ワールドトリガー《ASTER》リメイク版   作:うたた寝犬

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通常投稿されている『ワールドトリガー《ASTERs》』の原型になります。何度か「こちらの方も読みたい」というメッセージがあったので、やっとこさになりますが、お応えできました!


第1話「地木隊リスタート」

《ボーダー》

異世界から開くゲートよりやって来る近界民を撃退すべく三門市に存在する防衛機関。

彼らは多くの防衛隊員を組織に持ち、それらはS級〜C級とランク分けされている。正隊員と呼ばれ実際に任務に着くのはS級〜B級であり、その中でもA級とB級はチームを組み部隊ごとに活動している。

 

部隊を組んだ彼らはランク戦と呼ばれる試合に勝ち、階級を上げていく。

 

************

 

「烏丸先輩。『地木隊』って、ご存知ですか?」

玉狛支部の設備を使い、次のランク戦で当たる那須隊と鈴鳴第一隊の情報を調べていた玉狛第二部隊の隊長の三雲修が、その作業の合間に自身の師である烏丸京介にそう質問した。

 

『地木隊』というワードに、烏丸は少しばかり目を見開き驚いたような表情を見せた後答えた。

「もちろん知ってるが…。お前こそどこで地木隊の事を聞いたんだ?」

「えっと、那須隊と鈴鳴第一の過去のランク戦を見ていたら所々にこのチーム名が出てきていて、そこで知りました。」

「…そうか」

「このチームって、今はランク戦には居ないですよね?それで気になったと言うか、その…」

三雲は言いながら烏丸の表情がどこか苦々しいものになっていると気付き、言葉が萎んでしまった。

 

烏丸は三雲に地木隊の事を話すかどうか迷ったが、遅かれ早かれ知る事になる(もう名前は知ってしまった)のだから、話す事に決めた。

「修。少しお前の休憩がてら地木隊の事を話す。とりあえずリビングに行っててくれるか?」

「は、はい。分かりました」

烏丸の指示を三雲は素直に聞き入れ、普段食事を取っているリビングへと移動した。

 

(…さて、どうしたものか)

烏丸は三雲に何から、どこまで説明しようか思案しつつ書棚であるものを探す。

探し当てたのは一冊のアルバムにあった、一枚の写真。ボーダー本部の休憩室で撮られたであろうものであり、中学生、高校生くらいの3人の少女と1人の少年が写っている写真だった。

(これは確か……、ランク戦最終戦が終わって、順位が決定した時の写真だったかな……)

その写真をアルバムから引き抜き、烏丸は三雲が待っているリビングへと向かった。

 

三雲は普段食事をする時に座るいつもの席に座っていた。烏丸はそれに合わせて自身が普段座る席に座った。

「ま、過去のランク戦の記録映像見てるなら顔は分かってると思うが、一応これが地木隊のメンバーが揃ってる写真だ」

そう言いながら烏丸はその写真をテーブルに置く。そして三雲が口を開ける前にさらに言葉を重ねる。

 

「修、確かにお前が言う通りで今この地木隊はいない。事情があって休隊してるんだ」

「休隊、ですか?」

「ああ。……正直、休隊せずにこのシーズンに地木隊がいたなら、お前達のA級昇格はかなり厳しいものになったはずだ」

と、いつになく真剣な声で烏丸はそう告げた。

 

烏丸と、このあと地木隊について説明を受けた三雲はそれぞれ、このシーズンに地木隊がいなくてよかったと、安堵した。

 

しかしこの数時間後、彼らが抱いた安心感が吹き飛ぶ知らせが、届くことになる。

 

*** *** ***

 

ほぼ同時刻のボーダー本部。そこにある研究室に空閑遊真と彼が所属する玉狛支部のリーダーである林藤匠は足を運んでいた。

「…んで、例のものが完成したってのは本当かい?鬼怒田さん」

「おお!やっと完成したわい!」

到着するなり何かが完成したと喜ぶ2人だが、林藤支部長に連れてこられただけの遊真は何が完成したか解らず2人に問いかけた。

「一体何が完成したの?」

「そういや遊真には言ってなかったな。ボーダーの訓練室の仮想戦闘モードでトリオン兵と戦えるだろ?んで、この前の侵攻で敵さんが出してきた新型のトリオン兵のラービット…。あいつの戦闘データを解析してここのデータに組み込むことができたんだよ」

空閑は腕を組みやや頭を傾げ、

「ほうほう。つまりそれはどういうことだ?」

と更に説明を求めた。

 

