何件か来たので複数に分けようかと。
本編更新はしばらく待ってくだされば幸いです。
※この話は特別な時空です。この物語の設定とか細かいことは気にしないでください。
リクエスト【虞美人さんによる1部特異点観察日記】
私は人理が修復中のカルデアに呼び出された。
最初の召喚が
それにいい機会だ、とも思う。冬木の特異点が修復され、これから7つの特異点を修復する藤丸立香がどのような道程を歩んでいったのか――私を破った藤丸立香がどういう存在なのか観察していこうと思う。そうすれば、あのシンでの
――第一特異点での観察
藤丸立香は魔術師ではない。矮小で、英雄などには到底成れない凡庸な人間だ。
レイシフト適性が100%というだけで、聞く所によると献血帰りに無理矢理連れてこられたような文字通りの一般人。
世界が焼却されたという事実を知り、家族や友人を亡くした事実を知り、涙ぐむような人間だ。ただ、「こんな結末は嫌だ」と、その感情だけで自分にできることを成すような人間。
第一特異点での指揮系統は見るに堪えないもので、私と相対した時とはまるで違っていた。多くを守る裁定者や、ドラゴンスレイヤーの異名を持つ剣士や聖人という強大な味方サーヴァントが居なければ恐らくこの第一特異点でこの男は死んでいただろう、と思えるような弱々しさだった(※私が居て助かった所があるのも事実であるだろう)。……弱く、パスをつないでも短いため、近くにいなければ契約サーヴァントが力を発揮できないため常に前線に立つ。そしてサーヴァントですら怯むような、聖杯の力を手にした異形な怪物や悪竜を前にして、震えながらも立つ。
「貴方が間違っているとは思えない。だけど、貴方を見過ごすことだけは間違いだって分かるから……!」
私は人間が嫌いだ。
その考えは、サーヴァントとなった今でもなお変わりはしない。
藤丸立香の在り方は人間らしいものであるはずだが――私が知る人間とは、違う人間であった。
――第二特異点での観察
未来に英霊となる皇帝と、藤丸立香は言っていた。世界を壊すのならば止める、と。
第二の特異点でも変わらず敵は強大で、味方も強力ではあったが多くは無く、間違いなく劣勢を強いられていた。しかし、藤丸立香は足が震えようと、敵の死の間合いに入ろうと、世界に破滅をもたらす力を持つサーヴァントであろうと立ち向かっていた。
人間にとって、世界を壊す相手に対し歯向かうのは至極当然な考えなのかもしれないが、そのために神の鞭と称される破壊の化身と相対し、対話をしている。……何故言葉を投げかけるのだろうか。
自分にできることを探すのは構わない。止めようと戦闘を行うのも分かる。だが、アレに対話は必要なのだろうか。世界を壊そうとするならば、元より相容れないのだから対話などなしに止めるのが正しいのではないか。私には理解できない。
「神の鞭でも破壊できないものがあるのか……それは、少し嬉しい、な……」
やはり対話成り立たず、戦闘による散り際に何故か嬉しそう言う破壊の大王を藤丸立香は少し悲しそうに見送った。
敵に対しても、この男は時折こういった表情を見せる。私がどうしたのかと聞いても、藤丸立香はただ「なんでもない」と答えるか、「これで良いんだよね」と、自身を納得させるように呟くだけだ。
……あぁ、やはり藤丸立香は人間だ。
その時の私は、何故かそんな思考をしたのであった。
――第三特異点での観察
藤丸立香は馬鹿だ。私はそう確信した。そうでいなければあのヘラクレスを追いかけながら殺しきるなど、考えついても実践しようとは思わない。ましてや本人に戦う力が殆どないにも関わらず、だ。
私が無茶と言っても、止めようとはしない。ただ私達には別の役割があり誰かが担わなければならないことに対し「それが俺にできることなら」と、引き攣ってはいるが前向きな表情で事を成そうとしている。他のメンバーも同様に、あの
分からない。どうして
分からない。サーヴァントとは言え怪物として恐れられた
分からない。こいつらは、この状況で何故笑えるのか。
安らぎを得ることは私にとっての悲願であり、それは今でも変わりはない。だが、死ねば安らぎを得られる――
「だからアタシたちはそんな恐怖を――いつでも笑って
そして女海賊はそう言っていた。
確かに藤丸立香は悲しみ、痛みに耐え、不条理を前にしても笑う事を無くしてはいない。
そういえば、私が最後に笑ったのはいつだっただろう。
――第四特異点の観察
死に塗れた魔の都市でも、藤丸立香に変わりは無かった。
