馴れ初め、その4。最後はアリス。
馴れ初めのお話は今回で終了です。つまり次回からはタイトルを考える必要が出てくると言うこと。ネーミングセンスのない私にはキツイなぁ……
まずはジャックにだけ話を聞いてもらいたいとという白雪姫の願いを聞き届け、部屋を後にしたジャック。
途中で何故かラプンツェルとも将来の約束を結んでしまったのだが、あれはきっと幼い子供故の軽い約束であり、大きくなったらきっと忘れているはず。とりあえずそういうことにして気持ちを入れ替え、赤ずきんたちの元へと戻って行った。
そうして今度は白雪姫によるジャックとの馴れ初めが語られたわけあであるが、その後にはつい先ほどと似たような展開が待ち受けていた。つまりまだ馴れ初めを語っていない少女の、先にジャックにだけ話したいというお願いだ。
「ごめんなさい、ジャック。わがままを言って……」
その少女――アリスはベッドに腰かけたまま、罪悪感を感じさせる表情で俯いている。
なお、今回はアリスの部屋ではなくジャックの部屋だ。白雪姫と一緒に食堂に戻った時には眠り姫もそこにいたため、もう自分の部屋が空いていることが分かったからである。
ちなみに眠り姫にラプンツェルとのことを話した所、知識を吹き込んだのは自分だと悪びれもせずに答えてくれた。先ほどまでジャックの部屋のベッドで眠っていた所、突如ラプンツェルがベッドに入ってきたらしい。そして何故眠り姫がジャックのベッドにいるのか理由を尋ねられ、その他にも様々な質問を投げかけられたため素直に答えていったとのことである。
悪意は無くただ疑問に答えてあげただけのようなので、責めるに責められないのが何とももどかしい。
「ううん、別にわがままなんかじゃないから気にしないでよ。僕だってできたら二人きりで話して欲しいことだしね?」
「二人きり……そういえば、これが初めてなのね。あなたと恋人になってから二人きりになるのは」
「そうだね。昨日は色々あって誰とも二人きりになれなかったから……」
記念すべき恋人が出来た日だというにも関わらず、昨日は恋人の誰とも二人きりになることはできなかった。
アリスたちは視子による様々な面からの健康診断を受けていたので仕方ないとも言えるが、ジャックはその気になれば一緒にいることもできたのだ。それをしなかったのは自分にも状況と自分の心を整理する時間が欲しかったからである。
「本当はちゃんと皆の恋人として色々しなきゃいけなかったのに、本当にごめんね?」
「気にしないで、本当に時間が無かったんだもの。それに……ジャックには私以外にも恋人が何人もいるから、仕方ないわ……」
仕方ない、と口にして一切非難の言葉を口にしないアリス。それは表情も同様であるが、『恋人が何人も』と口にした瞬間にはやはり複雑そうな表情を湛えていた。
眠り姫に初めて唇を奪われた時には若干瞳をピンクにしていたことを考えるに、その反応の理由は明白だ。恐らくはヤキモチの類に違いない。
(やっぱりアリスは親指姫と同じでヤキモチ焼きみたいだ。ていうか眠り姫みたいに気にして無い方がおかしい気もするけど……)
自分の恋人が自分以外の異性と仲良くしている。そんな場面に遭遇すればその手の感情を抱くのはむしろ自然な反応と言える。ましてキスした場面を目撃したのなら尚更だ。アリスと親指姫が特別ヤキモチ焼きというわけではなく、単純に眠り姫が特別寛容なのだろう。
(まあそれはともかく、アリスは昨日からヤキモチを溜め込んでるみたいだし、話をする前にした方が良いかな? き、キスを……)
同じヤキモチ焼きである親指姫を基準に考えるなら、できる限り早くキスしてあげた方がきっとアリスのためになるだろう。
まだ馴れ初めも聞いていないのにキスするのは若干の抵抗がある行為だが、アリスの場合はそうでもない。アリスは幼馴染故に誰よりも長く苦楽を共にした仲であり、そして憎からず思っている相手だ。前の世界での出来事や悲劇を考えれば、馴れ初めを聞かずともジャックを深く愛していることは分かっている。だからこそ気持ちに応えるのはやぶさかではない。
「そんなことより、話を始めましょうか。あなたとの馴れ初めなのだけれど――」
「あっ、待ってアリス。その前に、聞いておきたいことがあるんだ」
決意を固めたジャックは馴れ初めを語ろうとしたアリスの言葉を遮る。出鼻を挫く形になってしまったものの、アリスは全く気にした様子も無くただ小首を傾げた。
