ルイスとルイズ   作:胸のルイス

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おもひで


たまには百合百合止まりもいいじゃない……昨日はすごいことしちゃったけど。

「剣が欲しいわ。」

 

「はあ? 今何て?」

 

あの昼夜問わずの初体験を超えて、それから一週間程に一度ということすら一日とて我慢されず、もう毎日淫らな夜を、昨日も一昨日も経験してしまった、そんな次の日。起きればシーツの上で裸のままだったルイズが慌てて、その身を毛布で隠そうとする。すると、既に起きて服を着ているルイスが、そんなことを言い出したのだ。

 

あまりの驚きに、目覚め早々の怒りがぽかんと飛んでいった。メイジという高貴な存在が平民の武器であるの剣を持つというのは、それほどハルケギニア、とりわけルイズの住む国のトリステインでは理解しがたいことだった。

 

あれからシエスタとかいうメイドから拝借したという、子供用メイド服をすっかり錬金やら手縫いやらで好き放題自分好みに改造して、乳を隠す左右の前掛けへそれぞれ八芒星の刺繍を施し、自分用の服へと仕立て上げたルイス。彼女の裁縫の腕が、ルイズより遥かに良い点を含めて認めたくはないが、完全な形では史上初かもしれないこの4属性を極めた魔法使いは、突然何を言い出すのか。

 

「あるとね、便利な剣があの街にあるのよ。」

 

彼女の持つ汎用性ある強さへの羨ましさと、そんなメイジらしからぬ言動への怒りを混ぜ籠めて睨むルイズだったが、ルイスはただ笑いながらほしいほしいと子供のように手を振るだけ、おまけでゆさゆさと大きな胸が上下に揺れている。

 

当然ルイズは訝しむ。生まれてからずっとこの国にいる貴族の自分だが、そんな伝説の名剣の情報は聞いたことが無かったのだから。

 

だが、あまりの淫乱っぷりとふざけたスキル、常識はずれの外見をルイスがしているせいで、忘れていたことだが彼女は可能性としてのルイズだという事も思い出した。それはつまり、未来の人間であるという事。なれば自身の知らない何かが、そこにはあるのかもしれない……その人間が嘘を言っていないのであれば。

 

さて、嘘を言っていないこと、ここが問題である。肝心なときはふざけないと、あの時に言ったルイスだが、ルイズにとってはなるべく初めてを失った今でも大切なこと……夜のまぐわいあいで何度も何度も嘘をつかれている。

 

悶々としたくなる恥ずかしいこの一週間の思い出を、眼を閉じて脳裏から引き出しただけで嘘が山のように出てきた。

 

夜の消灯時間どころか、朝の浴場が解禁されるまで()()()()()続けたり、一度達したら休ませてあげると言ったのに、五回を過ぎて数えられなくなるまで、世界にちかちかと星が浮かび、自分が何を言っているのか解らなくなってもまだルイスが指を動かして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やめてくれなかったり。

 

……挙句の果て、昨日は"りにょーざい"なるとんでもないものを飲まされて、恥辱の限りを受けた。二人の遍在に左右から抱えられて、一度だけ洗面器に()()()許すと言ったくせにあの使い魔は、あろうことかそのままベッドへ運び何度も何度も、遍在と交代で撫でまわしてはさせようとして……水の治癒で元気にされては、口移しで彼女から水を飲まされてまた出して……最期は様々な乙女の汁をそこらにぶちまけた。世界地図どころかシーツとベッドの半分が……と、ここまで思い返して、あまりの恥ずかしさに記憶を閉じて眼を開く。

 

もちろん開けて見える視界の方には、そんな痕跡はどこにもない。そんなところでなど、ルイズはたとえ気絶だろうとしても睡眠などとりたくないと思っている。こうなっているのは勿論、ルイスが綺麗にしてしまったから。大切な魔法の力をなんてことに使うんだと思いつつ、さらには固定化で汚れを弾いたり、錬金で汚れたり破けた布をまっさらな布や、ルイスの今来ている服のように仕立て直したりすることができるのってずるいなとルイズは思った。

 

もともと、この()()()()に関しては、拒んで使い魔との契約をきってしまえば、家名が傷く上に周囲からは使い魔なしと蔑まれるし、一家の総力で抹殺しても国に問われれば理由を述べることが必要で、ルイズは貴族であろうとする信念からそんな場面で嘘の理由は言えない。結局彼女の恥は国じゅうに知れ渡る。

