【再構成のため停止】レィル・クローターと魔法生物   作:antique

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ブラシピミー part.1

アリシアが泣き崩れてしまい、フィリップがそれを宥めもせずに放置していたところに、運がいいのか悪いのか、ダフネとドラコがきてしまった。ドラコは何か意味があると思ってとどまったのだが、実際同姓ということで、ある意味誰よりもアリシアに近かったダフネは加速魔法と攻撃力倍加魔法を自分にかけてフィリップに飛び込んだ。

彼の弁明むなしくも、ダフネは聞く耳持たずに殴る蹴るのコンボを見せつけていた。スカートの中身が知ったことか、私はこの男を殴らなければいけない理由がある、そう心の中で息巻いて、アガルタから教わっていつつも成功しなかった固有時制御(タイムアルター)を使って、フィリップの土手っ腹に三発いれた。

さすがにそこで何かおかしいと気づいたのか、ダフネは一度停止。フィリップは改めて身の上の潔白を証明し、ダフネを納得させた。

まぁ、そこからまたフィリップにいじられるのはまたあとの話なのだが、これはもう不毛だろう。ちなみになぜそんな元気がフィリップにあるのかだが、蹴られるコンマ三秒前に物理障壁を張っていたからだそうだ。

 

最近元気がなかったアリシアに活力が戻ってきたため、ホグワーツ全体も心なしか明るい雰囲気に包まれていた。アリシアもこれまで以上に勉学に励むようになっており、寮杯の得点はスリザリンとレイブンクローがデッドヒートを繰り広げる展開となっている。

グリフィンドールやハッフルパフも健闘してはいるのだが、如何せん相手が悪い。知識の宝物庫やモンスターマスター、監視者の血筋という実質三強がいるレイブンクロー、幼子の頃から教養を積んでいる貴族が多いスリザリンとでは、知識に疎いマグルが流れ込んできたり、そこまで勉学に励むことのない子供が多いグリフィンドールやハッフルパフでは太刀打ちできない。

実際はウィーズリー・ツインズやスネイプの獅子寮いびりのせいでグリフィンドールが最下位を突っ走っている訳なので、ハッフルパフは3位に落ち着くだろう。本気で寮杯を目指しているハーマイオニーにはこの上なく解せないことかもしれないが。

 

しかし、彼らは思いもしなかった。

 

我らが大図書館が、モンスターマスターが、監視者の血族が、総督家現当主が、懐刀の次期当主が、麗しさの血筋が、マグルの秀才が、あんなミスを犯すなどと。

 

他ならぬ彼らによって、ホグワーツは混沌の坩堝と化す……

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

「監視役?」

「そうです」

 

セブルス・スネイプは、またもや目の前の少年に頭を痛めることとなる。誰あろう、レィル・クローターである。

前回(セクタムセンプラの件)は彼一人であったにもかかわらず、今回はなんとも大体一緒にいるメンバーが全員揃っているではないか。これで頭痛を、胃痛を起こすなという方が無理である。

しかも、監視役を行う場所が彼らのテリトリーともいえる自室(・・)だというのだから、明らかな地雷案件であることは確定的に明らか。これで首を突っ込める馬鹿を見てみたいものである。

レィルの後ろにはアリシアやフィリップ、その横にメズール、少し下がってダフネ、ドラコ、ジネブラ、ハーマイオニーが並んでいる。そして極大の地雷の横には当然の権利であるかのようにヘルミオネが位置している。

一瞬だけ煩わしい後輩教師に告げ口してやろうかと思ったが、それもそれで地雷が爆発するので、やはりこの地雷は自分で撤去するしかないものだ、と改めて頭を抱えたくなるスネイプであった。今この時だけは人を完全に信頼できない自分の思考回路を恨んだ。

 

「……で、いったい何をする気なのだね」

「ちょっとした前提実験でしょうか。声や思考で操れるセミオートパペットを作ろうと思いまして。いざ暴れだしてしまうと生徒の私たちでは状況を抑えられるかもしれませんが、さすがにゼロとは言えないでしょうし、そのために不穏な動きを見せたと思えばすぐに人形を壊してくれてかまいません。どうか、お願いします」