「何かしら? わざわざその前に聞いておきたいということは、馴れ初めについてのことではないの?」
「うん、違うよ。こんなこと聞くのはどうかと思うけど……アリスは、その……今、僕とキスしたいって思ってる?」
「き、キス……!? あ、えっ、それは……」
さすがにいきなりそんなことを聞かれるとは思ってもいなかったのだろう。ジャックの情緒もへったくれも無い問いに対して、アリスは頬を朱色に染めて動揺を露にしていた。
「……ええ、思ってるわ。今だけじゃなくて、私が別の世界の自分の記憶を得てからというもの、昨日からずっと……」
ただしそれは一瞬のこと。まだ多少頬は赤いものの、冷静に戻ったアリスは躊躇いも無く頷いた。
まさかここまで素直に肯定されるとは思っていなかったのだが、考えてみれば当たり前のことかもしれない。アリスたちは愛に満ちた幸せな日々を送っていた記憶を得たはずなのだから、そんな日々の中で交していた触れ合いだけが無い現状はとても辛いものだっただろう。その苦しみを拭い去って上げられるのなら是非も無い。
「そうなんだ……じゃあ、キスしようか?」
「い、いいの? だってジャックはあの時……」
「うん。君たちへの気持ちがまだ分からないからキスはできないって言ったよ。でもあれから色々あって考えが変わったんだ。恋人が六人もいる不誠実な関係を許容してもらっているんだから、僕に出来ることは何でもして君たちを幸せにしてあげなくちゃ、って……」
「ジャック、別にあなたのせいではないのよ。こんな状況になってしまったのは、あなたへの気持ちを胸に秘めたままにしていた私たちのせいなのだから……」
あくまでも自分たちが悪いと言うアリス。
しかし恋人達の中にはジャックに対して抱いていた想いが恋だと分かっていなかった子もいるし、何より馴れ初めで語られた出来事が無かった分、恋愛感情は薄かったと言わざるを得ないだろう。別にアリスたちに責任は無い。
「でも、僕には皆と恋人にならないっていう選択肢もあったんだ。誰も選ばなかったり、一人だけを選ぶっていう選択肢もね。それでも僕が全員を選んだのは皆を傷つけたくないからで、全部僕のエゴみたいなものだよ。それに、その……アリスたちみたいな可愛い女の子をいっぱい恋人にすることに、憧れが欠片もなかったわけじゃないしね?」
最低とも取れる発言かもしれないが、男など大体こんなものだろう。
ジャックの場合はそういう状況になってから最低な考えが浮かんだものの、やはり優越感のような邪な感情が無いわけではない。アリスに限らず、恋人達は皆魅力的な女の子なのだから。
「もうっ、ジャックは本当にケダモノね?」
お互いに自分に非があると言い張る現状をうやむやにするために最低な本音を口にしたのだが、アリスは毛ほども軽蔑やそれに類する感情を見せなかった。多少頬を染めているもの、むしろ微笑ましそうに笑っているほどだ。
「あははっ。否定してくれた君にそれを言われる日が来るなんて思わなかったよ。アリスはそんなケダモノな僕のことは嫌い?」
「いいえ。大好きよ、ジャック。愛してるわ」
そしてジャックが問いを投げかけると、微笑んだまま何の躊躇いも無く頷き愛の言葉を口にする。
元々憎からず想っていた少女からの愛の言葉。それも前の世界では愛の深さ故に悲劇を起してしまったほどの想い。こんな想いを真っ直ぐにぶつけられては、ジャック自身もその気になってしまうのは当然のことであった。
「アリス……」
慈愛に満ちた瞳でこちらを見つめるアリスを正面から見据え、その頬へ静かに手を伸ばす。触れた肌は思いの他熱を帯びていて、その熱さがまた愛の深さを感じさせてくれた。
「ジャック……」
それはアリスも同じだったのだろう。頬に添えられたジャックの手に自らの手を重ねると、温もりを楽しむように瞳を閉じていた。
ここまでくればきっともう言葉は要らない。ジャックは一度微笑みを零し、アリスの頬に触れたまま静かに顔を寄せ――
「んっ――」
――桜色の唇を優しく奪った。
これで六人の恋人達全員と口付けを交わしたことになったものの、ジャックの中には慣れというものは微塵も存在しなかった。相変わらず唇の柔らかさが堪らなく至福を感じるものであり、その隙間から零れた小さな喘ぎにはある種の興奮を覚えさせられる。
いい加減慣れてくれないとジャックの理性が危ないのだが、きっとそれにはまだまだ時間がかかる事だろう。何せ実際に恋人になったのは昨日の出来事な上、恋人は魅力的な少女たちが六人もいるのだから。