 

最初に考えていた胸に鞭でも叩き込んでやろうかとしていた躾は、相手が超規格外メイジということもあって破綻している。

 

ご飯などの生活事情も、最近は使用人とうまくやれてるようで、この胸でオールド・オスマン(スケベなトップ)に迫れば、そのままここで働き始めそうときた。

 

外に放り出せないのに、自我の強く忠誠心が薄そうなこの使い魔には、例え嫌でも、むしろ逆にこうなると使い魔でいてもらうために、体を差し出すしかないのだが……最近の問題はルイズ本人だ。

 

この出会ってから二度目の虚無の曜日までの十日間近く、散々えっちなシチュエーションをさせられたせいなのか、悪女に体を差し出す悲劇のヒロインではなくなりつつあることを、彼女自身が感じ始めてしまった。

 

彼女の感じたこと。それは"慣れてきちゃった"というものである。ちなみに"どうせいじめるんでしょ"という感情まで全てを含めてだ。

 

それを抵抗なく受け入れてしまえていることが、ルイズは少し怖かった。もしかして、それってつまりわたしは、知ってしまった快感が忘れられないんじゃないの? それどころか、むしろ焦らされたり、相手からの愛を感じられれば、鬼畜に攻められるのも好きなの……? と、自身が変な性癖を持っている可能性に、今の彼女は困惑している。

 

愛があるのなら。ルイスの愛、これもまた拒めない原因のひとつである。

 

彼女は、外部には徹底して情報を漏らさないでいてくれている。ことが終われば体も部屋も元通り。ルイズには良く解らなかったが、変に黒ずむことも、だらしなく拡がることもないように治癒しているらしい。そしてこのばれないから、秘密の事だから、元通りだから、夢みたいなもの、夢みたいな時間……だから何をされても大丈夫という、僅かに体は余裕が生まれるせいか、それが今恐れている性癖合間って心の余裕にもなってしまうのか、ルイズはルイスを完全に拒絶できず、どうしてか組み伏せられている内に抵抗感がなくなっていき、最後にはむしろ彼女の唇、指、尾、何もかもから体を許してしまう。

 

それなのにしてくることはいつも意地が悪く、まともなそういう行為をしてくれたことが多分、無い。そんな不思議なルイズへの愛が、ルイスにはある。

 

好きよルイズ、可愛い、愛しているわ、私でこんなに乱れてくれるなんて……嬉しい。そう恥ずかしげもなく微笑みながら自分に言い、いじめながら奉仕してくるルイスの顔に、嘘はなかった。

 

行為の内容はどうあれ、その言葉を受けるのが、ルイズは少し嬉しかった。

 

しかし、それを受け入れきってしまって良いのかは甚だ疑問である。行為の途中に何も考えられなくなるのもあって、ルイズ自身も最終的感情がどうなのかは、完全棚上げしていた。

 

だだ、彼女の想いを今はルイズが毎晩受け入れ続けてるのだけは間違いの無いことで、これからの生活と性活はどうなってしまうのだろうかと考えてしまう。ついでに、もしもこれが自分ではない普通の淫魔だったらと思うと寒気がした。朝の涼しい空気の中、みずみずしい肌の裸体が外と内から冷やされて震える。夜な夜な自分を求めて来られて、その艶声を寮塔に響かせるのは流石に願い下げだった。

 

話がどんどん逸れていくなと、彼女は顔をぶんぶんと横に振って再考する。ともかくとして、こんなことをされてばかりのせいでルイスの普段の言う事を、ルイズはまっすぐには信じることが出来ないのだ。せめてベッドの上での愛を語るときの顔で言ってくれれば、信用出来てしまったかもしれないというのが、何とも皮肉だとルイズは苦笑いを浮かべる。

 

どう決断すべきか。彼女自身はこのままでも亜人であり、メイジであり、十分な戦力だが…これまた同時に、そんな彼女でさえ求める物だというのであれば、逆にそれを得る機会を失ってしまうのは勿体なさすぎるというものである。

 

「はあ……。」

 

今日は起きて早々に様々な方向へ考えさせられてばかりだと、愚痴の一つも零したくなってきたがそれも過ぎたこと。何かを考え続けては顔を真っ赤にして、右往左往しているのは寝ぼけていたせいだと、隅っこに払いのけたルイズはため息を一つ吐く。それからようやく決断した顔で、裸のままにベッドから出た。

