【再構成のため停止】レィル・クローターと魔法生物   作:antique

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防衛作戦

ホグワーツの門番ハグリッド、ドラゴンの卵不法所持

 

そんな見出しで始まる日刊預言者新聞が魔法界にばらまかれた。当然ホグワーツにも届き、ここに届いたのはサイズを大きくしたワイド版であった。

大まかな内容を言えば、現行犯逮捕の写真、逮捕したその後も反省の色が見えないこと、レィルが保護することになったドラゴンの特徴などが書かれていた。

それを見た生徒の親族はフクロウ便をホグワーツへ送った。結果として、朝食の時間の大広間には大量の梟が飛び交うこととなった。

子供の心配は勿論、ハグリッドへの怒り、ホグワーツの安全管理についてや、ダンブルドアへの批判、レィルへの感謝などなど内容は多岐にわたる。実際レィルにも在校生から質問や感謝の嵐であった。

ハグリッドと仲の良かった主なグリフィンドール生、有り体にいえばロナルドあたりが反発してきたが、基本的に「常識ないのか」だの「何言ってんだこいつ」としか思われておらず、全く相手にされてなかった上に更にヘイトを稼いだとまである。

レィルはこの件の早期解決にあたり、魔法省からマーリン勲章勲二等を授与されることになった。

 

土曜日の勉強会だが、遂に部屋を拡大することになってしまった。進級試験がやって来たのだ。

ヘルミオネ、レィルはホグワーツに来る前から魔法を扱い、更には知識も豊富なので余裕だった。フィリップも《地球の本棚》で知りたいことはあらかた調べ尽くしたのでこちらも余裕だった。

そんな三人にレイブンクローは勉強を教えて欲しいと泣きついた。スリザリンの方はアリシア、ダフネ、マルフォイに、ハッフルパフはメズール、グリフィンドールはハーマイオニーに行っていた。

試験についてはレィルを初めとした秀才組は満点以上を普通に取っていた。あの普段のほほんとしたメズールでさえ、だ。

ヘルミオネはパイナップルを机の端から端までタップダンスをさせる試験ではパイナップルだけではなくその場にあった全ての物品を使用した上で、タップダンスの後に社交ダンスもとり入れた。フィリップは鼠を嗅ぎたばこ入れにする試験では装飾と塗装を施し、壊れないようにと世界で最も硬い物質であるウルツァイト窒化ホウ素というもので作り上げた。

などなど、他にも色々あるのだが、ここでは省略することにする。一言で言えば、やりすぎたのだ。

 

「…やっぱ、ヘルミオネには勝てないか」

「まだ、負ける気は無い」

「トップスリーをレイブンクローが独占、って……」

「次はメズール、で、私、ドラコ」

「そのあとはグレンジャー嬢、でダフネか」

 

レィルとヘルミオネは身内で競い合って、フィリップがそれを追う形である。ハーマイオニーは自分で出来る限り頑張ったと思ったのにまだ届かない上に六人もの壁があることに軽く絶望していた。

 

試験も終わり、ようやっとゆっくり出来ると思ったレィルに一通の手紙が届いた。送り主はダンブルドアである。

端的に言えば、「試験お疲れ様、魔法省に呼ばれたから行ってくる。ヴォルデモートが取りに来るから全力で守れ。クィレル先生と共にくる。できればその場にいろ」とのこと。

レィルは恐らく今晩がその時だろうと思い、仕方なくクロエを使ってみぞの鏡がある場所に向かった。

クィレル、もといヴォルデモートに見つかってしまってはいけないのでレシフォールドのメッサーに頼んで身を隠させてもらった。夕餉後ということもあり、真っ暗な部屋でレシフォールドはかなり隠密性が高かった。

流石に広範囲に索敵のような用途で開心術は使えないので人の気に敏感なソリッドをトランクから出した。トランクを閉めて、適当に腰を下ろした。

気がつけば隣にはちょこん、とフォウが座っていた。何かを見定めるように、ただ一点をじっと見つめていた。

視線の先にはみぞの鏡があった。そういえば、自分が持ってなければいけなかったなと思い出し、メッサーにどいて前に立った。

一応みぞの鏡がどういうものかをダンブルドアから教わっていたが、レィルの願いは前から決まっている。それはヴォルデモートから賢者の石を守ることより、無限の命を手にすることよりも難しい。