「はぁっ……ジャックぅ……」
「だ、大丈夫、アリス?」
ほんの数秒唇を触れ合わせるだけの口付けを終え、一息つく。
ジャックの方は表面上はある程度反応を抑えていたものの、アリスの方は恍惚とした表情で悩ましい声を出していた。その様子がまたとても色っぽく、毎度の事ながら抑えがたい感情の昂ぶりを覚えるジャックであった。
だが眠り姫の時にやらかしそうになった経験から意思は強く保っているため、何とか理性を保つことはできていた。
「え、ええ、平気よジャック……これが、大好きな人とキスをする幸せなのね……」
そんなジャックの荒れ狂う胸の内とは対照的に、とても穏やかな笑みを浮かべて自らの胸に手を当てるアリス。その幸せいっぱいの微笑みを眺めていると、邪なものとは別の方向で胸が熱くなってくるジャックであった。
こんな風に恋人の幸せそうな姿を見られるなら、やはりジャックの選択は間違いではなかったのだろう。今この場でキスしたことも、六人の少女と恋人になることを選んだのも。
「ジャック……」
「アリス……」
一人納得するジャックの肩に、アリスがそっと頭を預けてくる。
確かな温もりと重みにどうしても緊張と胸の高鳴りを覚えながらも、ジャックは寄り添いながらそんなアリスの手を握る。恋人同士の触れ合い、そして愛しあう男女の触れ合いを行った記憶を持たないジャックには、今のところこれくらいが限界であった。
尤もアリスの方も今はこれくらいで構わないらしい。一つ嬉しそうな笑いを零すと、ぎゅっと手を握り返してきた。
「……本当はずっとこうしていたいけれど、皆が待っているものね。ジャック、あまり楽しい話ではないけれど聞いてくれるかしら?」
「うん、良いよ。アリスには一体どんなきっかけがあったの?」
ずっとこの状態のままではいられないからこそ、離れがたく感じていたのだろう。ジャックと向き合うように座り直しながらも、アリスはどこか名残惜しそうな顔をしていた。
「きっかけというのはたぶん、本部内で偶然聞いた会話ね。ある時私が一人で歩いていると、黎明の若い女の子たちがジャックのことを話しているのを耳にしたの」
「僕のこと? それってもしかして、陰口とかそういうのかな……?」
一応血式少女隊の一員であるジャックだが、もっぱら自らの血液を用いての補助専門であり直接的な戦闘は行えない。男の癖に非力で戦えないと揶揄され、陰口を叩かれていたとしてもそれは事実なのだから仕方ないことだ。
そんな風に思ったものの、耳元に聞こえてきたのはどこか嬉しそうな笑いであった。
「ふふっ。むしろ逆よ、ジャック。その子たちはあなたのことをとても評価していたわ」
「えっ? ほ、本当に? 嘘じゃないよね?」
「ええ、もちろん。あなたは私たち血式少女のために身を削って命がけで力になっているんだもの。黎明の中にそれを知らない人はいないわ」
「そ、そっか。それなら良かったよ……」
どこか誇らしさを感じさせる口調で答えるアリスに、ジャックはほっと胸を撫で下ろす。
まるで自分のことのように喜びを見せているのは、それだけアリスがジャックと深く愛し合った記憶を持っているという証明だろう。まあアリスは以前からこんな感じだった気がしなくも無いが。
「ただ……そのせいかその子たちの話が別の方向に傾き始めてしまったの。ジャックに恋人はいるのかとか、好きな子はいるのかとか……もしもまだいないなら告白してしまうのも良いかもしれない、なんて言っている子もいたわ」
しかし今度は打って変わって声音には複雑な感情が混ざり始める。不安というか焦燥というか、ともかくあまりよろしくない感情である。
「えっと……アリスはその時、どうしてたの?」
「話の内容が気になって、ずっと隠れて立ち聞きをしていたの。いけないことだと言うのは分かっていたけど、どうしても気になってしまって……」
「それは仕方ないよ。アリスは、その……僕のことが、ずっと気になってたんだろうし……」
自分に抱いていた好意を指摘するのも気恥ずかしいものがあり、ついつい視線を逸らしてしまうジャック。指摘されたアリスも恥ずかしいものがあったのか、頬がぽっと赤く染まっていた。
「え、ええ。尤もその時はまだ恋心だとは自分でも分かっていなかったのだけれどね。自分の気持ちに気が付いたのはその子たちの話を聞いた後のことよ」
