苦々しいリーダー【艦これ二次創作】   作:シグ&リデ=覚醒

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過去編です。

自分「ねぇねぇ2人とも、出番が欲しいって言ってたよね?」
時雨「え、まぁ…うん」
自分「じゃあさ、過去編の語りやる?」
夕立「い、いいの!?わ、私やりたいっぽい!」
時雨「まぁ…夕立がやりたいって言うなら僕も…」
自分「そっか。じゃあ宜しくね」
夕立「任せるっぽい!」
時雨 (だ、大丈夫かなぁ?)

※今回、ちょっと新キャラさんの口調崩壊が…。
ファンの皆さん本当にゴメンなさいです。



第拾壱話外「北上~産廃の後始末~」

+゜・。○。・゜+゜・。○。・゜

 

昔々、とある場所にとても変わっていた鎮守府があったんだ。

 

え、どこが変わってるだって?ふふっ、慌てない慌てない。簡単に説明するから。

 

えっと、普通の鎮守府…及び提督は「第1艦隊の旗艦」を秘書艦に任命するんだけど。この鎮守府では違ったんだよ。

 

そこの提督は適材適所を重視していた。だから力だけで就任出来る旗艦と、頭脳が必要な秘書艦を一緒の役職にしたくなかったんだ。

 

そこでそこの提督は決めたんだ。みんなのヤル気を掻き立てる為にも、登用試験を作るってね。そしてこれが全ての元凶だった。

 

……さて、このお話のメインキャラを紹介するよ。まずはご存知の通り、北上だね。

 

彼女はこの鎮守府の…まぁ中堅の下の方ってところだったんだ。だけど彼女は周りから全く信頼されていなかった。

 

理由は簡単。彼女は天才だったんだ。ロクに勉強も訓練もしてないのに、登用試験でまぁまぁの成績を残していたからだよ。

 

その上で、彼女は協調が苦手だったんだ。マイペースだったんだね。だから…努力しても結果を出せない人達からは疎まれていた。

 

まぁ、彼女は全く気にしてなかったようだけどね。マイペースだから。

 

それで…北上が何をしているかだけど、どうやら鎮守府内をブラついてるみたい。

 

 

 

「はぁ…かったるい」

 

どうやら、北上は鎮守府内のポスターを見つけたみたい。そこには「登用試験のお知らせ」って書かれているよ。

 

因みに…この登用試験は実は2種類あって。まぁ簡単に言えば「体力テスト」と「科挙」だよ。

 

このそれぞれの成績優秀者が、それぞれ旗艦(この鎮守府ではエースと呼ばれる)と秘書艦になれるチャンスを得るわけだ。

 

因みにペースはそれぞれ年4回。科挙を先にやって、1か月遅れで体力テストだね。今回は科挙のお知らせみたいだ。

 

……北上は旗艦にも秘書艦にも興味が無いんだ。ただ周りがやってるから自分もやってるってだけみたい。乗り気じゃ無いんだね。

 

「まぁいいや、今回も適当に済ませよー」

 

あ、大事なことを言い忘れてた。この独特の制度が理由なんだけど、ここは周りから「天下一鎮守府」って呼ばれてるみたい。

 

……そんなある日、北上は寮に帰る途中だったんだけど、噂話を耳にしたんだ。

 

内容は以下の通りだよ。

 

「おい、聞いたか!?またあの駆逐艦、空母の先輩に喧嘩を売ったらしいぞ!?」

 

「聞いた聞いた!あの野郎…勢い付いてるからって調子に乗ってんな!」

 

あの駆逐艦。北上もこの話は知っていて、その血盛りな性格と実力で着々と階段を登りつめているって聞いたことはあったんだ。

 

因みに…その彼女の所為で、鎮守府内が2つに分かれかけていてね。

 

まぁエースの決定戦は殴り合いになるから、駆逐艦はそれまで出る幕が無かったんだ。普通に戦艦とかもいるわけだからね。

 

その敵をバタバタとなぎ倒す姿に感動を覚えた駆逐艦達は、その彼女を応援していたし、それ以外の艦達は彼女を良く思っていなかった。

 

まぁうん。北上はその闘争にも興味を持っていなかったんだけどね。

 

「……くだらない」

 

というか、北上はこのシステム自体をあまり良く思って居なかったんだ。彼女はああいう血生臭いものが嫌いだったんだろうね。

 

因みに…その駆逐艦が、このお話の重要人物の2人目。名前は確か、綾波…だったよね。

 

そう、駆逐艦の綾波。後に北上の宿敵となる駆逐艦だよ。あ、これネタバレね。

 

あぁそれと…補足しておくよ。科挙と違って体力テストの方は階級に分かれてて、それぞれの階級別にテストがあるんだ。

 

それの優秀者が階級を上がっていって、1番上の階級の1番がエースになるわけだね。

 

まぁその後も「現職エースとのタイマン」っていう最終試験があるけど…その話はもう少し後に回すよ。

 

因みに綾波は前回のテストも1位を取って、次のテストから北上と同じ階級だったんだ。

 

「……まぁどうせ勝てないだろうし、適当に済ませますかー、面倒くさいし」

 

