投稿は初めてですが、多くの方に楽しんで頂けるよう頑張っていきます。
まだまだ未熟ですが、どうぞ宜しくお願い致します。
引き裂かれた魂。
それが「彼」に対する第一印象であった。しかしそこには希望の兆しが確かにある。そうアルバス・ダンブルドアは信じた。目の前の幼い5歳児は、否応無くかつての教え子の面影を思い起こさせる。救えなかった生徒。後悔が胸を締めつける。止められなかった無力な自分を何度憎んだことか…。教師失格だ、と思う。だからこそ権力を選ぶことなく教師としての道を貫き続ける事を決意したのだ。これ以上、闇に堕ちる生徒を増やすものか。それは愚かな男の最後のプライドであり、最後の使命であった。
何としてでも「彼ら」を守り抜く——。今まで重ねてきた自らの罪を償うために「彼ら」を導き、人として在るべき姿に育てあげるのみだ。
それでも、思う。自分のような人間が果たして「彼ら」の人生のレールを敷いてしまっても良いのだろうか、と。その第一歩としてこの場に来たというのに、固めたはずの決意が揺らぎかけた。
だが、自分以外の誰がこの任務を遂行できる?誰が無垢な少年達の命を預かる責任を負える?
無意識に「彼」に手を伸ばす。その途端、脳裏を鮮明な映像が占めた。
正義感の強い父と、面倒見のよい母。奔放な弟と、心優しい妹。
笑顔溢れる家族だった。特別裕福な家庭ではなかったが、家族と過ごした平凡な日常こそが何にも変えられない幸福であった。
しかし、その幸福は呆気なく砕け散る。他でもない自分のせいで…。
消えてゆく家族と入れ替わるようにして現れたのは、古き友の面影であった。
かつては彼の美しい容姿と群を抜いた才能のとりこになったものだ。彼と共に駆け抜けた日々は、ほろ苦く、だが甘くかけがえのない思い出として今でも記憶に焼きついている。
若かりし頃の親友の名をそっと口にした瞬間。夢は、覚めた。
知らず知らずのうちに頬を伝っていた涙を拭う。
自分はこの幼子を通して救えなかった者達を見たのか?失われた過去を見たのか?
願わくば、あの光景を現実にしたい。しかし、本当は分かっていた。そんな願いは幻想に過ぎないのだと。
顔を上げる。
「彼」は賢そうな瞳でダンブルドアを見た。不思議な子だ。「彼」自身の血筋を否定してしまうほどに意志の強い瞳。いずれ才能を開花させる事だろう。何もかも、真実を知る時も来るだろう。だがそれまでは、時が来るまでは…
「君は君自身の道を歩むのじゃよ」
ダンブルドアは男の子と自分自身に言い聞かせるように、強く、優しく言葉を発し、「彼」を連れてその場から消え去った。