苦々しいリーダー【艦これ二次創作】   作:シグ&リデ=覚醒

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第拾参話「??~???の???~」 後編

 

大体のメンバーがご飯を食べ終わりかけている中。

 

提督は空いていた席に腰掛けていた。そして晩御飯を用意していた瑞鳳に、もう食べたからと断りを入れる。

 

誰もが遠慮したのか、彼と同じテーブルには誰も来なかった。ただ1人…提督が自ら、自分の元へ呼び寄せた曙以外は。

 

彼は気が付いていた。曙は既に自分の分を作って食べ終えていたと。そして自分の部屋でのんびりしていたようだと。

 

曙は遠くから広間の様子を眺めていた。角に隠れて。だが提督に見つかって名を呼ばれしまった以上、姿を見せるしかなかった。

 

だが…広間に彼女が出て来ても、周りの反応は無かった。川内以外の巡洋艦と駆逐艦達が、瑞鳳のブルーマターに阿鼻叫喚していたのだ。

 

特に…美味しいと太鼓判を押していたのが、割と何でも食べる赤城とイタズラ大好きなのが分かっている川内だけだったから尚更だ。

 

「……ちっ。煩いわね」

 

「まぁまぁ、元気なのは良いことだよ」

 

「で、クソ提督があたしに何の用?」

 

曙は実に不機嫌だった。恐らく北上らが…特に響が周りに溶け込んできているというのが、彼女は気にくわないのだろう。

 

そんな曙に少し弱腰になるも、提督は淡々と目的を口にする。それはもちろん真実を話すということで、彼は真っ直ぐに曙を見つめた。

 

そして…曙は不機嫌そうなまま、さっき既に了承したみたいなことをぶっきらぼうに告げ、部屋に戻ろうとしたが。

 

「あ、曙!ちょっと待ちなさい!」

 

こっちに気が付いた暁に止められてしまった。曙は1回小さく舌打ちをして、振り向いて自分から暁の方に近づいた。

 

「はぁ…やっと捕まえたわ。貴方に聞きたいことがあるのよ」

 

「……何よ」

 

「あんたさ…北上が生きてるって私に言った時、物凄く慌ててたわよね?どうして?」

 

……曙の顔が曇った。今は正直言って答えたくない質問だった。だから適当にはぐらかして、彼女は江風の元へ向かう。

 

江風は相変わらず海風と距離を取っていた。というか取らざるを得なかった。曙は2人のこともその理由もよく知っていた。

 

……数分後。

 

「さて、みんな食べ終わったー?」

 

北上がそう呼びかけた時、ほぼ全員が椅子に座ったまま食休憩を取っており、時計はフタヒトマルマルを指していた。

 

この言葉を聞いて、眠たそうにしている電とか以外は、ビシッと気合いを入れる。

 

特に提督は真剣な表情を浮かべていた。一方の曙は不快感を隠していない。

 

「さて…何処から話そうかねぇ」

 

全員の視線が北上に集まる。そのことに内心ドキッとしながらも、瑞鳳と瑞鶴がキッチンから戻ってきたのを確認した北上は。

 

「じゃあ、私がこの鎮守府に来た経緯から話そうか」

 

と宣言し、まず自分の過去を簡単に話し始めた。もちろん綾波と大鳳の話を重点的に。

 

そして…あの忌々しき秘密もついに口から漏らす。それを聞いた周りは顔を青ざめた。

 

実を言うと、この鎮守府に来てからもあの忌々しき秘密を調べてはいた。そして…もう1人の行方も北上は突き止めていた。

 

……新旗艦の手で殺し、深海棲艦にしてから捕縛して高値で取引していたようだ。

 

「深海棲艦は謎が多いからねぇ。特にサンプルが少ない戦艦棲姫とかは研究所とかに超高値で売れるらしいよー?」

 

北上はそんな…正直いらない豆知識も混ぜつつ話を続ける。そして、自分をあの時助けてくれた飛龍らに感謝を述べて。

 

「で、こっからが大事な話で、あれは…そう、長門さんが着任するちょっと前だったねぇ」

 

+゜・。○。・゜+゜・。○。・゜

 

……今でもはっきり覚えてる。私は多摩姉を殺された憎しみで満たされてた。

 

特に…提督が多摩姉の墓の前で泣くのを見てしまったから。だから…意地でも犯人を見つけてやる!って意気込んでた。

 

