【再構成のため停止】レィル・クローターと魔法生物   作:antique

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王の素質

 

 

 

 

 

「決闘クラブ?」

 

朝食を食べていたレィル、ヘルミオネの所にパドマ・パチルとマイケル・コーナーが相席し、決闘クラブなるものの存在を明かした。ここ最近部屋にこもりっきりだったレィル達にとって知らないも同然の情報だった。

 

「そうそう。己の全てをぶつけて誰かと戦う機会なんてないから」

「我らが大先生の実力はどんなものなのかなって思ってな」

 

パドマとマイケルがこんなことを言うのも無理はない。レィル、ヘルミオネ、フィリップの三人はレイブンクローではもはや欠かせない存在となっている。

というよりも、いくつかの反乱分子を除き、レイブンクローだけではなく全ての寮の先生という認識になっている。類まれなる知識量や、それを補う実力も去ることながら、「来る者拒まず去るもの追わず」というスタンスを基本的にとっているせいかフレンドリーに当たりやすい、という点でも彼らは人気がある。

また、最も決定的に全寮からの信頼を置いているのはティファール(聖二十八一族総督家)マルフォイ(魔法省の忠臣)からの信用と、研究結果の事実性だ。魔法省にも提出している彼の研究結果、最たるものは脱狼薬改という、一度飲めば一ヶ月は人狼にならず、無味無臭という今までの脱狼薬とは比べ物にならないほどの薬を開発したのだ。

それに加えて、ディマイント家との深い繋がりがある。はっきりいってしまえば、現在ホグワーツには彼以上の人材は存在しない。

 

となると、気になってくるのが実力である。とはいえども、あの光景(ロナルドの失態)をパドマ達は見ているので、決闘を行うとなれば無言呪文が大前提となることはもちろん分かっている。

それを差し引いても、パドマはレィルの実力を知りたいのだ。

 

「どうする?ヘルミオネ」

「面白い、とは思う」

「来てみたら?みんな知恵を絞って、どうやって相手を出し抜くかって考え抜いてるの」

「それでも僕は君に勝ったことはないんだけどね、パドマ……」

 

肩を竦めながらマイケルがパドマを見る。パドマは少しだけ得意げに「ふふん」とわざとらしく言いながら腰に手を当てた。

 

「で、どうする?レィル」

「行ってみようと思う。そういえば、これ誰がやってるの?」

 

レィルは、何気なく問うたことを後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、ステファニー先生だけど」

 

───突如として興味を失った。

 

・・・・・

 

失った……のだが。

 

「アリス、一つだけ質問をさせてくれ」

「一度だけね?それ以上は2回しか付き合わないわよ」

 

「なぜ僕はここ(・・)にいるんだい?」

 

レィルの目の前には、ちょうどレイブンクローの先輩であるペネロペ・クリアウォーターとフィリップの親友だというハッフルパフのセドリック・ディゴリーがなかなか激しい戦いをくりひろげていた。ペネロペは全方向に薄く縦の呪文を使用し1度だけなら耐えられるようになっており、それに対抗するかのように大人でもなかなかできないような一度に二度同じ魔法を使用する二連射(デュアル・ブースト)という技術を使用していた。

 

そう、パドマが言っていた、ステファニー主催の決闘クラブである。

 

「最近ジニーのことで私たちが煮詰まりすぎだったから、たまには体を動かして頭の中をすっきりさせようと思って。迷惑だった」

「いつもならそんなことは言わないんだろうけど今回ばかりは迷惑かもしれないね。迷惑ついでにもう一度だけ質問させてくれ」

「さっきのを1回とカウントすればあとは無いわよ」

「構わないよ、これで終わるから」

 

アレら(・・・)潰していいかい?」

「やめときなさい、突っかかられるのがオチよ」

 

レィルのいうアレら(・・・)というのは先程から視界橋でこちらを睨んでいるロナルドと、目線はこちらに向かないながらも「愛してるオーラ」全開のステファニーである。後者は放置でも全然大丈夫だが、前者は驚異ではないが鬱陶しい、という感じだ。

別にレィルは自意識過剰や自己愛があるという訳では無いが、力の線引き、というものはできるぐらいには力を持っている。故にこそ、ロナルドの目線を放置しているのだ。

 

ペネロペとセドリックの決闘が両者大奮闘の上での引き分けにより観客が大いに沸き上がり、ステファニーがくじを引いた。

 

