戦姫絶唱シンフォギア -ideal future- 作:立花明日夢
八千八声 啼いて血を吐くホトトギス。
ホトトギスは一日に何度も鳴いて、泣いて、血を吐いて、それでも啼くというが、それは彼女も同じだったのだろう。人知れず世界を救った彼女は声を嗄らし、血を吐き、それでも立ち上がって未来に続く日常を守った。
今も彼女の言葉が耳に残っている。
「それじゃあ、ちょっと行ってくるから! ……生きるのを諦めないで!」
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1-1 始まりの朝
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朝日が昇り、街を照らす。カーテンの隙間から零れる日光が僕の寝顔を覆った。気持ちの良い眠りを妨げられ、半ば不機嫌に目を開き枕もとの目覚まし時計へと視線を送る。
六時二〇分。学校には家を八時に出れば間に合う僕は七時にでも起きれば身支度が整うわけで、本来この時間ならまだ寝ている時間だった。ということで……。
「もうひと眠り……」
眩しい光を遮るべく掛布団で頭を覆い、独特なぬくぬく感が再び全身を包む。
全く折角の睡眠を妨害しないでほしいものだ。と一人不満気に感じながら僕は再び夢の世界へと出発した。
いや、出発したはずだった。
何やら外がガヤガヤと騒がしい。
『今日学校終わったらさ! 校庭でサッカーしようぜ!』
元気の良い男の子の声である。どこか幼さを感じさせるのは小学生だからだろうか。
元気があることは大事なことだ、うん。僕は朝に弱いから寝るだけだ。今度は邪魔してくれるなよ。
再び意識を睡眠に向けようとした所で胸騒ぎがした。
頭の中で順繰りに情報が整理される。鋭い朝日、アナログな時計が指し示す時間、そして元気の良い小学生の声。
僕は急いで布団から手を伸ばして時計を掴んだ。指し示している時間は相変わらずの六時二〇分。つまり動いていない。
「ああああああああああああああああああああああ!!」
状況認識完了! 遅刻の可能性が大いにある!!
僕は慌てて身支度を整えてリビングへと向かった。
リビングに着くと食卓から食欲をそそる良い香りが漂ってきた。
食卓には朝に相応しく紅茶とパンとベーコンエッグが並んでいた。二人分並んでいたようだが、片方は席についているルームメイトが先に食べていたらしい。
「あ、遅いよソラ。私先食べちゃったからね」
ルームメイトの未来美夢は少し不機嫌そうな表情を見せた。リビングの時計で時間を確認してみると七時四〇分。なんとか遅刻にならずに済みそうだ。
「いやぁ、ごめんね。今日いつも以上にぐっすり眠れちゃったからさ。中々起きづらかったんだ」
笑ってごまかしながら食卓に座る。美夢は不機嫌なままだ。
「もう。起こしにいったんだよ。それなのに本当に気持ちよさそうに眠ってるんだもん。起こすに起こせなかった。」
なんだそれ。笑って誤魔化してベーコンエッグを食べる。
「ん! おいしい!」
卵の黄身がふわっとしつつ、ベーコンのカリっとした触感と香りが口の中で広がった。焼き方一つでここまで美味しくなるのだから美夢の料理は凄い。料理下手な僕には真似できない。
「そう、よかった」
美夢も嬉しそうに食事をする僕を見てクスッと笑いいつもの和やかな表情へと戻った。
時間は七時五〇分。そろそろ学校に行く時間だ。
「ねぇ、ソラ。寝癖立ってるよ」
「え、うわ嘘!?」
美夢がカバンから櫛を取り出してさっと整えてくれた。美夢は本当に頼りになる。幼い頃からずっとお世話になりっぱなしだ。
「ねぇ、ほか変なとこない?」
全身を見る美夢さんの瞳が光る。
「うん、大丈夫!」
美夢はオッケーのサインをしながら満面の笑顔で答えてくれた。
じゃあ、お姉ちゃん。行ってくるね。
僕は胸の中でそっと呟き家を出た。
青空の下に桜が舞う。
新学期の始まりだ!!