首都高バトルシリーズと街道バトルシリーズをやり込んだ方々なら、一度は思いついた事があるんでは無いでしょうか?
ボチボチと完走目指して頑張ります!!
青山三丁目のビル一階に店舗を持つ、24時間営業のカフェバー。
老舗のお洒落なカフェバーは、デートスポットとして何時も賑わっている。情報番組や有名人のブログでも取り上げられ、老若男女問わず足繁く通う。昔から変わらないそのコーヒーは、絶品と評判だ。
しかし、このカフェバーにはもう一つの顔がある。
首都高の走り屋たちご用達のカフェバーとしての側壁があり、走り屋たちの交流や情報交換の場所としても知られている。その歴史は古く、青山町のゼロヨンや東名レースの頃から走り屋達の憩いの場として存在しているのだ。
店舗の奥に位置する、個室カフェテリア。とある団体客は、このカフェテリアで何やら不穏な空気を醸し出していた。
13人の団体様の内、12人は揃っている。残りの一人は、どうやら遅刻しているようだった。
「……遅い」
口火を切るように、不満を漏らしたのは兼山大吾。シタール兼山という異名を持つ、ソアラ使いの走り屋だ。
「仕方ないさ。岩崎が時間通りに来るなんて、今まで無いんだからさ……」
隣に座る竹中敦也は、なだめるように声をかけた。彼も首都高の走り屋で、スティールハートと呼ばれる。
「そーそー。どうせ、遅くなるってわかってっから、先にコーヒーとサンドイッチ頼んでんだろ?」
対面に座る、内藤健二はそう言いながら煙草に火をつける。彼の異名は、追撃のテイルガンナー。首都高では名の知れたビッグネームの一つだ。
「だからって、2時間も遅れてるのよ?」
隣に座る美麗な女性、緒方明子は不機嫌そうだった。シャドウアイズと呼ばれる彼女もまた、首都高のビッグネームの一つだ。
「ホントよ……。あたし達の身にもなってもらいたいわね」
その隣に座る、ミッドナイトローズの異名を持つ、川越清美も待ちくたびれてイラつきだしていた。
「……まったくだ。自分から呼び出しておいて、二時間も遅れるなんて言語同断だ」
それに同調する、魚住静太。ダイングスターというビッグネームも、この中に混ざってしまえば、形無しだった。
「……ま、それに付き合う僕らも僕らだけどね」
嘆きのプルートこと、内田孝はあきらめた様にぼやいた。
「大体、今日は何を思って集めたんだ?」
ルシファー大塚の異名を持つ、大塚一二はそう言葉を漏らす。
「……知らないわよ。どうせ、何時も通りの下らないことよ」
ユウウツな天使と呼ばれる黒江世津子は、スマホを見つめたままそう答えた。
「…………」
夢見の生霊こと、君島陽平は無言のまま反応しない。
「……ったく。しょうがねえ奴だぜ」
ブラッドハウンドこと、佐々木士郎は二本目の煙草を灰皿に押し付けた。
「ったく。わざわざ用事を切り上げてきたんだぜ……。簡便してくれってんだよ」
裏切りのジャックナイフの異名を持つ、坂本桐字の口からも不平が飛び出ていた。
今、ここに集まってる12人の走り屋達。
十三鬼将(サーティンデビルス)と言われる、首都高で最強最速と謳われる走り屋達だ。その速さも、そのカリスマ性も、そのマシンメイキングも、首都高の走り屋達から絶大な支持を受けている。
もっとも、徒党を組んでいる訳ではなく、ある一人の走り屋の元に集まっているだけである。実際の所、正式なチームとして機能しているわけではない。
「そういや、坂本。お前、最近FDに乗り換えたんだよな?」
佐々木は、三本目の煙草に火を点けながら、坂本に言葉を投げつけた
「……確かにそうだけど、何か問題でもあるのか?」
坂本は突っぱねるように返した。
「問題なら大有りだ。
最近、お前があっちこっちのチームにバトル売り歩いてるらしいじゃねぇか。どういうつもりで、バトル吹っ掛けまくってんだよ?」
佐々木も、次第に口調が尖りだしていた。
「……負けなきゃ問題ねぇだろ?」
この坂本の一言に、佐々木はカチンと来ていた。
「……そういう問題じゃねぇだろうが。
てめぇ一人で喧嘩売り歩いてりゃ、他の十三鬼将も余計なバトルに巻き込まれるって事になるだろ。
火種をあっちこっちにばらまくなって言ってんだよ!!」
「おい、よしなって!!」
ヒートアップする佐々木を、内田は止めに入る。
「そうだ。それに坂本も言い過ぎだ」
竹中も、坂本を止めるように声をかけた。
「……あんたらも、随分と落ち着いたなぁ。
十三鬼将は、何時から首都高のツーリングチームに成り下がったんだ?」
喧嘩腰のまま、坂本は強気の口調で言葉を続ける。
「……知ってるか?