「その後に何かあったの? まさか、本当に僕に告白してた……とかじゃないよね?」
その場合自分がどんな返事を返していたかはさすがに予想できないため、恐る恐る尋ねてみる。万一ジャックが告白されてそれを受け入れた場合、三角関係という非常に難しい関係になってしまうのだ。たぶんそれなりにドロドロした展開になるに違いない。
「いいえ、少なくとも私の知る限りではそういった出来事は無かったわ。恋人になった後それとなくジャックにも聞いてみたけれど、誰かに告白されたことは無いと言っていたもの。たぶんあの子達は本気で言っていたわけではなかったのね」
しかしそんな恐ろしい展開は無かったらしい。アリスはあっさりと首を横に振ってくれた。
その表情が多少不機嫌そうに見えるのは、たぶん話していた少女達が本気ではなかったからなのだろう。何故ならアリスには本気か冗談かを知る術が無かったため、きっと自分が恋人になるまではジャックを取られるのではないかと不安を覚えていたはずなのだから。
「でも、アリスは本気に取っちゃったんだよね?」
「ええ、その通りよ。もしジャックが誰かに告白されたら、もしジャックがその告白を受け入れてしまったら、自然と私の頭の中にはそんな考えが溢れて止められなくなってしまったわ。とても不安で堪らなくて、何も手に付かなくなるくらい辛い日々だったわ……」
「そ、そんなに? 周りから何も言われなかったの?」
ジャックより遥かにしっかり者で、冷静に物事を考えるタイプのアリスがそこまで動揺するとはかなり予想外だ。
というかアリスの様子がそこまでおかしかったならさすがに皆気が付くだろう。案の定、アリスは若干恥ずかしそうに頷いた。
「もちろん色々と言われたわ。特に赤ずきんさんや白雪姫は何か悩みがあるなら相談に乗ると何度も言ってくれたもの。ただ自分の気持ちが良く分からなかったことと、何だか無性に恥ずかしいせいで相談はできなかったのだけれど……」
「僕は何か言ってなかった? さすがにアリスがそんな状態だったら放っておくわけないよね?」
「もちろんよ。私の状態をとても心配して、悩みがあるなら力になると何度も言ってくれたわ。ただ、その……原因がある意味ではジャックだったから、ジャックと顔を合わせるたびに私は余計に落ち着かなくなって混乱してしまったの。その時点では恋心というものを分かっていなかったから、ジャックと顔を合わせると胸が苦しくなって、顔が熱くなって、何だかとても落ち着かなくて……そのせいで私はジャックを避けるようになってしまったのよ」
(あ、何となく話が読めてきた気がする……)
軽い既視感を覚え、ジャックは無意識的にアリスの髪留めに視線を向ける。たぶん避けられた程度ではジャックは諦めないし、事実子供の頃も諦めなかった。だからこそ二人でここにいるという今があるのだ。
「ええ。ジャックはいくら私が避けてもめげずに追いかけてきたわ。まるで子供の頃と同じように……」
ジャックの視線だけで何が言いたいのかを察したのだろう。アリスは懐かしむような柔らかい笑みを浮かべながら、髪飾りをとても優しく撫でていた。
「最終的には子供の頃と同じように私が根負けして、ジャックに全てを話したわ。女の子達のジャックについての話から、私がジャックと顔を合わせるたびに生じた心の揺れ動きまで全部よ。ああ、思い出すだけでも恥ずかしいわ……」
「あ、あはは……ごめんね? 今も昔も、僕がしつこく迫って……」
冷静に考えてみればジャックのその行動はあまり褒められたものではない。向こうが嫌がっているのにしつこく付きまとうというのは最早ストーカーに近い行動だ。子供の頃ならまだ許されるかもしれないが、今の成長したジャックならさすがにアウトな行動だろう。
「いいのよ、ジャック。ジャックが無理やりにでも聞き出してくれなかったら、私はいつ自分の気持ちに気づけたか分からないもの」
それでもアリスは笑って許してくれた。さすがにいつ自分の気持ちに気付けたか分からないという言葉は冗談かもしれないが、冷静に考えてみればアリスは幼馴染で最も親しい少女であった。近いからこそ気が付けない、ということもあるのだろう。
「あ、ということはアリスは自分の気持ちに気付けたんだね?」
「え、ええ。まあ正確には気付けたというより、私の話を聞いたジャックがそれは恋なんじゃないかって言ってくれたからなのだけれど……」
(うわぁ! 僕そんな言い方したの!?)
