十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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いろは坂バトル開始です。

そういえば、FC対ランエボだと、頭文字Dを彷彿させますね。
今気がつきました。



第十五夜 電子制御vs人間制御

 

 

 シグナルブラックアウト。

 4WDのランサーエボリューションは、弾かれたパチンコ球の様に飛び出していく。

(……やっぱゼロスタートは速ぇわな)

 一気に遠ざかるランサーのテールランプだが、内藤はどっしりと構えていた。

 

 日光はファーストコーナーからタイトに曲がり込む。

 伊達は、セオリー通りのラインをトレースしてすぐに迫る2コーナーに備える。

(タイトコーナーは、このランエボの独断場だ)

 立ち上がると、再びブレーキング。ストップアンドゴーの多い街道サーキットでは、4WDのトラクションは絶対的なアドバンテージを得られる。

 しかし、それを成立させる為にも、進入での無理は禁物だ。突っ込み過ぎれば、アンダーステアを誘発してアクセルを踏めず、立ち上がりのトラクションを生かせない。

 重要なのは、立ち上がりで踏んでいける、スローインファストアウトのラインを徹底する事だ。

 

 そして、ランサーエボリューションⅧMRには、4WDのトラクションの他に、絶対的な武器があるのだ。

(知ったかぶって、よく“電子制御はドライバーの感覚を鈍らせる”なんて事を言う奴がいる。だが、それは大きな間違いだ)

 歴代のランエボを乗り継いできた伊達は、ランサーエボリューション特有の電子制御を生かせるセットアップを施しているのだ。

(ランエボの電子制御デバイス、AYCとACDは人間では出来ない程の細かな制御を利かせられる。

 アンダーもオーバーも、車が封じ込めてくれるから……コーナーの途中でも踏んでいける……否。

 踏んで曲げていくのさ!!)

 そう。ランエボの最大の特徴と言える、電子制御デバイスはアクセルを“踏んで曲げる”と言う、特異な操作を求められる。従って、下手にアクセルをコントロールするとむしろ遅くなってしまう。

 機械任せと言うと聞こえは悪くなるが、電子制御に頼った方が速くなるのも、大きな特色と言える。

 言い換えれば、電子制御を使いこなす事が求められる。これこそが、ランエボマイスターへの極意なのだ。

 

 ランサーエボリューションシリーズとインプレッサWRXシリーズは、共にライバルとして切磋琢磨してきた間柄である。

 しかし、速さへのアプローチは大きく異なるのが、双方の最大の違いと言えるだろう。

 縦置きボクサーエンジンを持つインプレッサは、元々の重量バランスが優れているだけでなく、フラット4エンジンが生み出す重心の低さが何よりの武器。その恩恵で、シャープなハンドリングを実現している。

 一方のランサーは、横置きの直列4気筒エンジンのFFがベースとなり、非常にフロントヘビーな重量バランスとなる。初期のランサーエボリューションや、その前身であるギャランVR-4に関しても、アンダーステア酷くオンロードのサーキット走行や、タイトコーナーの続くターマック等は苦手としていた。

 しかし、ランサーエボリューションⅣから武装されたAYC、アクティブヨーコントロールシステム。そして、ランエボⅦから実装されたACD、アクティブセンターデファレンシャル。これらが四輪の駆動力を細かく制御する事で、抜群の回頭性と走行安定性を実現した。

 街道でも、この電子制御デバイスが、大きな威力を発揮するのだ。

 

 

 連続するコーナーを、クイックに攻略していくランサー。

(……後ろとの差は)

 伊達がバックミラーを見た時。

(……広がっていないだと!?)

 ゼロスタート時の差をキープしたまま、RX-7は食い下がっていた。

 

 

 ゴール地点のパーキングスペースに設置させる大型モニターが、疾走する二台のマシンを映し出す。むろん、ギャラリー達はバトルが映し出される様子に釘付けだ。

「流石内藤さんだな。いくら下りでも、ランエボに食いつくなんて出来ないぜ」

 大塚は、そのテクニックに感心しきりだ。

「ああ……。あの人は首都高の何処でも速いのは知ってるけど、街道でも速えなんてな」

 坂本も身震いする思いだ。

「……あのFCは、内藤が18の時から乗ってるのよ。あいつにしてみれば……自分の体と同じなのよ。

 次のコーナーを見れば、内藤の速さの秘密が分かるわ」

 緒方の言葉に、大塚と坂本は首を傾げた。

 

 

 コーナーを攻めるランサーとRX-7を、カメラが追いかける。その差はスタートと変わらない。しかし、立ち上がりで絶対的なアドバンテージの有るランエボに、なぜFRのRX-7が食い下がっているのか。

 

 二台が同じ右の中速コーナーを攻めた時、大塚と坂本はその違いに気が付いた。

「……コース幅の使い方だ」

 坂本は真っ先に答えた。

「ランエボはアウト側3、40センチまで使ってるが、内藤さんはガードレールすれすれまで寄せてるぜ……」

 そのテクニックに、大塚は脱帽するしか出来ない。

「限界まで道幅を使う事で、コーナリングスピードを稼いでるのよ。

 私たちだって、首都高で白線ギリギリまで寄せてるじゃない。それを応用してるだけよ。内藤か君嶋さんが、一番壁ギリギリまで使って走ってるしね。

 もちろん、それだけじゃ無いわよ。内藤のアドバンテージはね……」

 緒方はニヤリと、含みのある笑みを作っていた。

 

 

 RX-7は歴代全てにおいて、国産車で屈指のコーナリングを誇るマシンである。それはFC3Sでも同じ事だ。

 とは言え、ランエボを追い回せる程、内藤のRX-7にマシン面におけるアドバンテージは無い。優位な点があるとすれば、車重が100キロ程度軽い事くらいしかない。

 しかしだ。内藤は伊達に対して、ドライバーとして大きなアドバンテージを持っている。

(ランエボは、確かに良い車だぜ。電子制御のおかげで、四駆の弱点は解消されてる……。

 おまけに、このドライバーはランエボの電子デバイスも使いこなしてるが……。

 だからこそ……あのランエボの弱点が出てくるのさ!!)

