失われた音   作:まくランド

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リリカの物語四話目です。
投稿にめちゃくちゃ時間かかってしまいました・・・
今回はまあ、のんびりした感じの雰囲気です。
肩の力を抜いて楽しんでいただければ幸いです。


失われた音 第四楽章

 

「なるほどねぇ、西行妖の力によって幻想という概念が殺されたと、なかなか興味深いわね」

 

冥界から戻った翌日、私は再び妹紅の案内で永遠亭を訪れていた。永琳からなにかいい方法がないか聞くために。今回は姉さんたちも一緒である。

 

「それで、貴女からは騒霊とは違った雰囲気を感じたわけね」

 

永琳が納得したように言う。騒霊と違う雰囲気?どういうことだろう。

 

「ん?私、なんか変な雰囲気出してるの?」

 

ちょっとよく分からないので聞いてみた。

 

「そうね、騒霊は本来なら存在感の薄いものなのだけど、貴女の中の幻想が死んでいる今、貴女は騒霊では無くなっているの。どちらかというと人間に近い状態ね」

 

なんと、今の私は騒霊ではないのか。アイデンティティの喪失である。というか、それって大丈夫なのだろうか。

 

「それ、大丈夫なの?いきなり消滅したりしないよね?」

 

ルナサ姉さんが尋ねる。

解決する前に消滅とか勘弁願いたいものだ。

 

「まあ、大丈夫よ。むしろ、消滅する可能性は騒霊より低いわ。人間にも異能を持つ者はいるし、幻想の音を奏でる能力が使えないこと以外は不便はないでしょう」

 

まあ、ひとまず心配はないといったところか。問題は全く解決していないが。

永琳によると、解決策はまだ分からないそうだ。取り敢えず、自分たちであちこち当たってみるしかないか。

 

「ありがとう。色々と参考になったよ」

 

永琳はなかなか信頼できる。流石元月の頭脳といったところか。

 

「お、もういいのか?」

 

部屋の外から妹紅が戻ってきた。心なしか、服がボロボロになっている気がする。

 

「あれ?どうしたの、それ」

 

私は妹紅に聞いてみた。

 

「ん?ああ、輝夜とケンカしてな。まあ、私の勝ちだったが」

 

なにやってんだか。まあ、私たちの話を聞いても退屈だろうし、別にいいか。

 

「あら、何を言ってるのかわからないわね。私の圧勝だったじゃない。まったく、これだから地上の民は…」

 

妹紅の後ろから現れた少女が言った。彼女も服がボロボロである。

彼女は蓬莱山輝夜。不老不死の月の姫であり、妹紅の因縁の相手らしい。普段はお淑やかで非常に美しいらしいが、妹紅に会うと好戦的になるようだ。

 

「ハッ、お前の方が再生が1秒遅かっただろ、だから私の勝ちなんだよ」

 

「あらあら、貴女の方が1秒早く倒れたじゃないの。そんなことも分からないのに、私に勝っただなんてお笑い草だわ」

 

うーん、こういうのなんていうんだっけ?五十歩百歩?

 

「あの二人、いつも勝負がつかないのに自分が勝ったって言い張るのよ。実際は引き分けなのだけど」

 

どちらも負けず嫌いな性格らしい。妹紅は昔の仇と言っていたけど、割と仲が良いんじゃないだろうか。

取り敢えず、用は済んだので早く帰りたいのだが、妹紅が口喧嘩をやめないと帰りようがない。

 

「大体、お前は昔から難癖つけて自分の負けを認めようとしないよな!そのせいで私の父は恥をかいた!」

 

「フン!あれも、結局は偽物だったじゃないの。嘘をついて勝ちを得ようとするなんて、卑怯者のやることよ!」

 

・・・ますますヒートアップしている。どうしたものか。と、永琳が二人の方へ歩み寄る。

 

「なんだと!だったらーー

 

「いい加減にしなさい」

 

永琳は静かに、たった一言だけ言い放った。声は大きくはないが、二人を黙らせるのには十分な威圧感を放っていた。

二人とも、一瞬にして押し黙る。

 