北上は誰にも聞こえないような小さい声でそう呟いて、寮に入っていった。表情は…まぁ気怠そうな顔をしてたよね。

 

~~~

 

事件…って言うほどでも無いんだけど、転機が訪れたのはその科挙が終わった後だよ。

 

北上が目を覚ますと、同じ寮の巡洋艦達が一同に介してザワザワと騒いでいたことに気が付いたんだ。だから彼女はその場所に行った。

 

「あ、北上!ちょっとこっちに来てくれ!すげぇニュースだぞ!」

 

その内の1人に呼ばれて近付くと、全員が新聞を囲んでいたことに気が付いたんだ。

 

それは鎮守府内のローカル新聞で、この鎮守府内の気になるニュースがたまに流れるようになっていたんだ。

 

そして…その記事の一面にはデカデカと綾波の顔が載っていて、その隣に申し訳なさそうな顔の少女が1人写っていた。

 

「この駆逐艦の野郎…空母を弟子にとりやがったぜ!どういうつもりだ!?」

 

北上はその記事を見て疑問点を持たなかったんだ。他の巡洋艦と違ってね。

 

何せ綾波が弟子にとった空母は、この時に科挙で…1位とは言わないものの、かなりの成績を残していた空母だったからだね。

 

言わずもがな、エースと秘書艦は仕事で協力することが多いんだ。

 

だから、本気でエースを狙っている人物が未来の秘書艦と仲良くし始めても変な話では無い。北上はそう感じたんだ。

 

……こういう辺り、誰がエースでも良いと思ってる北上らしいよね。本当に。

 

そして…綾波の弟子になったその空母。それが重要人物の3人目。彼女は大鳳っていう名前だね。

 

因みに…彼女は凄く頭は良かったんだけど、体が弱かったんだ。一般的に大鳳って筋トレマニアのイメージなんだけどね…。

 

あと、秘書艦は提督を庇わないと行けないから、貧弱なのはそれはそれでマズイんだよ。だから彼女は綾波に弟子入りしたみたい。

 

……最初の頃は同じ空母内で論争が起きたみたい。でも彼女は本気で秘書艦を目指していて、その眼光に周りが負けたみたいだよ。

 

まぁここで大事なのは、当初の北上はこのニュースに興味を示さなかったってことだね。

 

 

 

その後、体力テストが行われた時に、案の定1位は綾波だったんだけど、綾波はその結果に満足がいってなかったんだ。

 

当たり前だね。明らかに1人手を抜いていたのが居たんだから。

 

だから綾波は捕まえたんだ。足早に帰ろうとしていた北上を。テストが終わって駆逐艦らに褒め称えられた後にね。

 

「おいっ、北上って言ったな?さっきのアレはどう言うつもりだ?」

 

「うーん?どういうことー?」

 

「どういうことじゃねぇよ。テメェ明らかに手を抜いたろ?あれは何でだ?」

 

綾波は北上が舐め腐ってると思ったんだろうね。乱暴に北上の胸ぐらを掴んだんだ。

 

一方で北上はすまし顔だよ。まぁ適当に済ませようと思ったんだね。

 

「何でって…特に理由は無いけど?」

 

「……そうかよ。話には聞いてたが、テメェ中々イかれてんな。まぁ別に良いけどよ」

 

そう言って手を離した後、綾波はその場を去って行ったんだ。

 

~~~

 

それから凡そ2年の月日が経って、鎮守府中がこれ以上ない盛り上がりを見せていたんだ。

 

あの後も着々と実力をつけていった綾波と大鳳が、遂に2人揃って1番を取ったんだ。

 

北上はその事を新聞で知って、近々2つ同時に最終試験が行われることも知った。

 

最終試験の内容はさっき言った通り、現職のエースとのタイマンなんだけど、実は科挙も現職の秘書艦との勝負なんだ。

 

「へぇ…同時開催なんだー」

 

実は…北上にとって、これに関しては初めての経験だったんだ。

 

……彼女もこの鎮守府で産まれ育った身。心なしかワクワクしていたみたい。やっぱり血?は争えないんだね。

 

因みに、最終試験に関しては完全に見世物と化していたんだ。

 

そして…開催当日。少し寝坊した北上は、同僚に腕を引っ張られて会場に向かって。そこで少しワクワク感を失ったんだ。

 

……会場が物凄くうるさくて、しかも駆逐艦が集ってたからだね。もちろんその中心には綾波が居て、周りからチヤホヤされてたんだ。

 

それを見た北上は思ったんだ。今から此処で血生臭い戦いが始まるんだなぁと。

 

しかも駆逐艦らとそれ以外の艦らの仲は知っているから、きっとヤジが飛んだり妨害が横領とかするんだろうなぁと。

 

……そういうのが嫌いだった北上は、適当な理由をつけてその場を退散して、もう1つの会場…執務室に向かったんだ。

 

一応、この秘書艦の方も見世物にはなっていた…けど、秘書艦は殆ど他の艦らとの交流が無かったから、誰も見に来ないのが通例だったんだ。

 

だからこそ…北上が執務室前に到着した時、入り口にいた提督は微笑んでくれたんだと思った。既に最終試験は始まっていた。

 

実を言うと、北上は向こうよりもこっちの戦いの方に興味があったんだ。1番の理由は…現職の秘書艦が北上と同じ軽巡洋艦だってことだね。

 

此方の最終試験は、提督が作った超難問集いの筆記試験を「お互いに向き合った状態」で解くという、緊張感しかない試験なんだ。

 

言わずもがな…そこにいた提督も、挑戦者の大鳳も、現職の秘書艦だった軽巡:大淀も、誰1人として口を開いていなかった。

 

北上は少し息を飲んで、暫くその様子を眺めてたんだけど、結局は緊張感に耐えられなくなって、その場を立ち去ったんだ。

 

因みに…テストの内容はほぼ全てが記述らしくて、状況が明示されて「どうするのが正解か」というのを聞く問題が多いらしいよ。

 

……難しいよね。しかも相手と向き合って…か。僕は絶対に解きたくないかな。

 

さて…少し視点を動かそうか。場所もまた体力テストの方に戻すよ。

 

 

 

「……来たな」

 

体力テストの方、綾波が仁王立ちしてたっぽい。これも通例で、現職のエースの方が遅れてくるのが暗黙の了解だったんだって。

 

そして…その人物が顔を見せた瞬間、駆逐艦以外がわぁーって盛り上がりを見せたの。

 

……現職のエースは戦艦の霧島っぽい。彼女は眼鏡をクイっとして、綾波を凄く睨んで彼女の前に立ちはだかったっぽい。

 

