虞美人さん、人理修復中のカルデアにて   作:heater

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大分間を開けてしまいましたが、リクエスト話の続きです。
終始シリアス。そして力尽きる。


リクエスト話3

 

 

 

※この話は特別な時空です。この物語の設定とか細かいことは気にしないでください。

 

 

 リクエスト【虞美人さんin二部三章】

 

※虞美人さんの歩みはおおよそこの物語と同一です

※ただし蘭陵王さんとはカルデアで出会っていません

※虞美人=芥ヒナコはバレることなくシンの両者の会合から

※案内役に哪吒さんの代わりに虞美人さんに呼ばれています

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お前が……何故、お前がそこにいる!?」

 

 ある時に出会ったその女は、私の姿を見て私達に驚愕と疑問と怨嗟が混じった怒鳴り声で、その言葉を叫んだ。

 私はこのシンに来てから、気配遮断やダヴィンチ(ロリ?) やホームズの協力により相手に私の情報の仔細を認識されることなくここまで来ていた。だが、ここまで来た以上は隠し通せない。何故なら――その女は私の事をよく知っているのだから。

 

「何故もなにも、私は汎人類史の英霊、虞美人。ここにいるマスター……藤丸立香に呼び出された以上、マスターと共に戦う事のなにがおかしいのかしら、クリプター(侵略者)

 

 私は戸惑うマスターとマシュの前に庇うように立ち、表情を崩すことなくその女の質問に答える。

 

「有り得ない……お前が、英霊……!? 人間に力を貸し、カルデアに召喚された挙句に私の前に立つ、だと……! 有り得ない、()が、そんなことをするはずがない!」

「落ち着いてください、マスター!」

 

 返答を聞いたその女はより驚愕と動揺の表情を見せ、当初の目的など忘れ、誰に聞かせるわけでもなく自問し、混乱しながら最後には言葉の対象を変えた自答を叫ぶ。

 その叫びに対し、己自身も仮面越しにも分かる驚愕の表情を浮かべながらも、落ち着くように蘭陵王はマスターであるその女に駆け寄り、暴走しないように体を抑えつけた。

 

「当たり前でしょう? ()()()じゃないんだから」

「なに……?」

「お前は人間を信用しようとしない。人間を好こうとしない。世界に興味を持とうとせず、他の存在に興味を持たれないように今は本で世界を閉じている」

 

 動揺を抑えきれない女に対し、私は言い聞かせるかのように淡々と言葉を告げた。

 それはかつての私がそうであったように。だが、こうして私がここに立つ以上は女がそうはならないと私が知っているが故に、言葉を告げる。

 

「今の私は人間を見て、人間を知って、世界と過ごして、本をマスター達と楽しんだ。だから、私とお前は違う存在なの。……ああ、だけど」

 

 私は右人差し指を顎に当て、口角を少しあげて、目を笑うかのように少し細めた。

 

「貴女がそれを望むのなら、カルデアは歓迎するわよ。一緒に楽しむかしら?」

「――セイバー! 奴らを攻撃しなさい!」

 

 私の分かりやすい挑発に対し、女は蘭陵王に攻撃を激昂しながら命じた。……自分で言うのもなんだとは思うが、割とあっさり挑発が成功するのは喜んでいいのか分からない。

 女の命令に対し、蘭陵王は一瞬戸惑うがすぐに切り替えて武器を構え、私達に攻撃を仕掛けて来た。それに対し身を構えたマスターとマシュを庇いながら二人に言う。

 

「ごめんなさい、マスター、マシュ。色々と聞きたいことはあるでしょうけど、今は――」

 

 と、私が言いきるよりも早く、

 

「はい、虞さんを信じてこの局面を切り抜けたいと思います」

「そうですね、今までの様に、戦いましょう」

 

 と、変わらず信頼した言葉を私に投げかけてくれた。

 

 ――ああ、この二人の言葉は、本当に安心できる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 正直に言うならば、私達は蘭陵王に対し不利になることなく攻勢から覆ることは無かった。女は本来の力を出し切れず、こちらはマシュと私の二人掛りでマスターの指揮の下、蘭陵王と相対しているのだ。当然と言えば当然なのかもしれない。

 女の表情は変わらず苦々しく、私を睨む事を止めない。それ故に隙が多く、あまり得意ではない指揮もより酷いモノとなっている。……頃合いね。

 

「マシュ、私はあっちのマスターに仕掛けるから、蘭陵王をお願い!」

「はい!」

 

 マシュは私の言葉に対し、頼もしい返答を返した。……オルテナウスでの戦闘は以前と比べて辛そうではあるが、マシュも一人でも強くなっているのだと少しだけ嬉しかった。

 

「令呪を持って――」

「――遅い!」

 

 私の行動に対し、女は令呪を切ろうとするがそれよりも早く、私は女に攻撃を仕掛け、腹に致命傷と言える一撃を加える。

 