 

鏡の中のレィルはヘルミオネとリルと肩を並べ、周りには今トランクにいるよりも多いだろう数の魔法生物達がいる。ヘルミオネとリルがそれぞれの手を握ってくれている。

レイヴェルが肩に泊まり、ノーベルタが腰にしがみついていて、フォウが足元に鎮座している。ミローが頭上を旋回し、ドラゴン達はその上で滞空している。

これがレィルの望む未来、みんな一緒に暮らすこと。そのためにはしなきゃいけない事が多すぎる、とレィルはため息をついた。

 

「……お前が望む未来は、どんなものなんだ?なぁ、フォウ」

 

レィルは隣に座るフォウを一度撫ぜた。だがフォウはなんの反応も返さずに鏡を見続けていた。

レィルがもう一度鏡を見ると、先程までいたヘルミオネ達はどこかに消えた。鏡の中のレィルはふっと微笑んでポケットの中を指さした。

ポケットを確認すると中に赤い荒削りな石があった。おそらくこれが賢者の石だろう。

 

「メッサー、また隠れ蓑になってくれ」

 

メッサーは何も言わずにレィルに纏った。壁際まで移動し、また座る。

数分後、ポケットの中が少しだけ動いた。ポケットの中にいたソリッドは体を這ってレィルの肩まで移動した。

 

(来た)

「どっち?」

(吐き気を催す方)

「……そのボキャブラリ、どこで学んだの?」

 

ひとまず闇の帝王が来たらしいので、レィルはトランクにソリッドを戻した。ソリッドは真っ先に家族の元へと向かっていた。

待っていると段々悲鳴が近づいてくるのが分かる。上手く意表をつけているらしい。

スウーピング・イーヴルやビリーウィグ達が殺されていないのを願いながらじっと待つ。ハグリッドのフラッフィーは真面目にどうでもいいとさえ思っている。

仮にも闇の帝王などとたいそれた名前を持っているにもかかわらず三頭犬だ、死の呪文(アバダ・ケタブラ)で殺されるとは思わないのだろうか。

 

時間的に半時間ほどたっただろうか。悲鳴がまた近くなった。

フラッフィーの方はそんなに時間をかける必要も無いので、おそらく三つ目の空飛ぶ鍵に噛まれているところだろう。解錠呪文を受け付けないようにしたのでトラバサミのみを壊すか腕をちぎるかしなければ外せないはず。

クリアしたのか、叫び声はなくなった。今度は物が破壊される音が何度も続いた。

チェスは二人融和有限確定完全情報ゲーム。基本的に遊ぶ時は運という不確定なものが入り込む余地はない。

だが今回クィレルが行うのはボードゲームではなくストラテジーゲームである。要するにどれだけカリスマがあるかだが、残念ながら今の彼は戦闘狂にしか見えていないだろう。

核を壊すためにひたすら敵を殺していく。そこに大義名分など欠けらも無い。

手当たり次第に敵軍を亡きものにすれば、それに恐怖した自軍が反乱を起こす。駒の色も相まってヴォルデモートのフラストレーションは溜まるだろうとレィルは予想した。

 

今度は四十五分ほどした後、ようやっと爆音が止まった。ヴォルデモートが近づいてくるにもかかわらず、レィルの心境は至って平坦であった。

次は確かトロールが相手である。クィレルのメンタルはここで潰れるだろう。何せ自分が簡単に倒せると思っていた相手が予想以上のレベルアップを果たして立っているのだから。

トロールに鎧をかぶせるだけでは死の呪文で簡単に突破されてしまう。だからレィルが行ったのは動作の主導権をトロールではなく鎧側に渡したのだ。

これで本体が死んでも鎧が動き続ける。それも全てを同時に壊さなければ止まることは無い。

ここでクィレルが動かなくなれば万々歳なのだが、全てが上手くいくとは限らない。動かなくなった体をヴォルデモートが使う可能性だってある。

そしておそらくフラッフィーを除き最も短い時間でクリアする。これは生物である故に分かり切っていることである。

 

そして数分後、ボロボロになり、既にターバンを外したクィレルが転がり込んできた。

 

・・・・・

 

