八雲紫会議   作:王者スライム

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ノリと勢いで書いてたら会議が起こりませんでした。次の話は会議をするはず……。


八雲紫会議 その2

「じゃあ今回も会議を始め──」

「少し、話を聞いて貰って良いかしら?」

「……話によるわね」

 

 議題を引こうとする第六紫を止め、第九紫が話をし始めようとしている。いつもなら何だ、何だと騒ぎ立てる紫も居ただろうが今回は誰も何も言わない。何故なら、第九紫はいつもならあり得ない程の真剣な顔で話をし始めたのだから。

 

「……とりあえず話して貰って良いかしら?内容とは言っても言ってもらわなきゃ分からないもの」

「そうね……それじゃあ話を始めるわ」

 

 一体、第九紫に何が起こったのか。私達八雲紫に話さなければならない事とは一体何なのか……ここにいる全ての八雲紫が第九紫の話を聞くことに集中した。

 

「遂に妖怪の山が霊夢に支配されたわ」

「じゃあ、議題を決めるわ──

「ちょっと待ちなさい!」

「──うるさいわね、何よ」

「うるさいわねじゃないわよ第六紫……なにかもうちょっとあるでしょう?妖怪の山が霊夢に支配されたのよ?」

「他人の幻想郷とかそんなに興味無いもの」

「マジですかこの八雲紫……ほっ、他の皆は?」

 

 第九紫がそう言うととても静かな空間が出来上がる……まあ、凄い重要な事かと思ったらねぇ、そんなにたいしたことじゃあ無いっぽいもの。

 

「……まあ、頑張ってちょうだいな」

「ゆかりん!?」

「妖怪とか外の世界の人物に支配されたなら重要でしょうけど……霊夢は博麗の巫女だし大丈夫なんじゃないかしら」

「誰に支配されかけようと、一つの所に力が集まるのがいけないのよ……」

 

 まあ、その気持ちは分からないでも無いのだけど……それを別世界の私達に言われてもね?正直自分の所だけで精一杯だから手助けなんて出来ないし……第九紫の所の霊夢強そうだし……。

 

「で、そろそろ議題を決めて良いかしら?」

「良いわけ無いでしょ!?」

「けど、多分皆こう思ってるわよ?頑張れ、私は知らんって」

「そっ、そんな事は無いわよ……ね?」

 

 また誰も喋らない……て言うか、第六紫がここまで喋ってるの珍しく無いかしら?いつもは議題決めたらそこから無言って感じだし……第六紫って結構ポーカーフェイスで表情がいつも読めないのよね……第二紫でも表情は読めるのに。

 

「ほら、第九紫これが現実なのよ?」

「……そうだ!第二紫!第二紫なら強いし……」

「じゃあこれが見えたら手伝ってあげてもいいわよ?」

「本当に!?どれを見ればっ──!」

 

 第九紫が驚いたのも無理は無いと思う。第二紫が立ち上がったかと思うと突然姿を消したのだ。スキマを開いた訳でも、妖力が使われたようにも見えない。ただ、第二紫は立ち上がった瞬間にその場から消えたのだ。

 

 慌てて私は周りを見渡す。しかし、周りには自分を含めて十人の紫しか居らず第二紫の姿はどこにも居ない。周りの紫達も周りを見渡している……正確には第一紫と、第十一、第六紫以外の話だが。

 

「へぁ!?」

「やっぱり見えてなかったみたいね……じゃあさっきの話は無しよ」

 

 変な声に驚き、そちらの方向を向くと第九紫の首に手を回している第二紫が居た……どういうこと?

 

「……どうやって消えていたのかしら?」

 

 さっきので思った疑問をありのまま第二紫に聞いてみる。第九紫と第二紫の距離はまあまあ遠い。て言うか、そんな事の前にここから消えた方法を知りたかった……もしかしたら私も使えるかもしれないし。

 

「私はただ妖力を少し出しただけよ。そして貴女達がそれを認めたくなくて私から目を逸らしただけ……実際には見えているのに貴女達が見えてない振りをしていたのよ。残念ね、見えたのは第十一紫と紫の恥の第一紫だけみたいね」

 

 ちょっと妖力を開放しただけで目を逸らしてしまう……?第二紫って化け物なの?