「えっ……」

「虞さん!?」

 

 それに対しマスターとマシュが驚愕の表情を浮かべていた。恐らくは私がなんの躊躇いもなく、人間(と言える存在)を殺しにかかったのだ。今までの私とは違ったので理解が追い付かないのだろう。

 

「く、この……おの、れ……!」

 

 女は私を苦悶の表情と共に睨み付ける。力は弱まっている。今にも消え入りそうな声で、今にも無くなりそうな腕の力で、私に攻撃の意思を見せる。

 だが、女は死なない。死ぬはずがないのだ。この程度で死ぬのならば、女は世界も人間も呪うはずがない。

 

「ほら、喰いなさい!」

 

 私の言葉に対して女は初め戸惑いを見せたが、意味を理解すると血涙を流すが如く私に憎悪の視線を向ける。だが、私は矢継ぎ早やに言葉を止めることなく投げつける。

 

「安心しなさい、私はお前と同じように、たった一度では死んでも死にきれない! なら私を喰って、そんな仮初の姿じゃなくて、真祖と、化物と、天使とも神とも鬼とも悪魔とも呼ばれた姿になりなさい! それが、お前にはできるでしょう!」

 

 この場に居る者では私と女と蘭陵王しか理解できない言葉を言いながら、私は女に対し顔を近づけ、自身の首元を晒した。まさになにかを吸う事を促すように。

 

「この、自らサーヴァントに堕ちた存在風情が!」

 

 私の言葉に対し、女は挑発に乗る形で私に牙を立てて私に喰らいつく。マスターとマシュが私の名前を叫ぼうとするが、視線でその言葉を飲み込ませた。何故私がこのようなことをするのかは、カルデアに所属する者も、異聞帯の者達も理解できないだろう。

 だが、これは成さねばならない。その女と私は違う存在であり敵ではあるが、私がかつて通ったような道を通さないためにも。マスター達を騙していた贖罪のためにも。

 この女が人間を恐怖の存在としてしか捉えず。理解しようとせず。心の底を塞いでいで自衛してきたモノを壊すためにも。私がそうであったように、嫌悪して止まなかった人間の行いそのものを。

 

「『人の姿で敵対したならば、人なりの殺し方で済ませてやろうと思っていた』、かしら」

 

 私の言葉に、女は私の霊核を飲みながら睨み付ける。

 気が付けばその場に居る者は、戦闘もやめ私達の行く末を見ていた。……マスター、マシュ。そんな顔しないで。オフェリアの死をつい最近見たマスターには辛いでしょう。蘭陵王、仮面越しでそんな顔を見るのは初めてね。複雑でしょうけれど――

 

「寛恕の余地はない。私はお前と違う。怨敵カルデア、そして虞を名乗るサーヴァント! 我が呪詛で滅するがいい!」

 

 かつて真祖と呼ばれた存在から、戦う姿を目を逸らさずに見守ってほしい。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「為すべきことを為せ。ここへなにをしに来たか思い出せ」

 

 そんな始皇帝の言葉を掻き消すように、私は吸われた魔力を暴走させ女に攻撃をした。早く。迅く。為さなければ始皇帝は項羽様を送り出してくるだろう。ならばそれまでに目標を達成せねばならない。

 

「「呪血尸解嘆歌(エターナルラメント)!」」

 

 後先を考えない大技の応酬。私はマスター達を。女は蘭陵王を気にかけてはいる。だが、それでも互いに優先すべきは目の前の敵。

 マシュのお陰でダメージは及ばないものの。それでも余波は他の者を襲う。

 

「何故だ! 何故お前はサーヴァントになぞなった!」

「それは思い返すと腹立たしいけれど、最後に決めたのは私の意思よ」

 

 魔力を暴走させながら、受け入れられない存在を否定するために女は私に問いをぶつける。私は声を荒げることは無く、ただ、問いに対し冷静に対処をする。

 

「人間共を許したと言うのか!」

「全ての人間を許してはいない。ただ、今の私はマスターの行末を最後まで見届けたいと思っている」

 

 体が互いに爆散し、再構成し、魔力を大気から喰らい、暴走させ、構築し、()を降らせる。

 相殺し、混ざり、反発し、融け込み、元に戻ろうとする。

 

「巫山戯るな! あの男を信じて縋っていると言うのか!」

「縋っていなんかいない」

「縋っているだろう、人間の下に身を置き、カルデア如きに自ら力を貸し、与しておいて!」

「ええ、お前から見たら、私は有りえないことをする馬鹿みたいな存在なんでしょうね」

 

 私と女は魔力の暴走を止めず、攻撃の手を緩めることなく。刹那に女を目を見て、けれども、と前置きの言葉を発して、言葉を続ける。

 

「――馬鹿を見るのも、割と悪くないの」

「――殺す」

 

 私が笑みを浮かべたことに対して、女はより殺意をこちらに向けた。

 魔力の雨が、こちらを襲う。

 