 

「いいわ、連れて行ってあげる。でも、その前に三つやってもらうことがあるわ。」

 

それが交換条件だと裸のままに仁王立ちしたルイズは、椅子に座るルイスを見下ろす。それにルイスが頷いて……また大きな胸がそれだけで揺れる。

 

「いいわ、聞いてあげる。それで、その前に三つ何をしたらいいのかしら。」

 

「ひとつ、昨日のことはまだ許してないわ。後でちゃんとお仕置きするんだから、覚悟しておきなさい。」

 

「あら、たまには反撃してみる? 自分の体を貴方が嬲ったり、貪れるのならば、ね❤」

 

そんなつもりは毛頭ないがこう流されることは解っていたので、とりあえずはルイズは無視。机へと向かい、鍵つきの引出しを開けると手を後ろへとやり、取り出した物を隠すようにしてルイスへと再び向き合った。

 

「手、だして。」

 

「こう…?」

 

ガチャリと両手が拘束される。取り出されたのはなんと手錠。はて、こんなものを持っていただろうかとルイスは思い返したが、流石に思い出せない。

 

それは、ルイズが使い魔召喚の時に猛獣が相手だった時の為の、鉄球とつなげるように用意したひとつ。

 

ルイズはそんな利用目的のもうひとつのアイテム、こちらは見覚えのある鉄製の首輪も彼女にかけた。その二つを細い鎖で谷間を通し、胸を顔と腕で挟むように繋ぐと、太い鎖は首輪につけて、その先をルイズが持つ。

 

ルイスの着ているアシンメトリーな黒と白のファッションと合わせて、何だか背徳感がものすごいことになっている。

 

「その二つは、使い魔が暴れて壊さないようかなりの固定化をかけてあるから、多分あんたでもとれないわよ。変なことをしないためと、亜人のあなたが繋ぎ止められてる、わたしの使い魔とみんなに認めさせるための鎖よ。」

 

「人間にたいして、平然とすごいことするのね……昔のわたしって。そういえば……そうだったかな。」

 

「あんたは人じゃなくて使い魔てしょーが。しかも亜人。」

 

「そうね、その通りね。」

 

「これがふたつ目の条件よ。暴れたり、変なことをさせない、しないこと。」

 

「はいはい。」

 

「はいは一回。」

 

なんだか朗らかな空気の、ルイズにとってはまたなにか企みや、鎖を解き放つ策があるのではという不気味なルイスを警戒しつつ、最後の条件をルイズは掲げた。

 

「みっつ。今日はエッチなことは禁止。」

 

「そんな!?」

 

ルイスの顔に、ショックという気持ちがありありと浮かび上がる。

 

「絶対にしないって、あなたの大切なものにかけて誓わなきゃ連れてかないわよ。」

 

「……。」

 

ルイスは考え始めた。それと同時に、まさか断るのだろうかと、ルイズは不安が募る。一日だけでいいから、夜を平穏に過ごすことで乱れた心や、傾いているかもしれない気持ちをメンテナンスしたかったのだが……もしルイスがルイズとのえっちを選んでしまえば、それが出来なくなってしまう。

 

「良いわ。なんなら、私自身にギアスをかけてあげる。」

 

「ちょっと! 制約(ギアス)の魔法は禁呪よ!?」

 

「ーー我、今日この日が終わるその時まで、主へ淫らな行為をしないとここに誓う。」

 

思わずルイズは呼び止めたが、あっという間にルイスはルーンを唱え、誓約を自身に課し終えてしまった。

 

「別にばれなきゃ、どうってことないわ。ましてや自分にかけるのだから、誰か困ることでもないじゃない。」

 

「そういう問題じゃあ……ないわよ。」

 

回りくどい方法にしたのが裏目に出るのではとひやひやしていたが、まさかこんなことになるとはルイズも思っていなかった。

 

自身にギアスをかける……そうしないと防げないかもしれないということだろうか。なんだか淫魔という亜人、ルイスの心を無理矢理縛り付けてしまった気がしてしまう。優れた貴族であろうとするがゆえに見えにくいが、本音は思いやりのある優しいルイズは、なんだか申し訳ない気持ちになってしまったが、自分で置き換えて考えると別に我慢くらい胴と言うことは無かったので、きっと彼女もそうなのだろうとその思いを忘れようとする。

