十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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お次のバトルは、追撃のテイルガンナーの好敵手が登場です。




第十七夜 キングダムトゥエルブの謎

 

 いきつけのカフェバーに、再び十三鬼将の面々が集まる事になった。

 しかし全員集合とはならず、仕事の都合で来られない魚住。そして、君嶋と岩崎は音信不通で連絡がつかなかった為、集まったのは十人だ。

 

 全員が個室に入ると、今回のミーティングの首謀者が面々の顔を見る。

「これで、来れる奴はそろってるんだな?」

 呼び出した張本人である、大塚がそう切り出した。

「とりあえずは、そうみたいだな」

 坂本がそう追従する。

「……んで、今回は何で集まったんだよ?」

 真っ先に佐々木がそう切り出すと、大塚は呼び出した理由を話し始めた。

「それはだな……。

 俺は今回のバトルに参加できなかったが、岩崎に別の事を頼まれてたのは、皆知ってるだろ?

それの途中経過を話そうと思ってんだ。キングダムトゥエルブの連中の正体と、あっちの狙いだ」

 大塚の言葉に、一同が耳を傾ける。

「まずキングダムトゥエルブは、元々街道で名の知れた走り屋達の集まりなんだが、俺達みたいにチームのような機能を持ってる訳じゃない。実際、メンバー同士での交流は少ないみたいだしな。

 ただ俺らと大きく違うのは、キングダムトゥエルブの首謀者が全員に対して、直々にスカウトしたって事だ」

「……その違いに何の意味があるのよ?」

 黒江がそう聞きただす。

「さすがセッちゃん。良い質問だ」

「セッちゃん言うな!!」

 大塚がそう茶化すと、黒江が怒った。この二人は、元々恋人同士だったらしいが、今その話は関係が無い。

「話を戻すぞ。

 スカウトしたって事は、何かしらの目的があるって事だろ。

 十三鬼将に関しちゃ、仲間って言うよりは打倒“迅帝”を目論んでる奴が、岩崎に近づいてる部分があるじゃねーか。

 だが、キングダムトゥエルブは、スカウトしてる時点でそういう形で集まってる訳じゃないはずだ」

「……そんなもんなのか?」

 その考えに、兼山は半信半疑だ。

「仮にそれで集まったとしても、あちらさんの目的は単に街道最速のチームを組ってだけじゃないのか?」

 竹中も、そう意見した。

「俺も最初はそう考えてた。

 ただ、そうなると首謀者のが未だに表に出てきてないって事が、どう考えてもおかしくなる。

 バトル先に出向かないのは兎も角、キングダムトゥエルブのメンバーですら殆ど姿を見てないなんて、考えられるか?」

 大塚がそこまで言うと、一同が考え込む素振りをみせる。

 