街を歩けば、文字通り視界の外から凶刃が絶え間なく襲い掛かる恐怖に晒され続ける。それでもなお戦う事を止めなかった。当然止められない、ということもあるだろうが、例えばAチームの誰かが生きていて、自分の代わりになるとしても戦う事を止めるという事は無かったのだろう、と思う。
かと言って、藤丸立香に恐怖心が無いわけではないことは私も知っている。現に人理修復における最大の敵と呼べる魔術王と相対した際には、その出鱈目な在り方に恐怖し、動くことができなかった。今まではあらゆる怪物とサーヴァントに相対しても、諦めることと動くことを止めなかったにも関わらず、だ。
「それじゃ、次も一緒に頑張ろう」
だけど藤丸立香は立ち直った。強大な敵に見逃された矮小な存在と切り捨てられても、悪夢を見せられ監獄に閉じ込められても、それを乗り越えると次に向かって前を向いた。
自分は一人ではないのだからと、皆と一緒に笑いながら。
――第五特異点の観察
「聖杯は諦めてください、大統王」
藤丸立香は馬鹿正直に敵地のど真ん中で相手に対しそう宣言した。
馬鹿正直なところがあるとは思っていたが、こうも愚直であるとは思わなかった。19世紀の魔術師の女も高潔であると評してはいたけれど、高潔であっても強さが無ければただの敗北者に成り果てる。
……だけど不思議だ。結果的に牢に閉じ込められ、偶然助けがあったためその後も活動できたとはいえ、その時の藤丸立香の言葉には敗者とは言い難い強さがあった。
あの時藤丸立香が一時的な共同戦線を敷くと言うのであれば、サーヴァントとして従うつもりではあった。私とてあの獅子頭の理想と行動は相容れない。とは言え、あの拒絶の言葉が迷わず吐けるかと言われれば難しい所である。だが藤丸立香は真っすぐ、飾り気が無く、恐怖はあっても正しいことを成そうとして、あの言葉を言ったのだ。
藤丸立香にとっては当たり前のことかもしれないし、勇気を振り絞っての行動だったのかもしれない。だけど私はこう思ったのだ。こういった行動が欠けていたら、人理修復を成し遂げられなかったのではないかと。非凡であるAチームとは違う、凡庸なる藤丸立香だからこその人理修復の道筋であると、その時には理由も分からず思ったのだった。
――第六特異点の観察
ようやくではあるが、英霊達が何故藤丸立香に力を貸すかが分かった気がする。
シンでの時では何故こんな男に英霊達が付き従うのか。カルデアのサポートの力と運だけで人理修復ができたのではないか。と思っていたが――今、こうして藤丸立香と多くの特異点を修復してきて、それが間違いだと知った。
彼は英雄ではなく、特別な資格など持ちえない
彼は術師ではなく、命の価値を忘れない
彼は兵士ではなく、死ぬ覚悟も殺す覚悟もない
彼は強者ではなく、理不尽を見過ごすことはできない
彼は弱者ではなく、戦う恐怖を忘れることができない
彼は超人ではない。英雄が手を貸す人間だ
何処まで行っても、この男は人間だ。
……そう、人間だ。英霊はそういったなんの変哲もないただの諦めの悪い人間だからこそ、力を貸す。信頼を置く。信用を得る。そういった存在を守るのが、英霊としての在り方だと言うように。
彼は自身が凡庸であるからと言って、
彼は相手が神と近しい存在であっても、間違いと思ったら正そうとした。
…………私は、藤丸立香の傍にいる価値のある存在なのだろうか。
いずれ、この男の笑顔を奪ってしまう私が。
――第七特異点の観察
「ふざけないで下さい!」
多くの災厄と災害が具現化した最後の特異点で、私は藤丸立香に怒られた。
私はこの特異点では今まで以上に真剣に協力していたと思う。余分なことは考えず、藤丸立香とマシュに協力し、ようやく仲間に成れた気がするとさえ言われ、藤丸立香の善性と、カルデアバックアップと、現地のサーヴァントと、理不尽に対する憤りを私も多少は共感できるようになったと言うのに。
だからこそ私は、生と死が逆転した冥界で人類悪に立ち向かうことができたのだ。
この場所では、私は文字通り死ぬかもしれない。
死なないという法則が満たされないかもしれない。
そしてこの場所でしか人類悪は
ならば迷う必要はない――と、私は駆けて宝具を発動した。
結果だけ言うならば、ろくでなしな魔術師の力が辛うじて生と死の反転法則を曖昧にしたため、再構成に時間はかかったが私は死ななかった。そして酷い泣き顔の藤丸立香とマシュに縋られて先程の言葉を投げかけられながら目覚めたのだった。