その甲斐あって、私は事件の真相に繋がる情報をその時既に握ってたんだ。

 

……私が前にいた鎮守府。そこの提督が主犯の後ろ盾になってるってね。後に分かることなんだけど、これは正しかったんだ。

 

だから私は提督に頼んで休暇を取った。あの提督に復讐するために。それで私は元いた鎮守府にアポなし里帰りをしたんだ。

 

本音を言うと…此処に帰るのはダメーって言ってた多摩姉に申し訳ないって気持ちもあったけど、それは直ぐに追っ払ったよ。

 

んで、私はちゃんとタイミングを見計らって、鎮守府がもぬけの殻になったところを狙ったんだ。大規模な出撃中をね。

 

……今思えば、あれは何人か犠牲者を出して、金儲け用の深海棲艦を作ってたんだろうね。本当にあの提督には腹が立つよ。

 

何であれ…私は特にシンドいこともなく、執務室まで辿り着けたんだ。もちろん提督もその部屋でちゃんと仕事してた。

 

だから、私はドアを蹴破って中に入ったんだ。まぁ提督は驚く素ぶりを全く見せなかったから、そこは残念だけど。

 

あ、言い忘れてた。その時の私はフル装備だよ。連装砲も実弾入りでキッチリね。

 

……多分だけど、私は血眼だったんだろうね。提督は私の顔を見て全てを察したみたい。でも彼は命乞いなんてしなかった。

 

それどころか、彼は凄く冷静だった。私が前秘書艦と前エースがどうなったかを彼に言っても、悪びれることさえしなかった。

 

私それでちょっと…カチンときちゃったんだよね。しかも、私の前で堂々と言い放ったからね。艦娘は金儲けの道具だって。

 

……そこからしばらくの記憶が実は無いんだ。次に気が付いた時には連装砲から煙出てたし、もうその提督は血塗れになってた。

 

けど、恐怖とか後悔とか全く無かったよ。私は真っ当な正しいことをしたって思った。多摩姉の敵討ちを出来たとしか思ってなかった。

 

そんな余韻に浸ってたよ。けど…それは長く続かなかった。銃声を聞きつけて、恐らく提督に食事を作ってたであろう大鳳が来たんだ。

 

……提督を見て信じられないって顔してたよ。私を見て絶対に許せないって顔してたよ。

 

本当なら…自分を見捨てたこいつも殺したかったけど、それはただの私怨だから、多摩姉の敵討ちには関係ないと思って。

 

無視して帰ろうとしたんだ。けど大鳳がそれを許すわけなくて。当たり前だけど。

 

……綾波からやり方を教わってたんだろうね。彼女は私を思い切り押し倒したんだ。憎しみと悲しみが混ざった顔して。

 

「久し振りに顔を見せたと思ったら…!どういうつもりですか!?」

 

「どういう…つもり…?私は復讐に来ただけ。だから離してくれるー?」

 

「ふ、復讐…ですって…?」

 

……まぁそうだよね。提督は多摩姉を殺したみたいなこと口走ってたけど、大鳳がそれ知ってるかどうかは別問題だから。

 

それに…私もまだ甘かった。これを機に大鳳に「提督は悪人」というのを刷り込めないかと考えたんだ。ちょっと欲張ってね。

 

だから私は、色んなことを彼女に言った。ああだこうだ言ってみた。けど何1つとして大鳳には届かない…ことに気がついたんだ。

 

「ふ、うふふ…!気が付きましたか北上さん。そうです、貴方が何を言おうと、この大鳳には届きませんよ。私と提督は一心同体ですから」

 

……大鳳の薬指に指輪がハマってたんだ。それを見ちゃってね、私は心から彼女が嫌いになっちゃったんだ。

 

あのクズ野郎と契りを交わしたのかってね。その時も彼女に問い詰めたよ。もちろんそれも何1つとして届かなかったけどね。

 

それで私は、そのことへの怒り…というか、首を絞められて殺されかけたっていう恐怖か。それで大鳳を撃ったんだ。

 

そしたら彼女も血塗れになって倒れてね。これは流石にヤバイなぁと思ったよ。余計なのを撃っちゃったなぁって。

 

でも私は直ぐに思い立ったのさ、取り敢えず執務室への連絡網を全て切って、鎮守府中の電源を全て落としてね。

 

んで、私は鎮守府内をちょっと散歩しようと思ったんだ。折角だから休暇のお土産を1つ2つ用意しようと思ってね。

 

