アルトリア・トリガー 作:大人たちが残していった何か
この世界には三つの人間がいる。一つは善人。一つは悪人。そして最後は転生者である。
唐突だが自己紹介でもしておこう。俺の名前は本来別にあるんだが、今は諸事情あって名乗っているのはアルトリア。まあこれは個人名ってよりも識別用の暗号って意味合いが強いのだが、今は置いておこう。
さて、俺の事を全て語るにはまず一つ、これまで生きてきた13年間、誰にも話してこなかった秘密を明かさなければならないだろう。
俺は、実は転生者である。
転生者っていうのは宗教的な意味ではなく、もっとライトノベル的な意味のソレだ。俺は転生者。しかも神の間違いで心不全によって殺された元男子高校生なのである。
さて、そんなこんなでこの世界に生まれてきた俺は、始めはそりゃもう戸惑った。何故って目が覚めたら身体が縮んでるし言葉が出ないし見た事のない人たちに囲まれてるしで混乱の極みだ。しかしすぐに転生してきたことを思い出して、俺は赤ちゃんムーヴで幼少期を乗り切って事なきを得た。
そんで、その時の俺は実の所安心していた。あの軽薄極まるKY神の選んだ転生先なんてどんなところになるのか予想すらつかなかったのだ。それが目を覚ました場所は普通の日本の街。剣も魔法もなければSF要素も無し、高校生が夜な夜な正義の為に戦ってるわけでもなければ巨悪が蠢いていたりもしていない。そんなごく普通の街。
まあ身体が何故か女になってしまった事を除けば、普通に及第点。ぶっちゃけ俺、バトルとか戦闘とか、アニメや漫画のようなコンテンツとして見るのは好きだけど、自分でやりたいかと思うとそうじゃない。傷つくのも傷つけるのも苦手なごく普通の日本人が俺なのだ。
そうして俺は油断マシマシで生きてきた。何せ俺は結構容姿も良くて頭も良かった。運動神経も普通にある、いわゆる才能ウーマンだったわけだ。しかも親は片方がイギリス人のハーフで金髪碧眼。日本人の血も引いてるから美しいというよりも可愛らしいの方が似合う容姿。
理想的な美少女に生まれ変わった俺は普通に人生を楽しんでいた。小学校に行き勉強して友達とお喋りして遊んで帰る毎日。宿題も前世の記憶と今世の出来の良い頭があればちょちょいとこなせたし、将来の為に予習をしたり体系を維持するために運動したりと努力もした。そして、そんな環境で過ごせる家庭に生まれてきたのに感謝もした。この頃になると俺はもう神への怒りなどみじんもなく、逆に感謝すら生まれかけていたのだ。
まあ、そんな日常もあっけなく終わったんだけどね。
俺がある日普通に通学路を歩いていると、巨大な一つ目の化け物に出会って飲み込まれた。んでしばらくドナドナされて気を失った後、目が覚めたら異世界だった。
うん、何を言ってるか分からないと思うし、その時の俺も何が何だか分からなかった。ただそこで出会った異世界人の『トリオン兵』やら『玄界』やらの言葉や、俺を兵士として育成するために連れてきたとかの話を聞いてやっとわかったのだ。
―――――ここワートリの世界じゃねえか!という事が。
ワートリ。ワールドトリガーの略だ。ぶっちゃけ俺は漫画の1,2巻しか読んでないし、友達から聞いた設定しか知らないから詳細は省くが、ある日唐突に近界民に侵略されるようになった地球の、唯一門(ゲート)が現れる三門市を舞台としたSFファンタジーものの漫画だ。
そこではトリオン兵と呼ばれる無人の兵士が、トリオンと呼ばれるエネルギーの多い人間を攫い様々な用途に使うためにゲートからやってくる。俺はそれに目を付けられ見事パクリとやられてしまい、無事こうして原作にも出てこなかった近界のどこぞの国へとやってこさせられたという訳である。神への感謝が殺意に反転した瞬間であった。神よできれば惨たらしく死ね。