最近新環状で、よく3台のスープラを見かけるって話。奴らは、名古屋の三龍皇で間違いないんだってよ。
それに、大阪のDartsの車とNOLOSERの車が、つるんで大黒に居る所もこの目で見てきたさ。
それが、どういう目的で来てるのか分からない訳が無いだろ。
勿論、県外の連中だけじゃねぇ。
RINGSとFREEWAYが友好関係を結んでるし、UNLIMITEDとSPEEDMASTERなんざ、情報交換を積極的にしてるみたいだぜ。
元々交流の深かったTWISTERとRRなんざ、手を組んで首都高制圧を目論んでる。
ちょっと外を見りゃ、十三鬼将(サーティンデビルス)を狙ってるやつらはゴロゴロしてるんだぜ?」
坂本の一言に、周囲は黙り込んでしまっていた。
「俺は、十三鬼将(ここ)から最速の看板を渡したくねぇだけだ。その為だったら、どんなバトルだって買ってやるよ」
坂本はそう言い切った。
ちょうど、個室が静まってしまった一瞬だった。
扉を開けて、最後の一人がようやく登場した。
「いや~、すっかり遅くなっちまったわ。スマンスマン」
そう言いながら、岩崎基矢は悪びれた様子もなく現れた。
「遅い!!」
全員が一斉にそう声を荒げた。
「……皆してそんなに怒るなよ……」
岩崎は、少々たじろぎながら椅子に座った。
迅帝の異名を持つ彼は、現在首都高で最速と謳われる走り屋だ。当然、走り屋達でその名を知らない者はいない。
若くして首都高の頂点に立った岩崎は、首都高の走り屋達の憧れの存在である。
が、同時に狙われる立場でもある。本人に自覚があるかは不明だが……。
「しかし、今日は一段と遅かったな……」
呆れた様子で、魚住はそう言った。
「実はよ、この前北海道に旅行しててさ。その時に買ってきたお土産、家に忘れててな。慌てて取りに帰ったら、遅れちゃったよ。
ハイ、これ」
岩崎はそう言いながら、北海道名物のマルセイバターサンドを配り始めた。
「アー、コレ美味シイヨネー」
棒読みで、川越はお土産を受け取った。
「……お前、まさかこれ渡すためだけに集めたのか?」
内藤は、岩崎をジト目で見つめた。
「ま、メインはちょっと違うんだけど。これも、必要だと思ってさ」
岩崎は頭をかきながら、答える。
「前々から、マイペースなバカとは思ってたけどさぁ……」
緒方は、こめかみに人差し指を当てながらつぶやいた。
「…………くだらん御託は必要ない。さっさと集めた要件を言え」
ここまで黙っていた君島は、ようやく口を開いた。
「まぁ、慌てんなって……」
全員にお土産が行きわたった所で、岩崎はようやく本題を切り出した。
「まぁ、久々に集まってもらったのは、ちょっとした提案があるんだ」
「提案……?」
岩崎の言う提案に、一同は嫌な予感を覚えていた。
「……街道サーキットはわかるだろ?