時は遡り、クィリナス・クィレルは扉の前にいた。自身の主、トム・マールヴォロ・リドル(ヴォルデモート)の命を果たすために。

この日のためにどれほど苦労したか。主の臭いを消すために態と吸血鬼にかすり傷を与えられ、大量のニンニクで授業部屋をうもらせ、誰にもバレないようにオロオロとした態度を貫き通した。

ダンブルドアに分からせないように閉心術の特訓をし、闇の魔術に対する防衛術の教諭に就いた。今、ダンブルドアはこの城にいない。計画の結構には打って付けだった。

 

「失敗は許されぬぞ、クィレル」

「分かっております、我が君」

 

クィレルは後ろから発せられる声に恭しく返事をした。ターバンを外したそこには、人とは思えない何かが張り付いていた。

比喩するならば、蛇を潰して後頭部にくっつけたようなものだった。それは人並みに目、顔、口があった。

この姿こそ、今のヴォルデモートである。醜いその姿を晒す訳にはいかないので、クィレルにターバンで隠すようにしていたのだ。

 

「ダンブルドアが帰ってくるのは早くても零刻。この奥に確かにあるのだろうな?」

「はい。この最奥に賢者の石と、それが入れられたみぞの鏡が」

「……」

 

ヴォルデモートはクィレルの返答に何も言わず、ただ目を閉じた。クィレルは解錠呪文で扉を開け、第1関門に入っていった。

 

そこは、さながら山岳地帯が連なる場所の狭間。有り体にいえば谷だった。

しっかりと空もある。だが先程までは確かにホグワーツ城内にいた筈だ。

 

「どういうことだ……ただの部屋ではなかったのか!?」

「そのはずです!ダンブルドアも誰も手を付け加えてないどころか、奴はここに来ていません!」

 

演技のオロオロとした様子ではなく、本気の素で動揺しだしたクィレル。手に杖は持っているが、かすかに震えていた。

 

「……ッ!クィレル!後ろだ!」

「なっ!?」

 

声に従い避けると、大きな影が通り過ぎて行った。よく見てみれば、三頭犬、アズカバンへ投げ込まれたハグリッドのフラッフィーだった。

クィレルはすぐさま収納袋からオルゴールを取り出して増幅呪文で響かせた。これで眠りにつくはずだった。

しかし予想とは裏腹にフラッフィーは眠らなかった。それどころか先ほどよりも唸り声を猛々しく上げている。

 

「仕方ない!殺せ!」

アバダ・ケタブラ(死せよ)!」

 

クィレルの杖から放たれた緑の光は一直線にフラッフィーの心臓へと向かった。これで先に進める、とクィレルは思った。

しかし、フラッフィーはかなり速度のある魔法を見てから避けた。これにはヴォルデモートですら驚愕の声を上げた。

 

「馬鹿な!魔法を避けただと!?」

「魔法を避けるとは……まさか服従の呪文、いや違うな。クィレル、悪霊の火を使え!あれならば広範囲で攻撃を当てられる!」

 

言われた通りに悪霊の火を展開し、フラッフィーに当てる。今度こそ絶命したフラッフィーは呻き声を上げながら崩れ落ちた。

 

「……魔法も使わず突破するはずが、何たる失態か。罰を、我が君」

「よい、許す。魔法省に向かうギリギリにここを改造することを俺様も失念していた」

「感謝の極み……」

 

(ダンブルドアは全能ではない。確かに強力ではあるが、全てを知る訳では無い。三頭犬の弱点を無くす方法など、奴は知るはずがない。一体誰が……)

 

息を整えたクィレルはフラッフィーの背中に扉がつけられてることに気づき、扉を開いた。次の部屋はは何も変わらないと初めは思ったが、どうやらそうではないらしい。

明らかに植物の数が増えている。それに本来の悪魔の罠

が減っている。

 

ルーモス・マキシマ(強き光を)

 

光を放ってみれば、退いたのは数本だけ。やはり抗体が既に入れられてるらしい。

 

「なかなか入り組んでいる……それに方向感覚を惑わす植物もあるな」

「ですが、スプラウトの奴はそんな植物を所持していませんでした、君」

「取り寄せた可能性もあるが……もしかすれば、生徒側に協力者がいるのかもな」

 