そうして俺の兵士としての人生が始まったわけである。地獄のような日々だ。俺はどうやらトリオン量が半端なく多いらしく、専用の教官が付けられ毎日毎日死ぬほど扱かれぶったたかれては気を失いを繰り返して戦いのイロハをこれでもかというまで叩き込まれた。さらにはトリガーの使い方や戦いでの立ち回り方、その他もろもろの勉強もさせられて休憩時間や休息日は無に等しい。あの時ばかりは過労で死ぬんじゃなかろうかと本気で思っていた。この時点で俺は日本での名前を捨てさせられ、アルトリアと呼ばれるようになった。
だが、俺と同じように連れてこられた人たちは才能によって区別されていて、得に才能のない人はそりゃもう酷い扱いを受けていたらしい。奴隷と同じレベルだ。俺はそれを聞いてボイコットを決行。教官にぼこぼこにやられたけど後から聞いた話、食事が三食になって食後のデザートが増えたというから無駄な行為ではなかったようだ。
そしてその後は当たり前のように戦争。トリオン兵が津波のように押し寄せて、俺はそれを切っては捨ててを繰り返した。ちなみに俺がその時持っていたトリガーは両刃の直剣。これをブンブン振り回してはちぎっては投げを繰り返した。
一回戦は勝利。そして次の侵攻で、俺はミスを犯した。うん、ぶっちゃけ初めての戦争からの初めての勝利に調子に乗っていた。
相手は人型。人を切れるかとためらっていた間に教官を切られて、俺は半狂乱でそいつをぶった切った。めっちゃ怖かったのを覚えてる。何せ人死にをこんな間近で見せられて、さらに殺意を向けられるなんてそれが初めてだったから。しかも教官に関しちゃ始めこそ俺を毎日のように地獄に放り込んで引きずり回してくれたが、最近だと大分打ち解けて仲良くなっていたのがいけなかった。教官も俺が自分の扱きに唯一付いてきた新人として愛着もあったのだろう。隙だらけだった俺をかばうためにその身体を盾にしたのだ。
俺は殺し終わって、初めての殺人に動転する間もなく教官に走り寄った。そして俺は死に体の教官から『ブラックトリガー』と呼ばれる特別製のトリガーを受け取ったのだった。俺は泣いた。自分を誘拐した国の軍人とはいえ、教官その人自体はとても優しく出来た人間だったからだ。
当然ブラックトリガーと化した教官はその場で死亡。その後ブラックトリガーの適正者は俺一人だという事が判明して、俺はブラックトリガー使いになったと同時にその国での最高戦力として数えられるようになった。
授かったブラックトリガーは俺が使っていたのと同じ、両刃の直剣と銀の鎧ドレス。特殊効果としては風を操って刀身を完全に見え無くしたり、トリオンを纏わせることでビームを放ったりできる代物だった。これなんてセイバー?とか思ったが、そういや俺が自分に付けられた名前で思い出して興が乗って聞かせたフェイトシリーズ、教官やたらと楽しみにしてたなと思い出してしんみりとしてしまった。
その後の戦争は白星を上げ続けた。俺の莫大なトリオン量に甘えまくってビームを打ちまくる新戦法『とりあえずエクスカリバー』は大好評で、多くの戦地で俺は戦いまくった。その時から何故か一人の女の子に物凄い勢いで懐かれた。俺と同じようによそから誘拐されて才能もあったため名前も付けられた女の子だ。その子もかなり強くて、原作でボーダーが開発していたアステロイドに似たトリガーを使っての大立ち回りだ。多分通常の俺と同等かそれ以上。しかも転生者じゃないっぽいし、多分天然のチート持ちってやつだったんだろう。
と、ここまでだと俺の国が有利かと思われるかもしれないが、実は全然そんなことない。何故って俺が所属していた国は軍事国家の体を取る弱小国家で、相手はあのアフトクラトルの属国なのだ。ブラックトリガーも俺の持つエクスカリバーのみ。いくら俺や彼女が強かろうが流石に多勢に無勢であった。
