十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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二年ぶりに書き始めました。


首都高バトルシリーズと街道バトルシリーズをやり込んだ方々なら、一度は思いついた事があるんでは無いでしょうか?


ボチボチと完走目指して頑張ります!!




序夜 とあるカフェバーにて

 

 

 青山三丁目のビル一階に店舗を持つ、24時間営業のカフェバー。

 老舗のお洒落なカフェバーは、デートスポットとして何時も賑わっている。情報番組や有名人のブログでも取り上げられ、老若男女問わず足繁く通う。昔から変わらないそのコーヒーは、絶品と評判だ。

 

 しかし、このカフェバーにはもう一つの顔がある。

 首都高の走り屋たちご用達のカフェバーとしての側壁があり、走り屋たちの交流や情報交換の場所としても知られている。その歴史は古く、青山町のゼロヨンや東名レースの頃から走り屋達の憩いの場として存在しているのだ。

 

 店舗の奥に位置する、個室カフェテリア。とある団体客は、このカフェテリアで何やら不穏な空気を醸し出していた。

 

 13人の団体様の内、12人は揃っている。残りの一人は、どうやら遅刻しているようだった。

「……遅い」

 口火を切るように、不満を漏らしたのは兼山大吾。シタール兼山という異名を持つ、ソアラ使いの走り屋だ。

「仕方ないさ。岩崎が時間通りに来るなんて、今まで無いんだからさ……」

 隣に座る竹中敦也は、なだめるように声をかけた。彼も首都高の走り屋で、スティールハートと呼ばれる。

「そーそー。どうせ、遅くなるってわかってっから、先にコーヒーとサンドイッチ頼んでんだろ?」

 対面に座る、内藤健二はそう言いながら煙草に火をつける。彼の異名は、追撃のテイルガンナー。首都高では名の知れたビッグネームの一つだ。

「だからって、2時間も遅れてるのよ?」

 隣に座る美麗な女性、緒方明子は不機嫌そうだった。シャドウアイズと呼ばれる彼女もまた、首都高のビッグネームの一つだ。

「ホントよ……。あたし達の身にもなってもらいたいわね」

 その隣に座る、ミッドナイトローズの異名を持つ、川越清美も待ちくたびれてイラつきだしていた。

「……まったくだ。自分から呼び出しておいて、二時間も遅れるなんて言語同断だ」

 それに同調する、魚住静太。ダイングスターというビッグネームも、この中に混ざってしまえば、形無しだった。

「……ま、それに付き合う僕らも僕らだけどね」

 嘆きのプルートこと、内田孝はあきらめた様にぼやいた。

「大体、今日は何を思って集めたんだ?」

 ルシファー大塚の異名を持つ、大塚一二はそう言葉を漏らす。

「……知らないわよ。どうせ、何時も通りの下らないことよ」

 ユウウツな天使と呼ばれる黒江世津子は、スマホを見つめたままそう答えた。

「…………」

 夢見の生霊こと、君島陽平は無言のまま反応しない。

「……ったく。しょうがねえ奴だぜ」

 ブラッドハウンドこと、佐々木士郎は二本目の煙草を灰皿に押し付けた。

「ったく。わざわざ用事を切り上げてきたんだぜ……。簡便してくれってんだよ」

 裏切りのジャックナイフの異名を持つ、坂本桐字の口からも不平が飛び出ていた。

 

 今、ここに集まってる12人の走り屋達。

 十三鬼将(サーティンデビルス)と言われる、首都高で最強最速と謳われる走り屋達だ。その速さも、そのカリスマ性も、そのマシンメイキングも、首都高の走り屋達から絶大な支持を受けている。

 もっとも、徒党を組んでいる訳ではなく、ある一人の走り屋の元に集まっているだけである。実際の所、正式なチームとして機能しているわけではない。

 

