八雲紫会議   作:王者スライム

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遅くなったし、短いしでごめんなさいね(土下座)


八雲紫会議 その9

今日の会議が終わり、それぞれの八雲紫が帰る中、私はまだ残っていた。と言ってもたいした理由じゃないのよね。この会議室が居心地よいってだけだもの。上質な机に座り心地の良い椅子。

 

会議中は第一紫との喧嘩で騒がしかったというのに、今はそのことを忘れさせるほど静か……なんというかこう、冬のこたつぐらいに居座りたくなる魔力があるわね。みかんとかあれば完璧なんじゃないかしら。

 

会議室にはお菓子もお茶などの飲み物がないのが悔やまれるわね……まあ、それぐらいこうやってスキマで持ってくればよいだけなのだけど……うん、居心地の良い空間に居座るというのはとても良いものね。

 

さてと……どれぐらい居座ろうかしら。お菓子と飲み物を用意しておいてあれなのだけどずっとここにいるわけにはいかないのよね。することが少ないとはいえ、自分の幻想郷の管理もあるわけだもの。

 

私自身はもっと休みたいのに現実がそれを許してはくれない……あれ?これって案外いつものことよね?じゃあ、私は社畜だったりするのかしら……考えたくはないわね。

 

少しそんな暗い考えから目を逸らそうと周りを見たところ……もう一人八雲紫がこの会議室に残っていることに気づいた。確かあの席は……第九紫だったかしら。確か、第九紫の幻想郷は霊夢に支配されているという話だったし、それが嫌になってまだ残っているのかしら?

 

でも、いつもならもう帰ってる筈だものね……それにただ居座ってるんじゃなくて何か考え事をしているようにも見えるし、いったい何をしているのか気になるわね……まあ、聞けば分かるでしょう。

 

そう考えると私はお菓子と飲み物をスキマに片付け、第九紫へと近づいた。

 

「珍しいわね、まだ残っているなんて」

 

そう言うと、突然後ろから話しかけられたことに驚いたのか第九紫が少し跳ね上がる。しかし、こちらを見て話しかけたのが私だと分かり安心したのか、安堵した表情だった。

 

「第七紫、話しかけるのはいいけどあまり驚かせないようにしてほしいわね」  

「ごめんなさいね、驚かせるつもりはなかったのよ」

「全く……それで何か用かしら?」

「別に用という程でも無いわ。ただ、いつもは帰っている時間なのにまだ残っていることを不思議に思っただけよ」

「ああ、なんだそう言うこと」

 

そう言うと第九紫はまた何かを考え始めたかのか頭を抱え始めた……えっと、質問に答えてほしいのだけど、これは答えてくれずに時間だけ経っていくパターンかしら?とりあえず、圧でもかけようと隣に座った瞬間、第九紫は口を開いた。

 

「ねえ、第七紫。宇佐見菫子って名前に何か聞き覚えはないかしら」

 

逆に質問されたことに少し戸惑ったが、すぐにその質問について考えることにした。宇佐見菫子という名前に聞き覚えがあるかないか……うん、無いわね。でも、名前の感じからして外の世界の人物かしら。けど、なんで第九紫はその人物を私に質問したのかが謎よね……とりあえず、普通に聞いたことないと答えておきましょう。

 

「聞いたこと無いわね」

「そう。まあ、世界が違うとそういうこともあるわよね。特に私の幻想郷とか」

 

私がその発言に対して無言でいると第九紫が、今の笑うところよ?と付け足してくる。ただ、第九紫は普通に可哀想だと思うから笑えないのよねぇ……助けようとは思わないけど。けれど、その宇佐見菫子という名前は第九紫にどう関係があるのかが分からないわね。非常に気になるわ。

 

「その宇佐見菫子という人物と会ったのよ」

「……それだけ?」

「ええ、それだけよ」

 

……本当に宇佐見菫子って誰なのよ。最近会議でも、私の知らない人物の名前が上がることがよくあるし、もしかして私の幻想郷だけ時間が遅れているなんてことはないわよね?それより、最初の私の質問に答えてもらってないような気がするのだけど……そんな私の気持ちを察したのか第九紫がまた口を開いた。

 

「それで昔を思い出していたの」

「昔?」

「ええ、昔よ。二人で日本中を旅していたの」 

「そう……そのもう一人が宇佐見菫子なのね」

「いや、違うわ」

「えっ?」

 

私は第九紫の言っていることが良くわからなかった。宇佐見菫子という人物と旅をしていなかったというのならどうして昔を思い出しているのかしら。それも悩むような思いだしかたを……。