「えーと、8番と42番!」

 

壇上に上がったのは先程こちらを睨んでいたロナルドと、いつの間に来ていたのか、ダフネだった。

 

「構えて」

 

何も気にしないようにしているステファニーが審判を務めている。ダフネは半眼になりながらロナルドに聞いた。

 

「……アリシア様の方睨んでたけど、なんかあんの?」

「ッ、君には関係ないだろう……」

 

(ダメね。周り(・・)が見えていない)

 

ダフネとロナルドが正面から立ち会い、杖を構えた。取るに足らない相手を見る目をされたことにより、ロナルドは歯を食いしばった。

一応彼も、努力はしているのだ。かつて完璧に伸されたフィリップを見返すために、兄たちの手まで借りて、一矢報いようと努力してきたのだ。

 

「3、2、1!」

 

だからこそ、この結果は予想外だった。

 

「っ!?かはっ!」

 

メキメキ、という鈍い音と、その直後に聞こえた壁を貫いた(・・・)ドゴォンッ!、という大きな音により、皆の目線は全てそちらに向かった。

 

「……決闘っていうのはね、始まる前から勝負は始まっていて、勝負が決まっているものなのよ」

 

ダフネは杖をホルスターにしまい込みながら、決闘台からおりた。その目はどこまでも先を見据えている目で、その瞳にロナルドは映っていないし、現状映る権利もない。

 

「だからこそ効くのよ。どんな魔法で来るのかって警戒しながら行う決闘において、速度上昇(ヘイスト)をかけた生身によるClose quarter combat(近接格闘術)ってのはね」

 

そう、あの一瞬でダフネがしたことなんて単純も単純。無言呪文で速度上昇魔法を自信にかけ、体が壊れない程度ギリギリを狙って鳩尾(みぞおち)目掛けて拳を振り抜いた、ただそれだけである。

総督家の護衛をする以上、無手呪文を習得することが最終目標ではあるが、それでも杖がない状態であれば頼りになるのは自らの肢体のみ。故にこそ、ダフネは選択したのだ。

 

「競うな。持ち味を活かせ」

 

という、アガルタ・エンツォ・ハワード(フィリップの母親)の言葉を。

 

「女の子だから力がないと思った?お生憎様。私はずっと、アリシア様の護衛をドラコと共に任されられてるの」

 

ダフネの発する言葉は、何故かロナルドだけによく響いていた。周りが医務室へ、と叫ぶばかりなのだが、どうやっているのか、だんだんと離れていくはずのダフネの声がよく聞こえるのだ。

 

「貴方ごときが、私の前に立つんじゃないわ」

 

そう吐き捨てて、ダフネはレィル達の元へと向かった。

 

・・・・・

 

結局、ロナルドがハリーやグリフィンドール生に連れていかれて行く間にももちろん決闘は続いた。己の全てを出し合い、ぶつけるそれは、レィルの中で少しだけ何かを(とも)した。

 

「27番と84番!」

 

レィルが来てくれただけでなく、参加してくれたことで既に有頂天になりつつあるステファニーは息子が名前を書いた番号を高々と読み上げた。レィルはそれを聞いて、ため息ひとつ吐いた。

 

「呼ばれた、か」

「ま、頑張ってきなさい」

「声援なんて必要ないだろうけど、ね」

 

レィルが歩を進めると同時、ダフネとアリシアの声援ともならない応援が後ろから聞こえた。レィルはそれに手を挙げるだけで応え、壇上にたった。

目の前にいたのは、ドラコだった。

 

「……構えて」

 

「来なよドラコ。全力で」

「……もちろん。全身全霊を持って、君を下させてもらう!」

 

ドラコは半身になって杖をかまえ、レィルはフェンシングのプレイヤーのように構えた。唯ならぬ緊迫感が周囲を覆い包み、決闘場は誰も声が発せれなかった。

 

「3、2、1!」

 

この場の誰もがこの決闘に目を光らせていた。方や総督家護衛、方や誰もが誇る先生。

それらの第一手を見逃すまいと、ある者は血眼になろうかというほどに凝視する中、彼らが発するのは──

 

「「白き炎よ、我を空へと導きたまえ(Weiße Flamme, Bitte bring mich in den leer)!」」

 

