ルイスとルイズ   作:胸のルイス

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ひさしぶり

かきたいほうだい

ぷにま○


シンメトリーなふたりの共同作業って良いわよね?

「未来のルイズ!?」

 

ルイズとルイス、二人もシルフィードに乗って帰る権利を得ると言う条件で、ひとつだけルイスは質問に答えると約束して聞かれたのが、自分はルイズなのかと言う質問だった。

 

「ただし、可能性のひとつよ。こうなるかもしれないってだけなんだから、細かく気にしちゃダメなんだから。」

 

ルイスが、意外と当たりなのよ、このお店――と勧める平民向けの軽食店。そこでお茶とパンケーキを頂きながら、四人はテーブルを囲うように座って、ルイスについての座談会の真っ最中だ。

 

「何ていうか、信じられないわね……ルイズがこんな。」

 

「ど、どどどどこ見て言ってんのよ、ツェルプストー!」

 

とたんにルイズが怒鳴り付けるが、彼女の見ている場所は"そこ"ではなかった。

 

「やぁね、そっちじゃないわよ。わたしが言いたいのは、ルイズが亜人になってしまったのが、信じられないの。」

 

「私が亜人に……。」

 

「ええ、だってあなたはそれくらいなら、貴族として死ぬのを選びそうだもの。」

 

言われてみればその通りだ。自分は、亜人として生きるくらいなら、貴族として死ぬだろう。

 

「自分からとは限らない。」

 

何か理由があってこうなのかもしれないと、タバサは別方向の考えを挟む。答え求めるように三人はルイスを見たが、彼女は目を閉じたままにカップをソーサーへ置くだけだ。

 

「過去なんて所詮過去。どちらでも良いことよ。」

 

「まずその未来の人ってのが、信じられないわね。」

 

「あらそう? それなら……そうね。この国で今大人気の盗賊の正体でも、教えてあげちゃおうかしら?」

 

がたりと、驚きの発言にキュルケがテーブルに手をついて、座ったままだがルイスへと詰め寄った。

 

「まさか、あなた……土くれのフーケの正体を知ってんの!?」

 

「土くれのフーケ?」

 

ルイズだけが、なんのことだか解らないという顔をする。タバサも存在は知っているのか驚きもせず、眉ひとつ動かさない。しかし、ルイスの言う正体は気になるようで、視線を本から彼女へと移していた。

 

「最近この当たりで、金持ちの貴族のみに盗みを働く盗賊。現れてから数ヵ月経つも、土系統のメイジということ以外正体不明。」

 

タバサがつけてくれた情報が本当なら、間違いなく大盗賊だとルイズは思った。金のあるメイジとなれば、警備にすらメイジを雇っている可能性があり得る……そんな国の重役もいるだろうというのに、いまだ捜査を潜り抜けて一切足がつかないなど、その盗賊は悔しくて残念なことだが、相当のメイジに違いない。

 

そんなものを知っているというルイス。

 

信じられないが、ルイスの態度とその言葉に嘘はないのだろう。二人でほぼ昼夜一緒に生活していることと、何より自分だからこそ確信がルイズには持てた。しかも、朝からベッドまで横にいる彼女がその存在を知っていて、自分は全く何も知らなかったというのなら、それは未来を知っているからとも考えられる。

 

そして、ほぼ間違いなく未来で捕まったからこそ、知っているということになるだろう。

 

もしかして、この子が捕まえたのだろうか。そうだったならと思うと、自分との差に悲しさが押し寄せてきたが今はそれどころではない。一刻もはやくその事を聞き出し、国に知らせねばとルイズは机に手をつけて席を立つと、前のめりにルイスに迫るった。

 

「だ、誰なの!? 言いなさいよ!」

 

「本当に知ってるの!?」

 

「興味ある。」

 

ルイズ、キュルケ、タバサが順に答えをルイスに求めた。ルイスは今度はパンケーキにかけようとして、少し手についてしまったシロップのついた人差し指をなめている。

 

「んー……ただ教えてもつまらないし。そうだ、名前の一部をバラバラに伝えましょうか❤ あ、もちろん教え合っちゃダメよ? 捕まってからのお楽しみなんだから。」

 

ルイスのそんなふざけた提案に、ルイズがテーブルを強く叩いた。

 

「あんたふざけてんの!? 国賊なのよ相手は! 真っ先に国に進言すべきでしょうがぁ!!」

 

そんなルイズの意見を聞いたルイスは、深く永く息を吐いて……突然にどこまでもあきれた目でルイズを睨み付けたのだった。

 

「な、何よ……。」

 

初めて自身へ敵意を見せつけるルイスに、ルイズの口が閉じる。どこまでも冷たい視線に、思わず唾を飲み込んだ。

 

自分にはできない顔だったからだ。

 

「そんなことをすれば、腐るわよ。」

 

「な、何が……?」

 

「この国が腐るって言ってるのよルイズ。ふざけてるのはあなたよ……未来を知って捕まえる? 未然に防げる? 馬鹿馬鹿しい。証拠も出ていないのに、そんなことして犯人と断定できる何かを見つけられ無かったら、恥をかくのはこの国の警備よ。」

 

「なっ……。」

 

言葉が出なかった。まさか一笑に付されるとは思ってなどいなかった。

 

国に尽くせることは貴族として誉れである。使い魔が貢献してくれれば、ルイズも鼻が高いというもの。

 

だというのにこの使い魔は、そうすることは間違いだというどころか、意見を地面へと叩き落としたのだ。

 

「どうして、そんなこと言うのよ……っ。」

 

ルイスは答えない。ただ、自分で考えろと言わんばかりにまた紅茶へと手を伸ばすと、もう一度、ルイズの手がテーブルに、さっきよりも痛く叩きつけられた。

 

「どうしてそんなこと言うのよ!! 何でよ、ワケわかんない! 国のために盗賊を捕まえることの何が悪いのよ!!」

 

「やめなさい、みっともない……周りに迷惑よ。」

 

倒れそうになったティーポットを尻尾でルイスが、自分達のカップをキュルケとタバサがレビテーションで浮かす。ルイズのカップだけが激しく揺れて、溢れた中身がソーサーを越えてクロスを染め上げた。

 

拡がる染みを眺め、熱くなっていたルイズが肩で息をしながら、喧しげな音をたてつつ勢い良く席につく。その瞬間に浮いた膝が、勢い良くテーブルを裏から叩いた。

 

「盗賊を捕まえることの姿勢は……素晴らしいものだわ。」

 

「だったら……!」

 

「でも、わたしに頼るのはバカのすることよ。未来を知る……そんなことを頼りにしなければ、ただの盗賊一匹倒せなかった国が何を為すの? 捕まえて、その次に何か起こればまたわたしに聞くつもり? 戦争でもあって、わたしが死んでたり、遠出して居ない時に……そんな国がどんなことになってると思う?」

 

「……。」

 

「トリステインは一体、どこまでわたしに頼るのかしら?」

 

くいっと、饒舌になったことで乾いた舌と喉を、尻尾を使いティーポッドでカップに注いだ紅茶で彼女が潤した。

 

「それって……英雄じゃない。」

 

ぎゅっと……テーブルクロスを巻き込んで手を握るルイズが、絞り出した声で呟く。

 

「あなたは、私たちから見れば預言者なのよ!? 英雄なのよ! それに頼るのが……そんなに悪いの!?」

 