「まったく、妹紅、貴女は彼女たちを案内する役目があるでしょう。輝夜も、いつまでそんな格好をしているの。はしたないわよ」

 

永琳に言われて二人ともすごすごと引き下がる。やはり、流石である。

 

その後、私たちは永遠亭を後にし、妹紅の案内で竹林を抜けて帰ってきた。

 

「ねぇ、これからどうしましょうか」

 

メルラン姉さんが尋ねる。正直、解決の目処は立っていないのが現状だ。

 

「うーん、参ったね、八方塞がりって感じか」

 

「まあ、色々試していくしかないんじゃない?取り敢えず今日は疲れたから、明日また考えようよ」

 

「そうねー、取り敢えず危険は無いようだし、じっくり考えていきましょう」

 

こうして、私たちはそれぞれの部屋に戻り、明日に備えて眠りについた。

 

(・・・え・・ん、・・・い・・て・・、・・を・・・)

 

うーん?なんだ?夢を見てるのかな。誰かが語りかけてくるが、はっきりとは聞き取れない。

 

(わた・・・を・・・て・・)

 

一体誰だろう。私は口を開いた。

 

「あなたはーーー

 

目が覚める。朝になっていたようだ。さっきのは一体なんだったのだろう。夢にしては、はっきり覚えている。

 

「おはよう、リリカ」

 

「ああ、姉さん、おはよう」

 

メルラン姉さんと挨拶を交わす。

 

「ねえ、昨日考えたんだけど、お寺に行ってみるのはどう?あそこは妖怪が修行しているわ。何か掴めるかも」

 

メルラン姉さんが提案する。まあ、何もしないよりは、こういう風に色々手がかりを探していく方がいいか。

 

「そうだね。じっとしていてもしょうがないし、試しに行ってみようかな」

 

後から起きてきたルナサ姉さんにもそのことを伝え、私は命蓮寺へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「ほら、頑張って下さい。もう少しですよ」

 

私は今、命蓮寺の境内の掃除をしている。なんでこんなことをしているのかというと、

『命蓮寺お試し入門!今なら一ヶ月間無料でお寺での暮らしが体験できます!三食寝床付のお得なコースです』

という張り紙を見て、せっかくだしお寺で修行すれば、なにか解決へのきっかけが掴めるかも知れないと考えたからである。

 

「いや、たかが掃除だと思ってたけど結構大変だね」

 

「当然です。掃除は煩悩を綺麗に取り除くための基本なのです。これが中途半端であれば悟りを開くことはできません」

 

寺の住職、聖白蓮が言う。彼女は人妖種族問わず平等に接する人格者である。だが、彼女の見ているところで手抜きはできない。

 

「ふう、とりあえず終わったよ」

 

「はい、ご苦労様です。次は、坐禅を組みましょう。準備してきてください」

 

命蓮寺の修行はなかなかストイックなものである。短期間であれば新鮮で楽しいかもしれないが、ずっと続けるとなるとどうだろう。まあ、余計なことは考えなくなりそうだ。

 

「あんたも物好きねえ。わざわざ自分からこんなところに来るなんて」

 

振り返ると、縦ロールの髪型にサングラスをかけ、 指輪や宝石をちりばめたおよそ寺には似つかわしくない格好をした少女が立っていた。

 

「あんた、ここに何の用よ」

 

「別にぃ〜、私がどこにいようと勝手じゃない」

 

私の質問に適当な答えを返す。この少女が先の憑依異変の首謀者、依神女苑である。彼女は私たちのライブを利用して金を巻き上げていたらしい。正直、気にくわない。

 

「あら、女苑じゃない。久しぶりね」

 

聖が戻ってきた。女苑は以前この寺で修行していたらしい。

 

「げっ、聖!」

 

「げっ、じゃないでしょう。ふらっといなくなるんですから、まったく・・・それで?また門徒として修行しに戻ってきたのですか?」

 

聖は半ば呆れ気味に言う。

 

「いやぁ、今日は別の用事だったんだけど、また今度にしようかなぁ〜」

 

そういうと、女苑は振り返ってそそくさと帰ろうとした。

 

「待ちなさい。貴女、なにか隠してませんか?」

 

女苑の体がビクッと震える。あ、図星なのね。

一瞬の沈黙の後、女苑は全力で駆け出した。

と、聖の姿が一瞬にして消え、女苑の行く手に移動した。

 

「なにを隠しているの?見せなさい」

 

女苑を捕まえた聖は手荷物を調べる。

 

ゴトッ!