一瞬、少なくともこの場にいる生徒ではわからない言語(ドイツ語)で放たれた魔法は、レィルとドラコの下半身を白く包み、彼らを宙へと導いた。唯一彼らが何を言ったか分かったのは、アリシア、ダフネ、そしてこの魔法を自分を認識できないほどに幼い頃に(息子)に教えたステファニーだった。

 

白炎飛行魔法、またの名を「白の飛翔」。

 

学生時代、スネイプがセクタムセンプラ(切り裂け)の開発に躍起になっていた頃に開発していた、死喰い人の黒の飛翔を参考にして作った魔法だ。白炎には盾の魔法一回分の防御性能があるということで、当時闇祓いに大変重宝された魔法である。

だが、もちろん使いづらい。「深海で泳ぎ、かつ空を鳥のように羽ばたく感覚」を習得しなければならないのであり、皆伝できたのは両手で足りるほど。

ダンブルドアでさえ使うことが出来なかったものを、二年生の子供が使うことが出来る。もちろん並大抵の努力をしている訳では無い。

 

レィルは、その意志故に。自らを見てくれなかった(ステファニー)よりも劣るなど、彼には耐えられなかった。

それ以上に、自分を見てくれた保護者(ゼノ)家族(ヘルミオネ達)と同じ世界を見るために、彼は努力し続けた。だからこそ、誰かから与えられたであろう暖かく(・・・)安心できた(・・・・・)感覚を覚えていたレィルは、この魔法を習得できたのだ。

 

ドラコは、その血筋故に。自らが守るべき存在である護衛対象(アリシア)ルシウスとナルシッサ(大切な両親)と、共に研鑽してきた(ダフネ)がいてくれたから。だからこそ、その力の全てを自らに注ぎ、この魔法を習得できたのだ。

 

理由は違えども、実力が違うとしても、今の彼らは間違いなく、目指すべき場所は同じだった。

 

両者の魔法の攻防は、日本のドラマの「殺陣」というものにどこか似ていて、しかしその表情は、もう少し進んでしまえば本当に殺し合いに発展するほどの凄みがあった。防いでは返し、避けては返し、それの繰り返しであった。

武装解除、失神、粉々に始まり、いつかフィリップが見せた剣製、時間差、曲射などなど、明らかに二年生で出来ないような芸当の数々を、それこそ自らができる全てをぶつけていた。

 

Ansuz(アンサズ)!」

 

幾分か、幾秒か、それがドラコが決闘開始後に白の飛翔を除き初めて発した言葉だった。炎が飛ばされたことにより、大半の人間はそれをインセンディオ(炎よ)と同系統の魔法だと勘違いしたが、一部の人間、それこそレィル達と少なからず面識のあるもの達はドラコの杖腕の逆(左腕)を見ていた。

 

「杖を使っていない?」

 

セドリックがそう呟いた時、数人は訳が分からなかった。いくら優秀になったドラコだからといっても、無手呪文を習得するまでには至っていないと思っているからだ。

しかし、確かに彼は無手呪文を習得していない。だが、そもそも杖を必要としない(・・・・・・・・)魔法は存在するのだ。

そこでペネロペは思い出した。かつて文献で見た、ケルトの英雄たちが使った言葉を。

 

「ルーン魔術…」

「え?」

「魔法ではない、杖を必要としない魔術」

 

ルーン魔術。それは、ルーン文字を使用する北欧由来の魔術である。

魔術と魔法の線引きは「科学的に再現が可能か否か」。構造的には魔術の方が簡単である。

だが、当然「無から有を作り出す魔法」よりかは威力が落ちるので、魔法使い同士の戦いでは牽制にしかならない。それはレィルに対して、と見ても当然だ。

なぜ、レィルにとって子供だましとしか見えない魔術を使ったのか。それほど切羽詰った状況なのか───否。

 

Kaz(カノ)

 

レィルはドラコが放った炎を、ルーン魔術で力をまとわせた拳で殴り散らした(・・・・・・)。ここまでくるともう誰も一周まわって驚かなくなってくる。

 

ドラコは、「全身全霊を持って」と言った。それ即ち、自信の持てる全てで(もっ)てレィルを下そうとしているのだ。

使えるものはなんでも使う。どこまでも狡猾に、賢く、そして気高く。今のドラコは正しく───

 

───スリザリンだった。

 

