十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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ついに四天王の一角が登場です。

タイトルで誰なのかはバレそうな気がしてますが……。




第十夜 重戦車推参

 

 

 シルバーのわナンバーのフィットが、東北自動車道を北上していた。見るからに、走り屋とは無縁そうな車両なのだが。

「はぁー……。なんで、俺までこんな事してるんだか……」

 ぼやきながら、レンタカーのフィットを運転するのは、榛名でのバトルを制した坂本だった。

「文句言うな。今まで、俺一人でやってたんだぞ……」

 助手席で文句を垂れるのは、大塚一二。十三鬼将の一人で“ルシファー大塚”と呼ばれる、首都高の猛者だ。

 普段はS2000を駆り、環状線を暴れまわる走り屋であるが、何故今現在フィットに乗っているのか。

 

 

 その訳は、あの日のくじ引きにあった。

「あーあ……。俺だって外れ引かなきゃ、S2000で街道で暴れまわってたのによ……」

 大塚の嘆くような言葉は、本日に入り四回目になる。

 とは言っても、元々峠向きのS2000に加えて、大塚のそれはターボも武装している。街道の勝負となれば、間違いなく水を得た魚となる筈だったが。

 その出番は、外れクジによって水の泡と消えてしまった。当然、他のメンツとクジを取り換える事も、あっさりと断られる始末だった。

「んな事言ったって、今更仕方ないだろ……。

 で……調べはついてるのか?」

 坂本は、ここで本題を切り出した。

「ある程度はな。

 キングダムトゥエルブの12人の正体は大体掴めてる。どいつもこいつも、街道で名の知れてる連中だったから、少し聞きまわったらすぐに掴めたぜ。

 ただ、特定の街道に出没する訳じゃなく、近隣の街道に不定期で来るタイプだったからな。スラッシャーみたく、峠の主って訳じゃないが……間違いなく速いな」

 大塚はそこまで調査を入れていた。

 

 そう。外れクジを引いた大塚に頼まれたことは、キングダムトゥエルブの正体と足跡を調査する事だった。

 その為、愛機のS2000では無く、あえてレンタカーで各地の街道サーキットに通い詰めてるのである。

 もっとも、007のジェームスボンドの気分が味わえる訳は無く、ネットやギャラリーの聞き込み位しか調査のしようが無い訳だが。

「そうか……。

 んで、キングダムトゥエルブの首謀者は、解かってるのか?」

「ああ……。“街道プレジデント”。そう呼ばれる走り屋だ」

 大塚はその名前を出した。

「……その名前は聞いた事あるぜ。

 かつて、各街道サーキットを制覇した唯一の走り屋。エモーショナルキングって称号を得たが……二年前からパッタリと姿をくらましてるんだろ?」

 坂本も、その名を聞いた事はあった。

「おー。よく知ってるねー」

 大塚は茶化す。

「……あのなぁ。俺は首都高に上がる前は、元々箱根で走ってたんだぞ?」

 呆れた様に坂本は言い返す。

「知ってるよ。だから、お前にも手伝って欲しいんだ。バトルも終わって暇だろうし……」

「うるせーな。どーせ、女も作れねークルマバカだよ」

 坂本はそう言い返すが、大塚は気に留めないで話を続けた。

「……一番の問題は、その“街道プレジデント”だけは足取りが全く掴めないって事だ。

 仮に街道中に名が知られた走り屋だったら、少しでも目撃情報は出てきてもおかしくなさそうな所だけど……それが丸っきり無いのは妙だろ?」

「……つまり、表には出てきてないって訳だな」

「そういうこった。だから、レンタカーで街道を巡ってる訳よ」

「なるほどね……」

 その考察を元に、今宵の二人は蔵王へ向かっていた。

 

 

 三菱Z15型GTO。

 三菱自動車のフラッグシップとして、1990年から2000年までの間、10年に渡り販売されたスポーツカーである。三菱らしい個性的なデザインと、グラマラスなボディは一目見てGTOだと言う主張が見えてくる。