アリスの言葉に思わず目を丸くしてしまうジャック。
確かにアリスの様子がおかしくなった原因である少女達の会話や心の揺れ動きまで説明されれば、ジャックだって色恋に基づく感情ではないかと推測はできる。ただそれを口に出来るかどうかは別問題だ。もし間違っていたら恥ずかしいどころの騒ぎではないし、アリスにだって失礼だ。つまり別の世界のジャックには口に出しても問題ないほどの確信があったのだろう。
「そのおかげで今まで自分が抱いていたジャックへの気持ちが恋なのだと分かって、私はその場でジャックに告白をしたわ。とても恥ずかしかったし、ジャックが応えてくれるか分からなかったから凄く不安だったけれど、自分の気持ちはすでに話してしまったから……」
「そ、そっか。それで、たぶん僕は君を受け入れたんだよね?」
「ええ。ジャックも私に避けられている間に自分の気持ちに気が付いたみたいで、快く私を受け入れてくれたの」
(ああ、やっぱり確信はあったんだ。そりゃあ自分が恋してるんだから分かるよね……)
恐らくは別の世界のジャックはアリスに手酷く避けられることで、自身の気持ちやアリスに対する想いを見つめ直したのだろう。
確かにアリスに徹底的に避けられる日々を思い浮かべるだけで、ジャックは胸のあたりがちくりと痛んでくる。思い浮かべるだけでこれなのだから、実際避けられた別の世界のジャックの気持ちは推して知るべしだ。
「だからこれが私とあなたの馴れ初めよ、ジャック。あまり楽しくない話でごめんなさい」
「ううん、そんなことないよ。だって君が僕への気持ちに慌てふためく姿を想像すると、何だか凄く可愛くて微笑ましい気持ちになれるからね?」
「も、もうっ! やっぱりジャックは思っていたよりも意地悪だわ!」
「あははっ。ごめんね、アリス?」
顔を赤くしてどことなく不機嫌そうに睨んでくるアリス。しかしそれでも握った手は離そうとしないあたり、本当に怒っているわけではないのだろう。
それにアリスの反応が可愛らしいと思っているのは紛れも無い事実である。アリスはクールで落ち着いた所があるので、むしろこういった反応はとても新鮮で胸が高鳴ってしまう。
「あれ? でもやっぱりってことは、もしかして君は僕に色々と意地悪をされた記憶があるの?」
「え、ええ。もちろんそれ以上に優しかったけれど、意地悪な時はとても意地悪だったわ。あんな所で、あんなことをするなんて……恥ずかしさで死んでしまうかと思ったくらいよ……」
(待って!? 僕は一体どんな所でどんなことをしたの!?)
気になって尋ねてみれば、何やら先ほどよりも頬の赤みを深めた上で顔をそらされる。
アリスは幼馴染だからこそ最も気安く、そして遠慮なく接することができる相手。だからこそ恋人になったらちょっとエッチなイタズラくらいはしたかもしれないが、この反応はどう見てもその程度のものではなかった。
「恥ずかしくて堪らないけれど、ジャックがどうしても聞きたいというのなら話しても構わないわ。ただ、その……とても生々しい話になりそうだから……」
「い、いや、恥ずかしいなら話さなくて良いよ! 僕もそんなには気にならないし!」
本音を言えば大いに気になる所だが、ジャックにはアリスを辱めて喜ぶ趣味など無い。少なくとも今のジャックには。
「あ、そうだ! 実は僕、アリスに聞きたいことがあったんだ!」
生々しい話題にならないよう、有耶無耶にするために咄嗟に話題を変える。とはいえ聞きたいことがあるのは嘘ではなく本当のことだ。
「聞きたいこと? 何かしら?」
「うん。間違ってたら謝るけど、アリスって結構ヤキモチ焼きな所があるよね?」
眠り姫にファーストキスを奪われたりハーメルンにキスされた時、その現場を見ていたアリスは一瞬瞳をピンクに染めるという危ない反応を示していた。
あんな反応をする理由はヤキモチくらいだと当たりをつけていたのだが、どうやらそれで正解だったらしい。アリスはどこか気まずそうな顔をして頷いた。
「ええ、それは間違っていないわ。ジャックが他の女の子と仲良く話している所を見ると、どうしてもそういった気持ちを感じてしまうの……」
「それじゃあ、今の状況は大丈夫なの? 僕には君以外に恋人が五人もいるし、僕はその五人とも仲良く過ごさないといけないんだよ? 今日だって君以外にも、その……眠り姫と親指姫、ハーメルンと白雪姫にもキスしたし……」
「そ、そう……」
四人の女の子にキスしたりされたりした事実を伝えても、アリスは一見平静を装っていた。しかしその瞳が一瞬とはいえピンクに染まるのをジャックは見逃さなかった。やはりアリスはそれなりにヤキモチ焼きらしい。
「……正直な所、大丈夫とは言い難いわ。やむを得ない状況だと理解はしているのだけれど、ジャックが他の女の子とキスしたりしている光景を想像すると、少し嫌な気持ちになってしまうの……」
「……ごめんね、アリス?」
