新大陸にある、新大陸古龍調査団の拠点、アステラ。
そこは、船の廃材を中心とした資材で作られた、新大陸における古龍などのモンスターを調査する拠点である。
その一角、無数の本が積みあがった生態研究所と呼ばれる場所において、そこの所長を任されている男性が本を読んでいた。
それだけなら特筆すべき光景ではない。彼は、暇さえあれば本を常に読んでいるのだから。
だが、読んでいる本がいつもとは少し違った。
いつもは、モンスターの生態に関する調査書を呼んでいるのだが、今日読んでいるのは、古文書のような本であった。
そこに近づいてきたのは、若い大剣使いであり、総司令の孫である調査班リーダーである。
「所長、何読んでるんです?」
「……ん。古代の昔話の本や」
「へぇ、珍しいですね、所長がモンスターの本以外を読んでるなんて」
「この本はな、はるかな昔。それこそ、古代竜人すら生まれるより前に起こったとされる大戦の話や」
「……なんだか、すごいスケールの話ですね」
「そうやろ。少し、話してやろうか」
「ええ、ちょうど訓練も終わって休憩中なんで、暇だったんですよ」
「……ん。遥かな昔々……」
はるかな昔々。この世が形成されて間もない頃の話。
この世界の創造主は、フィギアに命を与えることで命を増やしていったという。
その世界は非常にいびつであったが、彼らは彼らなりのルールの元、生きていた。
だが、その世界をさらに歪めることになることが起こる。
亜空と呼ばれる場所から、禁忌の名を持つ魔神が現れたのだ。
奴はこの世界の創造主を操り、二人の大魔王を使って邪魔になるであろう戦士たちをフィギアに戻していった。
その魔神と戦士たちの戦い、亜空戦争は戦士たちの勝利で幕を閉じた。
だが、その戦争で使用された爆弾、亜空爆弾によってこの世界は非常に世界の壁と呼ぶべきものが薄くなっている。
後の世に生きる者よ。もしかしたら、君たちの世に、異世界からの来訪者があるかもしれない。
その世界の住人にとって、恐らくこの世は異質だろうが、この世界に生きる者にとっても、その者たちは異質だろう。
この世界に迷い込んだその者達、異界人をこの世界か元の世界に返す方法を記す。
その方法は、亜空操作装置。それを起動する事。
亜空操作装置を起動するには強力なエネルギー源が必要だ。
例えば、強力な竜の生命の塊、竜玉など。
そして装置は……
「……と。解読できたのはここまでや。これ以降は破損が酷くて読めん」
「…………なんというか、俺には想像もできないような話でしたね」
「やろ。わしもこの古文書に書いてあることすべてがほんまやとは思わん。だが……」
そして、所長はふと笑い……
「なにか、太古のロマンがあると思わんか?創作だったらだったで、古代人の小説かもしれんしな……ホンマやったら、もしかしたら、わしらも異世界の存在に会えるかもしれん」
「……ですね」
そして、調査班リーダーは鍛錬に戻り、所長は古文書を横に置き、調査報告書を読み始めた……
だが、物語は彼らの知らない場所で進む。
亜空軍が使用した亜空間爆弾によって薄まった世界の壁。
その影響が、様々な世界に出始めていた。
この話を調査班リーダーが聞いた数か月後、第五期調査団の船団が新大陸へと近づいているころ……
亜空を通じ、とある世界から、一隻の海賊船がやってきた……