「そういや、坂本。お前、最近FDに乗り換えたんだよな?」

 佐々木は、三本目の煙草に火を点けながら、坂本に言葉を投げつけた

「……確かにそうだけど、何か問題でもあるのか?」

 坂本は突っぱねるように返した。

「問題なら大有りだ。

 最近、お前があっちこっちのチームにバトル売り歩いてるらしいじゃねぇか。どういうつもりで、バトル吹っ掛けまくってんだよ?」

 佐々木も、次第に口調が尖りだしていた。

「……負けなきゃ問題ねぇだろ?」

 この坂本の一言に、佐々木はカチンと来ていた。

「……そういう問題じゃねぇだろうが。

 てめぇ一人で喧嘩売り歩いてりゃ、他の十三鬼将も余計なバトルに巻き込まれるって事になるだろ。

 火種をあっちこっちにばらまくなって言ってんだよ!!」

「おい、よしなって!!」

 ヒートアップする佐々木を、内田は止めに入る。

「そうだ。それに坂本も言い過ぎだ」

 竹中も、坂本を止めるように声をかけた。

「……あんたらも、随分と落ち着いたなぁ。

 十三鬼将は、何時から首都高のツーリングチームに成り下がったんだ?」

 喧嘩腰のまま、坂本は強気の口調で言葉を続ける。

「……知ってるか?

 最近新環状で、よく3台のスープラを見かけるって話。奴らは、名古屋の三龍皇で間違いないんだってよ。

 それに、大阪のDartsの車とNOLOSERの車が、つるんで大黒に居る所もこの目で見てきたさ。

 それが、どういう目的で来てるのか分からない訳が無いだろ。

 勿論、県外の連中だけじゃねぇ。

 RINGSとFREEWAYが友好関係を結んでるし、UNLIMITEDとSPEEDMASTERなんざ、情報交換を積極的にしてるみたいだぜ。

 元々交流の深かったTWISTERとRRなんざ、手を組んで首都高制圧を目論んでる。

 ちょっと外を見りゃ、十三鬼将(サーティンデビルス)を狙ってるやつらはゴロゴロしてるんだぜ?」

 坂本の一言に、周囲は黙り込んでしまっていた。

「俺は、十三鬼将(ここ)から最速の看板を渡したくねぇだけだ。その為だったら、どんなバトルだって買ってやるよ」

 坂本はそう言い切った。

 

 ちょうど、個室が静まってしまった一瞬だった。

 扉を開けて、最後の一人がようやく登場した。

「いや~、すっかり遅くなっちまったわ。スマンスマン」

 そう言いながら、岩崎基矢は悪びれた様子もなく現れた。

「遅い!!」

 全員が一斉にそう声を荒げた。

「……皆してそんなに怒るなよ……」

 岩崎は、少々たじろぎながら椅子に座った。

 

 迅帝の異名を持つ彼は、現在首都高で最速と謳われる走り屋だ。当然、走り屋達でその名を知らない者はいない。

 若くして首都高の頂点に立った岩崎は、首都高の走り屋達の憧れの存在である。

 が、同時に狙われる立場でもある。本人に自覚があるかは不明だが……。

 

「しかし、今日は一段と遅かったな……」

 呆れた様子で、魚住はそう言った。

「実はよ、この前北海道に旅行しててさ。その時に買ってきたお土産、家に忘れててな。慌てて取りに帰ったら、遅れちゃったよ。

 ハイ、これ」

 岩崎はそう言いながら、北海道名物のマルセイバターサンドを配り始めた。

「アー、コレ美味シイヨネー」

 棒読みで、川越はお土産を受け取った。

「……お前、まさかこれ渡すためだけに集めたのか?」

 内藤は、岩崎をジト目で見つめた。

「ま、メインはちょっと違うんだけど。これも、必要だと思ってさ」

 岩崎は頭をかきながら、答える。

「前々から、マイペースなバカとは思ってたけどさぁ……」

 緒方は、こめかみに人差し指を当てながらつぶやいた。

「…………くだらん御託は必要ない。さっさと集めた要件を言え」

 ここまで黙っていた君島は、ようやく口を開いた。

「まぁ、慌てんなって……」

 全員にお土産が行きわたった所で、岩崎はようやく本題を切り出した。

 

「まぁ、久々に集まってもらったのは、ちょっとした提案があるんだ」

「提案……?」

 岩崎の言う提案に、一同は嫌な予感を覚えていた。

「……街道サーキットはわかるだろ?