「悪いわよ。」

 

ルイスは、きっぱりはっきりと言い切った。

 

「ちょっと考えてみなさい。今でさえ、()()が居た時と比べてどうかしらルイズ? 一人の何かに国が頼りきってしまうってのは、そういうことなのよ。」

 

「それは……。」

 

烈風(お母さま)の名を出すのは、ルイズには反則だった。なまじ本当の英雄の存在である彼女と、今の国の兵たちが同じ位強いだなんて、家の誇りにかけて言えない。かといって、逆に国家が劣るとも口では言えなかった。

 

しかし口では言えなくとも、烈風の力を知っているからこそ、この国のメイジたちは彼女より強いと本当に言えないことも、ルイズは解っている。

 

各部隊のルイズの知っている者達と烈風で比べてみる……知る者すべてをまとめて戦わせても、そちらのほうがおそらく頼りないと、そうルイズには思えた。

 

それがはきっと、ルイスの言う通りに烈風という英雄に頼りきって、胡座をかいていたせい。もしくは烈風が常に強者と相対してしまうことで、後続が経験を積めないままに、磨かれる機会が無かったからだろう。

 

ルイスに頼りきるということは、今度は作戦や知恵といった頭脳戦でもまた、国がそういう末路を辿ってしまうと、彼女はそう言っていたのだ。

 

「解ったでしょ? それなら、もうそんなことを言うのはやめなさい。それと……いえ、何でもないわ。」

 

「何よ……。」

 

「大したことじゃないのよ。」

 

そんな終わりかたをされて、納得などできるわけがない。人間の性分以前に、ルイス(使い魔)ルイズ(ご主人様)に隠し事をすることが許せないのだ。土くれのフーケだって、このせいでルイズは道理としては納得しても、主人としては半ば納得出来ずにいる。

 

「言いなさいよ。」

 

「じゃあ言うけれど……。」

 

ルイスが目を細めてまっすぐにルイズを見た。

 

「あなた、紅茶が溢れたままよ。」

 

「は?」

 

「だから、あなたのスカート……見てみなさいよ。」

 

視線を下に向けたルイズは、自身の状態に驚愕した。テーブルを伝い、ほどよい温度になった自分のカップの中の紅茶が、ルイズの股間のスカートめがけて垂れている。

 

「~~~っ!?」

 

慌てて立ち上がり、スカートをハンカチで拭うが染みは消えない。その姿はまるで――

 

「おもらし。」

 

「ぷっ……あはははは! ルイズ、貴女凄い格好ね!」

 

キュルケに言われるまでもなく、自身の姿にルイズは顔を紅くしていく。

 

そう、この光景は昨日ベッドの上で見たアレそのものである。

 

「ふふ、既にこういう細かなところは、大分わたしの知る未来とは違うわね。」

 

「あらそうなの? それじゃあ、これからは貴女の知らないこともあるかもしれないわね。」

 

「ええ、わたしはこんな目に遭わなかったし、期待しているわ……ルイズ❤」

 

店が揺れるほどのルイズの怒号が、直後に響き渡った。

 

 

 

「まったく、まったく、まったくぅ!!」

 

「悪かったって、言ってるじゃないのもう……。」

 

結局フーケの正体を、ルイスより分割して教えられてから店を出た。

 

今はシルフィードの背に乗り、学院へと帰る空の旅の最中だ。

 

風が冷たくも気持ちいい、その青一面の世界の中で罰として、ルイスはルイズの椅子にされていた。

 

風避けの他に鱗がチクチクと、腿やらおしりやら当たるのが嫌だったからであって、断じてその大きくたわわな何かを背もたれにしたかったからではない。

 

わざと何度かルイズは姿勢を変え、下になっているルイスのおしりをシルフィードの鱗へ押し付ける。もちろんこれも、胸にそのたび頭を埋めたいからでもない。

 

「ねえ……さすがにちょっと痛いんだけど。」

 

「うるさい! あんたは寮につくまで黙って椅子になってなさい!!」

 

「もう、はいはい解りました。」

 

先頭からタバサ、キュルケ、ここから後ろを向いて風避け兼椅子のルイス、その上にルイズと座って飛んでいる。

 

激しい風がルイスの隙間を潜り、バタバタとルイズのスカートを揺らして脚を叩く。真正面から見るものがいればきっと、劣情を催しただろう。

 

ちらちらと、体型の割りに気合いをいれて着ているレース付の気品ある薄い下着の奥で、身躯が縦に伸びていない故の弾力と丸みを強く持つルイズの幼く生えてない恥丘が、ぷっくりと形をそのままに、貼り付く薄い布地から透けて見えていたのだから。

 

それを自覚しているのか、あえて前の二人も使い魔も、自分を正面から見ることを許していない。そして、乾かせるとはいえこのままなのはいささかはしたないなと思えたルイズは、ルイスの方を見た。

 

「あんた、これ乾かせない?」

 

染みのできたスカートの箇所は空が寒いせいか乾ききらず、じとじととした感覚が消えないまま、ルイズの股に嫌な感触を浮いては張り付くことで与え続けている。

 

「出きるけれど……今は無理ね。」

 

「なんでよ。」

 

「ご主人様のおしりや背中が、わたしの杖を隠しているところにあるんですもの。」

 

「……。」

 

杖のしまう場所、それはルイズならば太腿だが、ルイスはどうやら、その大きな胸の谷間に仕舞い込んでいるらしい。

 

あまりに体に身合わないその胸が、短い腕の様々な稼働範囲を狭め、スムーズさを阻害しているため、他では届かないのだろう。仕方ないと言えばその通りのことだった。

 

「なら、わたしが取るわ。」

 

「え……あっ、ちょ、ちょっと待って……い、いたた!」

 

ぐりぐりとおしりを軸に回りながら、ルイスの正面にルイズが座り直す。体のサイズが同じなのに椅子にしているせいで少し下……自身のお腹と触れあうその胸の谷間に、彼女は迷い無く手を突っ込んだ。

 

「あん❤」

 

「わ、私の声で変な声あげないでよ、この馬鹿使い魔!」

 

胸谷間の上にかる真っ白な網目の隙間から、ルイズの手が沈んでいく。

 

「やっ……ん。もう、何処触ってるのよぉ。」

 

「み、見つからないんだからしょうがないじゃない! 変な声出さないでってば……っ。」

 

「夜のルイズの方が――いたたたっ! つまむのは反則、反則だから!」

 

他人に聞かれれば自殺もののことをぬかす使い魔にお仕置きをして、その白い肌をつねってからもぞもぞと指を広げ、ルイスの谷間を三次元的にルイズの指が走った。

 

ふにふに、ぷにぷに、むにゅんむにゅん。

 

杖を探して段々と激しく、ルイスの様々な所をルイズの指が撫で上げる。

 

「あ、ちょ……やだ、普段のしかえ……しっ?」

 

「な、何言って――」

 

否定しようとするルイズだが、とうしてか指が止まらない。それはもう絶対、杖を探す焦燥感以上に、新しい感触の方を体が楽しんでいた。

 

「あっ……あっあっ❤」

 

「……。」

 

うわ、なによこれ……そう言えばルイスに私、自分から強く触れたことなかったけれど、ここってこんなに柔らかいものなの、なによこれ……本当に同じ人間についてるものなの!? 