「……ハワード、計画の全容を知っているな?」

「えぇ、一字一句余さず」

「そのうえで聞こう。何もないな?」

 

どれだけ優秀であっても、顔見知りであっても、やはりこの男が後輩教師(ステファニー)の息子であることが何よりもの懸念材料として残ってしまっている。故に、レィルとともにレイブンクローの片翼を成すフィリップに問うた。

ちなみにここで問われる「何も」は「禁忌を犯していないか」と「誰かが死ぬような殺傷力はないな」というダブルミーニングである。さすが闇の魔術に精通するだけはあり、この上なく慎重である。

そのうえでフィリップは、こう答えた。

 

何も(・・)

 

動く大図書館、レイブンクローの知識袋であるフィリップが、何も(・・)と答えた。それはすなわち、普通でない方法(・・・・・・・)でことを成すということに他ならない。

こうまでも地雷を増やしたいか、と少しだけ目の前がブラックアウトしそうな意識に活を入れ、何とか声を絞り出すスネイプ。

 

「よかろう。改めて実験の詳細と日程を送り給え。それと、監視を一人増やさせてもらうぞ」

 

彼が倒れる日は、そう遠くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

では。計画の全容を話すとしよう。

 

前年度にニコラス・フラメルから頂戴した賢者の石は、永遠の命を与えるという。そのほかにも人体錬成術の最後のピースであったり、通常の錬金術の「事に応じた魔法陣を描く」という過程をすっ飛ばす、といった使い道がある。

今回の臨床実験では、何の害もない人形に魂と、半永久的寿命、さらには簡単な錬金能力を与える。この三つの過程をクリアするために、レィルは授業の合間合間に計画を練り続けていた。

魂の召喚はさして難しい話ではない。要するに人体錬成陣と似たようなものを描き、その憑依先を人形にすればいいだけの話なのだから。

簡単な錬金能力も大した問題ではない。問題は、半永久的寿命である。

これのどこが問題であるかについてだが、ずばり「半永久に落ち着けられるか」である。文字通り人間を不老不死にさせることができる賢者の石の力はとてつもなく、一つ使い道を間違えれば簡単に木っ端など消し飛んでしまうほどだ。

これをセーブしたまま力を行使するために、時間や素材はもちろん必要で。今回一番手間取ったのはむしろここである。

もしも媒体が賢者の石でなければ、未完成品である賢者の石水で代用できたのだが、本番に使うのは正真正銘の賢者の石。力のセーブの仕方を学ぶと同時に、本番に起こりうるもしも(IF)を考えた場合の対処が、少しでも軽くなれば、と考えたのである。

 

当然のことながら、前年度に賢者の石を求めたヴォルデモートを前回取り逃がしてしまった(・・・・・・・・・・)おかげで、彼はまだこの世界のどこかに潜伏していると考えられる。その場合、彼を外的として処理するときには、こちらにも死の呪文ごとき(・・・)で倒されてしまうようなちゃちな人形では話にならない。

そのための賢者の石による臨床実験なのだ。

 

最近胃痛薬や頭痛薬を飲む姿が頻繁に目撃されているスネイプは、生徒から割とまじめに憐みの目線を浴びている。事の重大さこそ計り知れることではないが、基本的にポーカーフェイスを貫き通している彼でさえ(・・・・)その顔を歪ませるほどの問題ごとを抱えていることは予想できていた。

何よりも、思考をその問題事に向けているせいか、近頃いつものグリフィンドールいびりもスリザリン贔屓もない。一度マダム・ポンフリーに見せたほうがいいのではないか、とハッフルパフきっての良心であるセドリックがマクゴナガルに談判してみたのだが、「すでに見せている」の一点張りで、その処方があの胃薬頭痛薬らしい。

原因が大っぴらにされていないだけに、原因がみんなの先生レィル・クローターであるというのも知られていない。もし知っていても、周りにいる人が強すぎて意見などごく一部の者にしかできないのだろうが。

スネイプ、君ホント休んだほうがいいよ。いやマジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな生徒たちの意向などいざ知らず、ついにスネイプの胃が崩壊しかける日がやってきてしまった。ちなみにこの日はスネイプに計画を話した一週間後である。

