八八艦隊召喚   作:スパイス

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 感想欄で、地理について質問されている方がいらしたため、復習も兼ねて「日本国召喚」を読み直していたら、遅くなりました!
 やはりみのろう先生は素晴らしいです!
 いよいよ本篇です。
 お気に入り登録をして下さった皆様、本当にありがとうございます!


第一章 異世界での遭遇
第一話 邂逅


 中央暦1639年 1月24日 午前8時

 クワ・トイネ公国 第6飛竜隊

 

「今日も問題なしだな……」

 

 クワ・トイネ公国軍、その中でも最精鋭と謳われる「飛竜隊」に所属している竜騎士のマールパティマは、のんびりと呟いた。

 哨戒任務は戦闘と並び、とても重要な任務の一つであるが、こうして何もない状態が続けば、あくびの一つ二つは無意識に出てしまう。

 しかも単独での哨戒ともなれば、話し相手も相棒のワイバーンくらいしかいないため、余計に退屈なものとなる。

 

(このまま何も起こらなければいいなぁ……

 しかし、お偉方は気を張り詰めさせすぎだぜ。三週間以上も前のことを、まだ引きずっているなんて……

 振り回される兵隊のことも、ちょっとは気にかけて欲しいな。)

 

 マールパティマは胸の中で、上層部に愚痴をこぼす。

 彼の言う「三週間以上も前のこと」とは、年明け早々に起こった「夜が昼間のように明るくなる」という不可解な出来事が、ロデニウス大陸中で観測されたことをを指す。

 その現象が一夜という短時間の内に三回も立て続けに起きたため、公国政府と軍部は「天変地異の前触れ」という見解で一致し、直ちに軍を警戒態勢に移行させただけでなく、予備役の招集も併せて行った。クワ・トイネ公国の同盟国であるクイラ王国も、同じような行動をしている。

 それだけではない。

 両国にとって不俱戴天の敵と言える「ロウリア王国」の軍隊の動きが、ここ数日で国境付近を中心に活発化しており、軍はそのことでも頭を痛めていた。 

 現在両国の外務局が「国境から軍を引いてほしい」と働きかけているが、なしのつぶてだという。

 

「……そろそろ変針位置だな。」 

 

 マールパティマはひとりごちると、相棒のワイバーンに合図をしようとした。

 その時、

 

「んん?」

 

 マールパティマは前方を凝視して、合図するのを止めた。

 何かが、キラリと光ったような気がしたのだ。

 それも一度ではない、何度もだ。

 

「何だ!あれは!」

 

 マールパティマが驚いている間にも、「それ」は黒い形を成して近づいてくる。

 それも、かなりの高速でだ。

 あきらかにワイバーンのそれではない。ましてや味方でもない。

 それが近づき、形がはっきりし始めると、マールパティマはある「異常」に気づく。

 

「羽ばたいていない、だと?」

 

 信じられない表情で、そう呟いた。

 「航空機」というものをついぞ見たことも聞いたこともない彼には、それが信じられなかった。

 思考が混乱している間にもそれは接近し、高速で横を通り過ぎる。

 その物体は、彼の――この世界の人々の――常識からみれば、途轍もなく大きかった。

 翼らしきものには小さな風車のようなものが四つ付いており、先端は点滅していた。

 マールパティマはようやく我に返り、慌てて後を追う。

 しかし、

 

「くそっ!追いつけないっ!」

 

 マールパティマは罵声を上げる。

 自分が騎乗するワイバーン(三大文明圏にはより上位の種が存在するらしいが)は、時速235kmと生物の中ではほぼ最速を誇る。

 その俊足をもってしても追いつけないということは、単純にその物体がそれ以上の速度を出していることを物語っていた。

 彼は震える手で魔力通信機(最初期の携帯電話に近い形)を取り出すと叫んだ。

 

『司令部!!司令部!! こちら第6飛竜隊のマールパティマ! 我、未確認騎を発見、確認しようとするも、速度が違いすぎて追いつけず、困難なり! 

 未確認騎は現在、本土の『マイハーク』方面へ進行中! 繰り返す、マイハーク方面へ進行中!!

 大至急、応援求む!!』

 

 マールパティマは報告しながら思った。

 (これは、とんでもないことになる。)と……

 

 

 西暦2015年 同日 同時刻

 海上自衛隊 八戸航空基地所属 第2航空群第2航空隊 P-3C機内

 

 

「レーダー手。何か反応はあるか?」

 

 機長の山田 洋二3等海尉はそう言って、レーダー手を務める太田 弘毅海士長に問いかけた。

 

「いえ、まだ何も。」

 

 その答えに少し落胆しながらも、山田は次に航法士である尾崎 幸一に問いかける。

 

「航法士、現在の機位は?」

「現在基地からの東南東、1500Kmの辺りです。」

「よし。引き続き、総員警戒態勢を維持せよ。」

 

 その声に全クルーが答えるのを確認した後、山田はちらと海面を見やる。

 青く広漠な海原は、一見自分たちが何度も見ている普通の海に見える。

 だがこの機に乗るクルーは全員、この海が未知の海であることを知っていた。

 

(やれやれ、これでやっと半分まできたな。しかしいくらこの『P-3C』が6000Km以上の航続距離を持っているからと言って、ここまでやると遭難機がでるぞ。

 それにしても『異世界転移』か……小説の中だけだと思っていたが……)

 

 山田はそう思い、自分達の任務の重大さを改めて実感するのだった。

 『P-3Cによる長距離偵察を実施し、何らかの陸地を発見せよ。』との命令が山田達に下令されたのは、昨日の昼頃だ。

 そして今日の午前五時半に八戸基地を離陸、現在に至る。

 本当であればこの任務は厚木基地か、下総基地の任務になるはずであったが、下総は練習航空隊の基地であり、ヒヨッコをこのような重大な任務に投入できないこと、厚木に所属する第51航空隊は実験開発航空隊であり、このような任務には不適当であることと、既にC-130Rによる探索で手一杯であることから、八戸にこの任務が回ってきたのだった。

 

(しかし異世界ならシーサーペントとかいるのかねえ。だとしたらこの海で海水浴するのは御免だな。何が蠢いているか、分かったもんじゃない。

 そうならない為にも、クルー全員がしっかりしないと……)

 

 山田はそう思い、操縦桿を握り直した。

 さらに一時間が経過した時、

 

「機長、レーダーに反応です。大きさからみて船舶かと。」

 

 太田が緊張を隠し切れない声で報告した。

 

「船だと?大きさはどの程度だ?」

「はっきりとは分かりませんが、一万トンクラスの船が二隻と2~3000トンクラスの船が四隻程度です。

 このままの進路でいくと、正面から正対します。船までは約100Kmほどの距離ですね。」

「距離と今までの期間から考えて、転移に巻き込まれた不幸な船っていう訳でもなさそうだな。

 よし、確認する。」

 

 山田はそう言って、正面を見据えた。

 それが、日本の運命を変えるとも思わずに…… 




 いかがでしたでしょうか?
 こんな感じで書いていきたいです。
 少し、適当な部分もありますが……(苦笑)

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