 そこには、私の魔力も混じっていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「――ぐっ、が、っぁ……!?」

「マスター!?」

 

 戦いを始めてどの位経ったのか。

 女は頭にくる妙な変調を感じたのだろう、魔力の暴走を止め、苦しむように頭を押さえていた。蘭陵王が心配の声をかけるが、私は蘭陵王の動きを牽制し近づけさせようとしない。

 ……あぁ、頭が痛い。私は()()()()()()()とはいえ、やはりこれは気分が悪い。とは言え、女は私の比ではないだろうけれど。

 

「これ、は……!? ロンドン……ウルク……カルデアのサーヴァントに、シンの始皇帝に項羽様……!?」

 

 女は苦しんでいた。

 まるで幻想を見た様に、幻影に惑わされているように。己の知らないと元は同一存在と呼べるなにかの記憶を、見たかのように。

 

「あー……でも、疲れたわね」

『虞さん!』

 

 マスターとマシュ。他にも通信越しも居るだろうカルデアの職員達が私を呼ぶ声が聞こえて来た。

 カルデアのメンバーはなにが起きているか理解できていないだろう。ダヴィンチやホームズなどであれば大まかなことは把握できているかもしれないが、全てを理解はできているのだろうか。

 私は駆けよろうとするマスター達をこちらに来ないように、手で制す。

 

「さて、と」

 

 私はふぅ、と息を吐きながら、女に未だに頭を押さえる女に近付いていく。

 対して女はそんな余裕がないのだろう、こちらを睨んではいるが、攻撃の意思は示さない。この状況を説明できるだろう私に対し、説明を乞うかのように言葉を待っている。

 

「お前は私と違う」

「……えぇ」

 

 女は否定をしない。だが、それは今までの拒絶とは違い何処か納得をしたかのような返答であった。

 

「お前の今の望みが、このシンならば叶う事を知っている」

「……えぇ、でもそうはならなかった」

「だけど私は違うのだから、お前達と敵対する――とは言えない」

「……言いたくない」

「なら、お前のしたい事は?」

 

 私の問いに対し、女は数秒の間を置き、息を小さく吐くと頭を押さえるのを止めて立ち上がった。変わらず睨み付けてはいるが、今までのような拒絶の意思は和らいでいる。

 

「いい? 私はこのシンに関わりがあったから呼ばれたけれど、カルデアのサーヴァントである以上、魔力の供給が消えれば常にマスターと共にいることは出来ない」

「……ふん、()()()いる。そのためにお前は自身を私に喰わせて、戦いで何度も同時に魔力を暴走させたんでしょうが」

「ええ。だったら、()()出来ているでしょう。私がなにをしたいか」

 

 内容が始皇帝に聞こえないように、私達はある特殊な方法を使い会話をする。一時的ではあるが、今はこれで十分だろう。

 

「……何度も言っているけれど、お前と私は違う」

「ええ、私の感情と記憶の全ては誰にも渡さない。お前はお前。私は私」

「ふん、いつあの男を裏切るかも分からないわよ」

「だけどそれをしたくないとも思っているんじゃない?」

「…………」

「黙れば肯定の意味とも捉えるわよ」

 

 女は忌々しそうに顔を逸らした。……成程、図星を突かれたらこういう態度をとるのね。妙な感覚ではあるが、少し学習をした。

 

「……あの男は」

「マスターが?」

「あの男は、私を受け入れるの? お前と私は違うのよ」

 

 女の顔を逸らした先にマスターが居たためか、女はなにかに期待するような、怯えるかのようにマスターに対して不安を口にした。疑問は最もであり、今こうしてカルデアの敵対者として存在している女は拒絶されてもおかしくは無い。だけど、その疑問は晴らさないといけない。

 

「さすが数千年殆ど孤独だっただけあるわね、疑い深い」

「それはお前もでしょうが」

 

 うるさい。

 私はこの数年は孤独じゃない。色々と友と呼べる存在も増えたんだから。

 

「受け入れるに決まっているじゃない。それも知っているでしょ。むしろサーヴァントとしてではなく、生きて受け入れられ、見届けられるお前が羨ましいくらいなのに」

「……時間はかかるでしょうね」

「ええ、かかるでしょうし、辛いでしょうけど」

「けど?」

 

「最期は間違いなく“ああ、楽しかった”と、言えるようになりなさい」

 

 私がサーヴァントとしての歩み振り返った時と、同じ感想が抱けるように。

 私は目の前の――に対し、そう願った。

 

 

 

 

 

 

 




多分続かない。

もっと時間があればゆっくりとカルデア虞美人さんinシン全編を書いたり、説明不足分を描写したい気もありますが、割と辛そうです。

そして細かいことは気にしてはいけない。まひろさんは良い言葉を残してくれました。……いえ、この言葉を使うのは失礼ですが。

ちなみに作者は先週バルバトスを狩るラフムの一員でした。
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