すると周りから凄い音量の声が飛び交ったっぽい。いけーとか負けるなーとかそんなのっぽい。それを聞いて2人ともニヤついたっぽい。

 

「いやぁ。改めて見ても凄い威圧感ですねぇ」

 

「……ふふっ。褒め言葉と受け取っておくわ。今日は宜しくお願いしますね」

 

そして…そのあと暫くして、審判を任されている工作艦:明石が駆けつけてきたっぽい。そしてそのまま直ぐに試合が始まったっぽい。

 

「さぁ…下剋上の始まりだ!」

 

「マイク音量…チェック!ワン、ツー!」

 

2人がそう叫んだのはほぼ同時っぼい。そして…2人は本気の殴り合いを始めたっぽい。それを見て観客も大興奮っぽい。

 

……北上がこういうのを好きになれないっていうのも、私は何となく理解出来るっぽい。

 

 

 

さて…少し時間を飛ばすっぽい。綾波と霧島がタイマンを始めてから約1時間半後っぽい。

 

執務室の机の前に大淀と大鳳が横並びに立っていて、椅子に座って解答用紙を整える提督さんを眺めてたっぽい。

 

……提督の命で2人は揃って執務室を後にしたっぽい。晩御飯を食べ終わる辺りに結果発表になると聞かされたっぽい。

 

そしてその際、提督の口から「綾波が勝利した」ということも告げられたっぽい。

 

それを聞いた大鳳は目を輝かせて、全力で綾波の所に向かったっぽい。そして彼女の後を追うように、大淀も其処に向かったっぽい。

 

……申し訳ないんだけど。この辺りの感動ストーリーはちょっと割愛するっぽい。理由は単純に、北上に関係無いからっぽい。

 

~~~

 

それで…綾波がエースに、大鳳が秘書艦に任命されてから、数ヶ月経った後の話なんだけど。北上たちが1箇所に集められていたんだ。

 

そこには鎮守府内の中堅クラスがズラッと並んでいて、駆逐艦は1人も居なかった。だから北上は、もう人選で全てを察したんだ。

 

「……君達に集まってもらったのは他でもない。あの新エースの冒瀆についてだ」

 

そして案の定、反旗を翻そう団結運動の協力要請だった。当然ながら北上は、最初はそういうのに興味はなかったんだ。

 

でも確かに、エースになってから綾波は…まぁ調子に乗ってると言えば調子に乗ってたのかな?それで彼女を良く思わない人も多かった。

 

何より、その場をまとめていたリーダーから発せられた言葉に、周りにいた(北上以外)全員が激しく同調したんだよ。

 

というのも…2人が今の役職に就いた後、大淀と霧島が揃って姿を消したんだ。

 

実はこれは今回だけじゃなくて、エースと秘書艦は交代するたびに前任が姿を消すのが普通だったんだね。

 

恐らく、前々からこれを疑問に思っていた人達が、新エースが駆逐艦なのを理由に調査を進めようとしたんだろうね。

 

……北上は勿論、こんな馬鹿げたことに乗るつもりはなかった。どうでもいいと思ってたんだ。けど想定外の事態が起きてね。

 

「それで…だ。これの調査を…北上。君に一任したい。やってくれるかな?」

 

まさかの名指しを食らったんだよ。流石の北上もこれには驚いて、1度は嫌だと口にした。だが北上に否定権は無かったんだ。

 

「……北上。君以外に適任者が思い付かないんだよ。お願い出来るかな?」

 

そいつは乱暴に北上の肩を掴んで…優しい言葉で脅迫した。周囲も「お前がやれよ」みたいな空気で満たされていた。

 

その時の周りの目を見て、北上は察したんだ。自分は嫌われ者だから、何かあった時に責任を全部押し付けられるんだって。

 

……みんなクソ野郎なんだって。

 

「はぁ…。分かったよー」

 

結局は首を縦に振るしか無かった。北上はそいつからインスタントカメラを受け取って、その場を流れ解散にしたみたい。

 

 

 

次の日から北上は早速行動を開始した。

 

元から独りだった北上は、それを活かして着々と情報を集めていったんだ。

 

具体的に言うと…綾波と大鳳の行動パターンから、執務室の棚の中身、得体の知れない出入り禁止のドアの位置まで様々だね。

 

もちろん、備えとして専用のメモ帳を作って、それを部屋に残しておいたりもした。

 

……実を言うと、調べていくにつれて北上は段々と恐怖を感じていたんだ。

 

もしかしたら得体の知れない秘密があるのではと考え始めていて、特に提督の趣味嗜好が判明してないのがそれを駆り立てたんだね。

 

更に…それを後押しするように、北上はある情報を掴むことが出来たんだ。

 

……そもそも。提督は普通の業務をこなす裏で、何か別の仕事も請け負っていた。まぁそれは鎮守府の全員が知っていたんだけど…。

 

内容を誰も知らなかったんだ。けど北上は、それに近付くヒントを手に入れたんだ。

 

(な、何…これ…?)

 

北上は夜中に執務室横の書類倉庫に忍んだ時に、その冊子を見つけたんだ。と言っても、ただの運営の記録だったんだけどね。

 

けど中を覗いた北上は、直ぐに気が付いたんだ。資金の出入を記すページ、そこの数字が明らかにおかしいって。

 

(たまーに資金が数十万…いや数百万に達する勢いで増えてるねー。しかもこの日付…も、もし私の予想が正しかったら…)

 

北上はハッと気が付いて、そのページと数十ページ前を見比べたんだ。そのページには出撃及び深海棲艦との戦闘記録が残ってたんだけど…。

 

(……やっぱり、ピタリ一致だねー。これは写真に撮って残すべきかなー)

 

と思うが早いか、北上はもうカメラを構えて、そしてそのそれぞれの資料をパシャリと撮って、写真に残したんだ。

 

その…深海棲艦を大量に討伐、若しくは強力なのを討伐した日に、明らかに資金が増えているということを示す資料をね。

 