 販売面ではスポーツカーブームの終焉によって苦戦を強いられたが、その特異な存在感から根強いファンが多い事も事実である。

 十三鬼将に名を連ねる二人の走り屋も、そのGTOに魅せられている人物である。

 

 レインボーブリッジのそばに佇む、芝浦パーキングエリア。

 ロッソコルサと鮮やかなブルーに染まる、二台のGTOが並んで停車する様は、実に迫力がある。首都高の走り屋であれば、その二台のマシンの手綱を握るものは、一目でわかるだろう。

「……まさか、GTO二台が同じ夜に街道でのバトルになるなんてね。奇遇じゃない」

 川越清美は、美麗な顔立ちを不敵に笑みを作り出した。ミッドナイトローズの異名を持つ彼女は、美人かつゴージャスな雰囲気を持ち出す走り屋であり、ファンも多い。が、その私生活に謎が多い。

「奇遇ねぇ……。そんな事より、このバトルは今までの戦況を見ても、油断は出来ないな。

 少なくとも、バトルしてきた全員が口を揃えて、強敵だったと言っている」

 魚住静太は釘を刺す様に告げる。彼はダイングスターの通り名で知られ、十三鬼将でも特に実力のある走り屋で、四天王と呼ばれる謳われる一角だ。

「それは、私だってこの目で見てきたから、解かってるわよ?

 あの子が負ける所だって、初めて見たんだし」

 川越は笑みを崩さないまま答えた。

「……それなら良いがな」

 魚住はポーカーフェイスを保ったままだ。

 

 互いにGTO使いとして、名の知れた走り屋同士。どちらも、どれ程のドラテクを持つのか、今更語るまでも無いのだ。

「……勝つぜ」

「……ええ」

 二台の重戦車が、街道へ繰り出すのだった。

 

 

 表六甲。関西エリアを代表する、もう一つの街道サーキットだ。

 六甲山と言えば、六甲おろしと言う歌謡曲に取り上げられる程、関西を代表する著名な山である。

 故に、関西地区を代表する街道サーキットであり、かつては走り屋達の聖地であった。

 

 この表六甲を取り仕切るスラッシャー、“ファイナルレグ”の異名を持つ飛鳥周は、キングダムトゥエルブの刺客の走りを、じっくりと見定めていた。

 ギャラリーコーナーを駆け抜けたそのマシンを見て、一言だけ溢した。

「あいつは……速いで」

 長年表六甲を走り込み、只でもレベルの高い六甲の頂点に立った男にそこまで言わせた。

 

 何本か走り込んだ後に、キングダムトゥエルブのその走り屋は、パーキングスペースに停車した。表六甲のスラッシャーとして。そして、今回のバトルの見届け人として、飛鳥は声をかけた。

「……中々やるやんけ、兄ちゃん」

「そりゃ、どうも」

 そう答えた、キングダムトゥエルブの走り屋“戦矛の鉄槌”こと冨津家康。しかし、両者の合間に流れる空気に、友好な雰囲気は無い。

 むしろ、そのままバトルにでも以降しそうな程、張り詰めた空気が流れていた。

「……バトルやったら、受けたってもええんやで?」

 飛鳥は、挑発する様に言うが。

「そうだな……。前哨戦変わりに、十三鬼将の奴をぶっちぎってから、相手をしてもらうぜ。

 アンタの六甲仕様のランエボの方が、恐らく手強いだろうからな」

 冨津は、ニヤリと笑みを見せて答えた。

「大した自身やな……。十三鬼将の走り屋は眼中に無いんか?」

「……無いって訳じゃないぜ。

 ただ、俺の経験上峠でのランエボは嫌ってくらい速い事を、俺はよく知ってるからな」

「ほー……」

 冨津の言い分に、飛鳥は感心した様に答えた。

「もっとも……俺のR32GT-Rなら負けはしない」

 そう付け加えた冨津に、飛鳥は何も答えなかった。

 

 

 バトル当日。

 表六甲の観戦エリアは、詰め寄ったギャラリー達でごった返していた。その中に佇む、ミントグリーンのBNR32スカイラインGT-Rは、一際ギャラリーの目を引き付けている。冨津家康の愛機は、臨戦態勢に入っているのか、エンジンの熱が冷めきっていない。