 

それに、彼女がそこまでして手に入れたい剣とはどれくらいの業物だというのか、興味がつきない。

 

そんな期待が膨らんでくれたおかげで、少しだけある同情は薄れると同時にルイズは、出掛けるのが楽しみになってきた。

 

「ところでルイズ。」

 

服を着ながら、出発までの待つ時間は、今晩のお仕置きでも考えようとしたルイズは、ルイスに呼び止められる。

 

「へ? 何よ?」

 

「私、この手でどうやって馬をあやつるの?」

 

じゃらりと、手と首を縦に繋ぐ鎖。むにゅうっと横につぶれて伸び、左右からかこぼれる乳。

 

「……あ。」

 

「あ、じゃないんだけど。ねえ。」

 

とでもじゃないが、手綱を握れるだけで動かすことなどできそうになく、街の中での姿や体裁ばかり考えて、道中のことをルイズは、すっかりと失念していたことを反省した。

 

「ちょっとタバサ! 居るんでしょ?」

 

鍵のかかった扉も解錠(アンロック)でお構いなしに開けて、ルイズの嫌いな奴現在独走一位の、赤髪褐色な恋多き乙女、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが、親友の同格なトライアングルメイジであり、青髪色白な感情少なき少女、タバサの座るベッドへと詰め寄った。

 

見れば彼女は読書の真っ最中で見向きもしない。だが、どうやらそれは喧しく話しかけているキュルケを、意図的に無視しているというわけではなく、聞こえていないだけである。

 

彼女は自身の回りに静寂(サイレント)の魔法をかけているようで、そのせいで音が耳まで届いていないのだ。

 

やがてベッドをギシギシとキュルケが揺らし始めたので、キュルケの存在に気づくと彼女はサイレンとを解除する。

 

「……何?」

 

「ルイズとルイズが街に出ちゃったのよ! ねぇ、シルフィード貸して!!」

 

「虚無の曜日。」

 

それはタバサにとっては一日中読書に浸って、知識を蓄えることが出きる至福の日だ。そんな時間を彼女は邪魔されたくなかった。

 

「貴女にとって虚無の曜日が大切なのは解ってるけれど……お願い助けて! アタシはあっちのルイズ、ええとルイスだっけ? あの子が気になって仕方ないのよ、あんな胸……私を差し置いて憎らしい、どうやってあそこまで……じゃなくて! 自分自身が召喚されるなんて、普通あり得ないことでしょ? どんな存在なのか気にならない!?」

 

確かに、知識の探求という点ではルイスの観察も悪くはない。

 

それに、亜人である彼女なら()()()()()()()()()()()も知っているかもしれないし、何か面白いことを自身の使い魔が感じ取っていた。

 

ルイス相手なら、多少本は惜しいが迷うこともないかと、タバサは読んでいたそれを閉じて身支度を始める。

 

「ありがとうタバサ。今度誰かお礼に紹介してあげる♡」

 

「本を読む時間が減るから、いい。」

 

マントをつけて杖を持ち、窓を開けて指笛で自身の使い魔、風竜のシルフィードを呼ぶ。主人に呼ばれたのが嬉しいのか、きゅい~♪ と喜びの鳴き声をあげてやってきた彼女の背にキュルケと共に乗り、ルイスたちの向かった街であるトリスタニアの方角、その空へと舞い上がっていった。

 

「まさか、浮いたまま引きずられるなんて思わなかったわ。」

 

ルイスは結局、馬に乗れなかった。

 

あんたその羽一度もまともに使ってないじゃない! と、ルイズに言われて仕方なく浮きあがり、そのまま手錠に革ひもを通してルイズの腰にそれを巻かれると、走り回る子供が持つ風船のように馬で引っ張られていったのだ。

 

「わたしは尻尾が重いから、あまり飛びたくないのに……。」

 

「……だったら浮遊(レビテーション)でも飛行(フライ)でも使えばいいでしょお?」

 

魔法の使えないわたしへの当て付けかと、解ってて言ってるのではないかと、ルイズが低い声で唸るような言葉で吐き捨てた。

 

「それは名案ね。正直自力で飛べるようになってからは、気づかなかったわ。ありがとうルイズ。」

 

そんな皮肉をさらっと受け流し、またもかわいい顔で笑うルイスに、ルイズは思わずぷいっと、顔を背けてしまった。

 

