魔法使いは報われない   作:猫月

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しょっぱなネタです。
ストックなんて存在しません。ちょっと手直し加えました。


第一話

 

四月を迎えて新たな学年が始まった日、黒板の前にて一人の少女が宣言を発する。

 

「ただの人間でもいいです。宇宙人でも、未来人でも、超能力者の人でも仲良くしたいと思っています。ただし――魔法使いと、人外と、金髪の金持ちとは私も兄も仲良くする気はありません。以上!!」

 

アミィ=B=バーラクトと名乗った、肩まで伸びるシルバーグレイの髪をした少女の言葉を、初めて聞く人は驚きで、三回目の者は苦笑で、とある特定の人物は憤りを持って、それぞれ受け止めた。

 

その三つのパターンとは別に頭を痛める少年に、苦笑をしながら隣の席の少女が声を掛ける。

 

「今年も初日から大変だね。お兄ちゃん♪」

「まったくだけど…そこはかとなく嬉しそうに言うのはやめろ、コリン」

 

コリンと呼ばれた少女――名は神子野鈴音。みこりんというあだ名が更に省略されたという、どうでもいい経歴を持つほど少年とは長い仲で、入学式からの付き合いである。

 

そして少年。名をチェス=B=バーラクトと呼ばれる彼は勿論、問題宣言をしたアミィの双子の兄であった。

妹と同じシルバーグレイの髪をして、妹の琥珀色とは違う翡翠瞳を持つ少年だ。

 

「ほら、名前呼ばれたよ。行っておいで~」

「ほんと楽しそうだなお前…」

 

コリンをジト目で一瞥すると、チェスは立ち上がる。

黒板の前へと向かう途中で、満足そうにピースする妹を小突くと「お兄ちゃん…うぅっ」と項垂れられたが、無視して前へ向かった。

 

チェスは前に黒板の立つと教室を見渡す。

 

気を取り直して新しいクラスメートに興味を向けるものも居れば、先程の自己紹介を引きずっている者もいる。

コリンのように楽しんでいる者もいれば、項垂れる者、非難する視線を向ける――特に強いのは二人――も居た。

 

そんな中で始まったチェスの自己紹介。それは、

 

「先程は俺の妹が失礼をした。チェス=B=バーラクトだ、妹の発言はどうぞ気にせずによろしく」

 

謝罪から始まる、珍妙だが手馴れた挨拶だった――そう、悲しいけど手馴れた物だった。

 

そんな挨拶を終えて、同情の眼差しを受けながら席に戻るチェスを迎えたのは、けらけれと笑うコリンだった。

 

「お疲れ様。相変わらず見事な頭の下げっぷりだねっ!!ほんと見事に九十度っ!!」

「うるさい黙れ」

 

からかうコリンに一言で返して、チェスは席に着く。

ついつい小さく溜息を漏らしたチェスだったが、前の席――妹から不穏当な言葉が聞こえてその身を乗り出した。

 

「べっつに、謝る必要なんて無いにょに!?」

後ろから、反省してないアミィの両頬をおもいきり引っ張る。

 

「い、いたいひょ、おにいひゃんっ!!」

「うるさい。少しは反省しろ。反省するまでこのままだ」

「ひょ、ひょんな~」

 

もちもちの頬を引き伸ばされて、アミィが情けない声を上げる。

痛みによって眦に涙が募りだしても、チェスはその手を離さなかったが、

 

「俺は澪火ルク!!これだけは言っておく。なのは、アリサ、すずかは俺の嫁だ手を出すんじゃねぇぞ!!それとチェスとアミィ以外のモブ共には興味がねえ。以上だ!!」

 

夕暮れ色の長髪とエメラルドの瞳を持つ、もう一人の幼馴染の自己紹介に力なく突っ伏した。

 

「ルク君の方も相変わらずで、大変だね~お兄ちゃん」

 

苦笑交じりのコリンの声が、チェスにはどこか優しげに感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

魔法使いは報われない  第一話 生まれ変わった先の平和な日常

 

 

 

 

 

 

敷地範囲として一般家庭の5つ分の300坪。保育園のような小さな託児所と2階建てのアパートメントが並立するそこは、築三年の真新しい建物だ。

団地内の若い奥さんからは託児所として、古くから居る住人とは馴染みのご近所として、街の人々に慕われているその建物の名は、ミゲル孤児院。

 

元々は小さな教会だったが、三年前にとあるお金持ちの力によって今の形になった経緯をもつ。

神父は既に他界しており、今は妻であったミント=アルベルという名の元シスターによって経営されているその孤児院に、彼女は7人の子供と一緒に暮らしていた。

 

小学生に上がる前のリオと郁の姉妹。今年から小学校に入るカイという男の子。一番年上で託児所の先生もこなす、高校を卒業したばかりの姉のイオ。

そして、チェスとアミィとルクもこの建物の住人だった。

 

「ただいま~!!」

「ただいま」

「今帰ったぞ」

 

託児所ではなくアパートの玄関から家へと入る。

元気なアミィにフラットなチェス、どこか尊大なルクの声が響き、

 

「お帰りなさい。ルク、アミィ、チェス」

 

珍しく返事が返ってきた。

 

「あれ?珍しいね、母さんがこっちに居るなんて。託児所は?」

「今日はカイの入学式だったから。託児所はイオに任せてあるの。今から交代するつもりですけどね」

優しい笑みを浮かべて三人を迎え入れたのは、保護者であるシスターミントだった。

シンプルな白いブラウスに青のロングスカート。その上からピンクのエプロンという装いの女性は、既に三十路半ばだというのに未だに二十代前半に見える。

白人特有の白い肌と腰まで届く金髪の彼女は、修道服を着れば立派なシスターになるだろう。

しかし最近は、もっぱら保母さんの姿が板についてきていた。

 

