なお、パールヴァティー(桜)顔のサーヴァントに関しては、虞美人さんは当の本人がそこまで困っていないのでスルーしてます。
「あれは人じゃ」
「人ですね」
ある時、二人のサーヴァントは赤兎馬を見ながらそう言った。
片方はクリミアの天使と呼ばれた
……ゴブリンも人? 黒武者や大鬼も人で、機械化歩兵やグールも人。だけどエルダーグールは別。基準が分からない。こいつら、手と足があればなんでも人に見えるのだろうか。え、ラミアも人? 何なのコイツら。
だけど確かにコイツらの人体(?)に対する攻撃力は見張るものはある。ナイチンゲールに至ってはベッドを投げたり爆弾で殴ったりしながら急所を的確に攻撃したりとよく分からない。……私でなければあの時は死んでいたと思う。
「しかし、貴方がこうして話せる人とは思いませんでした。貴方の人の急所を正確に切る……というのは目を見張るものがあります。」
「おお、おまんもよう話がわかる女ぜよ! だきなこっちと
この二人、出会ってよかったのであろうか。片方は
私が二人に目を付けられる前にその場からこっそりと去ろうとする際、最後にその会話だけが聞こえて来た。
「あれはどう見ても人じゃないぜよ」
「ええ、どう見ても人ではありませんね」
なんでよ。なんで水着のBBにだけ冷静になっているのよ。確かにあれは人ではないけれど!
◆
「とりあえず、カルデアを自由に行き来できる方法を考えましょうか」
ある時、カルデアにキングプロテアというパールヴァティー顔のサーヴァントが召喚された。身長は変動可能であり基本はおおよそ20m越えで、最小でも5m。BBなど曰く本来は30mが最小であったのでこれでも小さくなっているとのことだ。
今までには居ないサーヴァントということで、初めの方は軽くカルデアに衝撃が走ったが、先刻の言葉を誰かに強要されるわけでもなく、当たり前の様にカルデアの一職員が言うあたり、このカルデアは相変わらず場慣れ感があると言うべきか、お人好し感が否めないと思う。
大きなサーヴァントは子供サーヴァントに人気であり、バニヤンはよく大きくなって同じ目線で話している姿を見かけることが多い。そしてゴルゴーンは逆に付きまとわれて鬱陶しそうにしている。なお、キングプロテアから逃げてもステンノやエウリュアレなど姉達や、千代女などに追われることが多いので、割とあのサーヴァントは心労が絶えない。偶に飲み物を差し入れると、大人しく愚痴に付き合ったりする。
「あの、虞美人さん……という名前で合っていますよね?」
そしてある時、私が大倉庫に資材を取りに行っていると、ふとキングプロテアが話しかけてきた。……今日は10m辺り。割と小さい方ね。
私がキングプロテアと話すのはこれが初めてだ。何度か子供サーヴァントに一緒に行こうと言われることがあったが、最近は作家組を色々と扱き使うのに忙しかったので直接会うことは無かったのである。
私が「なにか用?」と聞くと、キングプロテアは少々話辛そうにしつつおずおずと質問を投げかけて来た。
「虞美人さんも私と同じくらいの大きさになれるって、本当ですか?」
「……はい?」
私が彼女と同じ大きさに? 何を言っているのだろうか、この子は。
……あぁ、成程。私が宝具などを使用して再構成するたびに身長が若干変動することを言っているのだろう。一度子供サーヴァントに興味を持たれたことがあるので、彼女達から聞いたのかもしれない。だけど私の身長の変動はあくまでも適当にやっているので若干の誤差があるだけで、彼女ほど大きくなることは――いえ、可能性としてはあり得るのかしら。もちろん大量のエネルギーが必要なのでやることは無いだろうけれど、少しずつ大きくなれば全体的に大きくなることも……そうすれば項羽様と同じ目線になることも可能という事になる。一考の余地があるかもしれな――
「つまり再構成すれば大きくなる可能性があるんですね。私がお手伝いをして何度も何度も繰り返して―」
私は、彼女から逃げ出した。
パールヴァティー顔のサーヴァントはどこか危うい面が多く、キングプロテアのお手伝いとやらは嫌な予感しかしない。今後は出来るだけ身長の変動を気にかけようと思う。
……後でマスターに説得してもらおうと思う。
◆
ある時、ヤマトで鬼達が遊園地を経営していた。
相変わらずよく分からないが、今までのハロウィンと比べるとまともな建物かつ特異点なので何処か安堵している自分が居る。感覚が狂っている感が否めないが、今更どうという事ない。
この特異点に一緒に来たのは、マスターの他にマシュや千代女、イバラキと……護法少女という名のヤマトの鬼。落ち着きなさい千代女。あの子の正体に気付かないの? え、鬼だけど酒呑童子とは違った感じがして良い? ……そう。そうね。そうだと思うわ。貴女は酒呑童子が苦手だったから気付かない方が良いかもしれないわね、ええ。
