十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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本編突入です。

kaido峠の伝説の世界観なので、登場車種などに偏りがありますが、気にしないで下さい。



第一夜 街道バトル開幕

 

 

 街道。所謂、峠道。

 

 元々は各県を結ぶ主要道路として使われていたが、近年は高速道路の開通やバイパス道路の整備により、使用頻度は目に見えて下がっていった。

 そこに目を付けた各地方の自治体は、その公道を封鎖して街道サーキットとして運営する事となった。

 それを受けた若い走り屋達は、ここぞとばかり街道サーキットへ足しげく通う事となった。また、その運営に携わる各自治体も、走行費を徴収することで運営費に当てる事でき、その利益を自治体の活動費として補填することが出来た。

 元来、サーキットを作ろうとした場合、莫大な建設費用が必要となってくる。しかし、街道サーキットの場合、元々ある道をサーキットに変えただけになる為、普通のサーキット場を建設するよりも、遥かに安上がりにすることが出来る。

 事実、一般の道路の場合、その収入源は税金しかないのである。

 

 国内で初めて公道サーキットとして産声を上げた、榛名峠の狙いは見事に大当たりし、こぞって各自治体はそれに倣ったのだ。

 

 

 群馬県の榛名山。

 国内で初めて街道サーキットとして生まれ変わった、榛名峠。

 日中のタイムアタックもさることながら、自由解放される夜間も日夜熱い走りが繰り広げられる。

 とある漫画の舞台になっただけあり、そこに集まる走り屋達のレベルは、全国レベルで見ても非常に高い。

 昼の榛名峠でひとっ走りして、温泉宿に泊まるもよし。そのまま、日帰り温泉を浴びて、夜の峠を攻めるもよし。

 当初は街道サーキットの運営に反対していた温泉の組合も、目に見えて跳ね上がった収益に、速攻で手のひらを返すありさまだった。

 

 

 榛名峠のレコードを持つ玉城伸一は、一台のマシンのタイムアタックに、度肝を抜かれた。

(……冗談だろ)

 掲示板に表示されたタイムは、自身のレコードタイムのコンマ5秒落ち。しかも、これは榛名峠を今日初めて走った走り屋のタイムである。

(馬鹿げてるぜ……。VR-4からエボ4に乗り換えて、今まで以上にタイムは上げてきたんだ……。

 こうもあっさり迫られるとはな……。

 恐れ入るぜ……街道の守護神“王宮十二氏(キングダムトゥエルブ)”)

 

 たった今走り終えた、真っ赤なBNR34スカイラインGT-R。ドライバーは叩き出したタイムを見て、苦々しく笑った。

「……レコードに届かなかったか。ちと残念だな」

 王宮十二氏、第一の刺客。古谷小鉄は、自らの走りに不満を漏らしていた。

「いや……。あんたの実力はよく分かった。首都高の連中と戦うには、十分すぎるだろうな……」

 玉城は、素直にその実力を認めていた。

「そうか? 条件は、レコードタイムを塗り替える事だったろ?」

 古谷の言葉に、玉城は首を横に振った。

「……確かにそう条件はだしたぜ。

 だが、俺は榛名が街道サーキットになる以前から、ここを走り込んでるんだ。16で原付を乗る様になってからな。

 それこそ、今日初めて走った癖に、ほとんど肩を並べてる。今まで積み上げた物が、全部ぶち壊された気分だぜ……」

「……じゃあ、首都高のサーティーンデビルスとのバトルは、任せてくれるんだな?」

「……ああ。あんた達の腕は認めざる得ないだろうよ。他の連中も、あんたの走りを見れば納得するさ」

 玉城に言われ、古谷は満足そうに笑みを浮かべた。

 

 古谷小鉄。1stKINGDOMと異名を掲げ、キングダムトゥエルブの急先鋒として榛名へ来たのだ。

(……たしかに首都高の走り屋のトップ連中。手強い事は手強いが……街道を甘く見ると後悔する事になるぜ)

 キングダムトゥエルブの実力が半端ではない事。それは、今叩き出したタイムが物語っていた。

 

 

 都内。何時ものカフェバーで、坂本はコーヒーを飲みつつ、つい三日前の事を思い出していた。

 

