虞美人さん、人理修復中のカルデアにて   作:heater

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一応タグには、ほのぼのというものがあるので、ほのぼの系です。多分。


とある一日

 

 ある時、久々に早く目が覚めた。

 早朝3時。もう一度寝ても問題が無いような時間かもしれないが、不思議と寝る気にはなれなかった。確か電力(負担)削減のために、この時間帯は多くのサーヴァントとカルデア職員が寝ているはずだ。

 久々に誰も居ないカルデアを歩くのも悪くはないと、私は自室を出た。ナイチンゲール辺りに見つからないようにだけ気を遣おう。

 

「……寒い」

 

 外は吹雪。

 本来のカルデアならば外気の影響がないように、夜であろうと一定の温度に保ってはいるが、今は電力削減のため最低限の暖房のためか、もしくはボイラー室から遠いためか妙にカルデアは冷えていた。

 しかしそれでも問題はない。むしろ薄暗い廊下を気分転換に歩くにはちょうどいい。

 

「おや、虞殿。このような時間に珍しい」

 

 と、ふらふらあてもなく歩いているとフーマの小太郎と出会った。

 何故このような時間に――と思ったが、見るとマスターの自室の前であった。恐らくは忍者系サーヴァントで警備をしているローテーションで、今日が小太郎の番であったのだろう。ちなみにこの場合脅威の対象は、敵:カルデアサーヴァントだと2:8くらいの割合である。主に精神がバーサークしている者からマスターを守らなければ、マスターの気も休まらない。……まぁ、サーヴァントと繋がった夢を見ている時点で気休め程度にはならないだろうが。それでもマスターは「安心する」と言っているので、本人達にとってはこれ以上にない喜びだろう。

 小さな声で言葉を一言二言交わし、私はその場を後にする。

 

「む、虞君か。どうした、このような時間に。摘まみ食いというわけでもあるまい」

 

 マスターの部屋を後にし、そのまま食堂に向かうとエミヤと出会った。随分と早い時間ではあるが、この男はこの時間に起きているのは基本である。昔から5時には起きていた習慣があるので、この時間に起きているのは苦どころか普通らしい。むしろ200人以上の朝食を作る一員としては、普通どころか楽しそうである。本人は否定するだろうが。

 私は朝早く目が覚めたことを言い、適当に温まるモノを二つ淹れるようにお願いをした。できればヤマトのお茶などが良いと言うと、少々不思議そうな表情をしながらも二人分淹れてくれた。その間にエミヤに今日の朝昼夕の食事の献立を聞くと、私の好みのモノがあったので内心喜んでいると、エミヤが、

 

「せっかく今日は初めて見たのがキミだったんだ。ならばキミの好きなモノを作ろうと思っただけだよ」

 

 と小さく笑いながらお茶を差し出してきた。成程。これがよく職員(女)が頬を染めるカルデアのドンファンの殺し文句ね。残念ながら私の心には一切響かないので「ふっ」と憐れむとエミヤは不思議そうな表情で私を見送った。

 私は来た道を戻り、再びマスターの部屋に戻る。

 私がまた来たことに不思議そうな表情をする小太郎であったが、手に持っているモノを見るとなにをしに来たのか理解したようで軽く頭を下げ謝辞を述べる……が、警備中なので気を緩めることは出来ないと申し出は一度断った。受け取らないのならば宝具を発動するとお話する(脅す)と、観念してお茶の片方を受け取った。

 ずず、とお互いに飲みながら部屋に聞こえない小さな声で最近の事を話し合う。初めは私がヤマトのお茶を飲み慣れていることを不思議そうにしていたが、千代女や巴と偶に飲むことを言うと、納得したかのように頷き、その後はお互いがお茶を飲み終えるまで他愛もない話を続けた。