~~~

 

そこから更に数週間後、また体力テストが行われた日。呆気なく綾波が優勝したのを見届けたその日の真夜中のこと。

 

北上はある場所に向かったんだ。彼女はこの数週間の間に色んな情報を握っていて、今日で終止符を打つつもりだったんだ。

 

……彼女はもう覚悟を決めていたんだ。もし自分が帰って来なかったら部屋のメモ帳を見てくれと仲間に告げていたみたいだしね。

 

「はぁ…はぁ…」

 

北上は鎮守府の外れ、立ち入り禁止区間を訪れたんだ。もちろん理由があってね。

 

ここは資料では「電気周りの設備が…」みたいな感じだったみたいだけど、此処に秘密があると北上は情報を手にしていたんだ。

 

そして…息を整えた北上は、周りを何回も確認した後、予めくすねておいた鍵を使って中に侵入したんだ。音を立てないようにしてね。

 

……中はまぁ資料で北上が見た通りだね。得体の知れない機械が忙しなく働いていて、金属製の通路や階段が隙間を埋めていたんだ。

 

それを北上は暫く眺めていたんだけど、ハッとなって慌てて奥に向かったんだ。

 

出入り口がこの1つしか無いからね。パッと見てサッと帰ろうと思ったみたい。

 

だからだろうね。北上は階段を降りる時に音を立てないようにするのを忘れてたんだ。それが後々命取りになるんだけどね。

 

何であれ…北上は1番下まで階段を降りた時に、大きい扉を見つけたんだ。そしてそれを躊躇せずに直ぐに開けたんだ。

 

「ひ、広っ…!」

 

扉の向こうには大きな空間が広がっていて、空調が効いているお陰で温度も湿度も程よく気持ちよい部屋だったんだ。

 

でもそんな気持ち良さも、部屋の真ん中にデンと構えた大きな物に全部吹っ飛ばされたみたいだね。まぁそりゃそうか。

 

明らかにそのデカい…クローゼット?の為に空調が効いているように見て取れるから。

 

でも此処まで来たら後には引けない。北上はそう考えて、そのクローゼットに近付いて。

 

そこで凄い悪寒を感じたんだ。これを開けたら本当に引き返せなくなると察したんだ。でも北上は…それを勇気を出して開けたんだ。

 

 

 

開けてしまったんだ。

 

 

 

「……えっ」

 

最初は目の前の光景が信じられなくて、北上は呆然と立ち尽くしたんだけど、彼女は直ぐに恐怖で体を震わせたんだ。

 

それもそのはずだよね。もしかしたら勘付いてる人もいるかも知れないけど、その巨大クローゼットの中にあったのは。

 

大淀の死体なんだから。

 

クローゼットの屋根部分から、輪っかになった紐が5本ぶら下がっていて、その右端のロープに大淀は吊られていたんだね。

 

それ以外は外傷も無くて、こう言っちゃなんだけど、凄く美人さんに見える死体だったんだ。いやまぁ美人さんなんだけど。

 

「そ、そんな…どうして…!?」

 

あのマイペースで有名な北上でも、これは流石に衝撃的過ぎたのか、足を震わせながら腰を抜かしてしまったんだ。

 

流石の北上も…持ってきたカメラを構える気力は無かったみたい。

 

しかも冷静になる前に、北上にとって最悪の事態が起きてしまったんだ。

 

「……見てしまったんですね?」

 

北上はバッと振り返って、そこに居た大鳳と目を合わせてしまったんだ。因みに、大鳳は気味が悪いほど笑顔だね。北上と違って。

 

「た、大鳳…!あ、あれって…」

 

「見て分かりませんか?大淀さんですよ。いつ見ても綺麗な顔ですよね」

 

大鳳はまるで定型句を口にするかのように、サラサラっとそう言いのけたんだ。それが北上をますます焦らせたんだね。

 

「な、何で…!何で君はそんなに落ち着いているんだい!?だって彼女は…!」

 

「落ち着くも何も。これが私の大事なお仕事ですから。もう慣れました。まぁ最初は私も困惑しましたけどね。ふふっ」

 

そう言うと、大鳳は指差し確認をして、クローゼットの扉をそっと閉めて、北上の方をパッと振り向き、笑顔を見せたんだ。

 

「全く…まぁ見てしまったものは仕方ありませんよね。なので特別にお教えしましょう。本当は秘書艦しか知らないことなんですよ?」

 

大鳳は不敵に笑って半泣きの北上に近付き、そして…衝撃的な言葉を口にしたんだ。

 

「……用済みの秘書艦はですね。1年間ここで陰干しされた後で出荷されるんです。かなりの高値で取引されるそうですよ?」

 

「え、えっ…?か、陰干し…?取引…?き、君は一体何を…」

 

「私も始めて聞いた時は驚きましたよ。まさか世の中に『艦娘を食す』人達がいるなんて思いもしませんでしたから」

 

……さっきからそうなんだけど、大鳳は重ね重ね爆弾発言を続けてるよね。これには北上もタジタジになるしか無かったみたい。

 

因みに…脳が1番珍味として人気みたいで、その為に脳が1番ブクブク太った…あの厳しい試験を乗り越えた秘書艦が高値になるらしいよ。

 

蟹味噌を食べるあのノリだろうね。

 

「分かりましたか?つまり私は大事な『資金』を管理しているだけなんです。それなのに貴方は…いや貴方達は…全く」

 

大鳳はため息をついてから、未だ冷静になれていない北上の髪の毛を乱暴に掴んだんだ。

 

その時の痛みが効いたのか、北上は漸く心を落ち着かせ始めていたんだ。

 

そして大鳳は他言無用とだけ告げ、北上の襟首を掴んで退室しようとしたんだけど。

 

北上はそれを乱暴に振り払い、この異次元過ぎる状況の中で唯一頭に浮かんだ、ある質問を大鳳にぶつけたんだ。

 