「納得。それじゃあカイの相手は俺たちがしとくよ。リオと郁はいつも通り託児所の方だよね?」

「ええ。リオと郁は託児所だから、カイの事はお願いね。今日はお祝いに翠屋のシュークリームがあるから仲良く分けてね。あとルクはノイッシュの世話忘れないように」

 

ミントの言葉に、アミィは表情を輝かせ、ルクは顔を顰める。

 

「やったー!!翠屋のシュークリームっ!!」

「あー、めんどくせーな…」

冷蔵庫に突貫する妹と、ボヤキながら歩く幼馴染を追って、チェスは家へと上がった。

 

 

 

 

 

夕食と入浴を終えて、始業日早々に出た宿題を終わらせたチェスは、ベットへと寝転がった。

ベッドは共用の二段ベットではなく一人用。

建て直した時にどこかの女子寮を真似た孤児院は、個人の部屋と共用のスペースを併せ持つ形となった。

そのため年長者の四人――イオ、チェス、アミィ、ルクは個人の部屋で、まだ幼い他の三人はシスターと一緒に眠る形だ。

だから夜になると一人になる。家族として接しながらも、個人として扱ってくれる環境が、チェスは小学生ながらに嫌いではなかった。

 

なんとなしにチェスは寝転がったまま部屋を見渡す。

一般的な勉強机にベット。衣装ダンスには名門である私立聖祥小学校の制服が掛かっている。

中流家庭と変わらない備品がある事と、私立である聖祥小学校に通えている事には勿論理由があった。

 

その理由は彼の生みの親――母親の生家に由来する。

 

「両親…か」

 

寝転がりながら手を伸ばしたのは、枕元にあったペンダントヘッド。

鏃の形をしたペンダントヘッドだけが、名と妹と共に、今はもう居ない両親から送られた唯一の物だったはずだ。

だが小学校に上がる少し前に、雑多な物が一気に増えた。

それは今の裕福な生活であったり、予想外の人間関係であったり、思わぬ因縁であったりと、幸せと煩わしさを一気に呼び寄せた。

小学生ながらに少し擦れてしまったのも仕方ないような、そんな出来事だったのだ。

 

「はぁ…面倒な」

 

チェスの溜息が響いた部屋に、コツコツと小さなノックの音がなった。

その後に少し心細そうなアミィの声が続く。

 

「お兄ちゃん…寝ちゃった?」

「いや、まだ起きてる。入っていいぞ」

 

チェスが返事をすると同時に、ガチャリと扉が開けられる。

中に入ってきたのは、両腕で抱いた枕から顔を覗かせるアミィだった。

少し恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、その瞳からは不安を感じさせる。

 

「あのね、その…お兄ちゃん。一緒に…えっと…」

「ほら、入れよ」

「…うん」

 

布団をめくって促すと、アミィは小さく頷いて隣へと潜り込んだ。

一人寝が嫌じゃない程擦れてしまったチェスとは違い、アミィは出来事を越えても変わらないまま育ってきた。

寂しさか不安を感じると、時折アミィはこうしてベットへと潜り込む。

人の温もりを感じて安心したいのだと、チェスは妹の行動を理解していたが――

 

「あのね…その…怒ってる?」

「何を?」

 

隣で眠る予想外の妹の言葉に、チェスは聞き返す。

 

「あの自己紹介。バニングスに対してその…良くない事を言ったの」

「あれか――」

 

記憶に真新しい妹の自己紹介を思い出す。アミィによるバニングスへの牽制のような発言。

あの後直にバニングスたちに対して謝る破目になったのは当然の事だった。

 

「怒ってはないが、良くない事は確かだな。バニングス家には恩があるし、それに……一応親戚だ。我慢しないとな」

 

チェスにはアミィの―妹の気持ちも理解できた。アリサ個人を嫌う理由はなくとも、煩わしさを感じる理由は別にあるのだ。

忌避感を覚えるのも仕方が無いような事が。

変わってないと思っていた妹の、内面が大きく傷ついているように感じて、チェスは自分と同じシルバーグレイの色をした妹の頭を撫でる。

 

「お兄ちゃん…うん、頑張って我慢する」

 

チェスの翠とは違う、アミィの琥珀色の目が嬉しそうに細められた。

 

「ああ、頑張ろう」

言いながらもアミィの頭を撫で続けると、細められた瞼は閉じられ、段々力が抜けていく。

眠りに落ちそうなのか、小さな呼吸を一定に繰り返し始めたアミィに、お休みと小さく告げると、チェスは眠るために目を瞑り――

 

「チェ、チェス!!宿題を写させてくれっ!!」

 

ドンドンと大きなノック音を立てる、思わぬ妨害者に二人して飛び起きた。

 

「ほんとにルクは変わらないな…」

「うん。相変わらずだね」

 

兄妹で顔を合わせると、チェスは頭を押さえながら扉へと向かう。

 

兄よりも妹よりも、変わらないまま成長しない幼馴染を部屋へと迎え入れるために。

 

 




というわけで転生後で第一話でした。まずは読んでくださってありがとうございます。
タグどおりオリキャラ多数です。本編キャラと関わる描写はいつになることやらw

とりあえずオリ主チェス君はバニングスの親戚設定。詳しい話は又今度。
孤児院のキャラ名は適当にTO○○シリーズからですので、気にしなくても大丈夫です。
シスターって結婚OKだっけ?まあいっかぐらいのノリ。
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