十三鬼将vsKINGDOM TWELVE   作:囃子とも

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いよいよ、ラストバトルスタートです。

迅帝と街道プレジデントの因縁が明らかになります。


第二十六夜 過去の因縁

 

 スターティンググリッドに整列した二台。

 S2000とインプレッサのエキゾーストノートが、サーキット中に呼応する。ギャラリーのみならず、関係者達も皆注目している。

 

 会場のボルテージが上がる中、鴻上と堀井は至極冷静に両雄を見つめていた。

「……いよいよ始まるねー。

 だけど、覇魔餓鬼さんは随分とあの迅帝に、何か色々因縁でもありそうだね」

 鴻上に言われ、堀井はゆっくりと口を開く。

「そう……ね。

 “街道プレジデント”が、かつての“エモーショナルキング”だった事は貴方も知っているでしょう?」

「ええ。かつて、第一いろは坂をホームとして、ダウンヒルで無敵を誇ったS2000。その乗り手である覇魔餓鬼さんは、各街道コースの下りレコードを次々と塗り替えて、街道で最高の称号を得ていたんすよね?

 ただ……二年前に、ある走り屋に敗れてからその姿をくらました……」

「その走り屋……。

二年前に“街道プレジデント”を打ち負かしたのが、岩崎君。“迅帝”だったのよ……」

 

 

―――――二年前。

 

 いろは坂は、かつて第一いろは坂と、第二いろは坂の二つに分かれ、異なるレイアウトの街道サーキットを持っていた。

 特に第一いろは坂は、第二いろは坂以上に道幅が狭く、タイトなヘアピンが連続する。

 

 この第一いろは坂をホームとし、各街道サーキットで無敵を誇っていた“街道プレジデント”。

 しかし、この日。

 街道で最速を誇るイエローのS2000が、蒼いインプレッサの後塵を拝している光景を目の当りにしていた。

(……あの覇魔餓鬼さんが、このいろは坂で追いつけないドライバーが居るなんて、信じられないわ……)

 このバトルを見届ける堀井は、中継モニターから目を離せないでいた。

 

 NAの後輪駆動と言うレイアウトに拘り、ダウンヒルであらゆるハイパワーマシンを喰ってきた覇魔餓鬼。

 だが、今回のバトルに限っては勝手が違っていた。

(……この俺が追いつけないだと!?)

 先行するインプレッサのテールは、覇魔餓鬼をあざ笑うかのように逃げていく。

(……何者なんだ、このインプレッサは!!)

 全開でいろは坂を攻め立てるが、全く追いつかない。

 その姿。

覇魔餓鬼の視界には、丸で悪魔の様にも見えていた。

 

 バトルは、そのままインプレッサが逃げ切って勝利。街道最速を誇る覇魔餓鬼に、黒星を付ける事になった。

 

 バトル後、対峙する双方。

「……このいろは坂で、俺が追いつけない走り屋が現れるとは思わなかった。

 貴様……一体何者だ?」

 覇魔餓鬼は、インプレッサのドライバーに問い詰めた。

「何者って言われてもな……。

 まあ、気晴らしに走りに来た観光目的の走り屋って所かな」

 そのドライバーは、飄々とした様子で答えた。

「……名は何と言う?」

「岩崎基矢。アンタは?」

「俺は覇魔餓鬼だ。

貴様の名、よく覚えておくぞ……」

「忘れていいぜ。じゃ、俺は温泉でゆっくり休むからな」

 そう伝え、岩崎はその場を後にした。

 

 その後、覇魔餓鬼が岩崎の正体。

 瞬く間に首都高最速に上り詰めた走り屋“迅帝”だと知る事に、時間はかからなかった。

 

 

―――

 

「……そりゃ、覇魔餓鬼さんがあの“迅帝”にこだわるわけっすね」

 鴻上は納得した様子で、グリッドに着いているインプレッサを見つめる。

「だけど……岩崎君が速いのは分かるわよね?」

 堀井の言葉に、鴻上の首は縦に動いた。

「わかるっすよ……。あのドライバーは……半端じゃないっすわ」

 街道の王たる“エモーショナルキング”は、ある種の匂いを感じ取っていた。

 