「……大鳳さん。怖くないのー?だって話を聞く限り、もし君が今の座を奪われたら…」

 

そう、もしまた秘書艦が変わるような事があれば、次に陰干しにされて何者かに食されるのは、間違いなく大鳳になるよね。

 

……北上はこの時、少し希望を持っていたんだ。もし此処で彼女が嫌がるような事があれば、その隙間に漬け込めると考えたんだ。

 

でも…残念ながら北上の思惑通りには行かなかった。彼女は笑って「覚悟の内です」とだけ告げて、北上の袖を引っ張ったんだ。

 

この時に北上はこう思ったんだ。どうやら自分はこの大鳳を舐めていたようだって。警戒レベルを跳ね上げる必要があるってね。

 

けどそれ以上に、北上の中にはある思いが生まれていたんだ。御察しの通り…提督への反感だね。まぁそりゃそうだよね。

 

だって、冷静に考えてみたら…金儲けの為にあの提督は自分達を使ってたことになるから。

 

まぁそれだけならまだしも。自分達の命を軽々しく見ていることがこれで明らかになったし、しかもかなり非人道的っぽいからね。

 

更に加えるなら…恐らく霧島も似たような目に合ったと推測出来るよね。

 

要するに北上はこう思ったんだ。提督の金儲けの為だけに体力テストや科挙もどきをやらされてたのが、凄く馬鹿らしいって。

 

……その施設から大鳳と外に出た時、彼女は他言無用なのを念押ししたんだ。けどもちろん北上にそれを守るつもりはなかったね。

 

とはいえ…明日いきなり暴露するつもりもなかったんだ。この事を広めたりしたら絶対に鎮守府中がパニックになるからね。

 

だから北上は決めた。今すぐあの提督を戒めたい気持ちをグッと堪えて、明日からは霧島の行方も追跡を続けようってね。

 

……しかし。その判断がマズかったんだ。正確に言えば、それに肩を入れすぎて、あの馬鹿らしいイベントをサボった事がマズかった。

 

結論を先にだすとね。北上は怪しまれたんだ。何か悪いことを企んでいるんじゃないかーって、鎮守府の駆逐艦達にね。

 

何より、事情を分かってる駆逐艦以外達がこぞって北上を匿ったのが逆効果だったんだ。

 

今まで誰も私生活に触れようとしなかった嫌われ者に対して、一斉に仲間ヅラを始めたわけだからね。どう考えても怪しいよね。

 

そしてもちろん、この事は北上の耳にも入ったけど、提督の耳にも入ってしまったんだ。

 

……となれば。オチは分かるよね?

 

当たり前だけど。提督に意見を真っ先に言えるのは秘書艦なんだから。北上の潜入を見てしまったあの秘書艦なんだから。

 

そりゃあ…自分が有利になるような展開に持っていくよね。秘書艦は。

 

けど…この事に1番腹を立てたのは提督じゃなくて、綾波の方だったんだ。

 

彼女は、あの時の…体力テストで戦った時に手を抜かれたというアレをほじくり返して、北上にイチャモンを付けたんだね。

 