魔法が使えるようになれば、こんな風に裏も探らずに可愛く、自分も笑えるようになるだろうか。普段はたくらみ笑いしかしないくせに、こういう時だけはそんなことがもう出きるルイスが、少しルイズは羨ましい。けれども悔やんでも仕方がない、自分は今の自分なのだと言い聞かせて馬を預けると、二人して街へと入っていった。

 

「行くわよ。」

 

「ええ♪」

 

手袋をして、ルイスに繋がる鎖を持っているとはいえ亜人が目立つのか……街の住人がざわざわと二人を見ている。

 

「やっぱり亜人は目立つのかしら……。」

 

「くすくす、そうかもしれないわね❤」

 

羽を小さく畳んで、尻尾も足に巻き付けているルイスを、人混みのなか正面から亜人と認識する人は少ないだろう。間違いなく理由はそれではなく、同じ顔をした者、しかも片方はあり得ない乳をしていて、そっちが奴隷のように繋がれているのだ。しかし奴隷には見えない、どちらかというとまだ娼婦。つまりはそういうプレイ中に見える人間もいるかもしれない。少なくとも亜人よりはそちらの何かしらの原因の方が、大衆の目を引く理由としては大きい。そんな変態プレイのようなものを敢行中の貴族がみんなの目に留まっていることを解っているが、あえて言わないルイスだった。

 

「で、その伝説の武器は何処にあるのよ。」

 

「普通の武器屋にあるわ。あなたの知ってるとこの。」

 

「私の知っているところ……ピエモンの秘薬屋近くの?」

 

「そうよ、ピエモンの秘薬屋近くの。」

 

ピエモンの秘薬屋の近くの裏路地へ向かい、武器屋の看板を目にする。

 

こんなかび臭そうなところの武器屋に何があるというのか、まさかギアスまで自身にかけておいて外に出たかっただけではないのかとルイズが本当に心配し始めたが、ルイスはそんな彼女を無視して武器屋の玄関の奥へと入っていった。

 

「ごめんくださ~い♪」

 

「ちょ、待ちなさいよ!?」

 

鎖を引きずられて、慌ててルイズも店の中へと入ると、そこにいたのは胡散臭そうな店主。

 

「貴族の旦那……うちは全うな商売をしてまさ……あぁっ!?」

 

「……客よ。」

 

案の定、ルイスの胸にその店主が驚いたが、それすらも無視してルイスは、端の樽へと一直線に向かっていき、またもルイズが引きずられかける。

 

そうしてひとつの、ぼろく錆びた剣を引っこ抜くと今度は店主のもとへ、とてとゆさゆさと向かっていった。

 

「店主さん、これを頂くわ。」

 

「……ん? こ、これはおめぇ!」

 

ルイズには二人が驚く理由が理解できなかった。何せ見てくれはただのおんぼろ剣だった。

 

「ちょ、ちょっと! 本気でそんなの買う気なの!?」

 

「あっしも貴族様にこんなものを売り付けるのは気が引けますぜ? が、がめつく聞こえるようで申し訳ありませんが……せめてもう少しいい剣をお求めになられては?」

 

ルイズところか、がめつそうな店主すらも本当に誠意で購入を奨めようとしないで止めてくるが、ルイスは意に介さない。

 

「これがいいのよ、ねえ……デルフリンガー?」

 

唐突に、聞きなれない名前をルイスが呼ぶと、おんぼろの長剣は突如鍔元にある金属を、まるで口のようにカチカチと鳴らし始めた。

 

「おっどれーたおめえさん、何者だい? この店に来る奴のなかで、真っ先にオイラを手にとったのも、オイラの名前を呼んだのも……おめえさんが初めてだぜ。」

 

「秘密。でも、"使い手"のわたしですもの。あなたも買われるのならば、わたしがいいでしょう?」

 

「そりゃあもちろんよ! 俺様にふさわしい持ち主は、今も昔も"使い手"だけよ。」

 

「というわけで店主。これひとつーーむぐ。」

 

ホイホイとルイスとぼろ剣がふたりで意気投合して進めていくのを、ルイズがルイスの口を手で塞いで止めて、店の隅っこへズルズルと引きずっていく。

 

「何考えてんのよあんた!? インテリジェンスソードだってのは解ったけれど、あんなボロボロな物を本当に使うの!? わたし嫌よ! 使い魔があんなみすぼらしい剣を持つだなんて!」