六人もの少女を同時に恋人にしたこと、誰も恋人にしないという選択肢もあったのに選ばなかったこと、誰の気持ちにも気が付かなかったこと。元を辿っても辿らなくても全てジャックの責任である。すでに後の祭りな現状、ジャックにできるのは謝罪することだけだった。
「いいえ、ジャックのせいではないわ。それに六人の内の一人という立場でも、あなたとこうして恋人になることができたんだもの。それを喜びはしても、残念に思う気持ちはどこにもない。だから今の状況に辛い所はあっても、文句は一つも無いわ」
「アリス……」
それでもアリスはジャックに対して非難の色など欠片も見せず、ただただ愛しさに満ちた瞳を向けてくる。
やはりするべきことは後悔ではない。アリスの、そして他の恋人達の気持ちに全力で応えて、頑張って幸せにしてあげること。ジャックがすべきなのはそれだけだ。
「……うん、君の気持ちは分かったよ。それじゃあアリス、君は僕に何かして欲しいことはないかな?」
「えっ、して欲しいこと? 急にどうしたの、ジャック?」
「うん。実は親指姫も君と同じヤキモチ焼きだったみたいで、『他の子に恋人らしいことをしたらその三倍は自分にもしろ』なんて言われちゃったんだ。だからアリスも何かして欲しいことがあるなら遠慮なく言って良いんだよ?」
親指姫と同じく、それでヤキモチをある程度抑えられるなら御の字だ。駄目なら駄目でヤキモチを焼かせないよう、ジャックが頑張るしかない。
まあいずれにしろ恋人が六人もいるという現状を許容してもらっている時点で、ジャックには恋人のお願いを拒否することはできないのだ。よほど無茶なお願いだったり、あるいはジャックにはまだ早いことでもない限りは。
「ふふっ。それなら私も三倍して欲しいと言ったら、その場合ジャックは親指姫と私のどちらの願いを優先するのかしら?」
「あ、あはは……アリスもなかなか意地悪だね……」
「あなたに意地悪なことをたくさんされた記憶があるもの。おかげで私もそれなりに鍛えられたわ」
恐らくは先ほどの仕返しなのだろう、アリスはなかなか意地の悪い真似をしてくれた。とはいえこちらに向けられる瞳はとても優しげであり、悪感情は微塵も感じられない。感じられるのは溢れそうなほどの慈愛のみであった。
「だけど本当にそれを求めたりはしないから安心して、ジャック? あなたを徒に困らせたりなんてしないわ」
「そっか、良かった。それじゃあアリスは僕に何をして欲しいの?」
「そ、そうね……ジャックの気持ちは嬉しいのだけれど、今は特に何かして欲しいことは無いの」
そう言って微笑むアリスだが、ジャックはそれが嘘だとすぐに分かった。何故ならアリスは一瞬考え込むような素振りを見せ、ほんの僅かに瞳の色をピンクに変えたから。
恐らくアリスはして欲しいことがあっても、それをジャックに頼むのは躊躇いがあるのだろう。良くも悪くもジャックはアリスたちと違って恋人として過ごした日々の記憶を持っていない。だからこそアリスもどの程度まで恋人同士の触れ合いをして良いものか判断に困っているに違いない
「アリス、僕らは恋人なんだよ? 何かして欲しいことがあるなら、遠慮なく教えて欲しいな?」
「ジャック……だけど、これは……」
「僕には君たちを幸せにする義務があるから、僕に出来ることなら何でもしてあげたいんだ。さすがに今の僕にはまだ早いこともあるし、するわけにはいかないこともあるけど……できる限りのことはしてあげたい。それに何より、君の気持ちを楽にしてあげたいんだ」
恋人が自分以外の異性とキスしている。そんな瞬間を目にしてしまえば誰だって怒りや悲しみを覚えて当然だ。それは六人の少女と恋人になってまだ一日しか経っていないジャックも同じ。アリスたちが自分以外の男とキスする場面など想像すらしたくないほどだ。
だが自らもその関係を望んだとはいえ、アリスは実際にジャックが自分以外の少女とキスする場面を見てしまったのだ。きっと胸の内にはヤキモチを中心とした様々な感情が複雑に交じり合った気持ちが溢れていることだろう。
恋人になってまだ短いとはいえ眠り姫やハーメルンあたりはさほど気にしないことは何となく分かっているが、どちかといえば気にしない方がおかしい。ジャックとしてはむしろ親指姫とアリスの気持ちの方が共感できる。だからこそ、自分にできることなら可能な限りお願いを聞いて、少しでも気持ちを楽にしてあげたい。
「ほ、本当に言わなきゃ駄目?」
視線を彷徨わせながら、恥ずかしそうに尋ねてくるアリス。
普段から落ち着いた様子のアリスがここまで露骨に恥じらいを露にするとは、果たしてどんなお願いなのか。多少不安を覚えてしまうジャックだが取り消す気はなかった。
「うん、駄目だよ。教えてくれないならもうアリスにはキスしてあげないよ? それでも良いの?」
「そ、それは、とても困るわ……」
こう言えばもしかしたら、と思って口にしてみた所、予想通りアリスは酷く不安気に眉を寄せる。
