十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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広島決戦もいよいよ大詰めです。

RX-8って地味だけど、いい車ですよ。借りて乗ったら、楽しかった記憶があります。



第九夜 敵討ちの行方

 

 

 中間地点を映すモニターが、二台のバトルを映し出していた。

 コーナリングスピードに勝るRX-8が、ソアラをジリジリと追い込んでいく。伝統のコーナリングマシンの血筋が、伊達で無い事を物語る。

 しかし、立ち上がりから僅かでも直線が有れば、パワーに勝るソアラが突き放す。代々チューニングベースとして戦い続けたノウハウが、その加速力で魅せていた。

 

 五分と五分の戦況に、広島の走り屋達は目を離す事が出来なかった。

 それは、広島を代表する猛者も例外ではない。

「……こりゃあすごいのぉ。

 わしはこがなバトルがどんなもんか知らんけぇ……。グリップで野呂山をここまで攻める奴は、初めて見たわい……」

 宅間は圧倒されている様で、唖然とモニターを見つめるしか出来なかった。

「宅間さん……。こいつら……マジパネェっすわ……」

 取り巻きも、圧巻されてそうとしか言えないでいた。

「今夜のバトルは……野呂山の伝説になるじゃろうて」

 宅間の言葉は、決して大げさなものでは無いと。ギャラリー達も、そう思わざるえなかった。

 

 

 RX-8の車重は1300キロ代前半と、近代のマシンの中では比較的軽い部類に入る。

 とは言え、13B-MSP“レネシス”と呼ばれる最新のロータリーエンジンは、ストレス無く高回転まで回るものの、トルクの細いNAロータリーエンジン故に、動力性能という点においてはやや劣る部分は否めない。

 佐竹のRX-8は、市販のボルトオンターボキットを装着する事で、トルク不足をカバー。とは言え、高圧縮なレネシスの為、ブースト圧は0,5キロと低めにセットし扱いやすさを重視。

 また、補器類や冷却系もグレードアップして、13B-MPS特有の排気サイドポートからくる発熱の多さも対策。

 特に排気系のパーツ一式は、相馬がワンオフで仕上げたオールステンレスの一品。ロータリーの甲高いエキゾーストノートを奏でながら、パワーも増大させたスペシャルな代物だ。

 鋳鉄に比べてステンレスは放熱性が高い為、ボルトオンターボを装備してるにも関わらず、エンジン内の発熱を抑えてくれる効果が有るのだ。

 当然、そのエンジンを生かすべく、足回りの念密なセッティング、ブレーキの強化、ボディの補強と軽量化も怠らない。

 街道を暴れまわる新世代のスポーティークーペも、キングダムトゥエルブの名に恥じないマシンに仕上がっているのだ。

 

 

 対する兼山のソアラは、ラグジュアリークーペと言うジャンルだけあり、パワーは有るが重量も有ると言う典型例。

 それに加え、兼山自身のこだわりから、フルエアロにプラスしてかなりの車高短に仕上げたカスタマイズが施される。カスタムの方面でも名の知られる兼山だけに、走れる車高短に徹底的にこだわったマシンなのだ。

 元々パワフルかつ頑丈な1JZ-GTEに、ビッグシングルタービンとハイカム等、各部の強化で580馬力の出力を叩き出す。

 それに耐えるミッションは、無加工で収まる80スープラ用のゲドラグ製6速で対処。普段はロングレシオの3.7ファイナルを使用するが、今回は峠コースとなるので、ファイナルは純正の4.1というローギアードの物を選択し、加速力を大幅に上げてある。

 多少軽量化はしてあるが、それでも重量のあるソアラだけに、ブレーキの強化は欠かせない。兼山のそれは、30セルシオ用の対抗ピストンのキャリパーとローターを、前後に移植。パッドやホースも強化品に変更し、ストッピングパワーを確保。

 

 しかし、兼山が最もこだわったのは車高短に仕上げた足回りだ。走れる車高短に拘りぬいて、アーム類はピロボールを使ったものを選びつつ、低い車高でも各部に干渉しない特殊なアームに全て変更している。

 フェンダー内部も干渉する部分を加工し、低い車高でも確実にトラクションを稼げる足回りに決めているのだ。

 

 十三鬼将の車高短番長を自負する兼山が、こだわり抜いたバトルマシン。その戦闘力は、街道と言うステージであっても引けを取ることは無い。

 

 

 テールトゥノーズのまま、バトルはいよいよ後半セクションに突入していく。

(……ちぃ。ここまで張り付かれちゃな……)

 ミラー目一杯に、RX-8のヘッドライトが映り込むの見て、兼山は眉を歪めた。

(でも、コーナーは後何個も無ぇからな……絶対に抜かせねぇ!!)