 

そんな暴走する思考と手のルイズを白けた視線が射抜いた。思わず顔をあげると、そこには仇敵のあきれる顔。

 

「アンタ……自分の使い魔相手とはいえ、自分と何やってんのよ。」

 

「……。」

 

指を埋めたことはあっても弄ったことはなかったなと、少し外気で冷たくても もっちりふわふわ なそれの感触に、ルイズがそれでもまだ囚われて指を離さずにいると、キュルケが引いた目で彼女を見る。そこまでされてようやくルイズは手を離した。

 

「ち、ちちちちち……!」

 

「ええ、乳ね……確かに貴女は持たざるものだから、興味があるのは解るけれど……誰も見ていない空の上とはいえ、人の使い魔の上でそんなことするのはちょっと、いくらアタシもどうかと思うわよ。」

 

「違うわよ――!!」

 

ルイズの絶叫響く空、人様の使い魔の主は無視して本に夢中だった。

 

というよりも、目線が下を向いて、後ろの面々には完全に興味をなくしている。彼女は視界に建物が見えるその時まで、自身の本来の予定していた時間を取り戻さんと、サイレントの魔法でしっかりと世界を拒んでいた。

 

「そうなのよ、ルイズったらおっぱいが大好きで困るわ。いつも寝ているとこれに抱きついてくるし、ね……?」

 

そして竜の主が自分達を咎めないのをいいことに、ルイズにエッチなことはできなくても喋ることはできて、情報を誰かに開示することもできる使い魔は……悪のりを始めたようだ。

 

「うわ……もしかして、ルイズったら、そっちのケあり? だから、育たないのかしら……(むね)が男だから……。」

 

脱線した主が悪いとばかりに、普段のことがばれない範囲でご主人様の秘密を暴露したルイスのせいて、キュルケの誤解は深まるばかりだし、それを見てルイズは更におかしくしようと、場をかき回していく。

 

「うーん、わたしはそんなこと無かったけれど……もしかしたらそういう種は埋まってたかもしれないわね。」

 

「な、ななななぁにを、言ってるのかしらこの使い魔はぁ……!?」

 

そしてルイズは 毎晩私を求めて来るあんたこそ! とは今は口が裂けても言えず、うまく反論が出来ない。完全にルイスのペースにのまれていた。

 

「ねえキュルケ、吸ってきたこともあるのよ?」

 

「「ぶふぅ!?」」

 

止めの一撃と言わんばかりの爆弾発言に、整列番号2と4は盛大に吹き出した。一人は笑いで、もう一人は自分すら知らなかったことに羞恥心で、顔を真っ赤にしている。

 

「う、ううう嘘よそんなの! でたらめ言って椅子にしたことの仕返ししてんじゃないわよ!?」

 

「嘘じゃないわよ? ほら……見なさいキュルケ、この痕。」

 

ぴらりと、まさぐられてこぼれた胸を空では誰も見ていないからか、恥ずかしげもなく晒して赤い痕を見せたルイスに、ルイズが盛大に叫んだ。

 

「それは今私が揉んで触ってた所でしょうがっ……あ!」

 

自爆に気づいたルイズに、ルイスはにやにやと満足したした笑みを向ける。

 

処刑完了、と。

 

今の発言は、結局ルイスにそういうことをしていたと認めるような、盛大なルイズの自爆発言だった。

 

「ルイズ……貴女本当に……。」

 

両手を口に当てて、きゃっという少し似合わなくも可愛い仕草で、キュルケが目を開いて驚いている。

 

「だ、だから違うのよツェルプストー!? わ、わたしはね……ただほら! スカートが乾かないからこの子に魔法で乾かさせようとしてただけなのよ! お願い信じて!!」

 

そして仇敵に目を潤ませ、懇願するほどに余裕をなくしたルイズが、そんなキュルケに向かって叫ぶ。

 

しかし、キュルケは結局街で会うまで二人を見つけられなかったせいで、その間の二人のやり取りを知らない……つまりはルイスがスクウェアメイジだと知らない。そんなキュルケには、この言葉は演技混じりな言い訳にしか思えなかった。

 

ゼロのルイズが杖で何をするですって?  そんなことをしたらスカートどころか、下着も下の毛ごと吹き飛ばすだけじゃないかしら?

 

ルイズに生えていないことも知らないキュルケの脳裏に、そんな犠牲の大きすぎる脱毛お手入れが浮かび、そんな言い訳しか出来ないほど余裕がないということは、逆につまりは真実なのだと勝手にキュルケは悟る。

 

その悟りのせいで顔がひきつったキュルケには、もうこう答えるしかなかった。

 

「解ってるわルイズ……いいのよ、いいの。むしろこれであなたとは、男関係無しにしてライバルでいられるじゃない。むしろアタシは少し嬉しい気もしているわ……。」

 

ひきつった口許の笑み、慈しみ深い瞳と、鼻から上と下で全く違う顔をしている。そんなキュルケだったが、きっとこの表情こそが今の彼女の正直な気持ちだったのだろう。

 

そして言い終わるやすぐに彼女もまた、サイレントをかけて前へと向き直ってしまった。得意の系統どころか心得すらないのに放たれたその魔法でも、耳栓くらいにはなっているのだろう。

 

それはつまり、もう後はお二人で好きにしてというキュルケからのメッセージだった。

 

「ちがうんだか――もぎゅ。」

 

「きゃぅ!」

 

本日再び、テーブルの惨劇同様にルイズの絶叫が響きかけたその時、シルフィードが急停止をかけた。

 

何事かとこぼれた片乳をなおしながら、ルイスがもう片方の胸にルイズを抱えて下を覗き見ると、そこにはトリステイン学院があった。約一名にとっての楽しい時間はあっという間で、いつの間にか空の旅は終わりを告げていたようだ。

 

そして同時に、中央の塔にはなんと30メイルはあるであろう巨大ゴーレムがそびえ立ち、その塔を延々と殴っていた。

 

「……なにあれ。」

 

そう言って驚いたのは、なんとルイス。

 

「……フーケ?」

 

それに疑問混じりながらもタバサが返した。他に検討がつかないのに、一番知っていそうなルイスの頭に?マークが浮かんでいたせいで、タバサ本人も自信がなくなっていたからだ。

 

しかしどうやら、ルイスの疑問はゴーレムを操るのが誰なのかでは無かったらしい。

 

「いや、そうじゃなくって……あいつが来るのは使い魔の品評会後でしょ?」

 

彼女が疑問に思っていたのはタイミングらしく、今ここに居ることが不思議なようだ。恐ろしく大きいゴーレム自体には全く驚いていないのか、恐怖のない訝しむ顔で下の光景を眺めている。

 

「「「使い魔の品評会?」」」

 

「そんな催物……私たちは聞いたことも見たこともないわ。」

 

しかし、ルイスを除いた三人が何それといいたそうな顔で彼女を見返すと、ルイスが今度は激しく動揺し始めた。まるで巨大ゴーレムが襲っている今のことよりも、そのイベントがないことの方が大切で、不思議のようだ。

 

「え、えっ……? 嘘よねルイズ、昔のわたしみたいに、すっかり忘れてただけよね?」

 

「は? 催物を忘れるなんて、誰がそんなことするもんですか。明日の晩にはフリッグの舞踏会よ。ほら、ちゃんと覚えてるわよ?」

 

ふざけてる場合かという顔をするルイズに、こちらもまた本日二度目の本気でうろたえるルイス。

 