 小太郎と別れ、空のコップを食堂に帰した後再び適当に歩いていると、チラホラとカルデアで起きている者が増えて来た。朝の鍛錬をする者、日課の祈りをする者、偶々出会った者同士で会話をする者と、各々が自由に行動している。

 

「あ、おはようございます、虞さん!」

 

 そんな私も偶々出会ったマシュと朝の挨拶を交わし、お互いの体調について聞く。随分と早く起きているのだとマシュに聞くと、なんでも今日はレオニダス1世と他複数と共にトレーニングをするとのことだ。朝からレオニダス1世あのテンションに付き合うのに、随分と笑顔で元気なモノである。これだけ嬉しそうな表情だと、このことをマスターに話して揶揄うのも面白そうではあるが。

 私も参加はしないが、朝食までの時間潰しとしてマシュに付いて行きトレーニングを見学してきた。暑苦しい事この上ないが、マシュと芥ヒナコ時代から何度か会話を少し交わしてきた職員がイキイキしているので、その表情を見れば悪くはない時間である。

 トレーニングが終わり私は全員に水を渡し、職員達とも僅かではあるが会話を交わした。シャワーを浴びるというので一旦別れて私は食堂に向かう。

 

「あ、おはようございます、虞さん!」

 

 マシュとまったく同じ言葉を言いながら小走りで走ってくるマスター(フォウと一緒)とも途中で会い、食堂まで会話をしながら一緒に歩いていく。

 食堂でブーディカから食事を受け取り、自然な流れでマスターとドクターが先に座っていた同じ机に席に着き、遅れて来たマシュと共に朝食をとる。

 ドクターが眠そうであったのでどうしたのかと聞くと、どうもこの男はマギマリとやらを見ていて寝不足とのことだ。……恐らくは他の事もしていたのだろうが、それを指摘するのも野暮というモノなので呆れたような言葉だけ投げかけておいた。

 

「さ、今日も張り切ってリソースを集めよう!」

 

 マスター達と会話をしていると、唐突に現れたダヴィンチは今日の予定を話し始めた。どうも微小な特異点が現れ、その特異点解決のために今日は動くとのことだ。リソースが集まるのならば、別に面倒ではあるが悪くはない。……それにリソースが集まれば項羽様が来る可能性もある。

 

「ふむ、それで私達が参加するという訳ですか」

 

 参加メンバーはマスターやマシュ、私の他に呪腕のハサンとジェロニモであった。……不思議である。純粋な破壊力などで言えば黄金王や太陽王、征服王の方が火力があるだろうが、この妙な安心感はなんだろう。

 ともかく特異点の情報と作戦内容を聞き時間まで準備することになった。とは言え、主にマスターとドクターの準備が主であったが。

 

 

「ふぅ、みんな、お疲れ様」

 

 無事リソースも回収し、微小な特異点は無事修復された。ドクターは私達が無事であることを確認し、マスター達にメディカルチェックだけ済ませるように言うと今日は解散と相成った。

 私は少々汚れたのと、スッキリしたい気分であったのでシャワールームへと足を運んだ。伊瀬愛とやらになっていた虚月館以来、いつもよりお湯であったまると気分が回復する気がする。ちなみに自室にもシャワーはあるのだが、ここからだと共有のシャワールームの方が近いのでそちらを利用することにした。

 

「あれ、虞さんもシャワーですか?」

 

 シャワールームに行くと、魔法少女のイリヤとミユに出会った。初めは私を怖がっていたイリヤではあるが、今では普通に話す程度にはなっている。ちなみにミユの方は大抵のサーヴァントと普通に話していたりする。

 話しながら仕切りを挟んで私の隣にイリヤ、ミユと入っていく。ちなみにこのシャワールームは私の肩から膝くらいまでの簡易仕切りが横にしかないタイプである。

 

「いいですよ、いいですよー! 自身のスタイルを気にしてぐっちゃんの身体を恨めしそうに見るイリヤさんの表情、そしてそのそんなイリヤさんを大丈夫だと見る美遊さん……まさに最高のシチュですよー!」