こんなことをしないでください、と。これで解決しても、俺たちは喜べない、と藤丸立香は言う。でも、生きてくれていてよかった、と藤丸立香とマシュは笑顔になった。
私は特異点での観察を続けて来た。だけどその観察は節穴であったのだと言う他にない。何故なら、藤丸立香の観察をする理由に、私の存在の勘定を入れていなかったのだから。
マスターが笑う理由に、私が含まれているのは――嬉しい、のだと。笑い顔を見ながら私は忘れていた感情と共に二人と同じ顔になったのであった。
『虞美人の藤丸立香観察記録はここで止まっている』
『ただ、止まってはいても、終わった訳ではないようだ』
◆
※この話は特別なギャグ時空です。この物語の設定とか細かいことは気にしないでください。
※会話形式です
リクエスト【始皇帝さんによる1部特異点振り返りwithマスター&虞美人さん】
「おお、仙女ではないか! 朕の言う通り英霊となるとは可愛い所があるのではないか! なに、愛しの夫にはまだ会えていないのか。ならば朕がどうにかしてやろうか? ん?」
「帰れ!!!!!」
※時期は人理修復も完了し、
「そう邪険にするものではないぞ。其方と朕の仲ではないか!」
「そこまで親しくなかったでしょ、私達! というよりなんでお前が居るのよ!」
「さてな、それは朕にも分からぬが、其方もこうしてここに居るのだ、何が起きてもおかしくはあるまい。安心するがいい、マスターには適当に並行世界の
「いえ、そういう問題じゃ……」
「そうだ! 朕は今からマスターと共に人理修復をライブラリとやらで振り返るのだが仙女も来ることを許そう」
「は? なんで私がそんなこと……って無理矢理引っ張っていかないで! 水銀は止めなさい!」
・
・
・
「さて、では見ていくとするか」
「あ、虞美人さんも来たんだ」
「ええ、無理矢理ね……」
「第一特異点……邪竜が舞う100年戦争とやらか。なるほど、なるほど…………ふむ、この竜、適当にドーンと軌道衛星上から万里の長城でも落とせばよくないか?」
「お前の聖躯時代じゃないんだから。それにフランスよ。万里の長城は落とせないわ」
「待ってくださいお二人とも、そもそも万里の長城は地上にあります。衛星軌道上って何ですか」
「ああ、そうであったな。しかし……この聖女と崇められた少女は強いのだな。蔑まれてもなお民を救おうとするとは」
「私から見たら狂戦士と言っても良いけどね。こんな扱いでなお、人なんかを救おうとするなんて」
「その聖女とやらには会ってみたいものだな。カルデアに召喚されていると記録されているが、このカルデアでは今何をしている?」
「妹二人と遊んだり水着を着て漫画を作っているわね」
「俺を弟だと認めさせるため拳で姉妹喧嘩をして洗脳しています」
「待て、意味が分からん」
「第二特異点……ローマか。あのカエサルなどが皇帝となりし国であったか」
「そうですね、全てはローマに通じる――なんて言葉があるくらいあらゆる文化の原点と呼べる場所ですね」
「この世界の文化を学ぶとするならば、いずれ辿る場所か。……そういう者であったか。あの者達は」
「?」
「気にするでない。なるほど、確かにその国の危機ならば特異点ともなりえよう…………ふむ、ローマに全てを奪われても味方をした勝利の語源のブーディカに、ローマの反逆の象徴とも呼べるスパルタクスか。ふむ、反逆者とは言えこれならば凍結英雄としてふさわしいかもしれんな」
「桃園兄弟以上に手に負えないと思うわよ、そいつら」
「え、朕だし大丈夫じゃない?」
「どこから来るのよその自信!」
「待ってください凍結英雄? え、英雄を冷凍庫保存?」
「気にするでない。……ふむ、アルテラ、破壊の大王か。文明を破壊する存在ならば区画に一基配置すれば儒の広がりを防ぐのにも役に立つかもしれんな」
「なによその地獄絵図」
「その英霊は今何をしている?」
『四基のサンタの一基として、羊に乗ってる』
「待て、意味が分からん」
「第三特異点……おお、この世界は良いな! 民を乗せるために船は必要だが、儒が広まる心配が少ない!」
「その場合お前の身体が海水でショートするわよ」
「え、始皇帝さん中身機械?」
「安心するがよい、朕の身体は聖躯であろうとも完全防水である!」
「中身が弱くてウイルスにやられたんでしょうが。多分この特異点でもどちらかの海賊や契約の箱に突破されるわよ」
「え、始皇帝さんパソコンなの?」
「む、それを突かれると痛いが……しかし、星の開拓者と二年で海賊の在り方を示した男、か。この英霊達は何をしている?」