「そんな……嘘……もう未来が変わっているの? いえ、昔から無かったのならここは、まさか……。」

 

自分の過ごした世界とは違うタイミングで出現した、土くれのフーケ。そもそも彼女が現れるタイミングのイベントすら存在していないらしい。そんなルイズたちの表情は、本当に土くれのフーケが全く別人の可能性を出し始めてしまった。不可思議な事態に、どういうことかと自分の内側へと思考を進めて沈んでいくルイスだったが、突如起きた轟音で現実へと戻される。

 

ルイスに抱かれたままに、ルイズがフーケのゴーレムへと杖を向けていた。ファイアーボールを打とうとして()()()()()()() 、爆発をゴーレムの巨躯に浴びせていたのだ。

 

「なにやってんのよ、ゼロのルイズ!」

 

思わずキュルケが叫ぶ。

 

「何って……戦うに決まってるじゃない!」

 

そこにいるのは自身の信じる貴族像を貫き通そうとして、震えながらも杖を構えたもう一人の自分だった。

 

「ルイス……あなたも力を貸しなさい。今度は嫌とは言わせないわよ……いえ、私なら言わないわよね?」

 

「――そうね。」

 

そうだ、悩んでいる場合では無い。今は戦う事を考えるべきなのだと、胸の谷間から杖を取り出す。

 

「わたしは未来をあなた達に告げて、楽をさせたげるつもりは全くないけれど……目の前にいる悪党を放っておくつもりは、もっと無いわよ?」

 

それでこそとルイズがルイスを見つめ、その視線に頼もしく笑うルイス。彼女は杖で空間に字を書くかのように振るい、ルーンを唱えていった。

 

ルイスの唱えた(アース)のルーンを含んだ聞き慣れない長い呪文に、サイレントを解除したタバサとキュルケが表情の変化の差はあれど、驚いたような顔で彼女を見ていた。

 

「いざ現れなさい、わたしの手足となって全てを砕け――」

 

まるで精霊魔法のような詞を混ぜて、最後にルイスは、杖を大地へと向けて降り下ろす。

 

巨像召還(クリエイト・ゴーレム!) 出でよ、わたし! ねんどろいど……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……24/1(本人との比率)!!!」

 

35メイル以上ある、各パーツに着色と瞳に塗装まで施された土…もとい、粘土のゴーレムが現れた。その姿形は紛れもなく、ルイズの姿をしているが、どうにも頭でっかちだ。

 

「……なぜ彼女の格好。」

 

「ていうか、ルイス……あなた魔法が使えるの!?」

 

そんなゴーレムと術者に対して疑問を持つふたり。しかし、これでもルイスは自重していた。威力とか実力をではなく、形をである。

 

なぜなら本物のねんどろいどは、ルイスも好きなかわいい2頭身。流石に口上したもとの存在そのままでは、攻撃が出来ないと判断したのだろう。3頭身くらいのルイズが、そこに先にいたゴーレムとより大きい姿で現れたのだ。

 

「いくわよ、ルイズ!」

 

「え……きゃあ!?」

 

驚いていた赤青二人を無視してすかさず、ルイズを抱えてルイスが完成した24倍ルイズの頭へと、浮遊の魔法で乗り移って指示を飛ばす。

 

貴 族 猪 突(ヴァリエール・タックル)!!!」

 

24倍ルイズは、短足に似合わない素早さでゴーレムへと迫り、塔にとりついていた巨躯を押しのけた。

 

「キュルケ、タバサ! 土くれのフーケ(術 者)を逃がさないで!!」

 

そうルイスが叫び、素早く動けなさそうなのに俊敏に動いた24倍ルイズを見て、呆けていたキュルケとタバサ二人を現実へと引き戻す。タバサがこくりとうなずくと、シルフィードをゴーレムの上に居る盗賊、フーケの頭上へとはりつかせた。

 

「フレイム・ボール!」

 

「ウィンディ・アイシクル!」

 

牽制と動きを止めるための魔法が、土くれのフーケ目掛けて放たれる。牽制である以上仕留めることはないが、効果としては十分だった。

 

「ちい、この……邪魔すんじゃないよ!」

 

「ふふ、操作がお留守で動きが乱れてるわよ! 貴 族 拳 撃(ヴァリエール・ナックル)!!」

 

ふたりのアシストによりゴーレムの動きが、24倍ルイズの攻撃によりメイジの集中力が、それぞれ互いに助け合って毒づくフーケを追い詰めていく。そんな土、火、風、三系統の魔法で戦うメイジたちの活躍する光景をただ一人、おいてけぼりで見ているだけのルイズ。

 

彼女には、その光景が苦痛だった。

 

いざ戦いの火蓋を自分で切ったというのに、みんなが戦っているのに、自分は動けない、何も出来ない。何よこの様はと、焦燥感がルイズの思考を蝕み、考える力を痩せ衰えさせていく。

 

そして、このまま何もしなければどうなるかと、少なくなった思考がそんな考えに辿り着いてしまったルイズは、胸が締め付けられる痛みに襲われた。

 

どうなるかなど、明白だった。

 

また、クラスや先生たちからバカにされる。一人何もできなかった落ちこぼれとして、白い目で見られてしまう。

 

嫌……そんなの嫌よ! 

 

ネガティブな思考は更なる焦りを生み、もはやルイズに残ったのは、それをどう回避するかという思いだけとなった。

 

自分だって何かしなくちゃ……そう思い杖を強く握り直す。どうすればいい、逆に功績を残すのならどうすればと考え、目の前にいる敵を見る。今も牽制され、ステップを踏みなんとかその魔法を避けながら、ゴーレムを操るフーケ。ここにもしも、更に自分が一撃を加えられたのなら……ゴーレムは倒せないがこれならと、ルイズは天啓を感じたかのように思えた。倒さねばと焦点が狭まり、直接の対象として捉えて、ルーンを唱えて狙いをつけた……彼女は、自分がどんな存在であるかを忘れたままに。

 

「ファ、ファイアー・ボール!」

 

そう唱えた。

 

彼女がこの魔法で狙いをつけ、それが成功するどころか当たった試しなどは、一度たりとて無いのに……そう唱えてしまった。

 

そうして放たれた何かの魔法は、フーケを狙うどころかゴーレムすらかすらず、中央の塔へと直撃して、その外壁にヒビを入れただけに終わった。

 

またもやただの失敗。しかし、突然の出来事に皆が硬直してしまった中で、不思議に思う者が一人。

 

「これは……?」

 

自分があれほど攻撃して壊せなかった塔の壁に、ひびを入れたという事実。それをフーケだけが不思議に思っていたが、彼女は一流の盗賊らしく、素早く思考を切り替えた。

 

「何でか解んないけれど……これはチャンスだよっ!」

 

フーケが、止まった者のなかで一番に早く動き直す。他の人間のように理由も、原因も、状況把握もいらない。目の前の事実だけをフーケは捉え、行動を起こした。

 

「――まずっ!?」

 

「遅い!」

 

次いで大慌てでルイスが、24倍ルイズを動かしてフーケの目的を止めようとする。だが先に動かれたフーケのゴーレムに、24倍ルイズへ叩きつけるように腕を振るわれて、バランスを崩してしまった。

 

「きゃあぁっ!?」

 

「ルイズ!?」

 

さらに遅れて対応しきれなかった残りの面々の中で、ゴーレムに足をつけていたルイズがバランスを崩して落ちていく。

 