 

「あら、貴女としたことが数え忘れてるわよ……第六紫も見えていたわ」

「……本当?第六紫?」

「……まあ、見えてはいたわ。見る気はなかったけど」

「そう、なら貴女にも試してみるわ」

 

 第二紫がそう言ったあとまた第二紫が見えなくなる。それに対して第六紫は目を動かしすらしない……本当に見えているのかしら?もしかして見栄を張ってしまっただけなんじゃあ……そう、思った時だった。第六紫がゆっくりと左手を挙げる。そして、顔の位置で止める。

 

「ちょっとした冗談……ね?」

 

 そして、顔を振り向きながら第六紫がそう言う。手を置いた場所には第六紫に向かって伸ばされた手があり、その先を見ると第二紫がいた。

 

「……それはどういう意味かしら?」

「そのまんまの意味よ、たまには言葉をしっかりと受け取ってはどうかしら?言葉の裏ばっか考えても楽しくないわよ?」 

 

 それは明らかな第二紫への挑発だった……なんでここで挑発をするのよ?て言うか、第六紫にはちゃんと第二紫が見えていたのね。顔を全く動かさないものだから見栄を張っただけかと思ったんだけど……。

 

「そう……第六紫ちょっとごめんなさいね?」

「どうしたの?」

 

 第六紫がそう聞き返した瞬間、第二紫と第六紫がスキマに入って消えていく。慌てて周りを見渡すと、少し離れた所に二人は居た。

 

「じゃあ、始めましょうか」

「あらあら……これは一体?」

「単なる模擬戦闘よ!」

 

 第二紫がそう言った瞬間、スキマから槍を取り出した。そしてそれを回転させると……槍が増えた!えっ!?

 

「槍がどんどん増えてる……」

「あんなの科学的にあり得ないわ!?」

「……ゆかりん、私達妖怪がそれを言うのかしら?」

 

 なんでショートコントみたいなノリを……て言うかそんな場合じゃないわ、また第二紫が消えてる。第六紫は見えてるのだから意味無いでしょうに……。

 

「いえ……今回は私にも見えていないわ」

「……本当に、第十一紫?て言うか、今私の心を読まなかったかしら?」

「ええ……目で何かを追ってるのを見るにあのゴミ第一紫は見えてるみたいだけど」

「はーい、ゴミ第一紫よ?呼んだかしら?」

「呼んで無いから帰りなさい……土に」

「あーら、辛辣ねぇ……」

 

 とりあえずめんどくさい第一紫無視して第六紫がいる方を見る。槍は五十本を越えているように見えるほど増えておりまだ第二紫は見えない。て言うか、第六紫全く焦って無いわね……まだ槍は動いてないとはいえ凄い迫力でしょうに。

 

 スキマを開いた?槍がある方ならともかく、なんで自分の後ろに……。

 

「……やるわね」

「第一紫?貴女には何が見えているの?」

「貴女は私に特に何も言わないのね」

「そう言うのいいから」

「はいはい……とは言ってもたいしたものじゃあ無いわね。第二紫の後ろからの蹴りをスキマで回避したってだけよ」

 

 第十一紫にも見えない第二紫をスキマで回避した……それってつまり。

 

「第六紫にも第二紫が見えてるって事ね」

「……私の考えってそんな読まれやすいのかしら?」

 

 そんな事を聞いてみたが答えは返ってこない……目線を第六紫に戻すと、百本を越えているように見える槍が次々に第六紫に襲いかかっていた。だが、第六紫は次々と槍を避けている……いや、避けているのではない。自然と槍が第六紫を避けているのだ。

 

「境界の操作でもしてるんでしょうね。じゃなきゃ、第二紫があえて当てようとしてないって所だけど……あっ、またスキマで回避したわ」

 

 あれだけの数を一気に境界で操作できるものなのかしら?多分、第一紫が言ってる通りだと言うなら、スキマを開いた時は第二紫の攻撃を回避している訳だし……第二紫も見ながらやってるって訳よね……あっ、第二紫が見えるようになった。

 

「見られているって事を確信したんでしょうね。槍の攻撃を止めないのは意識をその分逸らせるだろうって考えでしょうけど意味ない風に見えるわね。第六紫、一歩も動いてないみたいだし」

 

 そんな事を第一紫が言ったので、第六紫を観察してみる……本当だ、一歩も動いてない。動かないで良いからこそ能力の方に集中できたのかしら……それでも頭おかしいわよね。なんか私の中で第六紫がとんでもない存在へとかしてるわ。

 

「まあ、けど第二紫の準備体操も終わったみたいだし、もうあのままじゃあいかないでしょうね」

「……あれで準備体操?」

 

 嘘でしょ?ほとんどの紫達が目を逸らしてしまう程力を出して、一本の槍を何百本にしてそれを操りながら相手に攻撃を仕掛けているのに?

