【再構成のため停止】レィル・クローターと魔法生物   作:antique

22 / 27
思いは遠く

 

 

レィルは一度、フィリップが謎の日記を調べて1日後(・・・)に「必ず殺せるものを探してくれ」と頼まれた。その意図は押して図ることは出来なかったが、彼の言うことなら、と二つ返事でひきうけた。

 

必ず殺せるもので真っ先にレィルが思い浮かべたのは必殺魔法で、必殺魔法とは読んで字のごとく、人を殺せる魔法である。いちばん知られているのは、闇の魔術の禁忌中の禁忌である「アバダ・ケタブラ」だろう。

だが、それにももちろん制約というものが存在する。この世には許されざる呪文というものがあり、服従、磔、そして死の三つをどれかひとつでも人に対して使用すると問答無用でアズカバン行きとなる。

ので、今回この死の呪文は使えない。だから探す必要があったのだ。

 

次に思いついたのは、バジリスクの毒。つまりレフィアから毒を拝借するのだ。

といっても、バジリスクの毒は少し前に既に取得している。ちなみに取り出し方は20ミリφの試験管を牙の先端に宛てがい、試験官の口が牙でつまらないように隙間を開けて牙から伝ってくる毒液を回収する。

バジリスクを捕獲したことはダンブルドアには極秘に去年お世話になったフロー・ベアリングに伝えており、研究のため月一ペースで毒を回収している。ので、その余剰分は普通に余っているのだ。

これを使えるか、と思うが相手は無機物であり、毒が回るかどうかも不明である。よってこれは保留案となる。

 

予め断っておけば、(レィル)は何も全知全能ではない。

 

彼にだってしらないことやできないことがある。今回の「法律に引っ掛からない何かの殺し方」だって知らないし、一応(・・)人並みの魔力しか持たないレィルには魔法だけであの日記帳を壊すなんて芸当はできない。

少しばかり他の人よりヘルミオネやゼノ、トランクの住人たちのような家族にたいして情が働くだけで、その他は落ち着いているだけの年相応の優秀な少年なのだ。本当の全知とはフィリップのことを言い、本当の全能とはゼノのことを言う。

年相応のレィルは当然ながら困ったときは大人に頼ればいいということを知っている。だが、ここで問題となってくるのは人選である。

 

校長であるダンブルドアはレィルが個人的にもあまり良い印象を持っておらず、なおかつヘルミオネ()が毛嫌いしているので却下。副校長で基本的に全寮に対し公正を謳っていながら本当はグリフィンドールに甘いと定評がつきつつあるマクゴナガルもこんなことをしていると知られれば絶対に探りを入れてくるだろう。

金切り声で有名なフリットウィックも普段は弱く見られがちだが、以前校長室で相対したときにわかったがかなりの実力者である。ので、こちらも自ずとダンブルドアの方に報告が入るだろう。

ステファニー(母親)は論外、用務員のアーガス・フィルチも風の噂で聞いた程度だがスクイブと聞いた。スプラウトはダンブルドアに寄っているきらいがあるのでこれも論外。

 

となってくると、消去法で残るのはたった一人である。

 

・・・・・

 

「……で、我輩の元に来たわけか」

「はい。なにかありませんか?」

 

スネイプは、目の前の少年に少しばかり頭を悩ませた。本人に迷惑はされていないのだが、その母親が面倒なのだ。

 

過保護とは言わないまでも、結構の割合で口を開けば「レィル」の言葉が出てくるステファニーは、度々スネイプの部屋を訪れていた。神秘部でありながら子持ちであるステファニーの忙しさは、個人的な用事で魔法省によく行っていたスネイプも理解している。

が、だからといってバーボン片手に既に酔っぱらって「せんぱ~い」とわずかに赤みがかった顔で寄られるのはうざくもなってくる。最近は回数も多くなってきているので、どうしたものかと悩んでいた。

 

そんな矢先に「死の呪文と悪霊の火以外で直ぐに対象を殺せる魔法はありますか?」とどストレートに聞いてきたのだ。スネイプの頭痛は加速することとなる。

が、適当にあしらうのも面倒である、と忌々しき男(・・・・・)最愛の女性(・・・・・)との間に生まれた護衛対象を頭にちらつかせて、思考してみた。だが、やはり思い付くのは、ただ一つ。

 

