八八艦隊召喚   作:スパイス

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第三話 交渉1

 中央暦1639年 1月27日

 クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク マイハーク防衛司令部

 

 

 マイハークに基地を構える防衛司令部は、緊張に包まれていた。

 つい先ほど、公国海軍第2艦隊に所属する軍船『ピーマ』から、緊急通信が飛び込んだからである。

 通信は『我、マイハーク港沖合約60Km付近にて、不審な大型船を発見。不審船は船の常識を遥かに超えている可能性大。これより臨検に向かう。』という内容であり、去る三日前の国籍不明騎によるマイハーク上空侵入によって、警戒感に満ちていた司令部は、この報告によって更に緊張感を増した。

 

「ノウカ司令、軍船『ピーマ』が送ってきた通信は本当でしょうか?この『常識を超えている可能性大』という報告自体、本官には信じられないのですが……」

 

 防衛司令部を束ねる司令官のノウカに向かって、若手の幹部が疑わし気な口調でいうと、ノウカは厳しい声で、その幹部を諫めた。

 

「『ピーマ』が展開している方角は、三日前に飛来した不明騎が去って行った方角とほぼ同じであり、誤認と決めつけるのはまだ早い。それに『ピーマ』の船長であるミドリは、そんな勘違いをする男ではない。

 部下の報告を信じるのも、上に立つ者としては大切だぞ。」

 

「……失礼致しました。司令。」

 

 若手幹部が恐縮した顔で敬礼した時、更なる続報が飛び込んできた。 

 

「司令、『ピーマ』よりの続報です!

 『大型船の臨検を行ったところ、同船に敵対の意思は感じられず。なお、同船には派遣先の国「日本国」の外務担当者が乗船しており、以下の旨を伝えてきた。

 〇日本国は、約一月前に突如としてこの世界に転移してきた。

 〇元の世界との全てが断絶されたため、哨戒騎にて付近の探索を行っていた。その際『未知の大陸』を発見したため、確認のため上空に侵入した。なお、哨戒活動中に貴国の領空を侵犯したことについて、正式に貴国に謝罪したい。

 〇貴国の外務担当と会談を行い、友好的な関係を構築したい。

 なお、船の大きさは目測で長さ250m、幅40mほどあり、帆やオールのようなものは確認できず。次の指示を請う……』

 以上です!」

 

「バカな!国ごと転移してきただと!」

「荒唐無稽なおとぎ話も大概にしてほしいものだ!」

「それに我が国の上空に侵入しておいて、『謝罪したい』だと!我々を愚弄するのもいい加減にしろ!」

 

 幹部の間に「日本国」に対する罵声が吹き荒れる。

 

「司令!攻撃しましよう! 今なら先手を打てます!

 『日本国』だか何だか知りませんが、国ごと転移するなどという話をする連中など、信用できません!

 そもそも北の海域には、国なんて存在しません!直ぐに攻撃許可を!!」

 

 若手幹部の一人が、顔を怒りで赤くしながら言うと、他の幹部も口々に同意する。

 しかしノウカ司令官は、幹部達を見回すと一喝した。

 

「馬鹿者!!貴様らは先の通信を聞いていなかったのか!!

 得体の知れぬ国とはいえ、外交使節を乗せた船を攻撃せよというのか!

 それも政府の許可なくだ!軍人として恥を知れ!!」

 

 ノウカ司令は幹部達を叱りつけると、口調を幾分か和らげて続けた。

 

「確かに私自身、信じられないような内容ではある。しかし先方がそう言っている以上、一概に嘘だと決めつけるのは、少し早計ではないかな?

 それに、彼らは一月前に国ごと転移してきたと言った。これは『あの現象』が起こった時と同じだ。

 彼らの言い分を聞いてみようじゃないか。まあ、首相の指示を仰いでからだが……」

 

 ノウカはそう言って、通信員に告げた。

 

「『ピーマ』に伝えろ、『船を監視しつつ、現状を維持せよ。』とな。

 あと、公都の政治部会にこのことを早急に報告せよ。カナタ首相の指示を仰ぐ。」

「了解しました、司令。」

 

 通信員は、ノウカに一喝されてうなだれている幹部達を横目に見つつ、仕事に取り掛かった。

 

 

 同日 同時刻

 クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 政治部会

 

 

 クワ・トイネ公国の首相であり、この政治部会の議長でもあるカナタは、現在進行形で頭を悩ませていた。

 議題はもちろん、三日前に突如マイハーク上空に侵入した『国籍不明騎』に関することと、約一月前の『天変地異』に関することだ。

 この内『天変地異』に関することは、全くと言ってよいほど議論が空回りしている。

 どういう対策を取ればよいのか、誰も分からないからだ。

 唯一『魔帝復活の時、それは昼間、世界が一瞬闇に包まれるとき』という言い伝え……子供でも知っている伝承しか、手掛かりが無いためだ。

 しかし、一月前に観測された現象は『夜が一瞬、昼間のように明るくなった』であり、それが一夜に三回も確認とあっては、少なくとも古の魔法帝国の復活という最悪の事態ではない、と考えられる。

