【再構成のため停止】レィル・クローターと魔法生物 作:antique
ヘルミオネは、レィルに頼まれて現在トランクの空を飛行している。いつぞや見せた浮遊魔法では無いのだが、それを悟れるのはフィリップぐらいなのだが、彼には自身の招待を晒しているので別に隠す必要は無い。
ちなみに後ろには誰よりも早く飛行魔法を取得したフィリップ、白き飛翔を取得したため、アリシアを横抱きにしているドラコ、まだ技術は拙いながらも飛行魔法を使用出来ているハーマイオニーと、それに抱かれているジネブラ、ダフネはというと、まだ飛行魔法を十分に使えないので
数分の程空の旅をして、当たりが暗くなっている砂山に到着した。辺りには砂岩が変な形で配置されていて、それがどこかストーンヘンジに似ていた。
ヘルミオネとフィリップはストン、と音もなく着地し、ドラコはアリシアを起き上がらせやすいように立膝で着地した。ハーマイオニーは1度停止してから重力で落ち、唯一陸路だったダフネは砂を巻き上げながらブレーキをかけて停止、摩擦熱で溶けかけていた靴を
「ここにいるのか?バジリスクが」
「うん。アリシア、蛇語で『開け』って」
「分かったわ───開け」
指示されたアリシアはスっと言葉を発した。それにより、砂岩群が忙しなく動いてゆき、最終的には大きな穴が出来ていた。
そこが見えないほどの、しかし僅かな光がともされている穴に、彼らは僅かに恐怖した。動けないでいる間に、それぞれの肩に少し重みを感じて、そちらに目を向けてみると、蛇が乗っていた。
「え、ちょっ、まっ!?」
(落ち着け、若僧共)
「喋った……いや、脳に直接?」
(正解だ、フィリップ・レッカ・ハワードとやら)
モゾモゾと蠢いていた蛇は、まだ誰も会ったことがなかった動物たちだが、レィルは割と助けてもらうことが多い種族。すなわち、シリンドミッションと呼ばれる、開心術を使う蛇の一族だった。
(俺達はシリンドミッション、聞いたことないか?)
「確か、開心術を使う蛇、よね?」
(然りだ、ハーマイオニー・グレンジャー。だがそれだけでは無い。俺達は全ての生物と意思疎通ができる。今会話しているのもこの応用なのさ)
「へぇ……」
この世にはそんな生物もいるのだな、とジネブラが感心していると、僅かに首にくすぐったいものを感じて、思わず手で払い除け用として、なんとか踏みとどまった。そのまま行ってしまえ、と頭を撫でたりすると甘噛みしてきたので、わりと可愛げもあるところが気に入った。
(自己紹介をすれば、フィリップ・L・ハワードの肩に乗ってる俺が、ネイキッド)
(ハーマイオニー・グレンジャーの肩に乗ってる私がソリダス)
(メズール・キラグリードの肩に乗ってるのがソリッド)
(ドラコ・マルフォイに乗っている僕がリキッド)
(ダフネ・グリーングラスに乗っているのがヴェノム)
(で、ジネブラ・モリー・ウィーズリーに乗っている私が、まぁ……オールドだ)
見れば、それぞれがわずかに鱗の形や色が違ったりしている。遠目で見れば血縁者とだけわかるのだが、それでも誰が誰だかははっきり見ないとわからない。
ヴェノムは唯一の女の子だからか、何かしらのシンパシーを感じたのかはわからないが、ダフネに寄り添うように肩に乗っている。ダフネもそれが割とまんざらでもないのか、親しげに接している。
(配置はこれでいいんだろう?ヘルミオネ)
「うん。それと、来るよ」
何を、と確認するまでもなく地響き一つ。次第に大きくなっていく何かを擦るような音は、明らかにこちらへと接近していることを示していた。
しかし、警戒してはいけないとわかっていても、ハーマイオニーは身構えてしまう。杖を抜きかけてしまうが、それはしてはいけないとわかっている、わかっているのだ。
体に砂をまといながら、目を閉じながら顔をこちらに向ける巨大な蛇。だれあろう、蛇の王、スリザリンの怪物、アクロマンチュラの天敵、バジリスク、レフィア・レギスである。
大きな体に見合った貫禄、覇気たるや、死なないとわかっていても「死」という概念を押し付けられるような圧迫感。しかしそれを感じ取り、膝をつきそうなまでに顔色を悪くしているのは、以外にもアリシア、ハーマイオニー、ジネブラであった。