だいぶ卑怯な気がするものの、これはアリスのためでもあるのだ。まだジャックとアリスたちの恋人生活は一日目なのだから、これからも度々ヤキモチを抱く場面は出てくるだろう。気持ちを楽にしてあげられる方法があるなら、できる内にやっておいた方が賢明だ。
「……分かったわ。正直に話すからそんな意地悪はしないで、ジャック?」
「大丈夫だよ、アリス。ちゃんと話してくれるなら、そんな意地悪は絶対しないから。それで、アリス一体僕に何をして欲しいの?」
ジャックの卑怯な言葉に折れてしまったらしく、アリスは一つ溜息をついてから頷く。
果たしてどのような願いを口にするのか。そしてジャックはそれを叶えてあげられるのか。恥ずかしそうに頬を染めたまま、アリスはついに自らの願いを口にした。
「その……あなたの血を、舐めさせて欲しいの。そんなに頻繁でなくて構わないから、どこか怪我をしてしまった時に舐めさせてくれるくらいで良いの……」
「えっ、そんなことで良いの?」
その願いを聞いて、ジャックはただただ意外に思った。何せ恋人同士でなければできないようなことを求められるのではないかと思っていたので、むしろ肩透かしを食らった気分である。
「そんなこととジャックは言うけれど、普通に考えればとてもおかしなことなのよ? このお願いを口にするのに記憶の中の私がどれだけ時間をかけていたか、ジャックには予想もつかないでしょう?」
「うーん……確かに普通に考えればおかしなことだけど……」
普通に考えればかなり猟奇的なお願いだが、あくまでもそれは普通の場合。アリスは血式少女なのだからジャックの血液を求める理由は十分だ。それに何より、牢獄に囚われていた時は数え切れないほどの回数アリスに自らの血を捧げている。おかしく思うどころか、ジャックには抵抗すらさほど無いことだった。
「私が今お願いしたのだって、それをお願いしてもジャックは嫌な顔一つせず受け入れてくれると分かっていたからなのよ? それが分かっていなかったら絶対に口にしなかったわ……」
分かっていたと言いながら、どこかほっとした様子を見せるアリス。その様子から察するに、たぶん恋人として共に過ごした記憶の中でジャックの考えを知った場面があるのだろう。そして頻繁で無くとも構わないと言いながら一回きりで済ませる気が無いあたり、結構頻繁に血を舐めていたのかもしれない。
「そっか……うん。僕は別に気にしないよ。むしろちょうど良いって思ったからね」
「えっ? ジャック、どうしたの?」
血を捧げることに抵抗など無いし、ましてアリスはヤキモチによるものか若干穢れが溜まっている。
なのでベッドから腰を上げたジャックは机に向かって歩み寄り、突如自分から離れていったことに目を丸くするアリスの前でカッターを手に取ると――
「じゃ、ジャック!? 何をするの!?」
――その切っ先で掌を浅く裂いた。
当然そんな凶行にアリスは慌てて駆け寄ってくるが、流れ出る赤い血を目にした瞬間ごくりと息を呑んでいた。まるで空腹で今にも死にそうな時、目の前に美味しそうなご馳走が置かれたかのように。
「僕のせいかもしれないけど、アリスはちょっと穢れが溜まってるみたいだから。ちょうど良い機会だし、僕の血を舐めて浄化した方が良いよ」
「もうっ! だから言いたくなかったのに……」
「うーん……その反応だと、もしかして君の記憶の中でも同じ事をしてたのかな?」
まるで今の行為を予期していたかのようなアリスの反応に、思わずそんな問いを投げかける。
どんな場面で血を捧げるのに抵抗がないという事実をアリスが知ったのかは分からないが、二人きりで会話をしている時ならまず間違いなくジャックは躊躇い無く自ら傷を作り血を捧げただろう。他ならぬ自分の行動なのでそれは間違いないと言える。
ただそれにしてはジャックが机に歩み寄った時点で止められなかったあたり、微妙な矛盾を感じていた。
「ええ。私に血を舐めさせるために自分で傷をつけて血を流していたわ。その時は捕まっていた時みたいに、自分で噛み付いて傷をつけていたけれど……」
「ああ、そっか。傷を付ける方法が違ったから分からなかったんだね」
どうやら血を流すための方法が違ったために、アリスは対処が遅れてしまったらしい。
方法が違った理由に関してはちょっと気になるものの、考えるだけ無駄なのは分かっていた。アリスの記憶の中のジャックはアリスだけが恋人で、今ここにいるジャックは六人の血式少女が恋人だ。共通点が少なすぎて原因を探すことはできそうにない。
「ごめんなさい。記憶の中の行動と違ったから、混乱してしまって止められなかったわ。分かっていたら絶対に止めていたもの……」
「気にしないで、アリス。どうせ止められたって僕は聞かなかっただろうからね。それよりも舐めなくて良いの?」
「あ……」
悲痛な面持ちをしていたアリスに、赤い血が零れそうな掌を差し出す。途端にまたしてもごくりと息を呑み、視線が血へと釘付けになる。