そして、最後の戦い。カムランと呼ばれる丘での戦いだった。
俺は少しも油断何かしてなかった。ただ相手に俺と同じブラックトリガー使いがいて、ソイツとの闘いで相打ち―――まあ、負けたってだけの話だった。
だが国もそのままアフトクラトルの属国になるつもりはなかったのだろう。近界の国は巨大なトリガーで作られたもの。俺が負けた時、それは国が負けた時と同然。そう考えていた国の王は、トリガーを砕いて星そのものを壊したのだ。
まあ、つまり俺の最後って話だ。こうなる覚悟はここがワートリの世界だと分かった時からできていた。弱小国家に誘拐された当然の結果ってやつだ。
トリオン体も壊され、さらに通常の体も心臓を一突き。ブラックトリガーは死守したが、星が崩壊するのなら意味もないだろう。そう思っていたら、俺と同じようにやられていた女の子が死に体を引きずってやってきた。
そしてチューされた。ベロチューだ。唐突の事に驚いていた俺は、しかし何も言えなかった。その子は泣いていたからだ。
俺も言葉は発せなかったが泣いていた。そして、それから彼女がしようとしている事に勘付いて必死に止めようとした。でもそれもできなかった。
彼女は自分の全トリオンを使って、俺の心臓にブラックトリガーをはめ込んだ。俺の実体は一瞬にしてそのブラックトリガー…アヴァロンに取り込まれ、強固なトリオンの結晶体に包まれて永遠に時を止めた。そして俺はトリオン体となって無傷の状態で突っ立っていたのだ。
傍らにはすべてを出し尽くして灰となったその子―――ベディヴィエールの姿があった。
俺は泣きながら世界の崩壊を見送った。ここで俺が生き残っても、この星の崩壊は止まらない。
ただ俺は願っていた。この子の故郷―――地球へと帰りたいと。灰の中から髪飾りを掬い取って胸に抱いた。一言でもいい。この子の家族にこの髪飾りを渡して、感謝の一言を伝えたい。そう思いながら、俺は―――。
真っ白な光に包まれて、意識を一瞬で飛ばしたのだった。
ブラックトリガー
『エクスカリバー』
・・・両刃の直剣。見た目は完全なエクスカリバー。特殊能力として風を幾重にも纏って本体を完全に隠す『風王結界(インビジブル・エア)』や『風王鉄槌(ストライク・エア)』、トリオンを濃縮し前方にブッパする『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を持つ。さらに青ペンの鎧も生成してくれる。
『アヴァロン』
・・・常時発動型の腕輪型のトリガー。傷つき死にかけた主人公の実体を高濃度のトリオンの結晶で包み込み疑似的に時を止め取り込み、さらに疑似的なトリオン供給器官、トリオン生成器官を担う事でトリオン体を形成し続ける。致命傷を負っても一瞬で治す程の出力がある。さらに、結晶の一部を展開する事でどんな攻撃でも傷一つつかない結界を任意の場所に生成することができる。とても硬い。また、これで作られたトリオン体は特殊で、身体にトリオンを流す事で魔力放出的なこともできる。
ノーマルトリガー
『カリバーン』
・・・主人公が最初に持っていた主人公専用接近戦闘用トリガー。その国の技術が使われている。硬くてちょうどいい具合に重たい、取り回しの効く逸品。ただしビームは出ない。
主人公
名前:アルトリア(日本名:リリィ・ペンドラゴン)
性別:女
イギリス人と日本人のハーフ。前世の記憶持ち。フェイト知識は割とあるが、ワートリ知識はあんまりない。女としての自覚もあんまりない。
能力
トリオン量:78
攻撃:58(エクスカリバー時70台)
防御・援護:45(援護を除いた場合60後半)
機動:21
技術:18
射程:23
指揮:5
特殊戦術:13
サイドエフェクト:超直感・・・未来予知に迫るレベルの直感。
好きなもの:ご飯全般。