 各地の峠がサーキットや、ラリーのSSとしての機能を持ってるってのはご存知のとおりだ。

 当然の事だが、街道は街道で名の知れた走り屋達が多くいる。

 そこでだ……。そいつらと、バトルして十三鬼将(俺たち)の名を、首都高以外のステージにも広めようと思ってる!!」

 握りこぶしを突き立てて、力強く演説する岩崎だが、他のメンバーは茫然としたまま固まっていた。

 

「……何か質問はございますか?」

 岩崎の言葉に、まず反応したのは内田だった。

「何でまた、そんな突拍子も無いことを言い出したんだい?」

「そりゃ、走りのステージは一つだけって訳じゃないだろ?

 だったら、首都高も街道も同じようなもんだ。気晴らしに峠を攻めるのも、悪くないんじゃね?」

 岩崎はそう返したが、個々の反応は様々だ。

「バカバカしいわね……。やるなら、勝手にやってよ……」

 全くのる気が無く、バッサリと切り捨てた黒江。

「俺は、面白いと思うぜ?」

 大塚は、割とノリノリだった。

「……俺も乗るぜ。ここん所、張り合いの無いバトルばっかりだったからな」

 坂本は、ニヤリとしていた。

「ええ。ニューマシンを試すには、いい機会かもせれませんね」

 内田は、おとなしい言葉の中にも、秘めたる闘志を滾らせる。

「……おう。相手がどこの誰だろうが、バトルは買って勝つ。それが十三鬼将の掟だ」

 佐々木も、街道への侵攻を決めた。

「…………ところでよ。一個気になるんだが、いいか?」

 そう言ったのは、内藤だった。

「はい、内藤さん。どうぞ」

「相手は見つかってんのか?

 半端な奴ら相手に勝ち星挙げた所で、街道の奴らに睨みは効かねぇぞ?」

 内藤の意見は、ごもっともだった。

「もちろん。

 狙うのは、王宮十二氏(KINGDOM TWELVULE)の12人だ」

 岩崎は、その名前を出した。

「……キングダムトゥエルブ?」

 十三鬼将の面々は、初めてその名を聞きいた。

「おお。何でも、各地の峠で名の知れた走り屋達を集めた集団らしいぜ。ま、どれほどのレベルかはしらねえが、ちょっとばかり遊んでやろうと思ってな。

 それにな……」

「それに?」

「街道の連中からみれば、C1だの湾岸だの、首都高はただ踏んでりゃ良いなんて思ってる奴はゴロゴロいるぜ。

 最高速ステージで速いかどうかはなんて、パワーさえあれば良い。そんな甘っちょろい考えで、首都高をなめてる連中だっている。

 首都高の走り屋に、街道の狭い峠道を攻める事は出来ないなんて思われるのも、癪に障る。ここらで一発、首都高のトップレベルの恐ろしさを、思い知らせてやろうって思ってるわけよ。

 実際、王宮十二氏を撃墜(おと)せれば、街道の連中にも首都高の連中にも睨みは効くぜ。

 やっぱり十三鬼将はすげえって、思わせるんなら首都高ってステージを飛び立つ事も必要だろうよ」

 岩崎はそう語った。

「……随分と簡単に言ってくれるわね」

 緒方は、ヤレヤレとため息交じりにそう言った。

「そう言う訳でな。走り屋系の掲示板に匿名で投稿しといたよ。

 十三鬼将が街道を侵略するって噂がある、ってさ」

「…………」

 既に岩崎は、独断で勝手に行動を開始していた。

 いよいよ、十三鬼将は後には引けなくなってしまう。

「そういう事だから、ちょいと頼むな」

 満面の笑みを見せる岩崎に、他の面子は殺意さえ覚える思いだった。

 

「テメーふざけんな!!」

 

 十三鬼将の面々は、岩崎を一斉に批判するのだった。

 

 

 岩崎の身勝手な行動は、瞬く間に街道の走り屋達の噂として広まりだした。

 

 それは、これから始まる新たな戦いへの序章に過ぎないのであった……。

 

 




またしても懲りずに走り屋の物語です。ご意見ご感想お待ちしております。

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