未だ続く攻防にもそろそろ終止符が打たれようとしてきた。レィルの魔法がドラコに当たり墜落したのだ。全身を使って息をするドラコに対し、レィルは額に数本汗を垂らす程度でまだ息も上がっていない。

 

「楽しかったよ、ドラコ」

「勝手に終わらせないでくれるかな……僕はまだやれる!サーペンソーティア(蛇よ、出よ)オパグノ(襲え)!」

 

杖腕に僅かに裂傷を負いながら、ドラコは健気にも立ちあがり杖を振った。それと同時にドラコが倒れたことと、急な生物系の出現に少しばかり驚いてしまい、レィルは反応が遅れてしまった。

 

ヴィペラ(蛇よ)イヴァネスカ(消えよ)!」

 

出現してきた四匹のうち三匹を魔法で消し去り、最後の一匹だけ距離が近すぎたので蹴りで対処した。吹き飛んでいった蛇はステージの外のアリシアの足元へと着地した。

物理攻撃を喰らって気がたっているのかレィルに向かって威嚇する蛇。ドラコが倒れたことにより、この蛇がレィルを攻略しなければドラコは負けてしまう。

だが、蛇は動きをとめた。

 

待って

 

アリシアが、何かを(・・・)発したのだ。

 

落ち着いて

 

あなたの主人は倒れた。もう戦わなくていい

 

だから、そこで大人しくしてて

 

アリシアの何か(何か)を聞いた蛇は1度アリシアを一瞥し、とぐろを巻いてそこに座った。アリシアはほっとしたような表情で杖を抜いた。

 

ヴィペラ(蛇よ)イヴァネスカ(消えよ)

 

杖から発された炎は蛇をつつみ、だが痛くもない炎は真ん中から蛇を二分にして消した。そこでアリシアは気づいた。

 

皆が自分を見る目線が、どこかおかしいことを。

 

「えっと……なに?」

「いや、なに、じゃなくて……」

「気づいてないの……?」

 

アリシアは皆が何を言っているかわからずに、恐らく今一番頼りになるだろうレィルの方へと視線を向けた。彼はステージから降りて、アリシアに近づいていた。

 

「アリス、驚かないで聞いて欲しい」

 

 

 

 

─────君は、パーセルマウス(蛇語使い)だ。

 




この設定を導き出すためにアホみたいに試行錯誤した男、antique!(テッテレー、ッテテレ)

いやほんとに。閑話に生物紹介挟まなかったら確実に投稿期限破ってましたよ。
今期末やってますから、そのせいもあるんですけどね。

原作であった決闘クラブ。ロクデナシハートさんの時はバジリスク警戒のためでしたけど今回はステフなので「賑やかしと実力把握のため」で通してます。

原作ではチラ見せと言及のみだったペネロペ・クリアウォーター。レィルの存在でレイブンクローの頼れるお姉さんキャラに。
実力としては、原作のトンクスぐらいですかね。
そしてメキメキと力をつけていくセドリック。ピーターなんて目じゃないでしょうね。

そして……ダフネ。いや、ほんとロンは申し訳ない(謝罪の気持ちは微塵も無いものとする)
速度上昇しただけなので、身体強度などは生身由来。同年の男の子を全力で殴って壊れないっていう。身体改造中なので、アスリートにありがちな「胸の縮小」が発生し……将来はまぁ……ね?

アガルタ・E(エンツォ)・ハワード。今回は言及だけです。
出身はダームストラング。ので、非常に強かです。
「競うな。持ち味を活かせッッ」……一体何次郎の言葉なんですかねぇ。

ドラコ超強化。ここはD×Dのようなハイパワーインフレワールドではありません。
故に、彼は数多の研鑽の後には「史上最強の護衛ドラコ」と呼ばれる日も……あるかな?




そして、1番出したかったアリスの蛇語。いや、長かった。
本当に長かったんですよ。彼女が正式なスリザリンの後継者であることは初期プロットにもあったんですが、バジリスクの保護があるからどうしたものかと。
加えてハリーたちが追いつかないほどの強化をドラコ達が果たしてしまっているので、それ相応の相手はもはや身内でしか成り立たないのです。
だから原作通り攻撃用に「四匹」だした蛇のうち「1匹だけ生き残り」、それが「アリスの足元に」「偶然やってき」てくれたから……いや、よかったよかった()

では、次の話で会いましょう、サラダバー。




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