だから私は工廠に行ったんだ。良い感じに資材とか貰おうと思って。そしたらね、そこで凄く良いものを見つけたんだ。

 

+゜・。○。・゜+゜・。○。・゜

 

「んで私は、そこで見つけた建造途中の艦を背負って帰ってきたってわけ。いやーあの時の提督は驚いてたねぇ。うん、そんな感じ」

 

……周りから声は上がらなかった。眠たそうにしていた電とかもパッチリと目が覚めてしまっており、驚きを隠せていなかった。

 

「さて、此処で問題だよー。その『建造途中の艦』って誰のこーとだっ!?」

 

そして北上のこの質問に対し、首を傾げるものは…雷を除いていない。此処からの話の流れを察すると、1人しか考えられなかったから。

 

北上は周りの反応を見て少し笑った。ほぼ全員が正解の人物の方を眺めていたから。

 

「……となれば。どうして曙ちゃんが私を恨んでるかもよーく分かったよねぇ?」

 

そう言ってニヤッとする北上。一方で曙は唇を強く結んでいた。だから北上はそこで新たな情報を付け加える。

 

「因みに…そこの提督も大鳳もまだ生きてるよー。まぁ2人とも、元の仕事に戻れることは叶わなかったけどねぇ。ふふっ」

 

北上は不敵な笑みを浮かべた。それを見てしまったのか…遂に曙が立ち上がってしまう。だが彼女が何かを口にする前に提督が座らせる。

 

「まぁ…想定外だったのは、曙ちゃんに建造途中の記憶があったこと。まさか大鳳があんなに思い入れしてたなんてねぇ」

 

……そもそも。あの提督は駆逐艦があまり好きじゃなかった。

理由は簡単。戦艦や空母に比べて火力がないからだ。

 

もちろん拾ってきた駆逐艦はちゃんと利用するが、そこまで愛着は持ってなかった。

 

だがしかし、綾波がトップになったことで少し考えを変えたらしく、彼は駆逐艦の建造に着手を始めていたようで。

 

その第1号が曙だった。

 

「……ハッキリ覚えてるわ。あの人は定期的に私に会いに来てくれた。まだ眼が見えてなかった私に色んな話を聞かせてくれた」

 

ボソッと曙がそう呟く。彼女の言葉には明らかな憎しみが込められていた。彼女はその後も色々な情報を付け加えていく。

 

「あの人は…あたしの母親同然で…。あたしを助けてくれた…から。いつか…あの人の助けになりたいって思ってたのに…!なのに…!」

 

自分の髪をクシャリと握って俯く曙。そこから先の彼女の言葉は無かった。だが周りは誰もそれ以上の追究をしない。

 

……北上は分かっていた。曙は尋常じゃないほど大鳳を親愛し、自分を恨んでいる。

 

特に…自分は曙を見つけた時、自分は「大鳳を殺した」という旨を呟いてしまっている。

 

だから…前もそうだったが、あれは事故とか適当な嘘は通じなかった。

 

当然曙には理由も話したが、大鳳を撃つ必要は無かったという尤もな反論を喰らっていた。謝罪もしたが彼女は許さなかった。

 

それが今の今までずっと続いている。そして恐らくこれからも続くと思われる。

 

「ま、要するにー。姉を殺した犯人に復讐した私を、母親を殺した犯人として恨んでるーってわけ。『呪い』のきっかけはこんな感じ」

 

「で、でも…そいつは生きてるんだろ?」

 

「こいつの弾丸を頭に食らって、艦娘としての能力がほぼゼロになったのよ」

 

「そ、そうか。なるほど…」

 

長門がフォローを入れようとするも、曙にあっけなく遮られる。そしてその場にシンミリとした空気が流れ込む。

 

因みに…曙の北上への反感は提督も知っていた。というか前に1度だけ、北上の解体の申し出を曙が提出してきたことがあった。

 

もちろん提督は拒否した。直々に曙が告訴に来たが彼は曙にこう告げて打ち切った。

 

『君は家族の為に怒っている。それはあの時の北上もそうだったはずだ。当然それは許されることではないが、彼女は反省している』

 

……言わずもがな、曙は納得がいかないままだった。最終的に彼女は提督のことも恨み、2人まとめて陥れようと考えた。

 

その結果があの『呪い』だった。これは彼女にとって、かなり勝算の高い賭けだった。

 