スネイプは目の前の少年を、わからないほど一瞬だけ真剣に一瞥した。ダンブルドアから「彼に並みの開心術は効かない」と報告を受けているので、その目に曇りがあるかだけの確認だ。

 

「……夏休みのレポートにあった生ける屍の水薬をこえる睡眠薬のダイバーダウンとやらを瓶詰めで三本無償で提供したまえ。それで教えてやろう」

「ありがとうございます!」

 

結果、スネイプは教えることにした。作ってからほとんど使っていないオリジナル(・・・・・)を。

 

「これから貴様に教えるのは確かに法に引っかかることは無い、だが使い方を間違えたなら直ぐに投獄されるだろう魔法である。くれぐれも、間違いは冒してくれるな」

「分かってます」

 

スネイプはレィルのことを見ることなく、杖を振って蛇を出す。クロエたちのような特別なものではなく、単なる蛇である。

杖が微かに震え、スネイプは僅かに力を弛めて震えを抑えた。

 

「……セクタムセンプラ(切り裂け)

 

無色半透明の魔法が蛇を襲う。すぐに効果は出なかったが、見るとじわじわと赤い池(・・・)が発生していた。

蛇をもう一度見ると、至る所にナイフで裂かれたような傷が発生していた。さすがに目や口中などのところにはないが、しかし全身にわたって傷跡は出来ていて、むしろだんだんと大きくなっている。

 

「……これならば、対象を確実に殺せるだろう。ヴィペラ・イヴァネスカ(蛇よ、消えよ)

 

苦しむことなく横たわり、赤い池の生成機となっていた蛇を魔法で消したスネイプ。レィルはありがとうございます、とだけ言って直ぐに部屋を出ていった。

その様子に問いたいことがあった(・・・・・・・・・・)スネイプだが、その質問を喉奥に引っ込めて、座り心地の良いソファーにいつの間にか置かれていたダイバーダウンの使用法をチラ見し、コップ一杯の水に大さじ一ほど入れて飲み干し、瓶を机の方に移動してソファーに寝そべった。結果先送り。

 

詰まるところ、スネイプは考えることをやめた。

 

・・・・・

 

スネイプは昔、虐められっ子だった。

 

理由は単純、いかにも(・・・・)な性格と、スリザリンであること、そのうえ闇の魔術に対する興味があったこと。まぁ誰に虐められていたかはともかくとして、とにかく彼は虐められていた。

学校側が黙認するので耐え続けるしかなく、ついぞ入学より始まった虐めは卒業までずっと続いたのだ。最愛の人さえ奪われて、彼の心はあれに荒れていただろう。

だが、彼にだけ隔たりなく接する女性が、1人だけいた。というよりも、その特異性より誰からも注目を浴びていたのだが。

学生期間に入れば、何かしらのコミュニティにはいるのが子供たちのセオリーだ。趣味が合うから、似ているから、理由はともあれ、そういったグループはそこかしこと存在する。

ホグワーツは四つの寮に別れているだけに、そういったコミュニティはほかの普通の学校よりも断然出来やすかった。そこで、先程述べた特異性のある者(イレギュラー)が登場する。

 

ただひとつのコミュニティに存在するでもなく、コミュニティを点在するでもなく、事実上のオールラウンダー的な存在で、その優しい性格やクディッチの上手さ、学才も相まって、先輩や同輩、後輩、教師や用務員にまで好かれていた。そのうえ何故かいわゆるアンチなる存在がいなかったせいで、「何かあれば彼女に頼れ」と言われるまでの存在に登り詰めた。

 

ハッフルパフにいた、ステファニー・クローターである。

 

ハッフルパフでありながらレイブンクローの学力トップランカーと肩を並べるほどの知識を持ち、ハッフルパフ特有の気前の良さや親しみやすさがあり、かと思えばスリザリンのように気品ある仕草や礼儀を持ち合わせ、グリフィンドールのような勇気もある。どこの寮に行ってもおかしくないほどの人材で実際彼女も「自分で選ばせてもらった」と証言している。

 

優秀。それが彼女を形容するに値する言葉である。

 

故にこそ、彼女はスネイプにも気にかけた。先生から言われたから、という大義名分もなく、ただたんに気にかけたのだ。

スネイプにとって、第一印象は「人気者が日陰者に何の用だ」とでも皮肉ってやるつもりだった。だが拍子抜けしてしまった。

 