 内藤は、ランサーのテールランプを全力で追い回す。

 

 

 ランサーエボリューションの特徴の一つは、バカっ速いセダンである事だ。元々、ギャランVR-4に搭載される4G63ターボエンジンを、コンパクトなランサーに積む事で軽量ハイパワーを実現した。

 しかし、ボディサイズが大きくなったCT9A型は、カタログでの全高が1450ミリとスポーツカーと比較してかなり背が高い。FC3Sの全高のカタログ値が1270ミリと、その差は180ミリもの差となる。

 全高が高いという事は、ボディの重心が必然的に高くなってしまい、運動性能が落ちる事になる。エボリューションⅧMRでは、ルーフパネルにアルミを採用し、屋根を軽くする事で重心を下げる様にしてある物の、基本的なボディの形状はあくまでセダンのままなのだ。

 もちろん、車高を下げて重心を低くする事は可能なのだが、4WDのランエボの場合フロントのドライブシャフトが邪魔になってしまい、極端な改造をしない限りレーシングカー程低くする事は不可能なのだ。

 そして、もう一つ。

 ランエボの最大の特徴と言える電子制御は、コンピューターのセッティング次第で驚異的な旋回性能を発揮させる事が可能だ。伊達のランエボも、当然ながらAYCとACDのCPUをセッティングしている。

 故に、曲がるマシンに仕上がっているのだが、内藤はそのセッティングの方向性を見抜いていた。

(背の高いボディだが、電子制御で曲がるマシンに仕上げてあるが。ただ……曲がりすぎるマシンになってる。

 だから……コーナーが右、左と揺り返す時に、僅かに踏み込むタイミングが遅れてるぜ!!)

 内藤は、その一点のウィークポイントを見切っていた。

 

 

 内藤は首都高でも五本の指に入る程のロータリー使いだが、彼の作り上げたマシンはロータリーエンジン搭載車だけではない。GT-Rやスープラ等のハイパワーマシン。ハチロクやロードスター等の、軽量なFR車。そして、ランエボ、インプレッサ等の4WD車両のチューニングも手掛けた事が有る。

 つまり、多種多様なマシンをチューニングしてきたからこそ、その車両の持つ特性を理解している訳だ。

 走り屋でありながら、チューナーである事。これこそ、内藤がFC3SRX-7一本で、首都高を戦い続けてこられた要因なのだ。

 

(……あちらさんの弱点を突くには、連続するコーナリングのロスを減らすしか手がねぇ。

 その為には……マージンを削ってコーナリング速度を稼ぐだけだぜ!!)

 

 日光の下りに、そのロータリーサウンドが吠える。

 

 

 そして、二台は中盤の連続してヘアピンが続く、中盤エリアに突入していく。一気に下っていくこのセクションは、日光の一番の特色であり、最大の難所である。

(……ここでACDはターマックだ)

 電子制御を巧みに使いこなす伊達。こういった低速コーナーでは、立ち上がりに勝るランサーが有利となる。

 しかし、RX-7も軽量なボディと優れた重量バランスを武器に、レイトブレーキングでヘアピンに突っ込んでいく。

(さぁて……。どう料理してやろうかな……)

 その速さは、決してランエボに引けを取っていなかった。

 

 ヘアピンセクションでは、どうしても速度が落ちてしまい、引き離すことは難しくなる。しかし、RX-7がコーナーの進入でギリギリまでテールに接近し、プレッシャーを与える。

(くそったれ……。こっちが目一杯で逃げてるのに……何でFRで喰らいついてこれるんだ?)

 その内藤の気合に、伊達のドライビングに焦りが生まれていた。

(立ち上がりじゃ苦しいが……進入でプレッシャーをかけてりゃ、あっちは焦ってくる筈だ。これで焦らなきゃ、そいつは余程のバカか宇宙人だぜ……)

 RX-7がここまでランエボを追い回す等と、日光に詰め掛けたギャラリーは思いもしなかった事だろう。

(あちらさんが焦ってくれりゃ……電子制御の罠にはまり込むぜ!!)

 内藤の言う罠とは。

 首都高を走り続けたベテランドライバーが、その牙を誇示する如く攻め立てる。

 

 中盤エリアの攻防が、モニターに映し出される。

(伊達がここまで苦戦してるとはな……。恐るべし十三鬼将だな)

 スラッシャーの岡本は、その伊達の姿に自分を重ね合わせてしまい、身震いする思いだった。

(……無理するなよ。それ以上攻めたら、限界を超えちまうぜ)

 今の岡本には、旧友の無事を祈る事しか出来なかった。

 

 そして、同じくモニターを見つめる、十三鬼将の三人。

「あなたたち……内藤と走った事あるわよね?」

 緒方が、共に来ている二人に聞く。

「そりゃあるけど……」

 唐突な質問に、坂本は首をかしげる。

「まぁ、あの人は逃げるより追いかける方が得意って感じが……」

 大塚がそう口走った瞬間に、二人はハッとなった。

 

「“追撃のテイルガンナー”の異名は伊達じゃないわ」

 緒方の言葉に、坂本と大塚の背筋が、少しだけ寒く感じた。

 

 




ランエボって速いですよねー。

横乗りしたとき、ひたすら速くておっかなかった思い出がありますねー。
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