 

「言っておきますが、第二紫の本気はあんなもんじゃあすまないわ。扇子でコンクリートを切断するようなやつよ」

「……コンクリートを?扇子で?」

「ええ、ほら槍も一本に戻って片付けられたわよ。ここからが第六紫がどうなるかね」

 

 扇子でコンクリートを切断するってどこの漫画の強キャラよ……ってそれより戦いの方に集中しないと……ってあれ?

 

「第六紫が消えた……?第一紫、第六紫はどこに居るの?」

「申し訳ないけど私にも見えないわね。けど、スキマを開いたようには見えなかったわよ」

 

 スキマを開かずに消えた……もしもそうなら第二紫と同じ方法で消えてると見て良いのかしらね?って、第二紫がキョロキョロしてるってことは……もしかして第二紫にも第六紫が見えていない?

 

「タネは第二紫が自ら話したんだから第六紫が真似できてるのは何も問題無いわ。ここで一番問題なのは第二紫すら見えてないって事ね」

「第二紫が本能から目を逸らしてしまう程の力……それって」

「第六紫がこの中で一番妖力があると思っていいんじゃないかしら」

 

 第六紫が……一番強い……確か私の所の幻想郷と人それぞれの強さが違うだけで一緒って言ってたから……私の所の強化版みたいな感じかしら……。いや、そんなことを考えている場合じゃないわね。二人の戦いの方に目を移す。

 

 とは言っても、第六紫が消えてから何も起こってないない。第二紫が消えた第六紫がどこから来ても対応できるように首を降りまくって周りを見ているだけ……そう、思った瞬間だった。

 

 第二紫の手がいきなり上に上がる。そしてそれと同時に第二紫の腕を掴んで上に上げる第六紫が現れたのだ。

 

「……!」

「あら、意外かしら?こう見えて私、臆病なのよ」

 

 ……第六紫は消えてからも一歩も動いていなかった。それなのに、消えた瞬間は少し離れた場所にいたはずの第二紫の手を掴んでいたのだ。

 

「流石にもう動いてるだろうって深層心理では思ってたんじゃないかしら?だからこそ、ゆっくりと本人が気づかないうちに第六紫が居た場所へと移動していたのね」

「首を振る度に半歩、半歩……第六紫を探すのに集中していたなら自分がゆっくりと移動しているのにも気づかなさそうね」

 

 けど、あの第二紫を一歩も動かずになんて……どんな戦況を潜り抜けてきたらそんなことができるのよ……。

 

「これぐらいにしておきましょ、第二紫。他のみんなが置いてきぼりよ」

「……そうね。終わりにするわ。けど、手を離してくれないかしら?」

「ん?他の紫に迷惑かけたでしょう?まさか、謝らずに戻るなんてことはしないわよね?」

 

 ……第六紫ってあんな声を出せるのね。怖すぎるわ。人の声を聞くだけで恐怖を感じたのは初めてよ……。

 

「……八雲紫の皆さん、今回は非常に申し訳ないわね」

「うん、それでよし!」

 

 とても綺麗な笑顔で第六紫はそう言う……さっきの声を出した時はどんな顔をしていたのかしら?

 

「うふふふ……第二紫、怒られてるわ、うふふふ」

「よし、今から第一紫殺してくるわ」

「頑張ってきなさい。死んだら教えてちょうだいね?議題は『最高の今日』にするから」

「なんでっ!?」

 

 ……第二紫がんばえー。




能力無しの八雲紫の強さランキング
第六紫<<<(越えられない壁)<<<ゆかりん<第三紫<第九紫<第七紫<第八紫<第四紫<第十紫<<<(越えられない壁)<<<第十一紫<第一紫≦第二紫

第三紫……特に第七紫が居るところ変わらないがスペルカードルールではなくスペルカードゲームで異変解決をしている。仲良い相手にはちょっとじゃあすみにくい冗談を言う。たまに空気が読めない時も。
けど、一番空気が読めないのは第一紫。

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