女苑の鞄から何かが落ちた。

 

「あら、これは・・・」

 

酒である。この寺には不飲酒戒というのがあるはずだが・・・

しかも、一輪と書かれた紙が貼ってある。これは・・・

 

「まあ、またですか・・あの子も懲りないわねぇ」

 

聖は穏やかに言う。ただし、全身から感じる気配は寒気のするようなものだった。

 

「リリカさん、私はちょっと用事ができたので、先に行っててもらえますか?」

 

そう言って、聖は女苑を引きずりながら奥の方へ消えていった。

・・・南無三。

 

その日、一輪の姿を見たものはいなかった。

 

そして、日は流れ、私は一ヶ月の入門体験期間を終えようとしていた。その前日の夜、私は夢を見た。

 

あたり一面真っ白な部屋。私の向かいにはなにか影のようなものが見える。その影が語りかけてくる。

 

(姉さん、姉さん、私を、見つけて)

 

今までも何度か見た夢だ。何を言っているか聞き取れなかったが、今日は不思議と理解できる。

でも、私は三姉妹の末っ子で、妹はいないはずなんだけど・・・

 

(お願い、私をーーー

 

そこで目が覚める。

うーん、聞き取れるようにはなったが、よく分からない。私に妹なんていたっけ?

などと考えていると、聖が迎えにきた。

 

「おはようございます。今日で終わりですね、どうです、何か掴めましたか?」

 

ああ、そういえば今日が最後だったか。日々充実していて忘れていた。というか、ここに来た目的も忘れかけてたけど・・・

 

「まあ、解決の糸口は見つからなかったけど、心に余裕はできたかな」

 

「それは良かった。仏門というのは、心にゆとりを持つことが目的の一つでもありますから。リリカさんは真面目に修行していましたし、いつでも歓迎しますよ」

 

「そう?まあ、考えとくよ」

 

そうして、私は命蓮寺を後にし、屋敷へ帰った。

 

「ただいまー」

 

私はそう言ってドアを開けた。

 

「リリカ!帰ったのね!姉さんが大変なの!」

 

メルラン姉さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。

ルナサ姉さんに何かあったのだろうか。

 

「どうしたの?ルナ姉になにか・・」

 

「実は、私たちはこの一ヶ月能力を取り戻す手掛かりを探していたのだけど、あまりいい情報は得られなかったわ。それで、姉さんがーー」

 

一体何事だろうか。ルナサ姉さんの部屋の扉を開ける。ルナサ姉さんはいない・・いや、部屋の隅で佇んでいる。なんかブツブツ呟いている。

 

「鬱を発症しちゃったの・・・」

 

「ええ・・・」

 

うん、まあ、うーん、なんだかなぁ・・・

 

「あら、リリカ、おかえりなさい。この一ヶ月何も得られなかったわ。ふふ・・役立たずの姉さんでごめんね?」

 

今までもこういったことは何度かあった。姉さんたちは能力の関係上、発作的に発症するのだ。こういうときの姉さんは面倒くさい。時間経過で元に戻りはするが。

最近演奏してないから、色々溜まっているのかもしれない。

これは、早く能力を取り戻さなければ・・・

メルラン姉さんも躁を発症したら本当に手がつけられなくなる。

 

 

こうして、私は決意?を新たに能力を取り戻す方法を再び模索することにした。




はい、失われた音 第四楽章いかがでしたでしょうか。
本当はもっとキャラ出したかったんですが、文章力が足りぬぇ・・・
日常回みたいなやつです。ちょっと脱線気味ですね。
リリカの夢に出てきた影、一体何者なんだ・・
次が最後の予定です。是非お楽しみください。
ではまた。
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