ふわりと浮いて、その後に来た風切る落下の感触と冷たさがルイズを襲う。

 

死ぬ……その感覚がルイズにそう思わせた。

 

もう、レビテーションの射程外。吹き飛ばそうにも相手は自分より下。杖から出る直射的な魔法では誰も彼女を助けられないし、竜巻のような打ち上げる魔法では、詠唱が間に合わない。

 

何も成せずに終わる……そんな悲しみと苦しみでこぼれたいくつもの涙が、天へと上るかのように、落ちていくルイズの目から離れていった。

 

だが、そんな結末にはさせないと……見せたことのない必死の顔で、運命を覆そうと諦めない者がひとり。

 

「ルイズっ!!!」

 

ルイスが力強く叫び、その左手が背中にくくりつけたぼろ剣、デルフリンガーの束を掴む。

 

すると左手のルーンが力強く輝き、ルイスがその場から消えた。

 

倒れ行く彼女のゴーレム。その斜面となった凹凸を、地面に向かって降りながら蹴り進むことで、ルイスは加速していた。消えたと思えるほどの、目にも止まらぬ速歩でかけ降りてルイズを追い越し、彼女目掛けてルイスは跳ぶ。

 

そのまま両手でルイズを空中キャッチすると、今度はお姫様だっこの状態から翼を拡げ、落下を送らせた。そうしている間に、フーケのゴーレムが更に動いて、塔を殴る。

 

ゼロのルイズによってヒビの入った箇所から、呆気なく塔の壁は壊れた。

 

それを悔しい思いで見ながら、緩やかな羽ばたきで落下傘のようにゆっくりとルイスは落ちていく。大切にルイズを抱いたままに、ルイスが地面に落ちて膝をついたその直後、彼女の数サント横で、24倍ルイズが轟音と共に倒れ伏して、土砂を巻き上げた。

 

ルイスはその残骸となって飛び散る破片から、ルイズの体が傷つかないように腕で庇い、更に翼で覆い隠して彼女を守る。

 

「ぐっ……。」

 

代わりの盾となったルイスに、土俵のように押し固められた、ひときわ大きな破片が打ちつけられる。

 

「あぁ……っ!」

 

続いてフーケのゴーレムが壊して瓦礫となった、塔の壁の破片がルイスを直撃した。だがそれでも、自分の体のことなどお構いなしに、ルイスはルイズを守り続けた。

 

砂煙が晴れるまで、彼女はルイズを抱き締める腕も、翼の力も緩めない。より力強く、決してそれが壊れないように、きつく離さずに抱き締めていた。

 

やがて静寂が戻り、死の意識からルイズが帰ってくると、彼女は暖かさを最初に感じ取る。包容から来る熱に生を実感し、ルイズが顔を上げて自分を助けた使い魔を見ると、ルイズの目尻に残っている涙ではない何かが、頬を濡らす。

 

「……?」

 

それは、ルイスの頭からこぼれる血。

 

「あ……。」

 

彼女に優しく、大切なものを包むかのように抱きかかえられていたルイズは、とっさに何かを言おうとして、喋ることができなかった。

 

「……え?」

 

くたりと……ルイスが力無くルイズに倒れこんできたから。

 

「あ……やだ、やだ!」

 

庇われた、助けられた、自分のしたことで……ルイスがこうなってしまった。その、事実から来る後悔と、使い魔を失いたくない気持ちで、ルイズはパニックに陥ってしまう。

 

どうすれば、どうしたら、使い魔を安全なところへと連れていくのが先か、敵討ちが先か。何から始めれば良いかさえ、ルイズは解らなくなっていた。

 

そんな狼狽える彼女の耳に、吐息がかかる距離から声が届く。

 

「無事、みたいね……?」

 

それは苦しそうながらも呟かれた、自分の使い魔の声だった。

 

ルイスの意識がある……その事を知ったルイズが慌てつつもゆっくりと、自分からルイスを剥がしてから、楽な姿勢にしていく。翼や、腕の骨が折れているかもしれないと、ルイズはガラス細工を扱うかのように、震えたままの手で、そっとルイスを抱き支えた。

 

「良かったわ……。」

 

ルイズの胸の中に抱かれる形となったルイスは、そう言いながら安堵の笑みを浮かべる。自分の惨状など問題ではないかのように、彼女はルイズの無事をただ喜んでいた。

 

彼女の手があがると、力無くルイズの頬をその暖かい手で撫で始める。

 

ルイズは言葉が出なかった。ただ、自分が何をしたのか悟り、しでかしたことの大きさに、打ちひしがれていた。

 

触れられた頬に伝わるルイスの温もりが、今のルイズには、(はた)かれたかのように熱く感じられる。鋭い痛みのように錯覚すると思わず、ルイズは自分の手を、撫で続ける彼女の手に重ねた。すると幻のような痛みは、自分の勘違いだと言うかのように、すぐになくなっていった。

 

少しの間、二人の時が止まる。

 

「どうして……?」

 

そして、沈黙に耐えきれなくなったルイズが声を漏らすと、ルイスはただ微笑みを返して、ルイズの頬を親指でくすぐってからゆっくりと、口を開いた。

 

「どうしてって……使い魔が主を助けるのは、当たり前のことじゃないの。」

 

ルイズが聞きたいのは、そういうことではなかった。ふるふると首を振って、自分を卑下し始めてしまう。

 

「そっちじゃないわよ。どうして、どうして私に何も言わないのよ……罵りなさいよ、馬鹿って、足手まといって……怒れば良いでしょっ!?」

 

自分で自分を罵倒するよりも、怒りも恨み言もなく微笑むルイスを見ている方が、ルイズは辛かった。ここで何かをきつく言われた方が、ルイズとしてはまだ良かったのに……ルイスはそれをしてくれないままだ。

 

ルイズ(自分)のせいでこんな怪我をしたのに。

 

足手まとい(自分)さえいなければ、こんな事にはならなかったのに。どうしてこの使い魔は何一つ言わないのか。作戦すべてを台無しにした、見捨てても良かったほどの行為のはずだったのに。

 

そう考えてしまうのは、ルイズ(自分)なら間違いなく責めたと思えるからで、逆に、反対に笑うルイスのことが、自分であるはずなのにルイズは解らなくなっていく。

 

「あは……。」

 

それを聞いていたルイスは、力無く笑った。

 

「あはは、やだ……もう。わたしと違って私は随分としおらしい……っていうか、素直なのね。」

 

「え……?」

 

「ふふふ、使い魔相手でもこんなに差が出るなんて……やっぱりここは時が戻ったとかじゃあ、ないのね。」

 

一人何かに納得してから、ルイスは少しの間ゴーレムの方を見る。キュルケたちの奮闘むなしく、土くれのフーケが今まさに壁の先……ルイズが壊すまで何度も彼女のゴーレムが叩いて、狙いをつけていた部屋へと入る所だった。

 

キュルケは、ならば窯焼きにでもしようかと、主であるフーケを追わせまいと、邪魔をしてくるゴーレムの隙を狙って中に直接魔法を叩き込もうと動く。しかし、タバサに何かを言われると攻撃をやめてしまった。

 

その理由は、部屋の中にあった。

 

実はあそこが何かルイスは知っている。というよりも、盗賊が狙う場所など決まっている。あの壁の先……建物の中は宝物庫なのだ。

 