その事を…曙は口にした。最高の憎しみを込めて、全員に聞こえるようにハッキリと。

 

「あんた達!今の話で分かったでしょ!?こいつが完全な悪だって!」

 

必死に訴える。だがこれだけではまだ押しが弱い。そのことも分かっていた。だから曙は最後の『呪い』を口にする。

 

「確かに…あんたの姉の事は無実を認めてあげる!けどね北上、あんたも分かってるんでしょ!?あたしが何を言いたいか!」

 

「……そう。遂に言っちゃうんだね?私が1番隠したかったことー」

 

「そうよ言ってやるわ!言ってやるわよ!あんた達良い!?こいつは…いやこいつが!」

 

 

 

その続きを聞いた時。1番息を飲んだのは、北上の直ぐ隣にいた長門だった。

 

彼女は信じられないといった様子で北上を見た。そしてそれは…遠くにいた海風と江風もそうだった。3人は言葉を失っていた。

 

……そうだ。北上は最初に言っていたじゃないか。彼女が前鎮守府を襲撃したのは、長門が着任する少し前の話だと。

 

考えたら当たり前の話だが、自分の鎮守府の提督と秘書艦が襲撃を喰らっていたら。その鎮守府の2人以外のメンバーがどう思うか。

 

少なくとも、泣き寝入りで終わらせる人は居ないだろう。特に大鳳の親友であった綾波や、彼女の配下であった仲間達は。

 

要するに…もし北上がこの提督や大鳳に対して事実上の殺人を行わなければ、その報復を向こうからくらう事も無かったのだ。

 

……曙が告げたのはそういうことである。

 

 

 

「……返す言葉が無いよー。悔しいぐらい事実だからねぇ。はぁ」

 

北上はそう呟いた後、長門や海風の方を見た。あらかじめ丁寧な導入をしておいたおかげで、彼女らが怒ってくることは無かった。

 

それでも…何か言いたげな表情はしていた。その理由を北上は知っていた。

 

「長門さん。海風ちゃん。2人とも言ってたよねぇ。妹を殺した真犯人は絶対に許さないーって。見つけたら復讐したいーって」

 

これを聞いた長門は拳を握りしめる。海風はそっぽを向いて俯く。2人ともこの発言の意味には辿り着いていたから。

 

「……真犯人。目の前だったねぇ」

 

北上は腕を広げてそう言った。彼女は覚悟を決めていた。長門や海風がどれだけ亡くなった妹を愛していたかは良く知っていたから。

 

例えどんな罵声が飛んでこようとも、どういう風に思われてしまったとしても、北上は全部受け止めるつもりでいた。

 

だが…2人が何かすることは無かった。それどころか逆に何か…スッキリしたような顔をして、北上の方を眺める。

 

「まぁ…こんなオチだったのは少しショックだが…。犯人がハッキリしただけ満足だ」

 

長門はハキハキとそう呟いた。そして周りに北上を責めるものは誰1人としていなかった。ちょっとやり過ぎだという意見はあったが。

 

ついでに言うと、どうやら『呪い』に加担したという罪悪感が他のメンバーにあったらしく、曙についても誰1人として咎めなかった。

 

……暖かいムードになる。だがもちろん曙はこれを良しとしなかった。だからまた何かで掻き乱そうとするも、江風に止められる。

 

「ボノちゃンさ、もうやめねぇ?」

 

「なっ…!?ど、どうしてよ!?」

 

まさかの江風からの要求で、正直言ってビビる曙。そして次の彼女のセリフに、更に曙は困惑することになる。

 

「……だってさ、憎しみからは何も生まれないじゃン?常識的に考えて」

 

江風は何かを悟ったようにそう言った。それを聞いて驚いたのは曙だけではない。後ろで様子を見ていた海風もである。

 

そして…曙が何かを言い返す前に提督が割り込んで江風の意見を推し、周りも同調した。

 

対する曙は、1番信頼していたはずの江風にこういう形で裏切られてしまい、半泣きになりつつも拳を必死に握って我慢する。

 

……ところを江風に見られ。空かさず彼女は本当のことを口に出す。

 

「なっ?ボノちゃン今さ、江風に嫌がられて嫌そうにしたじゃン?誰だって人に裏切られたらそうなるンだって」

 

「……だから何よ」

 

「あーえーっとな。その…仲良くしてくれる奴が悪巧みしてンだったら、止めるのが親友かなーっていう。まぁ…知らンけど」

 