クィレルはその言葉を信じられなかった。確かに優秀なのは何人かいるが、ここまで知識を有している者はいなかったはずだ。

ひとまず迫り来る毒草達を焼却呪文で燃やしつつ、先へ進むクィレル。厄介なことに火が周りにいかないので一つ一つ駆除していくしかない。

数分後、ヴォルデモートはなにか違和感を感じた。道を覚えているはずのクィレルがあちらこちらへと向かう方向を変えているのだ。

 

「クィレル、貴様本当に道を知っているのか」

「何を?真っ直ぐ歩いているはずですが?」

「真っ直ぐ、だと?何をほざいている」

 

クィレルは真っ直ぐ歩いていると思っている。しかし現実にはどこへ向かっているかわからない。

ひとまず手当たり次第に解毒剤を飲んでみるも、やはり方向感覚は狂ったまま。対処法もわからないので、ヴォルデモートの指示に従うことにした。

しかし、その前に左足首に痛みが走った。瞬間的にクィレルをその痛みが襲った。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

 

 

全身を焦がされるような、焼却炉にぶち込まれたような痛みが全身に走った。もちろん焼却炉など知らないクィレルはただ未知の感覚に恐怖し、さらに痛みで恐怖する。

感覚は共有されていないのか、ヴォルデモートは涼しそうな顔をしている。しかしクィレルが狂声を開けた瞬間に驚愕した。

 

「何が起きた!?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

「くそっ!聞く耳持たぬか!」

 

仕方なしにヴォルデモートは意識を前に出す。痛覚は感じないが、噛まれていそうなところを、探した。ローブを着込んでいるので手はない。なので足を探せば左足に噛み跡があった。

 

「これは、マートラップか?マグルにしか毒が回らないはずだが……」

 

ヴォルデモートは試験管を3本開けて調合し、傷口に薬を塗った。即効性はないが、だんだん毒が解けて行くだろう。

ヴォルデモートは意識をクィレルに戻した。長時間ヴォルデモートが意識を持っていると、クィレルの魂が薄まり死んでしまうのだ。

 

「急げクィレル!いつあの老害が戻ってくるのか分からんのだぞ!」

「し、承知しました、我が君……」

 

未だ全身に走る痛みを堪えながら、戻ってきた意識を確認しつつ、襲ってくる植物たちを燃やしながら先へ進む。

その度に方向が違う、と主から叱責を貰うが、これも全ては主のためと思えばまだ楽だった。

二人は知らないが、実は燃えている植物の総数は少ない。というのも、炎の伝達がしないのもそうだが、それ以上にこの部屋の中に放たれているスウーピング・イーヴルたちが燃えたところを気づかれないように折っているのだ。だから燃えた回数以上の植物が残っている。

 

次の扉を開くと、何十もの鍵が部屋のなかを飛んでいた。この部屋もフラッフィーがいたへやと同じように空がある。

壁がない、ということは鍵たちはどこまでも逃げていく可能性があるということ。即ち、見失えばもう見つけることは不可能である。

それに気付いたヴォルデモートは直ぐにクィレルに黒の飛翔を使うように指示、その状態で鍵の捜索を開始した。帝王故の感か、本物であるかそうでないかの違いは直ぐに分かった。

数十秒たったあと、一つだけほかの鍵より本の少し速く飛ぶ鍵が二人の目前を通りすぎていった。

 

「あれが本物だな。追え!」

「はっ!」

 

直ぐに追い付き、杖を持っている手とは逆の手で鍵をつかんだ。瞬間、本物の鍵がトラバサミに変化、クィレルの腕に噛みついた。

それだけではない。今まで散るように逃げていた鍵たちが一斉にクィレルの方に飛んできた。等ゼナたった鍵は例外なくトラバサミに変化していく。

 

スペシアリス・レベリオ(化けの皮、剥がれよ)レベリオ(剥がれよ)レベリオ(剥がれよ)!」

「クィレル!今お前の体に引っ付いている牙のようなもの(トラバサミ)はいい!飛んでくるやつだけを処理しろ!」

「し、しかし!」

「なければ死ぬのみだぞ!」

 

クィレルは仕方なしに飛んでくる鍵だけを爆発呪文で破壊していった。クィレルは数える暇もなかったが、その総数は八十個。

飛んでくる鍵がなくなったのを確認し、自身に噛みついているものを解いた。

 

