「話数を跨いだから別イベントに行くと思いましたかー? 残念、そうはさせないのがBBちゃんなのです!」
ある時、妙な台詞を吐いてこのルルハワに閉じ込めたBBは去っていった。……なんだったのだろうか、今のは。
ともかく、今回の周回においての私達……特にジャンヌ・オルタは一味違うだろうと確信を持っていた。今までの様に、届きそうでも届かない、一位への大きな壁がようやく乗り越えられる兆しが見え始めていたのである。
吹っ切れたような表情、今までの苦い経験、イバラキも協力し、意地を捨て
「……この単語の何処からエターナルが出たのかしら」
「なんでそのノートを持ってるのですか!?」
ジャンヌ・オルタは私が読んでいるノートを慌てて取り上げた。
ノートのタイトルは
「後でマスター達にも感想を聞いておくわ」
「絶対にやめなさい!」
ジャンヌ・オルタは白い顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
……なにを恥ずかしがっているのだろうか。別にこういった本も悪くはないし、昔はこういった戦法や技を唱えている人間も見たことがある。アレと似たものだと思うのだけれど。あと、エターナルって所が良いわよね。その響きは好きである。
「あ、虞さん。なんか皆が闇の書って本を読んでいるんだけど、これ誰が書いたか分かる?」
部屋をノックし、入ってきたマスターが持っていた本は1~5巻の闇の書。後から聞いた話ではあるが、マシュやロビン、牛若丸にイバラキのそれぞれにそのノートが行き渡っていたらしい。……一巻のタイトルは『昏き闇の魔剣士
なお、結果だけ言うとこのルルハワ期間はジャンヌ・オルタの謎の暴走でループが確定した。
◆
ある時、私は怒りに震えていた。
こんな怒りは久々であった。
ああ、どうしてこうなってしまったのだろう。このような状況を彼女が知ってしまっては間違いなく頭を痛めてしまう。それどころか霊基が歪む可能性すら出てきてしまうのではないか。
私と彼女は元は生きた時代も生き方も在り方も何もかもが違う存在であった。だが、このカルデアにおける彼女とは、この特異点が解決した暁には、迷惑を掛けてしまった帳尻合わせとして、なにかしらしてあげようと思う程度には偶に相談に乗る程度には親しくなったのだ。それなのに、この状況はあんまりと言うモノだろう。
そう、その問題とは、
「新たなアルトリアと同じ顔はぶっ飛ばすわよ!」
「虞さんがヒロインXさんみたいになっている!?」
謎のヒロインXXという訳の分からない存在のせいだ。
今回の周回で、私達はルルハワで様々な邪魔を施してきた謎のフォーリナーの正体を暴くことに成功した。成功はしたのだが……その正体が問題であった。そう、どう見てもあの謎のヒロインXと同一の存在にしか見えないのである。
何よ2シーズン分成長したって。フォーリナーという謎クラスに参戦しているんじゃないわよ、ちゃっかり秩序・善になっているのも腹立たしい。
私は謎のヒロインXオルタが現れた時に決めたのだ、これ以上アルトリアを苦しめないためにも、増えるアルトリア顔は吹っ飛ばす、と。その誓いのためにも私はこのフォーリナーと相対しなくてはならない。ちなみに沖田総司オルタは良い。彼女は無垢すぎて後ろめたい。
「む、もしや貴様は悪の女幹部“チャイーナ・グッチャン”! 倒したと思ったのにまさかこのルルハワで復活しているとは!」
誰よ、チャイーナ・グッチャンって。私みたいなのも宇宙にはいるの? え、私と同じ顔が増える可能性もあるの?