今度は鬼怒田開発室長が答えた。

「つまりはここの訓練室でラービットとも戦えるということだ!奴らが持つキューブ化や液体化等は再現できなかったが、単純な戦闘能力のみならば再現できたはずなのだ!」

「…はずってことは、完璧ってわけじゃないの?」

「…ワシらは正隊員が得た実戦やトリオン兵の残骸からデータを得とるが、それはやはり生身の生きた情報とはどうしても異なる。じゃから完璧とは言い難い」

「ほうほう」

しっかりしてるんだなと鬼怒田の事をぼんやりながらも感じた空閑は頷いた。

 

空閑が納得したところで林藤は、

「ま、そこでお前さんの出番ってことよ」

と告げた。

「…、ああ、実際にラービットと戦ったおれが、そのデータで再現したっていうラービットと戦えばいいのか?」

空閑は僅かに考えそう判断した。

「そういうことじゃ。同じ理由でラービットと交戦した全隊員にそう声をかけとる。もう茶野隊あたりが訓練室に着いて早速始める頃じゃから、頼むぞ」

空閑は茶野隊って誰だっけ?と小声で林藤に聞き、

「お前に向かって人型近界民だと思って撃ってきたやつら」

と返された。

(ああ、ラービットにあっさり捕まってたのか)

若干失礼な記憶の仕方だった空閑だったが林藤支部長と2人で、ゆっくりと訓練室へと足を運んで行った。

 

*** *** ***

 

(おい!この新型との訓練ってもうやっていいんだよな!?)

(そうだよ!だからお前あの子に言って来いよ!俺らが使うからって!)

訓練室にて、すでにラービットとの訓練(データテスト)を始めてると思われた茶野隊だが、まだ始めることはできなかった。

何故なら彼らの前に訓練室に佇む先客の少女がいたためだ。

 

耳にかかる黒のショートヘアと深海の奥底を思わせるような僅かに碧みがかった黒の瞳。何を考えてるか全く読めないほどの無表情だがそれでも可愛らしいと感じる整った顔立ち。小柄で細身のシルエットのせいか、どこか儚い雰囲気の子だった。

年は多分自分たちと同じ16か、1つ下の15だろうと茶野と藤沢は思った。

 

(その一言だけならお前行けよ!)

(やだよ!そもそもあんな子B級にいたのかよ!)

茶野隊の2人が互いに声をかけるように言い争ってる理由として、この2人があの子の事を知らないというのがあった。

彼女が着ている隊服自体は東隊や諏訪隊が着用してるようなB級隊員に支給される隊服デザインにほんの少々ばかりのアレンジを加えたものであるし、ちゃんとB級だと刻印がされているため、彼女は間違いなくB級隊員である。

そのはずなのだが、やはり彼女の顔は記憶にない。

 

どちらが声を掛けるか言い争ってるうちに、その少女が動いた。訓練室のパネルを操作し、戦闘条件を設定していく。

少女のパネル操作は素早く、茶野隊2人が『一緒に行こうぜ』と結論を出すと同時に戦闘条件を設定し終えた。

少女が施した戦闘の設定は誰からも見える可視設定にされていたらしく、訓練室の外にいた2人にも見えていた。

設定されていた条件は、

『VSラービット』

『5:00』

『トリオン無制限』

だった。

 

それを見た茶野隊2人は驚愕し、単体でラービット(データ)に挑む少女に声を思わず声をかけた。

「お前止めとけよ!そいつマジで強えから!」

「A級の木虎が足一本犠牲にして勝つようなトリオン兵なんだぞ!俺たちB級がソロで勝てるわけないだろ!」

 

声は届いたらしいが、少女は彼らを一瞥しただけですぐに視線を外した。

右腰に差した孤月を左手で抜刀し、切っ先をラービットに向けて構える。奇しくもそのタイミングでラービットの実態化が完了し、ただ一人のターゲット目がけて猛然と距離を詰めにかかり、戦闘が開始された。

 

この時茶野隊の2人はラービットに意識を持って行かれたため、実は僅かな時間だが表示されていた少女の名前を見逃していた。

表示されていた名前は、

『天音神音』

そしてその名前の前には、

『地木隊』

そう表示されていた。

そしてさらにその前に、ほんの一瞬だけノイズがかった部隊順位が表示された。

 

『B級3位』

 

と。




ここから後書きです。

私自身読み直してまず、
「いや、なんでいきなり原作11巻ぐらいから始めてるの?」
ってツッコミました。
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