そんな感じのことがあって…遂に事件が起こったんだ。

 

~~~

 

ある日の朝。霧島の行方への糸口が見えたような気がしたそんな日。北上は得体の知れないお腹への圧力で目を覚ましたんだ。

 

「……おはようございます」

 

目を開けた北上はそれはそれは驚いた。何せ自分のお腹に乗っていたのは、此処にいるはずのない秘書艦の大鳳だったんだから。

 

「おっと…暴れないでください」

 

そして大鳳は北上の手首を掴んで押し倒して、不敵な笑みを浮かべた。一方でそんな事をされた北上はかなり慌てているね。

 

「た、大鳳…?こんな所に何の用事かなー?てか降りて欲しいんだけど」

 

「……単刀直入に申し上げます。提督から司令が出ました。私と貴方と綾波さんの3人で遠征任務です。なので早く準備してください」

 

「あぁ遠征ね。面倒くさ…え?」

 

今…何かヤバい事を言われた気がする。北上はそう思ったんだけど、質問を返す前に大鳳はそそくさと部屋を出て行ったんだ。

 

……自分とエースと秘書艦の3人で遠征?どう考えてもメンバーがおかしいよね?そうは思うものの口に出せず、北上はモヤモヤしたみたい。

 

とはいえ…嫌な予感がするのは間違いないから、北上はあのメモ帳を鍵付きの引き出しに入れ、鍵を持って部屋を出て。

 

大鳳が居ないのを確認してから隣の部屋に忍び込み、仲間の装甲のポケットに入れた。

 

(これでよし…っと。私に何かあったら、その時はよろしくね、阿武隈)

 

そして北上は眠っているそいつの頭を撫でた後、急いで着替えて船渠に向かったんだ。

 

 

 

「お、来た来た。おっせーぞ北上!」

 

……聞き間違いじゃなかったね。本当に綾波と大鳳しか居なかった。北上は少し戸惑ったけど、直ぐに笑顔で合流したんだ。

 

「ごめんねー。さ、早く行こっか」

 

「……そうですね。こんな仕事はさっさと終わらせてしまいましょう」

 

ふーっと息を吐く大鳳を横目に、北上と綾波は出撃の準備を始めていて。大鳳も遅れないように2人について行った。

 

そして…海に出た後は、綾波と大鳳が横並びになり、その後ろに北上が付いたんだ。

 

「しっかしまぁ…変わった人選だねぇ。何でまた私なんかが…」

 

北上はそう呟くも、2人は完全に無視を決め込み、仲良く談笑しているようだった。

 

だから北上は、黙って2人の井戸端会議を聞いた。内容は〇〇さんが面白いとか△△さんが足引っ張ったとかそんなのばかりだね。

 

……要するに。変な所は全く無かったわけだ。北上はそれを知って驚いたような、ガックリしたような感じだね。

 

そんな状況が3時間ぐらい続いて。不意に綾波が足を止めたんだ。

 

「さて…この辺で良いだろ。よしじゃあ北上、詳細を話すぞ!」

 

そして綾波の口から、提督の司令が言い渡されたんだけど。その内容自体に疑問点はないみたい。ただの警備任務だから。

 

(……要するにこの地域の治安が気になるから、3人で別れて調査しろーってことだね。まぁ任務自体は変じゃないけど…)

 

やっぱり人選が変だ。綾波はともかく秘書艦の大鳳を出すような任務じゃない気がする。北上はそう感じたんだけど。

 

「ま、気楽に行こうぜ北上!」

 

綾波がバシバシ体を叩いてくるし、大鳳は何も言わずに準備運動をしてて。

 

そんな2人にビビっちゃって、言い返すことは出来なかったんだ。だからそのままの流れで2人と別れるしかなかったんだね。

 

そして北上は、綾波に言われた座標に向かったんだ。けど困ったことに、そこに行くのにまた数十分かかっちゃうんだ。

 

「はぁ…今日も空が青いねぇ。海も真っ青で清々しいなー。なんて…」

 

北上は予め持ってきておいた小ぶりのオニギリを口にして、警備任務を始めた。

 

因みに…帰投命令は綾波からかかってくるらしく、それまで待てって言われたみたい。

 

 

 

けど…いつまで待っても帰投命令は来なかった。律儀に5時間ほど任務を続けていた北上は、日が落ちつつあるのを憂いていたんだ。

 

「……帰投命令遅いなー」

 

まぁこういう状況でも慌てないのはマイペースの北上らしいけどさ。自分の装備の異変にもっと早く気がつくべきだったね。

 

ふと現時刻が気になった北上は、自分が装備として持っていた羅針盤を見たんだ。太陽がいる方角を見ようと思ってね。

 

「……あっ!?」

 

この時、北上は初めて異変に気が付いたんだ。逆に今まで何で気が付かなかったんだろうっていうこのタイミングでね。

 

……羅針盤が壊されてたんだ。方角はおろか、文字盤の文字すら読めない状態だった。

 

いやまぁ確かに羅針盤って殆ど使わないけど、こういう時に使えないのって腹立つよね。北上もそう思ったみたいだ。

 

けどまだ北上は慌てなかった。彼女は落ち着いて、綾波と大鳳にこの旨を伝えようと思って、2人に通信を入れたんだ。

 

……繋がらなかった。だから北上は鎮守府の執務室にも連絡を入れた…けど、そっちにも繋がらなかったんだ。

 

それでも北上は慌てなかった。だって自分が来た方向ぐらいは分かるし、まだ1時間は日が沈まないと思われたからね。

 

「暗くなる前に…急ぎますかー」

 

そう言って北上は立ち上がって、足早にあの場所に戻ったんだ。3人が別れたあの場所に。

 

 

 

……此処で想定外の事態が1つ。太陽はまだ残ってたんだけど、雨雲がかかり始めたせいで予定より早く空が黒くなってしまったんだ。

 

例の場所にはちゃんと辿りつけたけど、その時にはもう真っ暗で何も見えなかったんだ。

 

「いやー参ったねぇ。ま、こんなこともあるよねー。気楽に気楽に…」

 

北上は眠たそうに欠伸をし、大鳳らが見える範囲に居ないか、探照灯を点けたり大声を出したりして捜索し始めたんだね。

 

……暫く粘ったんだけど、目的の人物の姿は見つからなかった。けど北上はあるものを海で見つけて、それを拾い上げたんだ。

 

「これ…ボトルメールじゃん。今どきこんな事する人がいるんだねぇ」

 

北上は少し微笑み、何の躊躇もせず蓋を開けて、中の手紙を取り出したんだ。

 

実を言うと、北上は恋文を期待してたみたい。まぁボトルメールだからね。でも期待通りの内容はそこに書かれていなかったんだ。

 

そこには…割と厳つくハッキリとした大きな文字で、一言だけ書かれていたんだ。

 

『さよなら』って。

 

その文字面を見たとき、北上はドキッとした。関係ないはずなのに、自分に向かって言われたような気がしたからだね。

 

「ちょ、ちょちょちょ…。タイムリーなのはやめて欲しいなぁ…!あはは…」

 

彼女は取り敢えず笑ったけど、自分でも笑えてくるほど力がこもって無くて。慌てて彼女はパッと周りを見渡したんだ。

 

……夜の海は静かだね。不安になるほど。

 

まぁ大事なのは、此処で初めて北上の中に「恐怖」っていうのが顔を出したってことだね。しかも遂に雨が降ってきたんだ。

 

……そういえば言ってなかったね。今の季節に関しては皆の想像に任せるよ。

 

まぁ僕としては初冬にして欲しいけどね。そしたらこの雨に「小夜時雨」って素敵な名前をつけられるじゃないか。

 

……北上は遂に精神に限界が見え始めていたんだ。やっぱりちょっと無理をしてたんだろうね。彼女はその場に立ちすくんだんだ。

 

本当は生真面目に此処で帰投命令を待つのが良いんだろうけど、北上にもうそんな気は微塵も残っていなかったみたい。

 

だから北上は、自分の頰を叩いて気合を入れ直して、自力で鎮守府に帰ると決めたんだ。自分の直感だけを信じてね。

 

まぁ…夜の海をがむしゃらに動いたらどうなるかっていうのは、御察しの通りだよ。

 

彼女は夜が明けかける所まで頑張ったけど、鎮守府に帰ることは出来なかったんだ。もう気力も体力も限界だったみたい。

 

特に北上にとって1番の大ダメージは、運悪く深海棲艦の家族?と遭遇してしまい、戦闘にもつれ込んでしまったことだね。

 

だから…東から昇ってきたお日様が照らしたのは、北上の綺麗な肌だけ。要するに彼女は、殆ど布を纏えていなかったんだね。

 

加えて北上は戦闘づくしだったから、燃料もお腹も殆ど空っぽだったんだ。これには流石の北上も死を覚悟したみたい。

 

「んぁー…もぅ無理…ぐふぅ…」

 

でも…後悔は無かったみたい。確かに死ぬのは怖いけど、自分はそれ相応のことをしたーって彼女は思ってたみたいなんだ。

 

……北上はかなり自己評価が低かったみたい。まぁ最期にあの手帳で提督を貶められそうなのは良かった…とは思ったみたいだけど。

 

そんな死にそうな状態でふらふらブラついていたら、太陽に照らされてて少し尖っている岩があるのを見つけたんだ。

 

「おー、これ良いじゃん」

 

北上はそれに近づいて、それにもたれかかって長い息を吐いたんだ。彼女の瞳に士気はもう微塵も残って無いみたい。

 

そして暫くその岩をペタペタ触って調べてたら、その岩の裏側に程よい角度をしている部分があるのを発見したんだ。

 

「あぁ…此処で一眠り出来そうだねぇ。良かった良かったー…ふぅ」

 

一眠り。北上は今そう口にしたけど、実を言うなら…もうこのまま目を閉じて、此処で死にたいって思ってるみたいだね。

 

何であれ、深海棲艦から逃げ切れた安心感や、暗闇の恐怖から解放されたのもあって、横になった北上は直ぐに眠りについたんだ。

 

……この一夜の経験が、北上を大きく変えてしまうんだ。主に「心の傷」的な意味でね。

 