そんな財産まるごとを炎の海に沈めることは、いくらキュルケでも出来ないだろう。他国の学院の宝物庫となれば、なおさら不可能である。

 

「何やってんのかしら、キュルケったら……タバサが止めなかったら、この子以上に大失態だったわね。」

 

状況を確認して振り返ると、ルイズの顔を見つめ直して何かを懐かしむように、ルイスが告げた。

 

「理由は簡単なの。わたしはね、貴女を怒れる立場じゃないからよ。」

 

「えっ……。」

 

ルイズには、帰ってきた言葉の意味が解らなかった。

 

正当性のある人を叱るという行為自体に、立場などあるのだろうか。もちろん平民と貴族であれば、叱った後なら罰せられるかもしれないが、今はそういう話の場面では無いはずだ。

 

「ふふふ、なんだか随分と難しく考えてるのね。」

 

そんな疑問で揺れる、つぶらなルイズの瞳を真っ直ぐに見つめ返したまま、ルイスはよろよろと立ち上がる。

 

「昔わたしも、あそこにヒビを入れたことがあるだけよ。」

 

「あ……。」

 

抱き起こしたときとは逆に、ルイズが見上げる形になったルイスは、今も優しい顔を崩していない。

 

普段の行為がまるで演技かのように、慈しむ表情を……憧れの下の姉のようにしていた。

 

「そういうこと。しかも、全く同じ相手をしてた時に同じことをしたわ。まあ……夜と昼で違ったけど、そこは些細なことよ。」

 

ルイスはルイズだが、決して今のルイズではない。今は完璧な四属性を操れるスクウェアのメイジでも、昔がある。そしてその昔は、ルイズと大差なかったのだろう。

 

「だから、今の貴女の……ルイズの気持ちがすっごく良く解っちゃうの。あのときの気持ちとか色々思い出しちゃったし。上にいるふたりはともかく、わたしはちょっと貴女を怒るなんて、無理。」

 

利き手が折れているのか。ルイスは左手で、ルイズの頭をぽんぽんと叩いてから、優しく髪を鋤くように触れる。

 

「逃げたらまたバカにされるって、ひとりだけバカにされるって……そう思ったのよね?」

 

優しくされながらぴしゃりと、ルイズは考えを当てられたことで、彼女の心にある何かが決壊した。

 

ルイズの双眸からまた、ぼろぼろと大粒の涙が溢れる。

 

理解してもらえる者が居る嬉しさと、それでも何も出来なかった事からの悔しさが、ルイズの涙をより溢れさせた。

 

「――ごめんなさい。」

 

そして、最後に罪悪感。

 

そんな優しいルイスの怪我を見て、それをしてしまったのが自分だという苦しさが、ルイズの目から一番涙を流させた。

 

確かに昔に、ルイスも同じことをしたのかもしれない。だからといってそれは、目の前のルイスを、彼女をこんな姿にして良い理由にはならない。

 

それでも、それを許してくれたルイスにルイズは謝り、涙を流し続けていた。

 

「私……私ぃ……!」

 

ルイズの懺悔が続く。

 

「ごめんなさい……私、悔しかった! 苦しかった! あなたたち全員が戦っているのに、わたしは……私はぁ……っ!!」

 

それが、さっきまでのルイズの本音。

 

「でも……でも……そのせいで貴女を、こんな目に逢わせちゃった。そんなつもりはなかったのに……ごめん、ぐす……ごめんなさい!」

 

そして、これが今のルイズの本音だった。

 

普段のプライドも、何もかもを忘れたかのように置き去りにして、彼女はルイスにすがり付いて、くしゃくしゃな顔で泣き喚いた。

 

「ええ、良いの……良いのよルイズ。それに、間違ったからって貴女は、私を死なせてしまったわけじゃない。やり直せるうちの間違いなんて、いくらしでかしたって……失ったって……取り返せば良いだけなのよ。」

 

ルイスはそんなルイズを励まし、希望を照らそうとしてくれた。その姿はルイズにとってまさに、自分の理想の形のひとつだった。

 

「でも……私じゃ何も取り返せない。ゼロのルイズの私じゃ……何も……!」

 

その赦しに今すぐルイズは応えたいのに、何も出来ない自分を嘆いた。出来ることなら、彼女の言うように失敗を、何倍もの成功で取り返したいのに……何も思い浮かばないのだ。

 

悔しさに涙が冷えきったように感じて、鼻をすするルイズの涙を、ルイスが掬い取った。

 

「そんなこと、ないわよ。」

 

「え……?」

 

「未来は教えないけれど……貴女にできることを、貴女だけにできることを、わたしが見せてあげる。」

 

そう言ってからルイスは、すぐ近くで倒れているゴーレムへと向かっていってしまう。ボロボロのままに足もふらつき、引きずりながらも、ルイズのためにそうしてくれていた。

 

「くっ……杖はいったい何処にあるのよ……。」

 

夢中だったために放り投げてしまった杖を、壊れた24倍ルイズの瓦礫の中で、ルイスが片手で探し始める。そんな彼女の背中を、ルイズは潤んだ視界で見つめていた。

 

私だけできること……本当に、そんなものはあるのか。

 

「くっ……こっちは無事でも、杖が無きゃお話にならないじゃない。」

 

もし、そんな風にルイスが道を照らしてくれるのなら、自分だって頑張りたいと、ルイズは拳に力が入る。

 

でも……それはされるがままで良いのか。

 

ただ、使い魔の言われるがままにして、それで自分の失敗を取り返せたと言えるのか?

 

そんなことは絶対にないと、ルイズは思った。

 

今、自分の使い魔であるルイスが頑張っていて、困っている。

 

そんな彼女にだって、自分が道を照らせるはずだ。

 

そうやって考え、動いてこそ失敗は取り戻せるはずだと、逆に与えられるだけでは、先程の一人で除け者の時と変わらないと、ルイズは目が覚める。

 

泣くのを止め、残った涙を鼻水ごと袖でぬぐい去って、ルイズはルイスにできることを必死に考え始めた。

 

何か、何か自分にだってあるはずだと。今度は間違えないと戒めながらも、必死で頭で考えていた。

 

砕けた瓦礫を吹き飛ばす? 杖ごと吹き飛んでしまう、駄目。

 

ルイスが杖を見つけるまで、精神力がまだまだある自分がフーケを足止めするか? 狙ったところに当たらないのに、そんなことがタバサ達のように出来るわけがない、駄目。

 

失敗の未来しか見えない案しか浮かばなくても、ルイズは杖をじっと見つめ続けて、頭を回し続ける。

 

ここでもしも何か活路を見つければ、彼女のような自分になれるかもしれないのに……そう思えて頑張るが、彼女の頭には何も妙案は浮かばなかった。

 

「どうしてよ……! 何時になればルイスみたいになれるのよ……!! 未来かなんかじゃない、それが欲しいのは……今なのに!」

 

少しでいい。ルイスの言うような、凄いことになる未来じゃなくて構わない。今、少しで良いから閃きがほしいと、ルイズは願った。

 

「……っ!?」

 

すると、もどかしさで雁字搦めになった思考に何か、引っ掛かりを感じたのだ。

 

「何……? 私は今、何に、何を気づいたの。」

 

それを離しては駄目だと。必死にその正体を探す。

 

私……ルイス……未来に……今の私では……。

 

「あ……!」

 