 

 とりあえず楽しそうにカシャカシャとシャッターをきる煩いステッキは居たが、捕まえて妹(?)のステッキに渡し、記録(記憶)を消去させた。しばらく知能指数が下がっていたが気にしてはいけない。

 謝るイリヤに気にしないようにとコーヒー牛乳を二本渡して、私はシャワールームを後にした。

 夕食までは時間が微妙に空いていたので、どうしようかと悩んでいると武則天とクレオパトラと出会った。妙な組み合わせだと思っていると、どうもトレーニングをしにクレオパトラの部屋に向かっているとのことだ。

 

「ふむ、其方も妾達と一緒にとれーにんぐをするか?」

 

 聞くと美しさを極めるために、()ポーズをとるゲームの最新版が出来たとのことだ。……確か以前に「美人というからには」などと言われ、そのトレーニングをしたが、正直よく分からない代物であった。予定があると丁重に断りたいが、この二人は皇帝のサーヴァントだ。下手に刺激をすると面倒になる。どうしたものかと悩んでいると、

 

「キサマらっ、美しいと言ったな!」

 

 ペンテシレイアが現れ、マズいと思ったのか二人はすぐさまこの場を逃げ出した。さずがにペンテシレイア相手はあの二人も相手にはしたくないのだろう。ちなみにこの状態は私も相手をしたくない。

 気配遮断を使いその場を去ると、逃げて辿り着いた先の部屋にダストンが居た。どうも資料を整理しているようであったので、時間潰しにはちょうど良いと手伝うことにした。ダストンは慌てていたが、このままでは夕食まで間に合わないと自覚していたのか、協力を受け入れた。

 ……そういえば昔もこんなふうにしていたわね。芥ヒナコ時代(あの時)は最低限しか会話はしていなかったけれども。まぁ、偶にはこんな時間も悪くはない。

 

「ありがとう、おかげで夕食が味気ない栄養食にならずに済んだ」

 

 ダストンは感謝の言葉を述べ、最後にドクターの承認を貰ってくると言って去っていった。

 いい時間であったので私は食堂に向かうと、入り口で蘭陵王と会ったので共に食事をすることにした。エミヤから食事(宣言通りの献立)を受け取り、蘭陵王と向かい合って座る。今日の特異点の事や、その間にカルデアではこういったことがあったという話や、明日の予定などを話した。

 

「それでは、またよき明日になるよう」

 

 食事を終え、蘭陵王は微笑みながら場を後にした。……思い返すと彼も仮面を外す時間が長くなったものである。それだけこのカルデアにも溶け込んできているのだろう。

 食後のお茶を飲んでいると、メディカルチェックが長引いたのか、遅めに食堂にやって来たマスターとマシュと、いつでもできるような何気ない会話をする。

 食事も食べ終え、私と同じようにお茶を飲んでいると、今日の疲れが出たのか二人ともうつらうつらとしだした。早めに休んだ方が良いと言うと、「そういう虞さんこそ」と二人は私も休んだ方が良いと告げて来た。

 確かに早めに起き、特異点行ったせいかいつもよりは疲れがある。早めに寝て回復をした方が良いかもしれない。

 ならばと会話を止め、食器類をカウンターにいる(キャット)に渡す。食堂の前で眠そうに目をこするマスターを見ながら、

 

「おやすみなさい、マスター」

 

 今日最後の会話を交わした。

 

 

 今日はよく眠れそうである。

 

 

 




来週は4章を……!
とはいえ「放送の後!」ではなく水曜開始もあり得るわけですが。

そして4章時にはマナプリが増えそうである(予言)


捏造設定
・電力消費削減のために睡眠で体調回復(一度霊体化して再出現より効率がいい)
・受肉してなくてもシャワーを浴びたりするとサーヴァントもさっぱりするよ!(趣味)

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