~~~

 

……太陽が真上に登った時、北上は耳元で聞こえた大声で目を覚ましたっぽい。

 

そして意識が覚醒する前に、何者かに身体を思いっきり揺さぶられたっぽい。けどそれを振り払う元気は無かったっぽい。

 

「ねぇ…!だ、大丈夫かにゃ!?」

 

北上はゆっくりと目を開けて、目の前のその人物を見たっぽい。その人物は自分と目が合うと、にこやかに笑ったっぽい。

 

すると…北上を丁寧に岩陰に立て掛けて、彼女はその場を後にしたっぽい。

 

遠くから聞こえる彼女の声から察するに、仲間を呼びに行ったと判断して、北上は自力でゆっくりと立とうとしたっぽい。

 

「……痛っ!?」

 

けど、足に突然痛みが走ったっぽい。見ると脛の辺りから血が出てて、岩に血が付いてるのが分かったっぽい。

 

(あー、寝てる間に擦っちゃったんだねぇ。まぁこれぐらいは別に…)

 

北上はゆっくりと足を上げて、そこを適当に手でパッパと払った後で、大きく伸びをしたっぽい。この時に太陽の位置も確認したっぽい。

 

(うーん、お昼ぐらいかなぁ)

 

……北上がそう言って欠伸をした時っぽい。さっきの彼女が仲間を2人ほど連れて、焦った表情で帰って来たっぽい。

 

北上は漸く目が覚めて、3人に精一杯の笑顔で手を振ったっぽい。けど3人は、それぞれが複雑な表情を見せたっぽい。

 

それもそうっぽい。北上は自覚が無いみたいだけど、この時の彼女は恐ろしいほどやつれてたっぽい。しかも怪我だらけススだらけ。

 

「……事情を聞くのはあとクマ。先ずは私達の鎮守府に連れて行くクマ」

 

「同感です」

 

「もちろんにゃ」

 

そう言うが早いか、1人が持っていた包帯で北上の傷口をグルグル巻きにした後、3人で北上を丁寧に運んだっぽい。

 

……この時、北上はお礼とかを言おうとしたっぽい。けど思ったより衰弱が激しくて、口を開くことすらままならなかったっぽい。

 

 

 

運んでる途中に、4人は1人の空母と遭遇したっぽい。その顔を見た時に北上はちょっとドキッとしたっぽい。

 

それもそのはず。その空母は、あの反旗を翻そう団結運動の協力要請をしてきたあいつと全く同じ顔をしていたからっぽい。

 

だから…この空母が飛龍っていう名前なのも分かっていたっぽい。

 

後に分かることなんだけど、この飛龍さんがこの鎮守府の空母の中で最古参みたいっぽい。

 

……異変を聞きつけた当時の提督がやって来て、彼の指示で北上は飛龍と一緒に、入渠場に連れ込まれたっぽい。

 

因みに、北上を運んできた3人…球磨、多摩、大井の3人は、北上に食べさせるための料理を用意しに行ったっぽい。

 

 

 

「……これは酷いわね」

 

ヘロヘロで自力で動くのもままならない北上のために、飛龍は彼女の入渠を付きっ切りで面倒を見ていたっぽい。

 

そんな彼女は目を白黒させていたっぽい。その1番の理由は、北上の体に慢性的な傷がチラホラと残ってたことっぽい。

 

「こんな傷…さっさと入渠したら直ぐに消えるのに!あなた一体…どういう戦い方してたんですかっ!?全くもうっ!」

 

プンスカと怒りながら飛龍は北上の体を丁寧に洗っていくっぽい。そんな彼女を見て北上は少なからず驚いていたっぽい。

 

……こんなに他人に心配されたのが、生まれて初めてだからっぽい。

 

北上は少し涙ぐんでいたっぽい。けど飛龍が桶にお湯を入れる隙をついて、腕で涙を拭きとって誤魔化したっぽい。

 

「……お風呂から上がってご飯食べたら、何があったか洗いざらい吐いてもらいますからねっ!覚悟しててください!」

 