見つけた。これなら何とかなるかもしれないと、満身創痍のままに杖を探すルイスのもとへ、ルイズが走った。

 

「ねえ、ルイス……これ、使ってちょうだい。」

 

「ルイズ……?」

 

差し出したのは、自分の誇りでもある杖。

 

「あなたは、私なんでしょ? なら、これだって使えるかもしれないじゃない。」

 

根拠は、ない。いくらかの過程が既に違うらしいこの世界は、出来ごとや未来は少なくとも違うものとなっているだろう。

 

「やってみる価値は……あるわよ。」

 

だかそれでも、契約したルイズと言う存在と、誇りや魂のようなものが同じならば……この杖はルイスにも扱えるはずだとそう信じて、彼女の前に杖を差し出した。

 

「やるじゃない、ルイズ……浮遊(レビテーション)っ!」

 

その杖を力強く左手で受け取り、壊れていない24倍ルイズの手に向けてルイスが振るうと、その腕が浮いた。

 

「やったわルイス!」

 

「ええ……それじゃあ次は、貴女の番ね?」

 

「えっ……?」

 

「だから今から失敗、取り返すのよ。ほら、このまま杖を反対から持ちなさい。」

 

「えっ……ええっ!?」

 

「早く、フーケが出てきちゃうわよ!!」

 

「わっ……わっ、わっ!」

 

言われるがままに手を伸ばして、ルイスの持つ杖に絡めるように、ルイズも握る。

 

ルイズの右手の甲がルイスの方を、ルイスの左手の甲がルイズの方を向いて、ふたりの絡む手の間にひとつの、小さな杖が握られた。

 

「ちょ、ちょっと! 私の魔法じゃフーケになんて当たんないわよ!?」

 

先程の発言はつまりは、フーケが出てきた瞬間に何かをするということ。ルイズの考えた駄目と思えた案が、脳裏に過る。

 

「また、なんか難しく考えてるみたいね。良いからしっかり握って。」

 

「でも、でもでも……。」

 

「わたしを信じて。」

 

ルイスの瞳がルイズの目を見る。頼もしい使い魔、優しい使い魔が言うその言葉が、ルイズから焦りを無くした。

 

「だいたいね、貴女が狙うのはフーケじゃないわ。」

 

そして、ルイスの考えはまたもルイズのとは違ったらしい。

 

「え……じゃあどこを狙えばいいのよ?」

 

「右手が動かないから口で言うけど……この浮いてるねんとろいどの手よ。ほら、腕の袖のとこに出っ張りがあるの、解るかしら?」

 

ルイズか目を凝らすと、確かに浮いてるゴーレムの腕には不思議な出っ張りが見える。その出っ張りは肘から下、シャツ部分の腕を形作っている袖の真ん中に刺さっている。まるで像を作る過程で削り忘れたようなそれが、ルイズには何か理解できなかった。

 

「ねえ、貴女が言っているのは……何か変についてるあれのこと?」

 

「そう。あの出っ張り、あれを貴女が錬金しなさい。」

 

「そ、そんなことしたら……!」

 

いつかの授業の日のようになる。一年の時の繰り返した悪夢が大量にフラッシュバックされた。

 

「そうよ、爆発させちゃって。」

 

「……。」

 

しかし、それで良いらしい。どかんと一発やってしまえと、弱っていたルイスが力強く笑う。

 

「このまま、狙いも角度も私があわせてあげる。貴女はただフーケが出てきたら、そこを爆破して。」

 

「そんなことして、何になるって言うのよ!」

 

「秘密。」

 

「ちょっ……。」

 

元気になったルイズを見て余裕を取り戻してきたのか、肩で息をして、脂汗を浮かべながらルイスは、それでもいつものような態度に戻り始めていた。なんだかルイズまでつられて、いつものように苛々が募り始めていく。

 

しかし、そのむかむかをルイスにぶつける余裕は無かった。

 

「ほらほら、出てきたわよ?」

 

「えっ……えっ!」

 

ルイズが、慌てて自分の開けた穴を見る。すると、丁度そこにフーケが顔を出してきた。そして当然と言えば当然か、その先を読んでいたかのように、待ち構えていたタバサとキュルケの魔法を身軽にかわすと、素早く空へと跳んでいく。

 

宙に舞い、そのままゴーレムのもとへと着地するつもりのようだ。

 

よく見ると脇に何かを抱えている。獲物の回収は終わってしまったようで、もうこのままでは逃げられてしまうのも、もはや秒読みの段階だろう。

 

どうする、信じて良いのか。

 

先程の態度のせいで、ルイズの中にあるルイスの優しい顔が、霧がかったかのように思い出せなくなっていく。あっちのルイスの顔で言われれば信じられるのに、今のルイスはまた非常にうさんくさい。

 

"わたしを信じて"

 

けれど、その言葉だけはそのままに、ルイズの中で消えていなかった。

 

そうだ、一度たりとてこの使い魔は、ここぞと言うときに嘘はついていない。今朝も、今も。

 

ルイスをもう一度信じて、ルイズは杖を握る手の力を強める。

 

「もうっ! や、やれば良いんでしょう、やれば……錬っ金!!」

 

簡単なルーンを唱えてそう叫ぶと、案の定出っ張りは光を放ち始めて砕けた。

 

だが、いつものように爆発の煤煙が舞い上がった直後、ばいんっ……と、奇妙な音が強く響く。

 

「ふふふ、わたしも……錬・金。」

 

「……は?」

 

"浮遊"を唱えるのをやめてルイスもまた、その杖で錬金を重ねて唱えるが、何が起きているのかは爆発のせいでルイズには見えなかった。

 

「火じゃダメ。こんな爆発を作ろうとしたら手間隙が掛かりすぎちゃうし、出っ張り()()爆破するなんて、スクウェアでも不可能。」

 

ルイズは視界の塞がれた中で、隣から聞こえる声に耳を傾ける。

 

「風はもっとダメ。エアハンマー程度じゃあの出っ張りは抜けないし、カッタートルネードなんて撃ったら、全部吹き飛ばしてしまう上に回転して、わたしが狙いまでつけられなくなっちゃう。」

 

ひとつひとつ、系統魔法では今の状況を作れないことを、ルイスはルイズへ語ってくれている。

 

「水も惜しいけれどダメ。水圧で押し込むことは出来るし、抜くだけなら出来るわ。、でもあの杭みたいなも物だけを内側から、しかも中を水で溢れさせずに引っこ抜く噴水は、水の精でもないと作れない。」

 

それはつまり逆を言えば、系統魔法の使えないルイズが起こした今の光景は、本当に他の魔法では無理だと語ってくれていることに他ならなかった。

 

「最後に地だけど……これなら出来ちゃうの。錬金してあげればいいだけだもの。」

 

「え……えええっ!?」

 

「でも、わたし(スクウェア)の、しかも最強クラスが作った物質を錬金……果たして誰が出来るのかしら? 少なくともそれがフーケに出来ていたら、最初からゴーレム合戦になんて……ならなかったわよね?」

 

地の魔法の否定はなんともお粗末で、かつ傲慢なものだった。だが確かに、この使い魔を越える地の系統魔法の使い手なんて、ルイズの中では考えられなかった。

 

彼女の服のような、絹織物などを作り上げる精密な錬金に始まり、夜の行為で使われた、震える訳のわからない道具の錬金。染みひとつ残さずきれいな朝を迎える、後始末の錬金……その無駄に洗練された無駄の無い無駄な凄さを思い返して、弥が上にもルイズは納得してしまった。