 

 ギャラリー達のボルテージの上がる中、大将のマシンを見る十三鬼将の面々の反応は様々だ。

 

「四駆にツインチャージ仕様とか、あんなS2000有りかよ……」

 モンスター仕様のS2000を見ながら、大塚は言葉を吐き捨てた。S2000オーナーとしては、ボルトオンターボだけならまだしも、AWD化は反則にしか見えなかった。

「……それだけではありませんよ。

 今、積車で運ばれてきたという事は、岩崎君はあのインプレッサに乗るのも初めてで、このコースを走るのも多分初めて……」

 内田がそう解説を付け加える。

「……ぶっつけ本番で、街道のトップとバトルとか無茶苦茶だろ。

 勝負になんのか?」

 桐山も、不安を隠しきれない様だ。

 

 対する、キングダムトゥエルブは何を思うか。

「……あのインプレッサ。相当いじってるな。しかも、あのインプは並みのマシンじゃないぜ」

 インプレッサにはうるさい“グラディエーター”根府川は、岩崎のマシンを見て呟いた。

「そうなのか?

 丸目のインプレッサは、涙目に比べて曲がらないって話だが……」

 “キングチャリオット”桐谷はそう聞きだす。

「GDBの初期型は、確かにアンダーが強いマシンだよ。

 ただ……丸目のスぺCだけは、歴代のインプの中でも別格の一台だぜ……」

「丸目……スぺC?」

 根府川はマジな目つきで答えたが、桐谷は今一つピンと来ていないままだった。

 

 

 スタートライン。

 岩崎自身、セカンドカーであるインプレッサのステアリングを握るのは久しぶり。しかも、仕様変更後にいきなりグラベルを走る。

 かなり条件は悪い分、師である藤巻も不安をぬぐえない。

「……仕様はオーダー通りに仕上げてる。だが、条件的には相当悪いな。

 お前さんの才能もテクニックは認めるが、今回ばかりは勝ち目は大分薄いぞ?」

「ま、そこは何とかしてみるぜ。

 伊達にさ……元首都高最速の“パープルメテオ”の弟子じゃねぇからな」

 岩崎はニヤリと笑って見せる。

「言うじゃねぇか……。

 ……行ってこい!!」

 藤巻と岩崎は、ハイタッチを交わした。

 

 

 レッドシグナルが光る。

 F20C改ツインチャージ仕様が雄たけびを上げ、FJ20も図太い咆哮を放つ。固唾を飲むギャラリー達は、一斉に静まり返っていた。

 

 そして、ブラックアウト。

 お互いAWDとは言え、低ミュー路でのクラッチミートはシビアだ。必要以上にパワーをかければトラクションが不足し、四輪でホイールスピンを始めてしまう。

 

 先手を取ったのは、軽量かつハイパワーに仕上げたS2000だ。そして、2速からの加速で、インプレッサを一気に引き離す。

(……速ぁっ!?)

 幾多のバトルを勝ち続けてきた岩崎でさえ、思わず目を見開く。

(こっちも400近くは出る筈だけど……こりゃヤバいな)

 S2000の想像以上の怪物ぶりは、岩崎の誤算だった。

 

 3速にシフトアップしても、S2000の加速はとどまる事を知らない。

(……インプレッサの最大の武器は、四駆ターボのトラクションと加速力……。

 ならば……それ以上のマシンを作り、かつその性能を使い切るだけだ!!)

 覇魔餓鬼は、積年の恨みを晴らすかの様に、フルスロットルをくれる。

 一気にリードを奪って、ファーストコーナーへ飛び込む。

 

 緩く左、右と続く高速コーナーで、巧みに左足ブレーキを使いながらコーナーを駆け抜ける。

 丸でターマックかと思う程の速度とライン取りで、軽やかに駆け抜けていく。

 

(……あそこまで速いんだったら)

 岩崎も覚悟を決めて、ファーストコーナーへ。

(……120パーのプッシュしかねぇ!!)