相変わらず不機嫌そうな曙に向かって恥ずかしそうにボソボソ喋る江風。

 

要するに彼女が言いたかったことは…お互い親友だと思いあってる仲なのだから、ダメなことはダメと気兼ねなく言いたい…ということだろう。

 

そして彼女は、ボソボソとだが色々と自分の言葉に付け足していく。特に…自分は海風以外とは仲良くなりたいと思っていたことを。

 

「その…ボノちゃンが怒ンだろうから黙ってたけど、海風のクソ姉貴以外は悪い人って思えなくってな。クソ姉貴以外は」

 

やたらと「クソ姉貴」だけ強調して、曙を励まそうとする江風。後ろで春雨に引き止められている海風は完全に無視だ。

 

……曙はそれでも江風に歯向かおうとした。だが…彼女は周りの空気を読める。直ぐに彼女は自分の口をつぐんだ。

 

「ま、そういうこった。だから…な、さっさとそンな辛気臭いことは忘れて、皆と仲良くやろうぜ!な、ボーノちゃン!」

 

……周りは正直思った。主犯が何言ってんだと。だが誰もツッコミは入れなかった。

 

そして…抱きついてきた江風を必死に引き剥がそうとする曙を見て、周りからは微笑みが溢れるのだった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻はフタフタマルマル。メンバーは幸せそうに談笑を交わしていた。

 

特に…提督が明日を臨時休業にしたのが良かった。こんな時間にも関わらず、周りはかなりのウキウキ気分だった。

 

しかし、そんな幸せは長く続かなかった。まさに一難去ってまた一難とはこの事だ。

 

提督は明日も工廠に籠るため、自分だけ先にお暇しようとした。だがそのタイミングでコツンという音が聞こえたのだ。

 

どうやらその音に気が付いたのは自分だけらしい。提督は外に出て正体を確認する。

 

「こ、これ…艦上戦闘機?」

 

そこに落ちていたのは、1個の零式艦戦52型艦上戦闘機だった。どうやら先程の音は、これが壁に当たって地面に落ちた音のようだ。

 

そして…提督は少なからずこの装備を知っていた。というのも、実はこの装備は。

 

と提督が思ったその瞬間だった。その艦上戦闘機の直ぐ横に、1人の女性が現れた。

 

「ふぅ…何とか…なりましたね…」

 

……暗くて姿は見えなかったが、提督はその人物を知っていた。彼女は正規空母:加賀で、自分の親友が提督をやっている鎮守府のエースで。

 

間違っても、こんな血塗れでグッタリになるようなキャラではなかった。

 

「なっ、か、加賀さん!?」

 

彼女が血塗れなのは臭いで分かった。だから提督は急いで駆け寄って彼女の様子を見る。彼女は全身に何発も銃弾を被弾させていた。

 

……この時の提督の声を聞いて、何人かは外に出てきた。その中には比叡と霧島もいた。

 

「あら…2人ともお久しぶりね」

 

何を隠そう、比叡と霧島はかつてこの加賀がいた鎮守府にいた。だからお互いのことはよく知っていた。だからこそ2人は驚いた。

 

「そんな…どうして加賀さんが!?」

 

彼女の状況に2人はただただ驚いていた。その中で提督は赤城、飛龍、比叡、霧島という完全陣形で加賀を入渠させるよう指示する。

 

だが…加賀は1度それを拒み、駆け寄ってきた比叡らと提督に面と向かった。

 

「……時間がないの。私達の提督からの伝言を言うわ。聞き逃さないで」

 

そう断りを入れ、無理に自分を抱え上げる赤城と飛龍に嫌気をさしつつこう告げた。

 

 

 

「『北上を頼んだ』だそうよ」

 

 

 

そう言って、彼女は入渠場に運ばれていくのだった。彼女の大事な艦上戦闘機と共に。

 

 

 

「苦々しいリーダー」完

 





余談ですが。

最終話のサブタイトルは「むだい〜ごそうぞうのままに〜」と読みます。

まぁそんなことよりですね、ここまで読んでいただきありがとうございました。

正直…完成度があれなので、至らないところもあったでしょうが、怒らないで下さいね。

あとラストでお分かりの通り、艦これ二次創作をやめるつもりはないのでご安心を。

さて…言いたいことは全部言えましたし、此処でスパッと切っておきましょう。

……それではまた。いつか何処かで。
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