 覚悟を決めて、抑える事に徹する。

 

 しかし、佐竹もまだ諦めてはいない。

(……そのデカい図体で、ブロックしようって気か?)

 ソアラが、明らかにブロックを意識したライン取りに走りを変えた事に気が付いた。

(……相馬さん。貴方に教わった全てを……ここで魅せてやります!!)

 佐竹は、覚悟を決めた。

 

 ブロックテクニックは、一見するとラインを塞ぐだけで簡単そうに見えるが、実は極めて高等なテクニックを要求される事を知る人は少ない。

 実際、スーパーGT等のレースシーンで見受けられるが、相手にインを取られない様にするには、その幾つか手前のコーナーからライン取りを逆算する必要がある。

 特に、パッシングポイントと称されるコーナーを軸にして、その手前から主導権を握っていなければ、インを明け渡す羽目になってしまう。

 それに加え、パッシングポイントではイン側のラインを抑えつつ、相手に前に出られない様に、かなりのレイトブレーキングを仕掛けなければならない。

 極端なレイトブレーキングの場合、コーナーの区間タイムは遅くなるし、マシンへの負担は増大する。何よりも、極端な荷重移動が起こる分、挙動を乱しやすくミスにつながりやすい。

 しかし、相手よりクリッピングポイントで前に出られると言う点においては、レイトブレーキングに勝る技は無い。

 

 重量級のソアラが、目一杯のレイトブレーキングで、RX-8に応戦する。

 その様子を、佐竹はじっくりと見極めていた。

(……そこまで突っ込むなら、こっちにも手は有るぜ!!)

 佐竹が、その懐刀を抜いた。

 

 

 中速の左コーナーを立ち上がり、Rのきつい右へアピンが迫りくる。その後は200メートルの短い直線を挟んで、最終の左高速コーナーを残すのみ。

(……あと、コーナー二個だ!!)

 兼山はブロックラインをキープしながら、レイトブレーキング。

(……インを抑えてんなら、こっちは……)

 佐竹は、僅かに間合いを開けて、アウト目一杯からブレーキング。そして、ギアを1速に叩き込んだ。

 

 インを取ったソアラだが、内回りな分立ち上がりでは僅かにアウトにはらんでしまう。

(……クロスだ!!)

 一方のRX-8は、立ち上がりを重視したラインを取った。二台のラインがクロスして、RX-8はソアラのイン側に立ち上がった。

 

 最終局面で、RX-8がサイドバイサイドに持ち込んだ。

(この野郎!!)

 兼山は、立ち上がりでソアラのフルパワーを開放するべく、フルスロットル。

(負けてたまるか!!)

 佐竹も2速にシフトアップし、フラットアウト。

 

 パワーに勝るソアラが、僅かに鼻先を突き出した。そして3速へシフトアップ。突き放す様に、伸びていく1JZ。

 それでも、13B-MPSは以前として食い下がる。2速9000rpmまで引っ張り、3速へチェンジアップ。

(……頼む!!)

 佐竹は床を突き破らんばかりに、アクセルを踏み込んだ。

 

 迫りくる最終コーナー。

 インを抑えたままの兼山は、3速のままチョンブレーキでコーナーにアプローチ。

(インは取ったぜ!!)

 それでも、佐竹は一か八かの大勝負に打って出た。

「……いったれぇ!!」

 同じく3速を選んだが、佐竹のRX-8はノーブレーキで最終コーナーに、アウト側から飛び込んだ。

 

 並走したまま、最終コーナーに突っ込んできた二台のマシン。

 

 RX-8が一瞬のアクセルオフの瞬間、僅かにリアの荷重が抜けて、テールが僅かに滑り出している。

(……テールが出るなら)

 佐竹は滑り出している挙動を感じた瞬間。

 

 アクセルを思いっきり踏み込んだ。

 加速状態にする事で一気にリアに荷重を乗せて、リアタイヤのコーナリングフォースを稼ぎだし、テールのブレイクを抑え込んだ。

 そして、僅かなスライドアングルをキープしたままコーナーを立ち上がる。

 

 

 これぞ、究極のコーナーリング“ゼロカウンタードリフト”だ。

 

 

 不利なアウトラインにも関わらず、通過速度はインで粘るソアラを上回っていた。

(嘘だろ!?)