 現在部会が中心に討論している議題は、もっぱら『国籍不明騎』のことであった。

 

 

「……でありますので、この『国籍不明騎』は、第二文明圏の大国『ムー』が運用している飛行機械である可能性は、ほぼ皆無であると思います。

 彼の地は我が国から遠すぎることに加え、最新のものでも時速350㎞ほどと思われますので。マイハーク防衛騎士団のイーネ団長からの報告も、これを裏付けております。」

 

 情報分析部長が発言を終えると、今度は軍務卿が手を挙げて発言を求めた。

 

「ムーの飛行機械ではないことは、よく分かった。だが第二文明圏の外れで『第八帝国』なる新興国家が、わりかし強い軍隊を保有しているという未確認情報もあるそうだな。

 連中は第二文明圏に属する国家全てに宣戦を布告し、暴れまわっているというじゃないか。

 情報分析部長、三日前のはそれではないのかね?

 現にクイラ王国にも、同様の飛行機械が現れて東の方角に飛び去っていったというではないか。」

 

「その可能性はありますが、私個人としては違うと思います。

 『第八帝国』は軍務卿が申されたように、第二文明圏外に属する国であり、彼らがここまで遠征してくる可能性はゼロに近いです。

 まあ、第二文明圏全てを敵に回すという無謀な挑戦をするような連中ですから、どんな兵器を持っているか、楽しみではありますが。」

 

 情報分析部長が言うと、会場内に笑いが渦巻いた。カナタもつられて笑った。

 第二文明圏の全国家に宣戦布告するなど、非常識を超えて無謀すぎる。

 諜報部では、早晩敗北するだろう――との見方が強い。

 

「連中でもないなら、この『不明騎』は一体何なのでしょうねぇ?

 まさか東の海の遥か向こうに存在するという『地上の楽園』から来たのでは?」

「それこそありえん話だよ、今じゃ冒険者でも信じていない、子供の御伽噺じゃないか。ワハハハハハ……」

 

 リンスイ外務卿のジョークに、軍務卿が高笑いした時、

 

「失礼します!!」

 

 外務部の若手幹部が、息を切らせて飛び込んできた。

 

「何事だ!!」

「ノックもしないとは、非常識な……」

「騒々しく入ってきたからには、重大ごとなんだろうな!」

 

 自身に浴びせられる苦言や文句に構わず、その若手幹部が言った。

 

「報告します!!

 マイハーク防衛司令部より緊急信です!

 『我、国籍不明船と遭遇す。同船には「日本国」なる国から来た外交使節が乗艦しており、公国政府との会談を希望している。

 なお、日本国外交使節は「約一月前に国ごと転移した」と述べており、「異変」と関係があるものと思われる。首相の判断を請う。』となっています!

 さらに、クイラ王国より緊急の通信です!

 『王国の北東海岸沖合で、国籍不明の艦隊と触接せり。艦隊には「大日本帝国」「アメリカ合衆国」なる国家の外交使節が乗艦しており、我が国とクワ・トイネ公国に国交樹立を前提とした会談を申し入れている。急ぎ返事を寄こされたし。』とのことです!!」

 

 瞬間、会場は大きな驚きに包まれた……。




 いかがでしたでしょうか?
 感想、ご意見等、ドンドン募集しています!
 何でも良いので、よろしくお願いします!



ここで、登場する国家の概要をば。

・日本国
史実と同じ歴史を歩んでいる日本。転移位置は原作と同じ。
西暦2015年より転移してきた。
軍隊は保有しておらず、代わりに「自衛隊」が存在している。

・大日本帝国
史実とは違い、「八八艦隊計画」を戦艦のみだが、完遂したパラレルワールドの日本。
転移位置は、緯度は日本国と同じだが、日本国より東に3000㎞ずれた位置である。
帝国本土の他、台湾と樺太全島、南洋の全委任統治領が転移してきた。
史実と違って「韓国併合」「満洲国建国」や「日中戦争」などが無く、また工業力も史実より高い。
(米国には劣るが、英・独に迫る)
異世界転移では『存在』からのお告げもあり、一番落ち着いて行動している。

・アメリカ合衆国
これも史実と違い、帝国に対抗するため「ダニエルズ・プラン」を完成させたパラレルワールドのアメリカ。
転移位置は、ロデニウス大陸と同じ緯度で、東に6500㎞ずれた位置である。
アメリカ本土の他、アラスカ、ハワイ諸島、フィリピン諸島、グアム島、ウェーク島、サモア諸島等の太平洋にある米国領の島すべてと、プエルトリコ島が転移してきた。(ただし、ハワイ諸島とミッドウェー等の日付変更線から西の島々は、元大西洋側に緯度はそのまま転移)
帝国とは満洲開発などで比較的友好的な関係であり、この異世界転移現象では一時パニくるものの、帝国からの協力もあり、落ち着いてきている。
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