 少し考えた後、内田がそう切り出した。

「確かにそうかもしれない。だけど、岩崎君もあんまり姿を見せないじゃないのかい?」

「まぁ、岩崎もそうなんだが……。

 ただ、スカウトした上に結成して間もない集団にしちゃ、放置し過ぎだろ」

 大塚の考察は、最もな考えだ。

「……所で、キングダムトゥエルブの首謀者って誰なのよ?」

 そう聞いたのは川越だ。

「あー……全員に言ってなかったな。

 “街道プレジデント”って呼ばれてる走り屋……覇魔餓鬼だ。街道の走り屋じゃ知らない奴は居ないし、ネットでちょっと調べればすぐに出てくる筈だ。

 二年前までの事ならな」

「……二年前?」

 緒方が、そう聞き返した。

「……街道プレジデントは、かつて街道で最も速い走り屋だった。

 すべての街道サーキットのスラッシャーに勝利して、当時のレコードタイムも記録してた。

 そんで、付けられた称号は“エモーショナルキング”。街道で一番栄誉のある称号を得ていたんだが……。

 二年前を境にして忽然と姿を消してる」

 坂本は元々知っていた事情を伝える。

「……そいつが徒党を組んで舞い戻ってきたって訳か」

 内藤がそう追従した。

「そうか……。俺ら十三鬼将が街道に侵攻してるのも、岩崎の思い付きに振り回されてるってだけなんだが……。

 向こうがこっちを意識してるって事は、何か因縁でもあるのかもな……」

 兼山は、腕を組み直しながらそう言った。

「そうだとすると……戻ってきた割に姿を見せないって事は、確かに奇妙だね」

 内田も、ようやく納得が出来たようだ。

「……色々とあちらさんの事で考えられるパターンも多いけどさ。岩崎はどこでキングダムトゥエルブの話を聞いてきたんだろうか」

 竹中はポツリと溢した。

「さぁて……。あいつの事は、ホントによくわからんからなぁ」

 佐々木はため息交じりでそう言った。

「まぁ……その内にキングダムトゥエルブの裏事情は見えてくるだろ。

 それ以上に、次のバトルがどうなるかだよな」

 そう言いながら、内藤は緒方に視線を送った。

「大丈夫よ。箱根なら、全く走った事無い訳じゃないわ」

 緒方は、その表情に自信を見せる。

「……出番まで時間が有りましたから。マシンはばっちり仕上がってますよ」

 そして、内田も微笑を浮かべる程だった。

 しかし、それでも十三鬼将の面々に油断の二文字は無い。

 

 次なるバトルへの準備は整っていた。

 

 

 箱根。

 その昔、まだ日本人がチョンマゲに刀を挿していた頃。東海道にそびえる箱根峠は、難所の一つに数えられていた。

 交通整備が進んだ現代社会では、その名残で箱根宿跡や箱根温泉は観光名所として知られている。

 

 そして、街道サーキットが黎明期の頃から、箱根峠は走り屋達の舞台として存在しているのであった。

 それこそ江戸時代では俊足で馴らした飛脚が駆け抜けていたが、現代では高速のマシンが駆け抜けていく。

 

 伝統と格式のある昼の箱根峠を、オレンジのインプレッサが走り込んでいた。

 箱根峠は、各街道サーキットで特に平均速度が高く、3速か4速を主体で走る。従って、峠としては少々コーナーのRが緩いと感じても、ドライバーにはかなりの恐怖心が伸し掛かる。

 また、所々に点在するヘアピンへの飛び込みは、速度が高い分難易度は高くなる。

 コーナーが少なく一見すれば初心者向けかと思われる箱根なのだが、そのコースは実に奥が深いのだが。

 このインプレッサは、見事に箱根峠を攻略していた。

 そして、オレンジの弾丸がゴールラインを駆け抜けた時。コースレコードを塗り替えていたのだ。

 

 パーキングに戻ってきたインプレッサを見つめるのは、箱根のスラッシャー“MMC大字”こと大字和彦だ。

「……お見事だね。キングダムトゥエルブの噂は聞いていたけど、そうそうにコースレコードを叩き出すなんて、驚いたよ」

 箱根の主に賞賛を受けたが、インプレッサのドライバーの表情は緩まない。

「ありがとう。だけど、油断はならないね。今までの話を聞く限り……十三鬼将は強敵のはずさ。

 根府川は一番苦戦したって言ってたし。特に……伊達元就が負けたって聞いてるからね」

 そう答えたのは、キングダムトゥエルブの刺客“無敗のエンブレム”の異名を持つ劔時宗。

 グラディエーターこと根府川とはインプレッサ使いの同士であり、根絶の騎馬の異名を持つ伊達元就とは、長年に渡るライバルなのである。

「……油断も隙も作らないって事か」

 大字の言葉に、劔は頷いた。

「ええ。首都高の走り屋に街道の走り屋が負けたら、それこそ街道の走り屋の名折れですよ」

 劔は闘志を漲らせていた。

「…………俺も箱根で走って長いもんでね。

 十三鬼将に知り合いも居るんだ。表六甲のレコードを叩き出した、ダイングスター。魚住とは、付き合いがあってね」

「…………へぇ」

 劔の眉毛がピクリと動く。

「……奴らは速いよ。それだけは言い切れるね」

「ご忠告ありがとう……」

 そう返答した劔は、何を思うのか。

 