フィリップはいつも通り飄々としているし、メズールもへらへら笑っているものの、器用に目だけ笑っていないし、ドラコとダフネは
(ああ、この空気、この匂い、この感覚。忘れたくても忘れられぬ。否、誰が忘れようか。否、忘れるべきではない。目の前におるのだろう、妾の悲願が。果たして幾星霜、これほどの喜びはない。ああ、妾が主よ。名を……)
「え、えっと……アリシア。アリシア・ティファールです」
少しだけ臆病になりながら、アリシアは名を名乗る。無理もないが、もう少し堂々としてはどうだろうかとフィリップとメズールが思うのも仕方ないことではあった。
また、彼女はここに来なくてはならないのだから、そのたびにビクビクしているのでは話にならない。やはりポンコツは治らないと諦めるべきか、まだ大丈夫と自らを鼓舞させるのとではどちらが労力を使うのだろうと思いつつ、目の前の光景に向き合う二人であった。
(何たることか。よもやスリザリンの直近の分家に妾が主がいようとは……)
「ん、それはどういうことだ?蛇の王よ。聖二十八一族総督家とはいえ、確かティファール家は聖二十八一族制定当時はスリザリンより最も縁遠き血族であると記憶しているのだが」
新たな知識に我慢できなくなったのか、いきなり質問をぶち込んだフィリップにメズール以外が目を向けた。約一名、「アリシア様が話してたろ何会話に入り込んでんだぶち〇すぞ」的な空気を出している誰かさんと、それを宥めようとしている誰かさんは放置して。
(それは歴史の歪みだ。血統を重んずる妾が主は、
「なっ……!?」
バジリスクからのまさかのカミングアウトに、それを知らなかった組、有体に言えばハーマイオニーとジネブラだが、やはり驚いていた。しかしフィリップはそれを意に介そうともせず、じっとバジリスクを見ていた。
それはほかでもないフィリップ本人が、自分がレイブンクローの末裔であることを「どうでもいい」と切り捨てていることに他ならない。
「なるほどな…。ありがとう、蛇の王よ」
「なんかー、アリス以外には何も話さないのかと思ってたよー」
(些細な事だ、ハッフルパフの末裔。既にこの身体は死に体、向こう100年も生きられぬ老耄よ。盟友の友人なのであろう?このような知識は、さっさと誰かに預けておく方がよいだろうさ)
「え、もうそろそろ寿命なの?その言い方だと、まるで本来は生きられたような……」
ハーマイオニーはメズールがハッフルパフの子孫であることよりも、バジリスクの様子に疑問を覚えた。しかしバジリスクは、それを無言で肯定していた。
バジリスクはバジリスクは目を開けてはいないが、アリシアの方を見たような気がした。バジリスクのその雰囲気に押されかけて、アリシアが少しだけ身構えると。
(妾が主よ。願いがある)
「え、えぇ。何かしら」
(それは───
妾を、殺してくれ。
・・・・・
その日。一匹の蛇は生まれ落ちた。
誰が願ったか、その蛇の名前は、とても恭しくて。
それでも、そんな名前に納得できてしまう。
その蛇の名は───
───
書き終わった時にあることをはたと気が付きました、Antiqueです。クリスマス休暇まだじゃん。
短いなぁ……たった3333文字ですよ?やばい。何時しか近所のマイナー物書きさんが
「はん。いいか。俺たち作家にとって夏休みの宿題は終わって向こう1週間はまだセーフだ。締切というものに縛られるのは、それを切り抜けた時の爽快感があるからやってるに過ぎない」
って言ってて、なるほどなぁってなったのを思い出します。
はて、王の面談会です。正直、あんたり出番がなかったですけど、映画になってもさして時間は取られないんだろうな、と思いまして。
だからこんなタンパクになったのか、というと実はそうでもなく。実際初期プロットにもあまり時間をかけさせることはない、と書き込んでました。
ただ、あんまりしんみりさせないように、というのが一番です。私自身そういうのが苦手なので。
では、次の話で会いましょう、サラダバー