「虞さんが何処か遠い目をしている……」
うるさいわよ、マスター。お前は初めての遊園地で目をキラキラさせているマシュの相手でもしてなさい。多少のアトラクションなら私達が見張っていてあげるから遊んでも構わないわよ。私は特に興味はないし。……でも項羽様とあのコーヒーカップは良さそうね。項羽様は乗れそうにないけれど。あと、小さく「デレ期か……」と呟いたドクターは後で覚悟しておきなさい。
その後はカルデアにいる魔法少女と瓜二つなサーヴァントと会ったり、何故かいるカルデアのサーヴァント達に混ざってアトラクションを楽しんだりした。くっ、あのゴーカートやらをもう一度したい。イバラキやシトナイには勝ったけれど、マスターやマシュ、千代女には最終的に勝てなかった。マシュは騎乗スキルがあるとはいえ、負けたことには変わりないしマスターや千代女にまで負けるとは思わなかった。途中で「何をお前ら普通に楽しんでいるのか!?」という鬼王朱裸の邪魔が入らなければまだ行けたというのに……! あと、鬼王朱裸の正体とこの特異点の原因はドラ娘だった。そんな気はしていたので、特に驚きは無かったけれども。
しかし、今までのハロウィンと比べればまだまともな特異点であった。思いきり遊んでいた記憶もある気がするけれど、最終的には聖杯も回収したし、カムイの黄金問題とやらも無事解決した。……アトラクション関連の記憶が多くて聖杯関連をあまり思い出せないのは気のせいだ。マスターやマシュ達とアトラクションに乗ったのが楽しかったなんてことは無い。決してない。
そしてこの特異点が修復される……という少し前に、護法少女は思い出したかのように私達に話しかけてきた。
「ああ、それと一つだけ言うときたいことがあるんやわ」
「何よ?」
「この遊園地やけど……誰もなにかの建造物の上に建っていない、とは言うておらんのやわぁ」
……………………え?
◆
「誰かが足りねぇ気がするんだよな」
ある時、無辜の人間によって歪められたとある英霊がそう呟いた。
「誰かが居ない気がするの」
もう一人、銀の長い髪を靡かせる少女が疑問に思った。
二人はカルデアの生活に不満は無いと言う。マスターは真摯に向き合い、無垢で努力を続ける少女は慕ってくれ、見たことの無い古今東西の英霊と会うことができ、戦闘においても適材適所でカルデアの職員はサポートしてくれる。
所詮使い魔であると言い、使い捨てで接する者はカルデアにはおらず。一人の個として向き合ってくれているこの場においては、今が人理修復という大事の最中であっても確かな充実感に包まれているものだと。だが、何かが欠落している――そんな不確かな感情が湧いてくるのだと、二人は言うのだ。
「最近呼ばれた大きい嬢ちゃんと忍者の嬢ちゃんが居るだろ? あの二人を見ると別の誰かが見えるんだよな」
「特に良さが分からないけど、信長さんが水着を着ている時の歌が妙に気になるの」
眼帯の少女に、信長が水着時の歌……ね。どうしても思い出すのはあの二人のことだ。
この可能性の男と銀髪の皇女は間違いなく汎人類史におけるサーヴァントであり、異聞帯における記憶は持っていない筈である。だが、霊基に刻まれた記憶が何かしらの形で残ることは、他のサーヴァントを見ていると珍しい事ではないと言える。……可能性の男に関しては詳細は知らないが、異聞帯に召喚されたという事は、少しだけだが聞いている。つまりこの二人にとって異聞帯での出来事はそれほどまでに大切なモノであったという事なのだろう。
「……私にそれを聞く理由は分からないけど」
本当に、何故私に聞くかは分からない。
何処かで私の在り方に疑問を持っているのか、近しいものを感じたのか、ただの気まぐれか。この二人が偶に意味もなく誰も寄り付かないあの部屋に訪れて、とある装置の前に立つことと関係しているのかもしれない。
どれかは分からないし、理由も感情も不確かなものだけれども。あぁ、とても――
「その誰かが羨ましい限りね」
この二人はその思い出せない相手に会えるのか、何も起こらず疑問として残るのか、負債として霊基が軋む結果になるのかは分からないけれど。幸福になることを願うことくらいは良いだろう。
……出会ったら出会ったで、あの二人には蹴りをいれてやろう。そのくらいは許されるはずだ。
そのためにも、私が為すべきことは、為さねばならない。
個人的に会話が書きにくいサーヴァントこと以蔵さん。理由は土佐弁。方言キャラはとても難しいです。今話の言葉の使い方はハッキリ言って微妙です。