 RX-8のノーズが前に出た瞬間、兼山は我が目を疑うしかなかった。

 

 立ち上がったRX-8とソアラ。

 

 ゴールラインを駆け抜けた瞬間。半車身のリードを奪った、RX-8が勝利をもぎ取った。

 

「……おっしゃあ!!」

 大逆転を決めた佐竹は、ステアリングを握りしめたまま吠えていた。

 

「くっ……そぉっ!!」

 対照的に兼山は、思わず右手をハンドルを叩いて悔しがってしまう。

 

 まさかの大逆転劇に、広島に詰め寄ったギャラリー達は、大歓声を上げて喝采したのだった。

 

 

 広島決戦、勝負あり。勝ったのは“禁断のハールバート”佐竹元網だ。

 

 

 激闘を終え、パーキングスペースに二台は停車する。

「……見たか。これがRX-8……そして、キングダムトゥエルブの実力だ!!」

 誇らしげに胸を張って、佐竹は口を走らせた。

「……ああ。負けたのは悔しいが、実力を認める。あんたは、すげえ速いぜ。

 最終コーナーなんかそうだ。走り屋やってきて、アウトから抜かれたのはのは初めてだぜ」

 相手をしっかりと称賛した兼山に、佐竹は少し呆気に取られた。

 

 僅かな沈黙がパーキングを支配した時、佐竹は反射的に兼山に聞きただしていた。

 

「なぁ……。あんた達十三鬼将は、何で街道に侵略を始めたんだ?」

 その質問に、兼山はこう答えた。

「……何でって言われてもなぁ。

 うちの総大将が、街道を走ろうって言いだしたからだけだからよ。まぁ、それにけし掛けられたって所だろうな」

「…………総大将?」

「……“迅帝”。名前くらいは聞いた事あるだろ?」

 兼山がその名を出した時、佐竹はコクリと頷いた。

「首都高を短期間で制覇した走り屋だろ?

 見たことは無いけど、名前だけなら彼方此方で見かけるぜ。首都高の不敗神話って……」

 そう答えた佐竹に、兼山は堪え切れずに笑いを作っていた。

「何がおかしいんだよ?」

「わりーわりー……。

 アイツがそんな風に称えられてるって思うと、ついおかしくなっちまってな」

「……?」

 不思議な事態に、佐竹は首を傾げた。

「まー、ネットやら噂なんかじゃ色々言われてるが、俺ら(十三鬼将)はそんな街道走ってる連中を、どうこうするつもりはねーよ。

 ま、首都高以外でも速いって事は証明したいけどな」

「アンタ……」

 野呂山に来て、佐竹の表情が初めて緩んだ。

「今度、首都高で走るつもりがあるなら、歓迎するぜ。あんたとだったら、良い走りが出来そうだからな」

 兼山は、ニッと笑みを見せた。

「ああ。その時は、お手柔らかに頼むぜ」

 佐竹と兼山は、ガッチリと握手を交わした。トップレベルの走り屋として、相手の実力を認め分かち合った瞬間だった。

 

 

 十三鬼将とキングダムトゥエルブ、ここまでの勝敗は二勝二敗一分けの五分となった。

 

 

 

 佐竹は、兼山のソアラを見送った後も、野呂山にまだ残っていた。

 RX-8のボンネットに腰を置いて、雲一つない夜空を見上げる。

(……俺達キングダムトゥエルブは、何故十三鬼将と戦うんだ?

 街道の秩序を護る為? いや……違う。あいつらは、そんな奴らじゃない……。

 あの“街道プレジデント”が言っていた言葉は……何だったんだ?)

 佐竹の中で、ある種類の疑惑が膨れ上がっていた。

 

 

 





広島もこれにて決着です。

ステンレスのエキマニのくだりは、実体験です。ステンレス製のエキマニを組んだら、本当にオーバーヒートしなくなりましたねー。

NAで冬だと、冷えすぎて困ってますが(^^;)
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