「マグルの道具か……」

「は、はい。恐らくは、トラバサミと呼ばれる狩猟用の罠かと……」

「俺様は獲物とでも言うつもりか……そうはいかぬぞ、ダンブルドア」

 

執念の炎をさら燃やし、次の部屋へと向かう。ちなみに扉は本当の鍵を手にしたときに真下に出現していた。

部屋へ入ると、まるで競技場のようだった。正しくは四角い部屋なのだが、かなり雰囲気が違った。

手前と奥にそれぞれ配置された白黒合計十六の騎士の像。それぞれの甲冑が役職を示しているのかわからないが、姿かたちが違う。

一番他と違うのは、それぞれに一人だけ存在する女の像だ。目の前には、こんな立て札が刺してあった。

 

「これは、ただのチェスではない。互いの王のカリスマを計りあう、駒たちが意思を持ったチェスである」

 

かかれていた文字全てを目を通した瞬間に立て札は塵とかした。これ以上のヒントはもう望めない。

 

「意思を持ったチェスか。つまりは俺様が命令を下すまで決して動かないわけだな」

「いかがしましょう、我が君」

「……癪ではある。だが、この駒どもが反乱を起こさない可能性がない訳ではない。素直に攻略するとしよう。a2ポーン、a3へ」

 

命令すると、ヴォルデモートの白いポーンが一歩(1マス)前進した。その瞬間、相手の駒がぞろぞろと動き出した。

しかもヴォルデモートの駒のように台座ごとではなく、台座から飛び降りた騎士像たちが一斉に襲いかかってきたのだ。

 

「ルールを知らないのか!?これはチェスだぞ!?」

「いや、今回はこれが正しいぞ。ポーン、ルーク全体迎え撃て!キングとクイーンは待機、ビショップは各王の護衛だ!ナイトは相手の裏をついて攻めてきたポーンどもの首を跳ねろ!」

 

今度はヴォルデモートの騎士像たちが台座から飛び降りてその指示通りに動いた。ポーンとルークは攻めてきた的と交戦し、ナイトが外側から攻めに回り、ビショップはキングとクイーンに一人ずついた。

 

「我が君、これは……」

「これはチェスではなく、戦略的遊戯(ストラテジーゲーム)ということだ」

 

即ち、どれだけ自軍をまとめあげ、人の上にたてるか。まさにカリスマを計るにはうってつけのゲームである。

苦戦三十分ほど。ゲームには勝利したが、損失がひどかった。残っているのはキング、クイーン、日ッショップ一人、ポーン二人。

 

「…鍵が開かないということは、核は相手のキングではなかったということだな」

「どうしましょうか…」

「これ以上下らぬ遊戯に付き合う必要もあるまい。爆破呪文で全て壊せ」

 

(自軍が白で、敵軍が黒。もしこの演出が現実に現れるのだとしたら、貴様は寿命で死ぬということか。そして、俺様が負ける、と?ふざけたことを……!!)

 

まるで未来を予言されているようで、ヴォルデモートは気分を果てしなく害した。憤怒と執念の炎の温度をさらに上げていく。

クィレルが爆破呪文で一体のポーンを破壊した瞬間、不思議なことが起こった。自軍が一瞬にして赤色に染まったのである。

赤色の騎士像たちは縦を構え、剣を抜き、二人に襲いかかってくる。まるで禁忌ををかしたように。

 

レダクト(粉々になれ)ボンバーダ(粉砕せよ)ボンバーダ・マキシマ(完全粉砕せよ)コンフリンゴ(爆発せよ)レダクト(粉々になれ)!」

「…次は貴様のトロールだったな」

「その筈です」

「改造を受けているかもしれぬ。油断するなよ」

「承知しました」

 

奥にあった扉を開き、先へ進む。やはりトロールもその姿を変えていた。

全身を甲冑で包み、手に持っていた棍棒は鉈へと変わっている。

 

「死なぬことはないはずだ、クィレル!」

「はっ!アバダ・ケタブラ(死せよ)!」

 

緑色の光線はトロールの心臓をしっかりと射ぬいた。しかしトロールは立ち止まるもなく倒れるもなく、いまだその歩みを進めている。

 