 

「宇佐見菫子はその旅に関係あるといえばあるのだけど、まあほぼないようなものよ」

「……良く分からないわね。どういうことなのかしら」

「分からないのは当然よ、貴女は私じゃないでしょうし……少し長居し過ぎたわね。私もそろそろ帰ることにするわ」

 

そう言い、第九紫は立ち上がる。少しだけ私から離れたあと、それじゃあ、また次の会議でと言い残しスキマの先へと消えていってしまった。私は第九紫の言っていたことをパズルのように組み合わせようとするが上手くはいきそうにない……恐らくピースが足りないのでしょうね。

 

私は第九紫ではない……それだけは間違いない事実だった。

 

 

 

 

 

 

「それでは今日も会議を始めましょう。今日の議題は八雲紫よ」 

 

八雲紫……私たちのことね。そんなことを議題にしてもあまり意味ないとは思うのだけど、周りの八雲紫たちはいったいどう思っているのかしら。

 

「八雲紫……えっ?それが議題なの?」

「ええ、そうよ。存分に話し合ってちょうだい」

「……流石に難しいわね」

「私たちで話し合えることってあるのかしら」

 

どうやら、会議も難航しているようで少し安心する。急に自分たちのことで話せって言われてもそりゃあ困惑するわよね……それでもなんとか話題を作ってなんとかしないとは思うのだけどどうなるのかしら。

 

「この前、結界の強度を高めたとかどうかしら?」

「それはどちらかというと幻想郷の話題だと思うわ」

「人里でパーティーを開いたとかの話題はあるわね」

「第八紫が開いたパーティーだし……ギリギリセーフよね?」

 

なんにせよ難航すること自体には代わりないようね。まあ、私も自分の話題をしゃべりなさいなんて言われても困惑するだけでしょうし……確か、最近あったのは霊夢に修行をつけたとかがあるわね。なかなか修行しないから、お金で釣るしかないのが残念なところなのだけど。

 

で、他は……霧雨魔理沙と会話をしてみたことかしらね。最初から最後まで怪しまれ続けたまま日常の会話をする謎の状況になってしまったのよね……やっぱり最近の年頃の子供というのは扱いが難しいわ。

 

「そういえば最近ダイエットを始めたのよね」

「ダイエット……効果はあるの?」

「ないわね」

「えぇ……」

「まあ、始めた理由が運動をしたかったからぐらいの理由だったから別にいいのよ」

 

ダイエット……そもそも妖怪って太るのかしらね。確かに人間と同じようにご飯を食べているとはいえ、妖怪と人間は色々と違うわけだもの。私だって太ったという記憶はな……そもそも体重計が家になかったわ。もしかしたら計ってみたら案外太っていたりするのかしら……考えたくないけれど、否定はできないわね。

 

「こうして振り返ってみると時間は余ってるのにあまり何かをやろうとしてないのよね」

「まあ、時間があっても気力がないことがほとんどなわけだもの。仕方ないわ」

「やりたいことがあってもだんだんめんどくさくなって後回しにしてしまうものね……最近のことを思い出してもやらなきゃいけないことをやっている姿しか想像できないことからもそのことを伺えるわ」

 

あー……分かる意見ね。気力がなくなるとやらなきゃいけないことと習慣になっていることしかできないもの。その気力が削られる原因がそのやらなきゃいけないことなのだから、無限ループになってるわよね……。

 

「時間があるのに休んでないのも問題よ」 

「結局は気を張らないといけないものね、管理人として」

「そうそう、ゆったりできる時間が無さすぎるのよ。これじゃあ気力も回復しないわ」

 

これも分かる意見……って流石に分かる意見多すぎないかしら。同じ八雲紫の意見なのだから当然と言えば当然なのだけど。

 

「どの八雲紫も退屈そうなことしかしてないわね。私の楽しい生活を教えてあげましょうか?」

「別に要らないわよ、あんたの生活情報なんて」

「あら、手厳しい」

「私は事実を言ってるだけよ?」

「でも、第一紫っていつでも楽しそうだから気になりはするわね」

「ゆかりん?考え直しなさい」

「じゃあ、まず一つ目は──」

「だからしゃべらないでくれる?」

 

ああ、どんな議題でも結局はこうなるのね。せっかくだし今回は私も参戦してみようかしら。なんとなくそう思った。

 




第十紫……人の趣味を当てるのが得意。

他の幻想郷と大きく違っている点が多く、会議についていけないこともしばしば

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