 

「うーん、懐かしい反応。」

 

そう言って杖をルイスはこっそりと取り出して振ると、胸がこぼれかけた……ではなく、サイレントの魔法を周りだけに展開して、ふたりのほっぺたをくっつけるほどに近づいた。

 

一瞬ルイズはキスされるのではと身を強張らせたが、そんなことはお構いなしにルイスは話始める。これで店主にはヒソヒソと話している状態に見えるはずである。

 

「大丈夫よ、絶対損はさせないわ。」

 

「信じられるわけないでしょ。せめて理由を言いなさいよ!」

 

「理由、そうね……わたしの使い魔が持っていたのよ。」

 

意外な答えが帰ってきた。

 

「使い魔……あなたにも居たの?」

 

「ええ、とっても頼もしくって、格好よくて……大好きだったわ。」

 

どこか物憂げな、見たことのない瞳でルイスは壁ではなく遠くを見つめていた。あまりの真剣なルイスの顔に戸惑いを覚えたルイズだが、

冷静に考えてみればルイスはルイズであり、過去が似かよっている以上使い魔が彼女にも居たのは、当然のことである。

 

「まあ、そんなわけでこんな強いメイジなわたしが、すごく頼りにした使い魔の持っていた剣なのよ? ここで理由を話すと値段を吹っ掛けられかねないから、今は信じて合わせてちょうだい。」

 

「……解ったわよ。」

 

渋々うなずくルイズに、ルイスはサイレントを解く前に、申し訳なさそうな、本当に苦しそうな顔で彼女に笑った。

 

「ごめんなさいねルイズ、呼ばれたのがわたしなんかで。それでも……呼んでくれてありがとう。」

 

どうやら、彼女が知る使い魔ではなく自分が来たことを、後悔しているらしい。

 

いったい、彼女がそこまで入れ込む使い魔とはどんなものだったのか。いつか聞いてみたい気もするが、あの瞳をしたルイスの過去を聞くことが、ルイズにはためらわれた。あれこれと人の辛そうな過去を詮索するのは、決していいことではないと、彼女はそう考えているから。

 

「別に……会ったこともない使い魔なんて、知らないし。それなのにどっちがいいか、なんて言えないわ……ただーー」

 

「ただ?」

 

なんとなく悲しそうなルイスを見て、ルイズは自分を当てはめてみると……ひょっとして今、ルイスは慰めてほしいんじゃないかと思えた。嘘をつけないルイズは、本心で思ったことを言って慰めてあげようとして、顔を真っ赤にしながら口を開ける。

 

「べ、別にあんたが……ルイスが来て悪い気はしてないわよっ。メイジの強さを見るには、つつ使い魔を見よ。スくゥエァメィジの上、全系統魔法が使えるあなたなんて、ど、どう考えても悪いはずがないじゃない!?」

 

ばればれな、恥ずかしさから動揺して呂律のまわっていない慰めに、ルイスは悲しい顔から驚いた顔、驚いた顔から笑顔へと変わっていく。

 

「夜があんななのに?」

 

そう言って指を口にあてて、ウィンクをするルイス。

 

すると今度は、真剣な顔をしていたルイズがかっと、かわいい怒り顔に変化してしまった。ふたりして笑顔で居られたためしがない。

 

「そ、それは今関係ないわよ!」

 

「そうかしら。差し引いても良い使い魔とは、言ってくれないの?」

 

ルイズの同情の心までもが、憤怒の荒ぶる魂へと変質していく。

 

「差し引いたらマイナスに決まってるじゃないっ!!」

 

「ええ、そんなこと言わないでよ、ねぇ。」

 

「ああ、もう! 人が折角真面目に話をしていたのに~っ! ほら、もう買ってさっさと帰るわよ!!」

 

振り替えってカウンターへ歩くルイズを、ぎゅっと、ルイスが抱き締めた。

 

「ありがとう、ルイズ。」

 

ルイスの胸がルイズの背に当たり、ルイズの胸がルイスの手に当たる。抱きつかれた時に乱れた髪の隙間から少し覗く、うなじにチュッとキスをされた。

 

「だいすきっ!」

 

ルイズが何をされたのか解らないままでいる内に、彼女は手を離して、カウンターへと交渉に向かっていった。

 