口調はお説教でも、愛がこもっていたっぽい。北上はまた泣きそうになったけど、今回は笑顔になって乗り切ったっぽい。

 

~~~

 

数時間後…北上は提督邸の一室に居たっぽい。そこの真っ白な布団に入って居たっぽい。

 

「ふぅ…何とかなったかー。やっぱり諦めずに、前向きに考えるのが吉だねー」

 

そう呟き、北上は満杯になったお腹をさすって…頭の中を自分が昨日までいた鎮守府のことでいっぱいにしたっぽい。

 

(任務のことを考えたら帰るべきなんだろうけど…でも提督の意向を考えたら…)

 

北上はこう考えたっぽい。もしかしたらこの件はあの2人の独断かもしれないって。でもそれは無きにしも非ずってレベルっぽい。

 

だから北上は確信したっぽい。自分は提督の命令で海に捨てられたんだって。そう考えたら大鳳を起用したのも察しがつくっぽい。

 

理由は間違いなく、あの禁忌に触れたからっぽい。それ以外に心当たりが無いっぽい。

 

つまり…自分が頑張って今からあの鎮守府に戻ったところで、居場所が無いまま同じ事をされるだけって、北上は考えたっぽい。

 

「うーん。これからどうしよー?」

 

……北上がそう呟いた時。不意に部屋の入り口が開いたっぽい。そして中に入って来たのは、北上の第1発見者の多摩っぽい。

 

「あ、元気になったにゃ?」

 

彼女は水が入ったコップが乗せられたお盆を手にしていたっぽい。そして部屋に入るや否や、棚の上にそのお盆を置いたっぽい。

 

「うん、おかげさまでねー。見ず知らずの私を助けてくれてありがとー」

 

……ようやく面と向かってお礼を言えたことに、北上は内心ホッとしていたっぽい。

 

そして多摩は、ベッドの横に椅子を付けてそこに座ったっぽい。彼女はとても心配そうな表情を浮かべていたっぽい。

 

「取り敢えず、元気になったのは良かったにゃ。でも…あんな場所にあんな状態で…、一体何があったんだにゃ?教えて欲しいにゃ」

 

多摩は優しく北上の手を握ったっぽい。その温もりにドキッとした北上は、少したじろいだ後で申し訳なさそうに口を開いたっぽい。

 

……ちょうどその時に飛龍もやって来たっぽい。飛龍はベッドに腰掛けたっぽい。

 

「えっと…何処から話そうかなー」

 

顔をポリポリ掻きながら、北上は経緯を話したっぽい。鎮守府のルールを破ったせいで夜の海に棄てられてしまったって。

 

……当たり前だけど、鎮守府の秘密は全く口にしなかったっぽい。まぁ艦娘を食べる人間がいるなんて簡単に口に出来ないっぽい。

 

「とまぁ、そういうわけだねぇ」

 

北上はそう平然と言ったっぽい。一方で多摩と飛龍は、信じられないといった表情で呆然と北上を見つめたっぽい。

 

 

 

しばらくの間、北上はその布団の中で療養生活を送ったっぽい。その時に提督からこの鎮守府の説明も受けたっぽい。

 

……この鎮守府は出来たばっかりの上、役割がかなり特殊なこともあって、まだ艦娘が6人しかいないと聞かされたっぽい。

 

因みに北上は、その6人全員の名前と顔を一致させてたっぽい。

 

(なるほど…軽巡が3人と飛龍、あと駆逐艦が2人かー。戦艦も潜水艦も居ないんだねぇ)

 

北上はそう考えつつ、外の青空を眺めていたっぽい。そんな時だったっぽい。

 

壁をノックして多摩が入って来たっぽい。手には北上の昼ご飯があったっぽい。

 

多摩はそれを一度棚の上に置いて、北上の額に手を触れたりして彼女の様子を眺めたっぽい。そして笑顔になったっぽい。

 

「うん、もう寝た切り生活は終わりで良いにゃ!十分元気だにゃ!」

 

「あ、あーうんそうですねー。本当にありがとうこざいましたー」

 

北上は横を向き、多摩から渡されたお粥を口に頬張ったっぽい。これは飛龍が作ったものらしく、トッピングの三つ葉が美味しいっぽい。

 

……多摩はお粥を頬張る北上をしばらく眺めていたっぽい。そして北上が食べ終わりそうなのを確認すると、こう言ったっぽい。

 

「さて、北上…!明日からのお仕事なんだけど、私達と同じ内容で良いかにゃ?」

 

「……え?」

 

「あれっ、もしかして帰りたいとか言うかにゃ?そ、それは絶対にダメにゃ!」

 

北上はまさかの発言に少し言葉を失ったっぽい。でも多摩の顔を見て、彼女が本気なのを北上は察したっぽい。

 

「そ、そんな…ちょっとルールを破ったぐらいで艦娘を棄てるようなところ、帰っちゃダメにゃ!絶対ぜーったいダメにゃ!」

 

多摩は北上に必死に訴えたっぽい。北上はそれを聞いて少し微妙な表情をしたけど、直ぐに嬉しそうに微笑んだっぽい。

 

やっぱり…心の何処かでは、こう言ってもらえることを北上は待ち望んでいたみたいっぽい。それをこの時に自覚したっぽい。

 

……北上はもう、多摩の言葉を嫌がる素ぶりを見せなかったっぽい。

 

「もういいよー。そんな必死にならなくても、帰りたいなんてもう言わないからー」

 

北上はそう言いつつ、無意識に多摩の頭を撫でたっぽい。多摩はすぐに嫌がって離れたけど、表情はずっと笑顔のままだったっぽい。

 

……そのあと球磨・大井の2人もその場に合流して、今後の意向を話し合ったっぽい。

 

その間もずっと、北上は嬉しそうだったっぽい。理由は単純に…この鎮守府の人達が、とても暖かかったからっぽい。

 

+゜・。○。・゜+゜・。○。・゜

 

 

 

続く

 




自分「お疲れ様」
夕立「はぁー!疲れたっぽい!」
時雨「こんなので良かったかい?」
自分「うんバッチリ!まぁ夕立のパートでシリアス感が殆ど無くなったけどね!」
夕立「ぽいっ!?」
時雨「実を言うと僕もそう思ってた」
夕立「が、がーん!」

なんか…すいませんでした。
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