「分霊箱ではないな。行動の主導権を鎧に渡したな。悪霊の火を使え!」

 

杖先から吹き出た炎は蛇の形を象り、鎧トロールに突進した。今度こそ歩みを止めたトロールは既に片腕しか残っていなかった。

 

「次で最後だな。行け」

「はい」

 

クィレルは既に限界に近かった。度重なるアクシデントに精神は刷りきれ、既に目に光は灯っていなかった。

今の返事だってほぼ条件反射だ。聞かねば殺す、というような殺気を振り撒かれればこうなってしまうのもある意味当たり前かも知れない。

 

最後の部屋にはいると、一つの机があった。その上に文字が浮かんでおり、机の上に七つの薬品入れ、そして回りに五つの炎の輪。

ここは魔法薬クイズのようであった。

 

「この程度、俺様を舐めているのか?一番左の薬品、そして右から二番目の輪だ。はやく行け」

 

クィレルは後ろの誰か(ヴォルデモート)の言葉の通りにフラスコを口にして薬を飲んだ。その瞬間、クィレルは声を失った。

 

「――――――ッッッッッ!」

 

声が出したい、声に出したい、しかし声にならない。一気に飲んだそれはまるでクィレルの喉を爆発するかのように襲った。

声をあげて気を散らしたい、しかし脳がそれを許さない。痛覚は休ませるようにして声をあげさせないが、息をする度に痛覚が反応する。

 

スピリタス(・・・・・)

それは、ポーランド原産の穀物と馬鈴薯(じゃがいも)を原料に蒸留を七十回以上繰り返して出来上がるウォッカ。そのアルコール度数は驚異の90(・・)越え。

クィレルが飲んだのはそんなほぼアルコールでできたスピリッツだった。しかもあろうことか、原液(・・)イッキ飲み(・・・・・)したのだ。

それだけでは終わらない。正解の炎の輪を残して全ての炎の輪が襲いかかってきたのだ。

 

「クィレル、何があった!クィレル!」

 

当然そんなものは知りもしないヴォルデモートは薬を飲んでいきなり苦しみ悶えたとしか思えない。何が起きているかも当然知るよしもない。

自分の呼び掛けに答えないという不敬の上、なんの反応もしないという状況がさらにヴォルデモートをイラつかせる。最終的にクィレルはここで切り捨てるという選択をした。

 

「貴様はここで死ぬが光栄に思えよクィレル。この闇の帝王の復活の(いしずえ)となるのだからな!」

 

意識を前に出したヴォルデモートは襲い来る炎を消すためにその場にあった薬を全て飲み干した。効果はそれぞれ異なるが、全てクィレルの体を内側から壊していくものだった。

活動限界が近いヴォルデモートは最後に服従の呪文を自分(クィレル)にかけた。最後の扉を開くためだ。

表にも度されたクィレルは命令にしたがって扉を開いた。それと同時に膝から崩れ落ち、顔面を地面と合わせることとなった。

 

目の前に、賢者の石がはいっていないみぞの鏡をとらえながら。

 




ドーモ、ドクシャ=サン。antiqueデス。アイエエエ……

これ本来二話構成だったんですがあまりにも短かったんで付け足しました。
新聞の記事をもう少し詳しく書けば文字数稼げたかもしれませんが、そんなこと私には出来ませんので……。仮に作ったとしてもリータもビックリなへんな記事しかできません。

試験のおかげで勉強会は大盛況、試験が終わったあとは普通のサイズに戻してます。流石にあのサイズを常時展開するのはレィルの体力が切れます。

テストですが、満点超えはハーミーより上、ダフネも満点を取っています。ドラコは頑張りました()。
順位的に言えば以下の通りです。
一位 ヘルミオネ
二位 レィル
二位 フィリップ
四位 メズール
四位 アリシア
六位 ドラコ
七位 ハーマイオニー
八位 ダフネ

防衛戦。ほんとそこにいなくて良かったじゃん、って。
初期プロットにはクィレル視点はありませんでした。けどそれじゃ足りなさすぎたんや…
それでも9000文字を越えてくる辺り、やっぱり別の人の視点っているのかな?

さて、目の前に転がり込んできたクィレルとお辞儀をどうするのか。クィレルはすでに退場しているので、オタッシャデ!

では、次の話で会いましょう、サラダバー




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