直死の闇魔法士   作:虎壱

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2話目です。楽しんでいただけたら幸いです。では、どうぞ。


最上幸人

 「ここは…。」

 

気が付くとそこには知らない天井があった。どうやらどこかの部屋で寝かされていたらしい。

 

寝ていたベッドから体を起こすと全身に痛みが走り、思わず顔をしかめるが声は漏らさない。経験上、こういったよく分からない状況でうかつに声を出すことが、いかに危険かを知っていたからだ。

 

(まずは状況の確認だ。体は損傷こそあるものの戦闘に問題はなさそうだ。なぜかは分からないが手当もしてある。だが武器の類はない、おそらくここに運び込まれたときに徴収されているな。ここは…見た限り一般家庭の一室だろう。ホテルや医療施設ではない。出口はドアが一つに窓が一つ。)

 

そこまで確認すると、幸人は音をたたせないようにベッドから出る。そして、そばにある窓から外をのぞく。

 

(ここは2階か。ここから出られないことも無いが、見られると厄介だ。)

 

トントントン

 

そこまで考えたところで、誰かがこちらへ近づいてくる足音が幸人の耳を掠める。幸人はいつでも動けるように腰を落とし、警戒心を上げ部屋の扉へと意識を向ける。

 

ガチャ

 

ドアが開き、幸人が警戒心を最大にする。しかし、幸人の警戒をよそに現れたのは7・8歳位の栗色の髪をツインテールにした女の子。女の子は幸人を見ると笑顔になる。

 

「あっ!起きたんだね!お父~さ~んあの子起きたよ~!!」

 

女の子はそう言いながら階下へと走っていく。

女の子が去ってすぐ父親と思われる男性が部屋へと入ってきた。黒髪で優しげな顔立ちだが動きに隙がない。幸人はその男性に警戒心を引き上げる。

 

「やあ、起きたんだね。僕の名前は高町士郎。君は?」

 

最上幸人(もがみゆきと)。」

 

「最上君か。年はいくつ?」

 

「8。」

 

「そうか、8つならうちのなのはと同い年だ。あ、なのはっていうのはさっきの栗色の髪の子だよ。」

 

士郎のする質問に幸人は言葉少なに答える。士郎はそんな幸人の態度にも笑顔で穏やかに質問をしていく。

 

「本当に驚いたよ。夜中に門の方で物音がしたから見に行ってみると君がもたれかかって気を失っていたんだから。」

 

そこまでしゃべると士郎の雰囲気が変わる。

 

「そんな君に質問だ。君は何者だい?その異常なまでの警戒心、あんな時間に一で人傷だらけな状態でいたこと、そして…コレ」

 

取り出したのは刃渡り20センチほどのナイフに投擲用のナイフ5本。

 

「とても普通の子供とは思えない。君は何者だい?」

 

「………。」

 

その場が緊張感に包まれる。

 

(俺と士郎と名乗る男との距離はおよそ2メートル。ドアはこいつの後ろでドアを出たところに一人、窓の下にも一人いるな。今の俺の状態では脱出はほぼ不可能、()を使えば別だがここで騒ぎを起こすと面倒だ。それにこの士郎という男は強い…。さて、どうするか…。)

 

士郎と幸人はお互いに鋭い視線を交える。埒が明かないと幸人が行動を起こそうとしたその瞬間、士郎と幸人、そして警戒していた残りの二人にとって予想外な人物の出現によってその空気は破られた。

 

「あら起きたのね。もう、士郎さんも目を覚ましたのなら言ってくれてもいいのに。初めまして、私の名前は高町桃子、この家のお母さんよ。君の名前は?」

 

「最上幸人。」

 

「幸人君ね。心配したのよ、ひどいケガして気を失ってたのよ。体は大丈夫?」

 

桃子はにこやかにそう言ってくる。士郎から感じていたような警戒心は伝わってこない。

 

「問題ない。」

 

「問題ないことはないでしょう。まあ目が覚めて安心したわ。そうそう、親御さんにも連絡しないとね、きっと心配しているわ。連絡先は分かるかしら?」

 

「ッ、俺に親なんかいない。俺は捨てられたんだ。」

 

幸人の返事に、桃子は目を見開き口を手で覆っている。士郎も目を見開き驚いている。本当に幸人の身だけを案じている桃子の姿に気が抜けたのか、幸人はいつもなら絶対に言わないことを言い、幸人自身もそのことに驚いていた。

 

「チッ!!」

 

幸人は舌打ちをすると、是が非でも話してもらうとばかりの様子の桃子と士郎に隠すことは無駄だと悟ったのか、話し出した。

 

「俺の両親は遺伝子工学の分野に秀でた研究者だった。若いころは世界的にも有名な人だったらしい。けど、その研究は次第に倫理的に問題のあるものになっていった。最終的にたどり着いたのが、人の受精卵の遺伝子をいじって人類最高の人間を生み出そうとした。その唯一の成功例にして失敗作、それが俺という存在だ。しかし、失敗作である俺は物心ついたころ、3歳か…、まあ、それくらいの時にとある違法組織に売られた。」

 

光の消えた瞳で、淡々と自分のことを話す幸人。

その姿に士郎は表情を曇らせる。

 

俺が売られたと聞いたときに桃子の息をのむ音がしたが俺は無視して話を進める。

 

「それからはありとあらゆる技術をたたきこまれた。格闘、情報搾取、情報操作、暗殺術、銃、剣、ナイフ、暗器、毒、果てには拷問や毒、自白剤への耐性強化なども行われた。売られてからの3年はまさに地獄だったな。だが、その3年後に自分たちが手をかけて育て上げたやつに壊滅させられたんだから笑えるよな。」

 

士郎たちはそう話して笑う俺に言葉を無くしている。

 

「その後は、裏で稼ぎつつあてどもなく彷徨ってたんだが、半年ぐらい前からか裏の奴らは俺のことが目障りになったのか襲われるようになった。んで、へまをやらかして死にかけたってわけだ。あとはご存じの通りだ。これで分かったか、俺という存在が。」

 

幸人が話し終えた空間には幸人と絶句する人間、そして沈黙だけだった

 

 




幸人が8歳になっているのは、神がそのぐらいの年の方が面倒を見てもらいやすいだろうと思ってそうなるようにいじったからです。幸人がリリなのの世界に来たのは高町家の門が音を立てた時です。ケガも幸人をかくまってもらい易くなるだろうと、与えた記憶と誤差が出ない範囲で神が与えました。一応、翌日の昼ごろまでは持つように調整されています
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