 

 キングダムトゥエルブと十三鬼将の戦いは、ここから終盤戦に突入する。

 噂が噂を呼び、この日の箱根にもギャラリーが大挙に押し寄せていた。山頂のパーキングスペースも、走る方よりギャラリーの車が多いくらいである。

「……俺も箱根を走って長いが、ここまで大盛況になるのは初めてだな」

 大字は、呆れる程の事態にそうぼやいた。

「……大字。久しぶりだな」

 そう声をかけられ、振り返ると十三鬼将の一角。魚住が立っていた。

「魚住……。久しいな……半年ぶり位か?」

「そうだな……。FTOの調子はどうだ?」

「まー、ボチボチって所だ。俺は、お前さんの六甲の話を聞いて驚いたさ。GTOでレコードを叩き出すのはさすがだ」

「そいつは、車が仕上がってるおかげだぜ」

 なんてことは無い世話話を始める二人。

 魚住と大字は、同じ三菱車の愛好家同士の走り屋なので、その付き合いは結構古かったりする。

 三菱愛好家だが、ランサーエボリューションを選ばない辺りに、シンパシーでも感じるのだろう。

 

 世話話もそこそこに切り上げ、大字は本題を切り出す。

「……所で、今日十三鬼将で走るのは、あの“シャドウアイズ”なんだろ?」

 やはり十三鬼将でも四天王となれば、その名は箱根でも知られているようだ。

「ああ。緒方の姉さんは、はっきり言って滅茶苦茶速いんだが……」

 魚住は、少し歯切れの悪い答え方だった。

「……が?」

「俺自身何度もあの人とバトルしてるんだが……“シャドウアイズ”は環状線とかが苦手なんだよ。乗り手もマシンも、最高速主義だしな……。

 そりゃ、並みの走り屋とは比べ物にならないくらいには速いんだが……」

 魚住の言葉の意味する事。

「……そんな事言い出したら、街道なんかテクニカルなコースばかりだろ?」

 大字の言葉に、魚住の首は縦に動いた。

「……今回のバトルは十三鬼将(うち)としては分が悪いんだよ」

 魚住はそう呟きながら、ある一点に視線を送った。その先には、戦闘態勢に入っているインプレッサのテールが映っている。

 不安を隠せない魚住を見て、大字は返す言葉が見当たらなかった。

 

 

 そして、遠くからトヨタ製ストレート6特有の甲高いエキゾーストが響いてきた。

 しかし、一つではない。何台かのエキゾーストノートが重なり合っている。

 

 隊列を組んでパーキングスペースになだれ込んできた、三台のマシン。鮮やかな紫に染まるJZA70スープラ。ミッドナイトパープルのJZZ30ソアラ。そして、イエローのJZS161アリスト。

 十三鬼将のトヨタ車集団が、一斉に箱根に来ているのだ。

「……どういう事だ?」

 この不測の事態に、戸惑いを隠せない劔。

 

 スープラから降りてきた、麗しい女性が一歩、また一歩と、ゆっくりと劔に歩みよった。

「……貴方がキングダムトゥエルブの方かしら?」

 緒方は、不敵な笑みを見せつけながら問う。

「……そうだけど。

 貴女が俺の対戦相手としても、この取り巻きの連中は何なんだい? 助っ人のつもりかい?」

 劔は疑うように問いただす。

「違うわ。サービスカーと、メカニックって所かしらね」

 緒方がそう答えると、スープラの助手席から内藤が。ソアラからは、兼山と竹中が。そしてアリストから佐々木と内田が降り立った。

「……俺は女が相手だからと言って、舐めたりしないし手も抜かない」

 劔の目つきが、一層鋭く研ぎ澄まされた。

「そうね……。ならば、始めましょう」

 そして、緒方の表情から微笑が消えた。

 

 

 




70スープラは、個人的には好きなスタイリングのマシンですね。
ただ、70は滅茶苦茶重たいんですよねー。
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