 ノーブレーキで突っ込む。

 アクセルベタ踏みのまま、暴れる挙動をステアリングのみでねじ伏せる。高速コーナーを、最短のラインでかっ飛んでいった。

 

 ファーストコーナーで陣っていた、“王国の劔”鶴岡と“ブラッドハウンド”佐々木。

 双方の駆け抜けていく速度に、どちらも度肝を抜かれていた。

「……信じられない速度ですね。とても、ダートの上とは思えませんよ」

 鶴岡の声は、少し上ずっていた。

「あの覇魔餓鬼も速いが……岩崎はそれ以上だぜ。あいつは……やっぱりアホだ」

 佐々木は、そう評した。

「……君は、どっちが勝つべきだと思いますか?」

「さあな。ただ……走り屋を低レベルだと罵った、覇魔餓鬼に勝ってほしくはねぇよ」

 鶴岡の問いに、佐々木はそう答えた。

「……僕もそう思ってますよ。僕も“走り屋”のはしくれですから……」

 そう答えた鶴岡の表情は複雑そうだと。佐々木はそう感じていた。

 

 緩く長く左に曲がり込む区間。普通に走るなら何も考える必要が無いのだが、グラベルかつ、バトルスピードであれば、その左コーナーは恐怖心を植え付けさせる。

 覇魔餓鬼はミラーで、インプレッサとの距離を測る。

(まだ食い下がるか……忌々しい奴め!!)

 僅かにアクセルコントロールしつつ、ベストラインを舐めていく。

 

 

 グラベルに置るベストラインは、サーキットや舗装路とは大きく異なる。

 サーキットならもっとも速度を乗せられる、アウトインアウトを基本とする。しかし、グラベルの場合は路面状態が一定とはならない為、最もフラットに走れるラインがベストとなる。したがって、走るマシンの数だけ路面が抉れる分、ベストラインはタイヤ一本の単位で刻々と変化していくのだ。

 

 ラリーにおいてのマシンメイキング、及びセッティングに関しては、特に加速力と安定性に比重を置く。その最大の理由は、ラインのミスやドライビングのミスを、素早くリカバー出来る事に他ならない。

 低ミュー路ではミスが起きやすいのは勿論だが、決まった走行ラインが変化する分、操作には懐の深さが求められる。

 

 覇魔餓鬼のS2000も排気量アップに加えて、低速側はスーパーチャージャーでトルクを稼ぎだし、高速側はターボチャージャーで引っ張ることによって、全域で大幅な加速力を生み出すエンジンに仕上げている。

 これは、往年のグループBラリーに置いて、最強にして最速と言われた“ランチアデルタS4”のエンジンと同じ作りをしているのだ。

 全回転域で高ブーストがかかるエンジンならば、大排気量のNA並みのアクセルレスポンスを、僅か2400ccで生み出す事を可能にするのだ。

 

 右のブラインドコーナーも、完璧なラインでクリアするS2000。

 一瞬だけ、ミラーから追走してくるヘッドライトの光が消えた。

(……もうミラーには映る事は無い)

 そう思い、再びミラーを見ると。

 

「……バカな!?」

 未だに、ミラーから光は消えていない。インプレッサは、まだ後方で食い下がっているのだ。

 

(マシン性能で追いつかねぇんなら……ギリギリまでコーナーで稼ぐしか手はねぇ!!)

 岩崎はここまで続いてきた連続の高速コーナーを、ほぼ全開で駆け抜けてきているのだ。

 

 迅帝の本気が、この北海道で炸裂する。

 




自分で考えて思ってたけど、S2000をここまで改造したらいくらかかるんでしょうね?

感想、及び車談義など、お気軽にご意見お待ちしてます(笑)。
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