 岩崎が、サーティンデビルスを集めたその日。

 岩崎を除くメンツが、一斉にくじ引きをさせられる事になった。

「……これ、何のくじなんだ?」

 坂本は恐る恐る聞く。

「これ? 誰がどこで走るか決めるんだよ。全部で、12本あって11本は各地の街道サーキットの名前が書いてある。

 んで、赤くしてある奴は大当たりで……どこかのショートコースで走る事になる。何にも書いて無い奴は……はずれ。別の事を頼むって訳。

 ちなみに、俺は走るコースと相手はもう決まってるからな」

 その無茶苦茶な言い分に、全員不満顔を見る。しかし、ここは大人しくくじを引くことにした。

 

その結果……坂本は榛名を引き当てていた。

 

 

(……榛名か。一番古くからある街道サーキットを引くとはね)

 物思いに更けながら、桐山はとある人物を待っていた。

 

 そして、約束の時刻を少し過ぎた頃。

「すまないな、待たせて……」

 そこに来たのは、かつて首都高最速まであと一歩のところまで上り詰めた男だった。

「……どうもです。舘さん」

 坂本は、深々と頭を垂れた。

 

 舘渡。ロータリー搭載車にこだわり続け、RX-7で首都高を攻め続けてきた。

 かつて、彼の駆ったパールホワイトのFD3Sは最速ロータリーの象徴となり、何時しか走り屋達は“白いカリスマ”と彼を称えた。

 しかし、そんな彼は最近になって、首都高を降りたのだ。

 

 オーダーしたブラックコーヒーがテーブルに置かれると、舘は改まった様子で坂本に聞いた。

「……随分と、調子はよさそうだな。あのセブン」

「ええ……。元、白いカリスマの愛機だけあって……速いし乗りやすいですよ。

 どうも、FDはピーキーなイメージが抜けてなかったですから。あのマシンに乗ったら……イメージがコロッと変わりましたね」

 現在坂本の乗っているFDは、舘から受け継いだものだった。

「そりゃな。最高速ステージってのは、ワンミスで命を落とす事になる。サーキットアタックみたく、一本のラインがトレースできれば良い訳じゃない。

 速さの他に、懐の深さが無ければ、最速にはなれないさ」

「……でも、ずっと気になってたんですよ。何故、俺にあのFDを譲ってくれたんですか?

 元、白いカリスマの愛機だったら……おそらく、とんでもない金額で取引できるんじゃないでしょうか?」

 坂本の言葉に、舘は静かに首を横に振った。

「……そういう目的は無いさ。

 そりゃ、俺も再来月には父親になる。金銭で取引する事も考えたさ。

 だけどな……あのセブンは、飾る目的で作ったんじゃない。走る目的で作ったんだ。だったら、走りたい奴に譲るほうがあのセブンも幸せだろう」

「…………」

「何よりもな……坂本。

 お前は、十三鬼将の中でも一番若いし、才能も有る。この先、迅帝……岩崎に勝てる可能性は、お前が一番秘めてるんだ」

「……舘さん」

 坂本の胸が、少し熱くなった気がした。

 僅かな沈黙。二人の耳に、店内のガヤガヤとした活気と、有線放送の楽曲が流れ込んでくる。

 

 舘は、改めて坂本にある事を聞き出した。

「……十三鬼将が、街道を侵略するって話がネット上で噂になってる。ま、お前の所のアホ大将が、勝手に始めた事だろう?」

「…………ええ」

 事実である以上、坂本は肯定するしかない。

「心中は察するよ。だが……俺から言える事は一つしかない」

 一呼吸を置いてから、舘はこう伝えた。

「……頑張れよ」

「…………ええ。思いっきり暴れますから」

 坂本は、自信に満ちた顔つきでそう答えた。

 

 

 週末の榛名峠は、走り屋達で賑わっていた。

 かつては忌み嫌われた走り屋達も、今では大手を振って榛名峠を走り込める。ナンバープレートを見れば、県内ナンバーが四割程度で残りは県外ばかり。

 週末に遠征してくる走り屋は、それほど珍しい物でもない。

 