部屋には安全を喫するためにレィルとヘルミオネ、フィリップ。そして監視役としてスネイプとスネイプが選んだ監視役がいる。

 

「がんばれ、レィル」

 

誰あろう。ステファニーである。

決してレィルへの嫌がらせではない。この学校でそんな実験をしようものなら確実にダンブルドアは面白がってくるだろうし、マクゴナガルは反対の立場に立つだろう。

また、そのほかの教師では、もしも(IF)が起こった場合に対処できるかも怪しい。フリットウィックももう年であるし、間違ってスプラウトを連れてこようものなら確実にこの学校が大惨事になってしまう。

故に、ここにステファニーを連れてきたのだ。決して、最近の胃痛の原因になってくれやがって、といういやみではない。

決して、ここでちょっと意趣返しをしようという気なんてさらさらない。ないったらないのである。

 

実際、バタフライエフェクトかはわからないが、彼女がいるせいで「失敗するわけにはいかない」という意欲がわきわきと盛り上がっているらしい。意欲向上になっているのはいいが、これがあらぬ方向に向かないのを祈るばかりである。

 

レィルは素材である竜の鮮血、スウーピング・イーヴルの毒、ユニコーンの角、流体金属、ボウトラックの寄り木を円形状に設置し、中央に素体となる賢者の石のブローチを埋め込んだ人形を置いた。特殊な白チョークで古ノルド語の文字を書き記していき、五芒星が完成する。

スネイプは胃痛に耐えながら腕を組んで無表情でそれを眺めている。ステファニーは握りこぶしを胸の前で作りながらこちらがうっとうしくなるほどの激励の目線を送っている。

二人の態度は相対すれど、それでも実験の成功を願うのは一致していた。スネイプはこの実験が終わり次第長期休暇を取ってほしいものである。

 

「では、始めます」

 

全準備工程が終わったのか、杖を取り出して、目を閉じるレィル。左手にはヘルミオネがしれっと手をつないでいた。

 

「礎に(しろがね)と鋼。 其は天を廻りしエールズ。 我等が導は、碧き一等星。

風は壁を悠に越え、五方の門は開き、未知より出で、空に至るは我が想い」

 

言葉を紡ぐ度に、白いチョークで描いた五芒星に青いプラズマが迸っていく。白チョークに混ぜ混んだ素材は、もちろんこのプラズマを発生させるためではない。

 

凶れ(まがれ)凶れ(まがれ)凶れ(まがれ)凶れ(まがれ)凶れ(まがれ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を知らしめる」

 

白チョークが中に粒子となって舞い上がっていく。プラズマはもちろん止まらない。

 

 

「――――――告げる(SET)

 

 

「――――告げる。

汝の身は我が身と共に、我が命運は汝の命運と共に。

言の葉の寄るべに揺蕩い、この想い、この理に沿えるならば、応えよ」

 

白チョークに混ぜ困れている素材は、ニューレル・ユニコーンの尾毛だ。提供元はバナージとリディである。

尾毛を混ぜることによって実験の成功確率を引き上げるだけでなく、魂の定着、並びにその制御にも役立ってくれる優れものだ。

 

「誓いを此処に。

或いは世界、或いは宇宙、或いは真理、或いは全、或いは一」

 

だが、レィルは失念していた。どにも間違いはなかったはずなのに、フィリップの計算式も、ヘルミオネのアドバイスも間違いはなかった。

ただほんの少し、運が悪かっただけのだ。

 

「汝は三大の言霊へと誘う光。

輪廻の果てより来たれ、()が写し身よ―――!」

 

 

 

 

瞬間。世界は灼熱(・・)に包まれた。




少し前に日商の技能処理検定表計算一級を取得しました、antiqueです。次はスピードとります。

最近文化祭が近づいてきたので少しリアルが忙しくなってしまい、話を1と2に分けることにしました。すみません。
でも結構長くなりそうなのでこれでよかったのかもしれません。
くわしいあとがきははこの話が終わってからにしますので、そちらをご覧ください。

ただ一つ言えることは、とりあえずスネイプ先生休ませよう。マジで。

では、次の話で会いましょう、サラダバー。




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