 

 以前、裏六甲での激しいバトルがあった影響か、その噂が多くのギャラリー達を呼びだしたのである。

 その様子は、長年表六甲を取り仕切る飛鳥でも、初めて見る光景だった。

「えらい繁盛のしようやな……」

 そう呟くと、飛鳥の元に一人の走り屋が声をかける。

「飛鳥。今日の表六甲は、祭りになっとるで、しかし……」

 顔をしかめながら現れたのは“メタルウィザード”こと、天童雅也だ。

「天童……。お前も見に来たんか?」

「そうやで。こないハイレベルなバトルは、そうしょっちゅう見えるもんやあれへんて」

 今回は見物を決め込む天童は、割とお気楽な気分だった。

「……ほーか。やけど、裏六甲の時のバトルは、インプに乗っとるキングダムトゥエルブの走り屋が勝ったんやろ?」

 飛鳥は、直接見た訳では無いため、結果のみしか知らない様だった。

「ああ、そうや。インプとイチゴーの戦いやった。

 やけど、そいつは“ギリギリで勝てた”とまで言いよったで。四駆のインプやけど、FRのシルビアに追い込まれとったんや。

 十三鬼将の連中は、はっきり言って侮れんで」

「ほーか……」

 天童にそこまで言われると、飛鳥も一層興味をそそられた様だ。

「ほんでな。……今日のバトルのギャラリーは数も多いねんけど、来とる奴も大物が多いみたいやで?」

 天童の言葉に、飛鳥の首は縦に動いた。

「俺もそう聞いてん。

 大阪環状のNOLOSERに湾岸のDartsの面々。他にも、環状やら街道やらの有名人が、ようけおいでなすっとるわ……」

 飛鳥の言葉を聞き、天童は一言だけ溢した。

「今夜は只で済みそうにないで……」

 飛鳥は何も答えなかったが、胸の内は同じだろう。

 

 

 ギャラリーのざわめきが、ひそかに大きくなった。麓から聞こえてくる、野太いV6ツインターボのエキゾーストノートは、六甲山ではほとんどなじみが無い。

「きたでー!!」

 一人のギャラリーが叫んだ時、全ての視線がそのマシンに注がれた。

 

 鮮やかなブルーに染まる、希少な最終型GTO。

「あれが……十三鬼将かい」

 飛鳥の口から、自然と言葉が出ていた。しかも、その中でも四天王の一角である“ダイングスター”が表六甲の勝負に挑むのだ。

 超ド級の走り屋だけから放たれる独特のオーラを、そのGTOは身に纏っていた。

「あのGTO……ホンマモンやで」

 天童さえも思わず口走った。

「せやな……」

 飛鳥も、否定できるわけも無く同調していた。

 

 

 面と向き合う両雄。魚住と冨津が対峙すると、いつの間にかギャラリーが静まり返っていた。

「アンタが……十三鬼将の刺客だな?」

 冨津は、そう聞きただす。

「そうだ。あんたがキングダムトゥエルブの走り屋だろう」

 そして、魚住に言われた時、冨津の首は縦に動いた。

「……いいバトルにしたいからな。手抜きは無しだ」

 そう言葉を出した魚住。

「良いぜ。そのつもりだ……」

 冨津も、そう答えた。

 

 超ド級の走り屋同士。バトル前に、言葉など必要が無かった。

 

 

 スタートラインに並ぶ、二台の鉄馬。操る騎手は、互いにその名を知らしめる走り屋である。

 

 歓声を上げるギャラリー達の耳には、その咆哮が確実に響いていた。

 

 レッドシグナルが点灯。その瞬間、ざわめいたギャラリーが、次々に閉口していく。

 

 

 そして、ブラックアウト。

 六甲山に、二台のエキゾーストノートと、スキール音が木霊した。

 

 

 




三菱GTOって、マイナー車のイメージですが……。実は、すごく好きな一台です。


欲しいけど、燃費はロータリーといい勝負らしいです。

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