「…………。」

 

キスされたうなじが熱い。手をやるとひんやりとしているのに、じんじんとした感触が消えない。

 

ルイズの動悸が激しくなっていく。

 

胸に手を当てられた辺りから、今のはまたエロ行為かと思ったルイズだが、ルイスにはギアスがしっかりとかかっている。

 

つまりこれは、純粋な愛情表現か感謝の行為。変なことが絡まない彼女は、まるで突然同じ歳くらいに戻ったかのような、そんな愛情表現をしてきた。普段との差ガすさまじすぎて、ルイズは思考が止まりそうだが、それでもひとつわかってしまったことがある。

 

彼女がベッド以外でルイズをどういう気持ちで見ているのかを、示されてしまったのである。

 

「やめてよ……もう。」

 

好かれることに悪い気がしないのが、ベッドの上以外のあなたにまで来ちゃったら……それはもう、本当にそうなり始めてるってことに、なっちゃいそうじゃない。

 

「わたしは、ノーマルなのよ……ヘテロなのよ。こんな程度で靡いたりなんてしないし、許嫁だって、いるんだからね。ましてや……自分なんかに……そんなこと、あるわけないもん。」

 

毎晩求められて、ちょっと愛をささやかれ続けただけなのに、今だって不意打ちに心が跳ねただけなのに、自分は一体どうしてしまったのか。いくら自分にそう言っても、ルイズの首の熱は消えなかった。

 

そんなちょっとしたドラマの後で、おんぼろ剣デルフリンガーは安く買われた。あくまでルイズの金銭感覚でだが、結局はたった100エキューぽっちで済んだのだ。

 

喧しいのはルイズが嫌なので、鞘に入れて胸のところにある鎖を軽く巻いて、喋れないようにして抱くようにルイスへ持たせているいる。

 

そしていともあっさりと、しかもかなりのお金が余ってしまったので、折角来たのにすぐ帰るなんてもったいないと、ルイスがおねだりをしてくる。せっかくだし何かを食べて帰ろうかと思ったところ……とうとう会いたくない奴とルイズは出くわした。

 

「ハァイ、ヴァリエール達。」

 

「……。」

 

タバサはそう嫌でもないが、不倶戴天の敵、キュルケに出会ったルイズは渋い顔をして振り返った。ルイスは笑みを浮かべて振り返った。

 

「げ、ツェルプストー……なんでこんな武器屋近くなんかにあんたが。」

 

「あら、キュルケじゃない、今日は男と遊ばなくても良いのかしら?」

 

全く異なる反応をする二人にたじろぎ、ルイスへ畏怖を覚えたキュルケだが、ルイズには悟られまいと髪をかき上げて強がり返事を返す。

 

「ええ、今日はオフの日よ。それに今は彼らなんかより……不思議でしょうがないあなた、ルイスがアタシは気になるんですもの。」

 

「あら、そんなにわたしの何を知りたいのかしら、キュルケ……そうね、交渉次第では教えてあげても良いわよ。」

 

見つめあうキュルケとルイスの二人。

 

「冗談じゃないわ、ダメよそんなの! ルイスのことを……ヴァリエール家の事も物も、ツェルプストーの女にくれてやるものなんて何も無いんだから!」

 

キュルケに使い魔を興味の対象にさたれるのが、真っ直ぐに嫌そうな感情をさらすルイズと、自分に関わってくれるのが嬉しいと言いつつ、怪しく裏がありそうに感情をさらすルイス。またも正反対なふたり。

 

何か、すごく無価値なことがこれから始まりそうだというのに、空気が張りつめていた。




≡キャラクターメモ≡
・ルイス
たまにシリアス

↓しゅみぜんかいこすちゅーむびふぉーあふたー↓


【挿絵表示】


ぱつんぱつんな最初に着ていた服も一応、ある。
別にサイトを完全に過去にして、ルイズを愛しているわけでは無い。けれど、ルイズを愛してる理由はちゃんとある。

・ルイズ
愛され慣れていないせいで、とってもちょろい。
恋愛に疎かったせいで価値観が停滞している所と、日々の魔法の訓練やらのように、辛い時もある夜の営みを習慣化させられたことで、マゾとレズの種を植え付けられつつある。

・タバサ
………。
文章上風竜とかいてあるが、シルフィはもちろん風韻竜

・キュルケ
非攻略対象の可能性
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