この反応からすると、やはりアリスの記憶の中では頻繁に血を舐めさせていたのだろう。とはいえそこまで頻繁に怪我をして血を流すほどジャックもドジではないので、間違いなくその度に自ら傷をつけて血を流していたに違いない。尤もそれをアリスが知っているかどうかは分からないが。
「わ、分かったわ。それじゃあ舐めさせてもらうわね、ジャック。だけど、その……お返しは、しなくても良いの? ジャックが望むなら、私は構わないのだけれど……」
「えっ、お返しって?」
「く、口に出すのは恥ずかしいからできれば察して欲しいのだけれど、ジャックには私と結ばれた記憶があるわけではないものね……お返しというのは、その……今度は逆に、ジャックが舐めて欲しい所やモノを、私が舐めてあげるというものなの……」
ジャックの右手を両手で支えながら、何やらとても恥ずかしそうに言うアリス。その頬の赤みは今まで見たことが無いほど深く、耳の先まで真っ赤に染まっていた。おまけに答える声も段々と小さくか細くなり、聞き逃しそうになったほどだ。アリスは一体何をそんなに恥ずかしがっているのだろうか。
「舐めて欲しい所や、モノ? 別にそんなモノ無いけど――あっ」
そこまで答えて、ジャックはふと思い出す。
アリスに限らず、恋人となった少女達はそれぞれジャックと結ばれ愛し合った日々の記憶を持っている。その愛し合うとは精神的な意味だけではなく、肉体的な意味のものも含めてだ。とどのつまり、恋人になったばかりのジャックにはまだ早い行為も含まれているわけであり――
「あ、アリス。もしかして君の記憶の中の僕は、その……お返しに、エッチなことをさせてたの……?」
「さ、先に言っておくと、別にジャックが強制してきたわけではないのよ? 最初にこうやってあなたに血を舐めさせてもらった後、私がお返しにと提案したものをジャックが受け入れただけで……」
「でも、それ以降もたぶん同じお返しをさせてたんじゃないかな?」
「………………」
涙ぐましいフォローをしてくれたアリスだが、そこを指摘すると無言で視線を逸らされてしまう。
何も口にしないことで答えを有耶無耶にするというフォローなのかもしれないが、顔が真っ赤なせいで無言の肯定としか受け取れなかった。なのでジャックは即座に頭を下げて、別の世界の自分の罪を謝罪した。
「ごめん、アリス。本当にごめん。別の世界の僕が変なこといっぱいさせて……」
「あ、あなたは悪く無いわ、ジャック! 元はといえばあなたに血を舐めさせてもらうだなんておかしな行為を強要させた私が悪いんだもの!」
「アリスは全然悪くないよ。君のそういう気持ちを利用して変なことをさせてた僕が悪いんだ」
「ジャックだって立派な男性だもの、それは仕方ないわ。そういう気持ちを抑えるのが辛いことは、嫉妬深い私には良く分かっているつもりだから……」
とても優しい言葉を投げかけ、ジャックの頭を上げさせるアリス。
ヤキモチ焼きなのにとても寛大なのはそれだけジャックのことを愛しているからか、それとも自分のために自ら血を流していることを知っているからか。前者に関しては気恥ずかしさから確信できないが、恐らくは両方に違いない。
「と、とにかく、お返しは別に良いよ。そんなことは気にしないで、ゆっくり僕の血を味わって良いからね?」
「あ、ありがとう、ジャック……それじゃあ、遠慮なく頂くわね?」
お互いにとりあえず落ち着きを取り戻し、ベッドへと戻って腰かけ寄り添いあう。
傷を付けてから多少時間が経過しているせいか、流れだした血は今にも掌から零れ落ちそうだ。それをもったいないと感じたのかアリスは即座に傷口に口を寄せると、舐めると言うよりも啜る感じでジャックの血を味わい始めた。
「んっ……ちゅ……は、あぁ……」
そしてうっとりとした様子で舌を這わせ、傷口からも直接舐め取っていく。
耳に届く水音はどこか嫌らしく、そしてアリスがジャックの掌を舐める姿は確実に悩ましく、先の会話の内容も相まってじっと眺めていると変な気分を催しそうであった。
(そ、それにしても、思ったより深く切っちゃったな。白雪姫――じゃなくて、白雪か親指姫に治してもらおうかな? 親指姫、もう部屋に戻ってきてると良いんだけど……)
なのでジャックはさりげなく視線を逸らし、なるべく別のことを考えて気を紛らわせるのだった。具体的にはこの傷を誰に治してもらうか。そして恥ずかしさに耐え切れなくなりいずこかへと走り去っていった親指姫が、もう自分の部屋に戻っているかどうかを。
まあ掌をペロペロと舐める生暖かく湿った感触のせいで、思考は全くと言って良いほど働かなかったが。
実はまだ赤姉にはキスしていないジャックくん。
親指姫単体の話を読んでいる方は分かっていると思いますが、親指姫もアリス同様血を舐めさせてもらっていた記憶があります。そのうち二人でジャックのをペロペロすることになるのかなぁ……あ、いかがわしい意味じゃないです。今は。