私の管轄する街にはぐれ悪魔が侵入した。それを討伐するように大公より依頼がきたのだ。
私は下僕である、朱乃、祐斗、小猫、そして最近下僕となったイッセーを連れて町はずれにある廃屋に来た。
侵入したはぐれ悪魔は狂ってこそいるものの、強さは私たちでも十分に倒せる相手だ。
なら、悪魔になったばかりのイッセーへのレクチャーを兼ねるつもりでいた。
しかし、状況が変わってしまった。
変わり出したのはイッセーに
「!!・・・廃屋に人間の気配です」
「なんですって!?」
廃屋には討伐対象のはぐれ悪魔バイサーがいる。なら、その人間が襲われている可能性がある。
「急ぐわよ!」
『はい!』
その人間を助けるためにも急いで向かわないといけない。そう思っていた。
だが、廃屋に到着し中に入るとそこには一人しかいなかった。
165cmくらいの人物。顔には左右が黒と白で分かれている仮面をしていて、性別が分からない。
普通なら人間がはぐれ悪魔に殺されたと思う。
だがこの人物から漂う気配は人間であり、依頼時に聞いたはぐれ悪魔の人相と全く違っている。
そこから考えられることはあの人間がはぐれ悪魔を倒したということだ。
周りを見ると、床に大きなくぼみがあったり壁に何かが刺さったような跡があるためここで戦闘を行ったのもわかる。
それが仮説をより決定付けている。
「あなた、何者かしら?」
警戒は怠らない。この人物が何者か分からない以上、警戒は必要だ。
「こんにちは。『王』リアス・グレモリー、『女王』姫島朱乃、『騎士』木場祐斗、『戦車』搭城小猫、『兵士』兵藤一誠。自分の名前はクロノ。退魔師です」
私の問いにクロノと名乗る人物は返してきた。これは話会いに持ち込める可能性がある。
だが、私だけでなく下僕の名前と駒の配置も知っているとなるとこっちについて調べているということだ。
「部長、退魔師ってのは?」
「基本は悪魔祓いと変わらないわ。だけど、退魔師は個人で動いてることが多いの」
悪魔祓いは教会に、はぐれ悪魔祓いは堕天使の元に集っているが退魔師はそうじゃない。
悪魔祓いが軍属の兵士だとすれば、退魔師は雇いの傭兵だ。
だから基本的に政治的交渉は難しい。退魔師の組織もあるが、全員が所属しているわけじゃない。
「あなたはここで何をしていたのかしら?」
「依頼を受け、はぐれ悪魔バイサーを討伐していました。あなた方が来る少し前に討伐し終えましたが」
やっぱり。
「いつからこの町に?」
「そうですね。兵藤一誠が悪魔になる頃には居ました」
一応答えているように聞こえるが、分かったのはイッセーが悪魔になった最近にはすで居たと言うだけ。答える気はないのだろう
「私たちを狙う気は?」
「今のところあなた方を狙う意味がありません。退魔師をしているのも修行の一環ですので。狙っていたのなら入学と共に一度は攻撃を仕掛けているかと」
「私たちに勝てるというの?」
「それはやってみないとわかりませんよ」
相手の力量がいまいち読み取れない。少なくともはぐれ悪魔を無傷で倒せるほどだという事だ。
どこまで信用できるか分からないが現状では敵対する気はないようだ。
「なら、詳しく話がしたいから私たちと一緒に来てくれないかしら?ついでに、その仮面も取ってほしいわね」
「それは無理な話です。今まで貴方たちに気付かれないように動いていたのに正体を明かす真似はしたくありません。仮面も、そして名前も、隠すために使っていますから」
喧嘩を売ってるのかしら?さっき名乗った名も偽名だと言ったわよ。
「なら、無理やり連れていかせてもらうわ。ついでにこそこそ動いてたわけも吐いてもらうわ!」
交渉決裂。なら、捕らえて聞き出せばいい。
「朱乃、祐斗、小猫!殺さない程度に痛めつけてあげなさい!」
『はい!』
「みなさん血の気が多いですね」
まず最初に動いたのは祐斗だ。
騎士のスピードを持って、クロノの右側から斬り込む。
普通の人間なら対処できないスピード。だがクロノは反応し、右手を振るった。
「なっ!」
祐斗の剣はクロノのナイフで防がれた。ただ、防がれただけならそこまで驚かない。
なら何がそこまで驚かせたのか。今浮いているナイフで防がれたのだ。
クロノは投げたナイフで祐斗の剣を防いだ。それも弾いたわけじゃない。今も鍔迫り合いのようになっている。
でもクロノはナイフを握っていない。
動きの止まっている祐斗に抜刀するように腰にあった剣を抜き振るう。
その剣を躱し祐斗は体制を立て直した。祐斗が離れた今もナイフは宙に浮いている。
クロノは浮いているナイフを掴み、懐に入れた。
あれは神器かしら?
パラパラパラ・・・
少し離れたところで小猫が階段だったであろう岩を持ち上げている。
「・・・潰れて」
その岩をクロノに向かって投げた。
「潰れたら死んでしまいます」
クロノは手を前にかざした。
それだけで、岩の動きが止まってしまった。
何かしらの力を使っていることは確かだ。モノを操る力か。『僧侶』であるギャスパーのような停止の力かもしれない。
「朱乃!」
「はい。行きますわよ!」
小猫が投げた岩を目隠しにし、朱乃が雷を岩ごと貫いた。
これで倒せるとは思えないが、能力についてつかめるはず。
雷による閃光が止む。
そこに、クロノの姿は無かった。
まさか、あれで消し飛んだとか・・・?
「一応自分は人間なんですが、それだとふつう死にますよ」
一瞬の不安を消し飛ばすように声がかかった。
二階の床が崩れ吹き抜け状態になっている場所の空中に居た。
「あなた方と戦う理由がありませんのでこれで失礼します。もし、自分を探し出すことが出来たのであれば話し合いに応じますので頑張って下さい。それでは」
それだけ言うと後ろの穴から逃げるように消えていった。
追うにも気配すら消えており追いかけることが出来ない。
「部長、どうなさいますか?」
朱乃が聞いてくる。
「そうね。少なくともすぐに敵対する気はないようだし急がなくていいわ。でも、いつか必ず見つけ出すわよ!」
最後の言葉には腹が立った。丁寧に言っているが明らかに探せるものなら探してみろと言っている。そこまで言うのなら見つけてやるわ。
クロノは『入学』と言った。なら学園に関係する人物かもしれない。なら学園の人間から探ってみることにしよう。ソーナにも手伝ってもらえば漏れも無い。
必ず見つけ出してあの仮面の下を暴いてやる!
その夜、私にささやかな目標が出来るのであった。
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