直死の闇魔法士   作:虎壱

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プロローグ

 「ここは…?」

 気付くとそこは真っ暗な世界。周りの景色どころか自分の手足すら見えない。そんな暗闇の中、自分の意識だけが存在している。よく分からないことに対して考えるが思考がはっきりしない。なぜこんなところにいるのか、記憶を手繰ろうともするが霧がかかったようでうまく思い出せない

本来ならこんな暗闇の中に一人だけということは本能的には恐怖を呼ぶものだが、不思議と自分の心は落ち着いていた。

いや、むしろ心は穏やかだった。

「まあ、いいか…。」

■■■は思考することををやめ、そんな闇の中に意識をゆだねる。

 

 

 

 

 

一体どれほどの時間こうしていただろうか、ゆだねていた意識の中、何か瞬くものがあった。

だんだんとその瞬きは増していき、ひときわ強く光ったかと思うとその光は球体となって自分の正面にあった。

 

「これは、なんだ?」

 

「いんwqpあおhfらfdhんblfkバウbl。kdむfb5sbhs1bsgf」

 

「は…?」

 

「?…!!これで理解できるかな?」

 

光の球体から聞こえてきたのは男性とも女性ともいえるような中性的な声。初めは何を言っているのかまるで分らなかったが、少し間が開いた後理解できるようになった。

 

「あんた?は何だ?」

 

「私は人間が神、真理、根源と呼ぶもの。」

 

「神…か。で、その神とやらが俺に何の用だ?というか、ここは何処で何故俺はここにいる?」

 

「それはあなたが死んだからで、ここは死の概念そのものの中。あなたのところに姿を現したのは、あなたがこの死の中で魂の存在を保っていたからです。本来、魂は死を迎えるとこの死の概念に取り込まれ、死と同化した後、新たな無垢な魂として生まれるものなのです。ですが、あなたはどうかせずにその存在を保ち続け、新たな魂として生まれることができないため様子を見に来たんです。」

 

良くは分からないが俺の魂に異常があったらしく、このままだと生まれ変わることができないから様子を見に来たらしい。

 

「そうか、それでその異常の原因は分かったのか?」

 

「はい。どうやらあなたの魂は2つの魂が1つとなっているようなのです。2つの魂が1つとなっていることによって1度の死では死んだと判断されず、死に同化されなかったようです。このようなことは本来ありえないのですが…。」

 

「だが現に俺はこうしてここに存在している。その問題は解決しそうなのか?」

 

「いえ、このままでは永遠にこの死の中を漂うことになります。なので、このまま新たな生を受けてもらいます。今回は魂を管理している私の不手際なので希望があれば聞きますが何かありますか?」

 

「いや、記憶や思考がはっきりしなくて希望をと言われても考えるのが難しいんだ。これは何とかならないのか?」

 

「死に触れていることによる影響ですね。本来は死と同化して無に帰るので記憶なども無に帰るんです。あなたはその存在はありますが記憶などは影響を受けているためはっきりしないんでしょう。」

 

そう言うと神は一度強く光る。光が収まると記憶などにかかっていた靄は消えていた。それと同時に自分が死んだときの記憶までよみがえってくる。

 

「ッ!!確かに記憶などははっきりしたが…これはきついな。そうか俺は親に殺されたのか…。」

「自分が死んだときの記憶まで思い出したのですね。」

 

俺は親に殺されて死んだ。中学2年の時、親の働いていた会社が倒産。その2年後もともと体の弱かった母親が病に伏せ、父親は一生懸命に金を稼いでいたが母親の治療費や生活費をすべては賄うことができず借金を重ねていった。俺自身もバイトをしていたが生活はどんどん苦しくなり、両親はどんどんやつれていった。しかし、俺には「大丈夫だ、気にするな」「きっとまた昔のように戻れるさ」と両親は言い続けた。そして高校3年のある日の晩、俺がバイトから帰ると家の中はすでに暗く、両親はもう寝たのだろうかと思い自分の部屋に向かう。リビングの前に差し掛かった時、リビングから何かが飛び出し俺にぶつかる。それは父親だった。その手には包丁が握られ、その包丁は俺の左胸から生えていた。父は涙を流しながら「すまない、すまない」とつぶやき続けていた。リビングに目を向けると胸から血を流す母親が目に見えた。俺はそのまま倒れ最期に見た光景は父親が自分の首を貫く姿だった。

 

それからどれくらい経っただろうか、まだ気持ちは整理できてはいないが落ち着くことはできた。その間、神は何も言わずにいてくれた。

 

「もう大丈夫だ。」

 

「すみません。私のせいであなたにつらいことを思い出させてしまいました。」

 

「たしかにつらい。だが俺は両親に愛されていた。最後は父親に殺されてしまったが両親は懸命に生きたし、俺のために頑張っていた。心中を選んだことだって家族で最後まで一緒に居ようと、自分たちが死んだあと俺に悲しみや苦しみを与えないための苦渋の決断だったんだろうさ。」

 

「…ありがとうございます。」

 

「よし、それじゃあ希望だったな。それはよくSS小説であるような特典のことととらえていいのか?」

 

「はい、その認識でいいですよ。」

 

「わかった少し待ってくれ、今考えるから」

 

それから少しの間考え、

「なあ、前世のアニメとかからの引用もいいのか?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「よし決まった。まず魔法のある世界にしてくれ。容姿と戦闘技術を『空の境界』の両儀式に、ただし男で。あと『魔法先生ネギま!』の魔法と戦闘技術、身体能力と魔力を高めにしてくれ。」

 

「はい。大丈夫ですよ。他にはありませんか?」

 

「あともう一つ、俺に過酷な過去の記憶と両親はいないようにしてくれ。」

 

「えっ…。」

 

「俺にとっての両親はあの人たちだ。新しい生であってもそれは変わらない過酷な過去の記憶は特典をもらうことの対価だ。対価のない力は暴力になりかねないからな。」

 

「過酷な記憶は分かりましたが、ここや前世の記憶は消去することになりますよ。両親の記憶もなくなりますがそれでもですか?」

 

「それでもだ。」

 

記憶がなくなろうと新たな生で苦しもうと、俺の両親は彼らだ。確かに苦しむことになるだろうが俺の気持ちは変わらない。

 

「わかりました、それではもういいですね?次の生へ送りますよ?」

 

「ああ、頼む。」

 

俺が答えると、俺の周囲がだんだん光りだす。

 

「あなたの次なる生に幸があらんことを。」

 

白く染まっていく視界の中神の声が聞こえた。

 

「ありがとう。」

そう言って俺の意識は光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってしまいましたね…。」

 

親がいない方がいいのは分かっていますが、あの人のために面倒を見てくれる人との出会いがあるようにしましょう。あとあの人に名を与えましょうか。そうですね、最上幸人にしましょう。あなたに最上の幸せが訪れることを願って。

 

 

 

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