 

しかし同時に、ある疑問が沸き上がる。

 

「ねえ、ルイス。」

 

ありがとうと言おうと思ったルイズのその気持ちは、イライラとこの疑問にかき消された。

 

「あんたがフーケのゴーレムを錬金してたら、最初の一手で解決してる気がするんだけど。」

 

そう。自分の寝具だって、高級品。最初は誰かのメイジの固定化がかかっていたはず……ひょっとすれば複数人がかけて、そこの宝物庫のように不滅の耐久年数で頑強な固定化になっていたはず。なのにルイスは、そんなものは無いかのようにシーツも、何もかもを苦もなく錬金している。

 

そんなすごい地のメイジなら……フーケのゴーレム自体を滅茶苦茶にしてしまえば良かったのではないかしら。全部を一度に錬金することは無理でも、腕を溶かしたりは出来たんじゃないかしら。ルイズは訝しんだ。

 

もちろん答えはyes。ただ、ルイスだって生き物なんだ。思い付かないことだってあるのだ。

 

「……というわけで、貴女しか出来なかった光景があちらよ、ルイズ❤」

 

「誤魔化した!? 誤魔化したわねあんた……出来たんでしょ実は、ねえ!」

 

「いいからほら、前、前♪」

 

「前じゃな……なあっ!?」

 

視界が晴れてそこに見えたものに、ルイズは驚愕した。

 

理由は、24倍ルイズの袖から先が目の前の残骸に無かったことだ。

 

子供のおもちゃや、プラモデルにある仕組みのロケットパンチ。その仕組みをルイスは、余計なルーンを混ぜることでねんどろいど、もといゴーレムに仕組んでいた。それは先日不幸にあった土のドットメイジ、ギーシュがゴーレムを作る時、戦乙女を形取るのと似たようなものである。それの利便性を追求して応用、改良をルイスなりにしてみたものだった。

 

腕の内側に仕組まれているバネを、縮めたままにしていたつっかえ棒こそ、出っ張りの正体。

 

それをルイズの爆発で破片残らず粉微塵にして、さらに爆風で一度より強くバネが縮められる。そして反動で勢いよく延びたバネが、先にある拳を押し飛ばしたのだ。

 

この結末が今のもぬけの殻と化した腕と、飛翔する拳だった。

 

「いや……何あれ。」

 

だがその拳はどこにもない。ルイズが見ているのは拳でも、それを直撃して四散しながら、真っ赤なトマトになったフーケでもなかった。

 

外したわけでもない。ルイズの目には、爆発前とは違う訳のわからない物が映っていたからだ。

 

「とりもち。」

 

「そんなもの……どこから……あ!」

 

宝物庫の更に上、屋根の部分に白いとりもちが大きくへばりついていた。よく見ると、人の形をしている不気味な部分がある。

 

「あなたの……錬金。」

 

「当たりよ。ご褒美に明日になったらいっぱい、愛してあげるわ。」

 

「い、いらないわよ!」

 

ルイスがあとから唱えた錬金によって、ルイズが打ち出した高速のロケットパンチは空中でとりもちとなり、拡がりながら空を舞うフーケへ当たっていたのだ。

 

粘土の直撃による死は免れても、屋根に勢いよく叩きつけられたせいか、フーケと思われるそのシルエットは、少し痙攣しているだけで動きそうにない。ルイスの錬金をフーケでは返せないと思われるが、万が一の対策として意識の刈り取りも行われていた。

 

「シュヴルーズ先生のお仕置きを応用してみたわ。あれだけの物になるとわたし一人じゃぽい

っと飛ばせないけれど……貴女がいたから、ね。」

 

「私が……。」

 

「そうよ……ほらね、貴女だけに出来ることがちゃんとあったでしょ? ありがとうルイズ、あなたのお陰よ。」

 

そんな言葉を贈られたのは、はたしていつの日以来だったか……。

 

送り主は自分で、ある意味自画自賛なのかもしれない。それでもルイスは、確かな手応えからくる熱いものが込み上げてくるのを感じていた。

 

「さて、と……窒息して死体になられちゃうと、尋問できなくなって貰えるお金も減っちゃうし、そろそろ降ろしてあげましょ。」

 

ルイスが杖でもう一度錬金をかけると、とりもちを似た何かに変えて、粘着力を弱くしたようだ。ずりずりと壁を這うスライムの様に、それがゆっくりと下へと落ちていく。地面にまで来ると、そこから更にルイスは錬金をかけ、逃げればすぐに殺せるように油に変えた。中からは秘宝と思われるものが入っている箱と、やはり気絶していたフーケが、被っていたフードが脱げた姿でそこにいた。

 

「う、嘘!?」

 

「ほ、本当に……!」

 

正体を聞かされていた三人がその場に駆け寄ると、露になったフーケの顔を見て驚いていた。

 

「……ミス・ロングビル。」

 

三人はそれぞれ三文字ほど、フーケの正体である名前を教えられていたようだ。どうやらその文字はぴったりとロングビルの名前にあったらしく、各々が頭の中で確認を繰り返していた。

 

キュルケとタバサはこの瞬間、ルイスが未来の人間であると確信したようで、改めてルイスを見ると、キュルケが悲鳴をあげる。

 

「ルイス!?」

 

「……!」

 

遅れてルイズが振り返ると、ルイスが気を失って倒れていた。怪我からくる痛みに限界を迎えたのだろう。

 

「ルイズ、はやく宿直の先生を呼んできて!」

 

「う……うん!」

 

近づこうとしてそれを止められると、慌ててルイズは助けを求めて走り出した。ルイスに死んでほしくない、その思いが体裁を忘れさせ、スカートから染みの残る下着が見えるのも忘れて全力で走っていく。

 

「あなたは……フーケの見張りを。」

 

「ええ、任せて。逃げようものなら丸焦げにしてやるんだから。」

 

そう言ってルイスにタバサ、フーケにキュルケがつくと、近くに意識のある人間が誰も居なくなったことで、タバサはルイスへ注目した。

 

「未来の……人間。」

 

この使い魔は、恐らく自分の運命の先も知っている。そしてきっと、タバサが心に潜めている野心と願いも。

 

聞きたい、しかしフーケという正体すら言わない彼女から、未来を変え得る話を聞くことが出来るとは思えない。

 

「……。」

 

力で聞き出すことも、彼女の戦いを見る限り自分の力量では難しいと、タバサには思えた。

 

杖を強く握る。やり場の無い思いをまるでそこにぶつけるかのように。

 

目の前に答えを持つ者、ルイスという存在がいるのに知ることが出来ない。そのことに、タバサは、先程のルイズに似た焦燥感を覚えるのだった。




≡キャラクターメモ≡
・ルイス
耐久力は人間並、下手すると羽に頼ってるので特定の行動力は人間以下

でも性的体力は底無し。

思考が少女漫画に支配される恋する乙女よろしく、何か色んなものに染まっている。


・ルイズ
二次創作のみんな大好き錬金爆破を修得。

それになんとか価値を追加でつけたくて、こんなお話に。
もちろん本物のねんどろいどはロケットパンチはできない。

ちょっとルイスへの思いが変化。


・タバサ
ん?


・キュルケ
レズではない。


次回、フリッグの舞踏会。
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