こうなったら徹底抗戦し、敵に我らの意地を見せましょう!!」

 

 シャークンも一瞬それを考えたが、ふと思い直した。

 敵が攻撃を中断したということは、それだけ相手に余裕があるということだ。そしてこれ以上部下を死なせたくもない。

 シャークンは数分逡巡した後、結論を下した。

 

 「いや、ここは降伏しよう……これ以上部下に犠牲は出したくないし、全滅するまで戦っても相手にはかすり傷すら負わせられないだろう。それよりは降伏し、部下だけでも助けてくれるように相手の慈悲に縋ろう。

 私はもう敗軍の将だ。この命一つで部下が助かるなら安いものと思わなくては。

 皆、本当に申し訳ない……」

 

 シャークンがそう言って頭を下げると、幹部達や部下の水夫達の間から嗚咽がもれた。

 数分後、シャークンの旗艦のマストに白旗が翻った。

 これが後に「ロデニウス沖海戦」と呼ばれるようになる海戦の終わりであった……




 いかがでしたでしょうか?
 久しぶりの投稿なので、少しおかしな部分があるかもしれません。
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