マスター、私にとって死は救いよ。それは変わりないわ。
髑髏顔のアサシンも言っていたでしょ、死あってこそ生きるに値するって。
私のとっては変わらぬ願いで、叶わぬ願い。嫌だけど私は髑髏顔のアサシンが言っていたように停滞の中に存在しているの。
だけどマスターは違う。常に進んで行く者なの。
世界で唯一のマスターになって、人理修復なんて大層な目的をもって、世界の命運なんてものを背負わされている、進まずにはいられない存在。
重荷でしょうね。停滞する私なんかには分からない程の重荷を背負って、自分の為すべき事を為そうとしてきた。自分に出来る事ならやり遂げたいと、馬鹿みたいに進んで来た。世界の命運なんて理解できないけど、やれるべき事を、とね。
けど、それで自分の体調を崩したというなら、本末転倒よ。
ドクター曰く風邪らしいわ。
まったく定命の者は大変ね。少し体調を崩しても再構成とか出来ないんだから。
魔術とかルーンですぐに治せることは治せるらしいけど、何処かの看護師や医者の神様とやらが言うには適切な治療で免疫を付けた方が良い、という事で休んでいるんですってね。
マスターは気を負いすぎ。馬鹿じゃないの。
……はいはい、良いから今は休みなさい。
あの童話作家や征服とか言ってる王様も確か病死なんでしょ。病気って言うのは
人理修復のためだ、なんで言うけれど、それで自分すら救えなくてどうするの。
一時の感情に身を任せて、全てを台無しにしていては元も子もないでしょう?
え、なに、マスター? よく聞こえないのだけれど。
……私が言うと説得力がある、ですって?
そういう戯言を言う口はこれかしら? よく伸びるじゃない、このまま私の宝具みたいに弾いてしまおうかしら。
謝るんだったら最初から言うんじゃないわよ。私がそんなブレーキが壊れた存在みたいに言うんじゃないわよ。そんなのは自分をブレーキと思っているあの褐色の独逸弓男だけで充分よ。
……なによ、その目。言いたいことがあるなら言いなさい。言った後でさっきと似たような事を言うようなら今度は両頬を伸ばすから。
ところでなんで私が居るのですかって?
なに、私が居る事に文句あるの? 文句あるなら
……違う? ああ、あの自称母や自称姉、自称嫁が居るかと思ったという事ね。アイツらは今頃マシュやスパルタの王とかが足止めしているわ。アイツらが喰いとめていなかったら今頃この部屋はサーヴァント共で溢れかえっているのだから、治ったらきちんと感謝しておきなさい。今は治す事がマスターに出来る最大の謝辞よ。たぶん。
だから今は寝てなさい。睡眠は大切だって何処かの忌々しい女とよく似た猫が言ってたわ。寝て体力を回復させなさい。偶には休憩も必要よ。
眠れない? じゃあ……何か見る?
本来人理修復後に放映予定だった映画三部作の最終章をドクターが手に入れていたのを最近見つけ出したって言うから、それでも見る? 確か前二作は見ていた、って言ってたわよね。確か前回の話は女が覚醒して全裸で戦う事になった所で終わったらしいわね。
そんな事より話をして欲しい? その映画は病気が収まったらゆっくり見るって?
……まったく我が儘なマスターね。本当だったらしないけど、今だけは特別に話してあげるわ。
項羽様についてで良いわね? 私の口から素晴らしさを聞けるんだから文句は無いでしょう? 文句なんて有るはずないわよね。光栄に思いなさい。
……え、良いの?
そ、そう。じゃあまずは……
◆
……寝たわね。
まったく、世話の焼ける
偶には休んでも良いというのに、最後まで申し訳なさそうだったわね。
ずっと戦い続けて、けどいつまでたっても戦う事を慣れない、戦う
……死は救いという気持ちは私にとって変わらない。けれど、今
私はお前らのような定命の者の健康とか、病気とかは分からないけど。
「私がわざわざ看病したんだから、さっさと治さないと許さないから」
定命の者なんだから、身体は大切にしなさい、マスター。
映画は延期されましたが、健康はとても大切です。
気兼ねなく見れる季節になってから、ゆっくりと見られると良いですね。