各地の峠がサーキットや、ラリーのSSとしての機能を持ってるってのはご存知のとおりだ。
当然の事だが、街道は街道で名の知れた走り屋達が多くいる。
そこでだ……。そいつらと、バトルして十三鬼将(俺たち)の名を、首都高以外のステージにも広めようと思ってる!!」
握りこぶしを突き立てて、力強く演説する岩崎だが、他のメンバーは茫然としたまま固まっていた。
「……何か質問はございますか?」
岩崎の言葉に、まず反応したのは内田だった。
「何でまた、そんな突拍子も無いことを言い出したんだい?」
「そりゃ、走りのステージは一つだけって訳じゃないだろ?
だったら、首都高も街道も同じようなもんだ。気晴らしに峠を攻めるのも、悪くないんじゃね?」
岩崎はそう返したが、個々の反応は様々だ。
「バカバカしいわね……。やるなら、勝手にやってよ……」
全くのる気が無く、バッサリと切り捨てた黒江。
「俺は、面白いと思うぜ?」
大塚は、割とノリノリだった。
「……俺も乗るぜ。ここん所、張り合いの無いバトルばっかりだったからな」
坂本は、ニヤリとしていた。
「ええ。ニューマシンを試すには、いい機会かもせれませんね」
内田は、おとなしい言葉の中にも、秘めたる闘志を滾らせる。
「……おう。相手がどこの誰だろうが、バトルは買って勝つ。それが十三鬼将の掟だ」
佐々木も、街道への侵攻を決めた。
「…………ところでよ。一個気になるんだが、いいか?」
そう言ったのは、内藤だった。
「はい、内藤さん。どうぞ」
「相手は見つかってんのか?
半端な奴ら相手に勝ち星挙げた所で、街道の奴らに睨みは効かねぇぞ?」
内藤の意見は、ごもっともだった。
「もちろん。
狙うのは、王宮十二氏(KINGDOM TWELVULE)の12人だ」
岩崎は、その名前を出した。
「……キングダムトゥエルブ?」
十三鬼将の面々は、初めてその名を聞きいた。
「おお。何でも、各地の峠で名の知れた走り屋達を集めた集団らしいぜ。ま、どれほどのレベルかはしらねえが、ちょっとばかり遊んでやろうと思ってな。
それにな……」
「それに?」
「街道の連中からみれば、C1だの湾岸だの、首都高はただ踏んでりゃ良いなんて思ってる奴はゴロゴロいるぜ。
最高速ステージで速いかどうかはなんて、パワーさえあれば良い。そんな甘っちょろい考えで、首都高をなめてる連中だっている。
首都高の走り屋に、街道の狭い峠道を攻める事は出来ないなんて思われるのも、癪に障る。ここらで一発、首都高のトップレベルの恐ろしさを、思い知らせてやろうって思ってるわけよ。
実際、王宮十二氏を撃墜(おと)せれば、街道の連中にも首都高の連中にも睨みは効くぜ。
やっぱり十三鬼将はすげえって、思わせるんなら首都高ってステージを飛び立つ事も必要だろうよ」
岩崎はそう語った。
「……随分と簡単に言ってくれるわね」
緒方は、ヤレヤレとため息交じりにそう言った。
「そう言う訳でな。走り屋系の掲示板に匿名で投稿しといたよ。
十三鬼将が街道を侵略するって噂がある、ってさ」
「…………」
既に岩崎は、独断で勝手に行動を開始していた。
いよいよ、十三鬼将は後には引けなくなってしまう。
「そういう事だから、ちょいと頼むな」
満面の笑みを見せる岩崎に、他の面子は殺意さえ覚える思いだった。
「テメーふざけんな!!」
十三鬼将の面々は、岩崎を一斉に批判するのだった。
岩崎の身勝手な行動は、瞬く間に街道の走り屋達の噂として広まりだした。
それは、これから始まる新たな戦いへの序章に過ぎないのであった……。
またしても懲りずに走り屋の物語です。ご意見ご感想お待ちしております。