「闇の魔術が得意な先輩って貴方ですか?」

「……そうだが」

 

「ちょいと分からないところがありまして。出来れば御教授願いたくてですね」

「……それはひょっとしてギャグで言っているのか?なら断る」

「いえいえ、本気ですよ」

 

 

「真価をわからない人と延々といがみ合っているよりは、その道への理解がある人と語らう方が有意義でしょう?」

 

 

スネイプはその日初めて、自分の努力が報われた気がした。

 

・・・・・

 

嫌な夢を見た(・・・・・・)

 

スネイプは起床し1番にそう零した。紛れもなく、覚えている中で二番目ぐらいに嫌な記憶と問われれば真っ先に「あのバカと出会ったこと」と答えるほどに、あの第1接近は嫌なことにカウントされる。

それほどまでに、彼女は関わってはならない人間だったのだ。スネイプは学生時代の記憶を、あの事と彼女に出会ったことだけをやたらと濃く覚えている。

いつの日か、水をワインに変えつつ、その杯を装飾するというほかの人からしてみれば芸当とも言える魔術をワイングラスにかけながら、彼女は一人で語っていた。

 

「別に誰にも隔たりなく、当たり障りなく接してるつもりは無いんですよ。その気になれば全員平等に愛せますし、全員平等に見下せて、全員平等に眼中から外せる。けれど、その中でもあなたは、数少ない波長の合う友人(・・)で先輩なんです。だから構うんですよ、あなたに」

 

そんな俗な人間だと、自らを語る少女は言った。そんな付き合いをして十数年。

おそらく今日も来るだろう。そう思い、スネイプは朦朧とする頭を起こそうとした。

 

 

 

 

「ソファーで溺れたように眠るなんて、らしくないですね、先輩」

 

 

 

 

そうして、自分を上から覗き込むようにする目線に、今やっと気づいた。

 

「……何をしている」

「何って、膝枕ですが」

 

いつも通り、バーボン片手にほんのり頬を赤らめてやってくる後輩はスネイプに膝枕をしていた。スネイプは何も感じないように起き上がり、机の上に置きっぱなしだったダイバーダウンを片付けた。

 

「疲労に気づかないほど熱中するなんて、あの魔法を開発する時以来ですねぇ……なにか悩み事でも?」

「強いて言えば貴様のせいで近頃寝不足だと言う以外は、何も無いがな」

「あはは……まぁまぁ、後輩のおちゃめな相談と思って聞いてくれるじゃないですか。一応あのお酒って、リスクの大半を消した生ける屍の水薬入ってるんですよ?」

「ふん。貴様の息子の方が、優秀だったな」

「へあ?どういうことですか」

 

ステファニーはソファーから立ち上がり、ソファー以上に座り心地の良い一人用の椅子に座ったスネイプに机を挟むようにして立った。

 

「レィル・クローターが調合した、生ける屍の水薬以上に直ぐに眠ることが出来、なおかつリスクのない睡眠薬を夏休みに作れと言えば、ダイバーダウンと名付けて提出してきた」

「なぁっ!?羨ましいですよ先輩!なに母親の私でも手に入れられないようなもん貰ってるんですか!?」

「知らん」

「知らんって!?まさかとは思いますが、結構な量貰ってるんじゃないでしょうね!?」

「瓶詰めで三本ほどだ」

「十分じゃないですか!?」

 

その後も、喚くステファニーの尋問は続いた。しかし、ステファニーは気づかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く!先輩はいつもいつもいつも!」

「うるさいぞクラウ」

 

スネイプがステファニーを呼ぶ時、呼び名が学生時代に戻っていることを。

 

 




大学見学のバスの中で残りを書きあげました、antiqueです。(大学なんて)興味ないね。

いや、難産でした。本当に。いやマジで。
本当はアリスの話をしようとしてたんですが、繋げ方がちょっと強引だったのでスネイプの過去話にチェンジしました。次はちゃんとアリスの話です。

感想欄でも言われてました分霊箱の壊し方。ちょいと選択肢ですが、ちゃんと壊れるようにはするのでご安心を。

ステフはハッフルパフであり、ジェームズよりもぶっちぎりで優秀です。なんなら決闘で完封してしまうほどに。
で、現在の絡み。運が良ければ……なんてこともあるでしょうね。

では次の話で会いましょう、サラダバー




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。