「確か昨日黒髭がドレイクさんと酒を飲んで嬉しさにまたキュン死してました」
「ドレイクは多分今頃黒髭を取り戻しに英霊の座に還って連れて戻ってきている頃合いね」
「……よくあることなのか?」
「割とあります」
「そっかー」
「第四特異点……か。この時代は酷いな。特異点とはいえ、実際にこの
「そうね、人は本当に後先考えないんだから」
「虞美人さんがそれを言いますか」
「なによそれ、どういう意味!?」
「やめてって言っても宝具使うし、こないだもお酒を飲んで一発芸が如く爆発したし」
「なにをやっているのだ、仙女よ」
「……別にいいじゃない」
「失った
「あれ、マスター怒ってる……?」
「怒ってないですよ?」
「ともかく、魔術王か。……ほう光束の一本一本が
「ちょっとマスター、この
「うん、本当に再現したら多分俺またあの監獄に囚われそう!」
「まったく無粋なやつらめ。まあいい、気を取り直して第五特異点……は、ダヴィンチとやらが少し遅れると言っていたな。第六特異点は……民の選定か。民を残すというのであれば、この英霊の行動に間違いはないだろうが、正しいとは言えまい」
「あら、珍しい感想ね。そんな言葉が聞けるなんて」
「うむ、朕ならば全員生き残らせるとも! だが、この槍はいい。選んだものを仕舞えるのならば儒を排して何度も世代交代させれば自然と儒はなくなるだろう」
「やっていることほぼ同じじゃない!」
「と言うよりそんな便利なモノじゃないと思います、あの聖槍。……ああ、衛星軌道上の万里の長城って、まさかロンゴミニアドのように始皇帝さんが空に駆け上がって万里の長城を撃ち落とすんですか!」
「む、それは良いな。今度試してみるか」
「やめなさい!」
「しかし、その言い方だとこの英霊もカルデアに居るのだな。恐らくはこの記録の英霊とは違うだろうが、会うことは出来るのか?」
「同一人物と言える存在が11人位いますけど、どのアルトリアさんが良いですか?」
「はい、これがその一覧よ」
「…………英霊とは、不思議よな」
「第七特異点……神と共存した最後の時代、か。ふむ、この男は不老不死を手に入れようとして蛇に掠め取られたのか。…………? 不老不死を目指すなら、機械の体にすればいいものを。何故しなかったのだ」
「無茶言わないでよね。その時代に機械なんてないでしょうに」
「そもそも始皇帝さん時代に機械ってあったんだ……」
「しかし、醜いな。このラフムと言う存在は」
「そうね。ただ、人間も変わらない部分があると思うわ。だからこのキングゥとも相容れなかったわけだし――」
「朕ならばこのようなデザインにはせんと言うのに!」
「そこなの!?」
「まったく、朕の聖躯を見習うと良いのだ。あの姿こそ究極と言えるものだ。なに、朕の存在が至高であるがゆえ、恐れ多いのは確かであろう。ふ、この真人躯体もそうであり、究極の均整と能力を備えた到達点とも言える完成度。それに対し新人類をこのような姿形にするなど、この人類悪とやらとは相容れん」
「そりゃそうでしょうけど、微妙な所で反目するのね……」
「qkde qkde g@7ffff!」
「マスターのトラウマスイッチが! しっかりしなさいマスター!」
「……いや、存外あの中身なら相応しい外見なのかもしれんな」
「…………」
「どうしたのよ、見られるようになった第五特異点の記録を見るなり黙って」
「……マスター。この男はカルデアには居るのか?」
「え? ええ居ますよ。大抵シミュレーションルームで誰かと仕合うか、鍛錬していることが多いですが」
「……名前はこの記録のモノと同じなのだな」
「? はい」
「……そうか。この男は英霊となりうるのか。……少なくともこの歴史においてはそのように名を刻んでおるのだな。戦争による武勲を立てたのではなく、拳法と槍術を究極の一まで極め、歴史の中でも最強と評されるほどに」
「ああ……この男のことね」
「?」
「マスター、今日のライブラリの閲覧はここまでとする。朕は少々会っておきたい英霊ができた」
「会っておきたい英霊ですか?」
「そうだ。朕の民ではまず存在することは無い名前と武勲を持つ男だ。その者と会うことが、此度の召喚における見定めの始まりとして良いモノだろう」
「別に大丈夫だと思いますけれど……どうしたんですか?」
「なに、この男が楽しそうかどうか、見るだけの話だ」
二つ目のリクエスト話はイベントとか地の文など書くと長くなりそうなので会話形式……色々と申し訳ございません。
そして始皇帝さん書くの割と難しいです。