 一台の、練馬ナンバーの黄色いFD3Sを除いては。

「……噂は本当だったんだな」

「あれが、サーティンデビルスの走り屋……」

「直線番長はお呼びじゃねーんだよ!!」

「そうだそうだ!!」

 榛名に来ていたギャラリーは、招かれざる客である桐山の姿にざわめく。口から出てくるのは、興味本位が三分の二。残りがブーイング。

「こりゃ、結構なアウェイだな……」

 坂本は苦笑いしながら、手荒く歓迎されている事を理解した。

「……んで、俺の相手をしてくれるのは誰よ?」

 大胆不敵に啖呵を切った。この期に及んでしまえば、前置きも能書き必要ないのだ。

「あんたが、サーティンデビルスの走り屋か。

 俺は、ここのスラッシャーを務めてる、玉城って者だ。今日のバトルの見届け人をやらせてもらう」

 玉城に告げられると、パーキングの隅に陣取る一台のR34GT-Rのエキゾーストノートが、坂本の聴覚を刺激した。

「……ほー。って事は、あいつが王宮十二氏(キングダムトゥエルブ)って訳か」

 

 

 初めて対峙する両雄。

 FD3SとBNR34。古くは、往年のツーリングカーレースからライバルとして戦い続けた、スカイラインとロータリー。

 この街道サーキットでも、因縁の好敵手が火花を散らす事となった。

「……古谷小鉄だ」

「坂本桐字……」

 闘争心は隠さない。半ばにらみ合っている様に、鋭く視線を交わす。

「首都高で最速らしいが、ここは峠だ。

 いつも通りに行けると思うと、大怪我するぜ?」

 古谷は、そう挑発する。

「……あんたこそな。

 そのRのエンブレムに恥じない様に走れよ?」

 坂本も、そう言い返した。

 

 

 あと十数分で、日付が変わる。

 真紅のGT-Rと、眩しいイエローのRX-7がスタートラインに並ぶ。

 ルールは至って単純。先にゴールラインを駆け抜けた方が勝者となる。

 

 スターティンググリッドを、固唾をのんで見つめるギャラリー達。

(……このバトルは、タダじゃ済みそうにないな)

 長年スラッシャーを務めてきた、玉城の直感がそう告げていた。

 

 互いに威嚇するように、エキゾーストノートが高鳴る。RB26の図太い咆哮と、13Bの鋭い遠吠えが、榛名の山間に木霊した。

 

 シグナルレッド……そして、ブラックアウト。二台のマシンのタイヤが、アスファルトを蹴りだした。

 

 先行したのは、大方の予想通り古谷のGT-Rだ。RB26の加速力とアテーサETSのトラクションを、まざまざと見せつける格好になった。

 しかし、追いすがる坂本もファーストコーナーの飛び込みで、一気に差を縮める。ブレーキングと旋回性能に勝る、RX-7の武器を見せつける。

 立ち上がりでは離されるが、続くセカンドコーナーで再びテールに喰らいつく。

(……コイツ)

 その瞬間、坂本はある事を悟った。

 

 遠ざかっていくエキゾーストを聞きながら、山頂のギャラリー達は口々にざわめく。

「……玉城さん。このバトル、どうなると思います?」

 そう聞かれ、玉城は少し考える仕草を見せた。

「……この展開なら、GT-Rの方が有利だろうな。もっとも、街道サーキットは基本的に四駆が有利だがね」

「まぁ、トラクションが違いますしね。

 でも重たいGT-Rだと、ブレーキとかタイヤのタレが早いから、後半に不利になるんじゃないですか?

 まして、RX-7ならコーナーも速いし……」

 そう言われたものの、玉城は首を横に振る。

「確かにコーナーやブレーキングはRX-7が有利だよ。でもな……GT-Rだとブレーキやタイヤが厳しいなんて事、ずっと昔から言われてる事だ。

 あの古谷ってドライバーも、そんなことは分かり切ってるはずだよ。それだったら、後半戦に向けて温存しながら、走りを組み立ててる。

 俺もVR-4の頃から、同じ事をしてるしな。

 それを踏まえて、俺はGT-Rが有利だと考えてる」

 玉城はそう断言した。

「……なるほど」

 その言い分に、ギャラリーも納得していた。

「仮に、大きく勝負が動くとすれば……最終の二つ手前の中速の右コーナーだろうな。

 あそこは、道幅が広いからライン取りの自由が利く。何より、ああいう中速コーナーだと、旋回性能に勝るRX-7のメリットが生かされる。

 勝負が別れるとすれば、あのコーナーになると、俺は読んでる」

 長きに渡り榛名を走り込んできたスラッシャーの考察に、ギャラリー達は納得していた。

 

 

 果たして、この勝負の行方は……。

 

 

 




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