……よし、可能性の除去のためにもここでヒロインXXの存在を抹消しておこう。
◆
「虞。俺と共にニューヨークに聖杯を取りに行きビルから英雄王を落とさないか」
「あの黄金王のバトル大会に一緒に出ないかということね」
ある時、ルルハワも乗り越えてからしばらく経ってから再びカルナの誘いを受けていた。
相変わらず文脈がよく分からないが、最近はカルナの言葉の意味が分かるようになってきた。ようは周囲の言葉に影響されてそのまま言うこともあり、煽っていっているように聞こえる言葉も大抵こちらを心配した言葉なのだ。いえ、ビルから英雄王を落とすと言うのはよく分からないが。……ネロがそう言っていた? あの皇帝の言葉は鵜呑みにしない方が良いとだけ伝えておいた。
しかしニューヨーク……ニューヨークね。これならばいままでのコロシアムの方がマシと言うものだ。あの見世物になる感覚は嫌いであったが、ニューヨークなんて特異点であろうと人が多い文明の象徴だ。今回も私はこの
「そうか、残念だ。英雄王は今回資金力とスキルを使って優勝者の望む英霊を呼びだすまで召喚システムを
「カルナ、やるからには全力で行くわよ。いっそ鎧を着てきなさい」
「ふむ、了解した。鎧は無理だが」
本なんてどうでも良い。あの黄金の王の力を借りるのは不本意だがアイツのスキルのコレクターEXとやらがあったはずだ。それさえあれば項羽様が来るのも夢ではなくなる。むしろ来るまで黄金の王には召喚ルームに閉じこもってもらう。こうなった以上マスターすらも敵である。私の本気を見せてやろうじゃない……!
・
・
・
「カルナ、そのポーズは何!?」
「ジナコに教わったcheat_boostという技のポーズだ」
「カルナ、クラス表記がランチャーになっているのだけど!?」
「英雄王にお前はランチャーだったはずだと言われてな」
「宝具を使用――」
「虞、お前とアーラシュの宝具は使用=死亡扱いで敗北とのことだ」
「私達英雄は!」
「眼で殺す!」
(爆発&ビーム)
・
・
・
結果、マスターが優勝した。呼ばれたのはケイローンだった。
ちなみにコレクターEXは黄金王にしか適応されないスキルだったとのことだ。
「ドクター、この本良かったわよ。この裏主人公フラれないかしら」
「あれ、前回まで報われてほしいって言ってなかったっけ……?」
……気のせいよ。
◆
「最近やけに話しかけられる気がするの」
「それで何故俺の所に来る」
ある時、作家部屋にて私はアンデルセンにやや気にかけていることを聞いてみた。何故アンデルセンに聞いたかと問われれば、この男の言葉は嫌味から始まるが、問われれば基本的に本音で正しいことを述べるからだ。英霊に話を聞くのも癪ではあるが、今の私は小さな
相談内容はカルデアのサーヴァントによく話しかけられるという事。マスターやマシュ、ドクターだけではなく、千代女や巴と言った以前からある程度交流をしていたサーヴァントの他にも、あのサバフェスの以降に話しかけられる機会が多くなった。特に子供サーヴァント。面倒な時は霊体化と気配遮断で適当にあしらってはいるが、こうなった原因を探らなければ根本的な解決にならない。
「なるほど、では俺からの回答を述べよう」
私がある程度説明をすると、アンデルセンは持っていたタブレット端末を置き、私に向き直る。どうせ初めは罵声辺りが飛んでくるだろうが、我慢をして――
「安直すぎて俺自身がこのような
と、だけアンデルセンは言ってこの場から去るように告げた。
……ツンデレ? 確か以前ドクターから借りた本に書いてあった気がするが意味までは知らなかった。その言葉を調べればこの状況の原因が分かるというならば調べるとしよう。マスターやドクター辺りならば何か知っているだろうか?
「あ、マスター。私は今デレの期間らしいけど、意味って分かるかしら」
「え!?」
……その後、マスターには口止めをした。
笑っていたアンデルセンとシェイクスピアは本の締め切りを徹底的に管理することを決めた。
ルルハワ後には、皆さんときちんとお話をしました。
結果がデレ期の到来と噂される始末です。
いつも誤字報告をしてくださる方々、誠にありがとうございます。前回の話だけで10件近く誤字報告を受けました。さすがにひどい有様です。
できるだけ無くそうとは思っていますので、よろしくお願いいたします。