失われた音   作:まくランド

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リリカ・プリズムリバーの物語最終回です。
後日談なので短めですが、楽しんでいただければ幸いです。


失われた音 終楽章

夜の幻想郷に音が響く。

 

「オラァァァァァァ!!もっとテンション上げてきなよォォォ!」

 

静かなはずの夜を切り裂く叫びは幽谷響を彷彿とさせる。

 

「鳥目になってもいいって奴は前に来なァ!」

 

夜雀の声に観客は熱狂する。

 

「今日はプリズムリバー楽団の復活祝いとして私たち鳥獣伎楽との合同ライブだ!皆盛り上げていくよ!」

 

その声で観客はさらにヒートアップする。私たちは、それに合わせて舞台に登る。

お客さんの声が大きくなる。私たちの名前をそれぞれ叫んでいるようだ。

 

「皆さん!長らくお待たせしました!私たちプリズムリバー楽団の復活ライブ、鳥獣伎楽とのコラボです!!存分にお楽しみください!!」

 

メルラン姉さんが叫ぶ。躁の音を操る姉さんは観客を盛り上げるマイクパフォーマンスに最適なのだ。観客のボルテージがさらに上がる。

私の役割は姉さんたちの音に当てられたお客さんが暴走しないよう調整することだ。姉さんたちの音に比べるとあまり目立たないが、重要な役である。

 

鳥獣伎楽の歌声は迫力があり、私たちも負けじと音を張り上げる。

私は、ルナサ姉さんの鬱の音、メルラン姉さんの躁の音、ミスティアの人を鳥目にする歌声を演奏しながら調整するというなかなかハードな役割をこなしているが、失敗する気はしない。私の中にはもう一人の魂があるのだ。彼女と一緒ならばどんな難題でも苦にはならない。

 

 

 

私は彼女の魂を取り込んで、三日ほど寝込んでいた。存在の不安定な騒霊として人の魂を取り込んだことによる副作用らしい。その後、目覚めた私は、少しだが能力を使えるようになっていた。そして、確実に以前の自分とは違うという感覚を覚えていた。

 

それから二週間ほどたったころ、私は幻想の音を操る程度の能力を以前のように使えるようになっていた。

だが、それだけではなかった。

今までは、姉さんたちの個性的な音を抑えて観客への影響を軽減することが精一杯だったが、最近になって、姉さんたちの奏でる鬱と躁の音の度合いを自由に操れるようになったのだ。

つまり、観客への影響を自由に制御することができるようになったというわけだ。

そしてそれは、ミスティアの能力が加わっても変わらずコントロールできていた。

 

「凄いわリリカ!本番でも完璧に私たちの音楽をコントロールできてる!」

 

「これは驚いたね。私たちの能力が完全に調和されてる」

 

姉さんたちが口々に褒めてくれる。

 

「今の私は絶好調だよ!どんな音楽だって私たちの力で最高にしてあげるから、手加減なしの存分に演奏してよ!」

 

そう、私の中にはもう一人の魂、レイラ・プリズムリバーの魂が存在するのだ。

確かに、私が魂を取り込んだ時点でレイラという存在はこの世から消滅した。しかし、私の魂と一緒になったレイラは私として、私の中で共に生きている。彼女の力は凄まじく、私の能力を蘇らせるだけでなく進化させてしまったようだ。流石は私たちの生みの親なだけある。

そして、時々私の演奏の手助けをしてくれるのだ。直接声を聞くことはできないが、彼女は感覚で訴えかけてくる。おかげで、私自身も姉さんたちの音の変化により敏感になったと思う。

 

ルナサ姉さんの鬱の音が強くなる。と、私はその余剰分の音を幻想へと変化させ、適度なものへと調整する。

反対に、メルラン姉さんの音が弱いと感じたら、幻想から音を作り出し、躁の力を強める。

鳥目の能力は観客の視覚を制限することで音への感覚を敏感にさせる。ただし、完全に見えなくなると意味がないので、これも丁度良い程度に調整する。

そして、音を反射させる能力で私たちの音楽の質を高める。これ程までに演奏しがいのある組み合わせもなかなかないだろう。

 

 

「じゃあ、新曲といこうか!"今宵は飄逸なエゴイストver.ウィズ鳥獣伎楽"!」

 

先の憑依異変の時に雷鼓さんと演奏した曲の鳥獣伎楽コラボバージョンである。私たちのメロディに合わせてミスティアと響子、二人のシャウトがこだまする。鳥獣伎楽のファンもプリズムリバーのファンも、最高の熱気の中合いの手を繰り返す。

 

 

 

 

 

「これで良かったんでしょう?幽々子」

 

「そうね。これがあの子の望んだことよ。彼女たちには大変な思いをさせてしまったけれど」

 

「姉達と一緒に音楽を奏でたいと成仏せずに冥界に留まり続け、貴女に頼んで能力を殺し、自分が取り込まれることで願いを叶えるなんて、相当な自己中心主義〈エゴイスト〉よね」

 

「そうねぇ。まあ、それくらい強かじゃないと幻想郷では生きていけないわ。それに、皆楽しそうだからいいじゃない。それはそうと、貴女にもお礼をしなきゃね。色々手を回してくれたみたいだし」

 

「友人の頼みだもの、当然のことよ。でも、そうねぇ、私、御節とか濃いお酒が怖いわ」

 

「あらそう、なら妖夢に用意させないとね」

 

「私は庭師であってメイドではないはずなんですがね…」

 

「あら、風景を引き立てる料理を用意するのも庭師の仕事なのよ」

 

「貴女は花より団子でしょうに」

 

 

 

 

 

 

演奏が終わる。観客の盛り上がりは最高潮だ。

 

「では、次の曲が最後となります!私達の原点の曲であり、そして、最も大切な人への曲を聴いてください!

"幽霊楽団〜Phantom Ensemble"」

 

メルラン姉さんの声を合図に、演奏が始まる。

ミスティアたちの音と私たちの音が広がり、そして収束する。

 

私達の演奏は終わらない。何度でも、何度でも、私達が存在する限り、この世界を廻り続ける。かつて、一人の少女が願ったように。私達がここにいる限り。

 

 

 

 

そして、夜は更けていくーー




失われた音、これにて終幕です。いかがでしたでしょうか。プリズムリバー三姉妹って結構想像を掻き立てられる生い立ちですよね。レイラが死んでも存在してるところとか謎が多い。
プリズムリバーウィズ鳥獣伎楽…聴いてみたいです。
この話を書いてる途中にあるサークルさんがプリバの曲を公開したんですよね。めっちゃ好きです。
それでは、この辺で。
ではまた。
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