genocidertale   作:上新粉

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*ここにはだれもそんざいしない。


結界

手にしたナイフがパピルスの身体を切り裂こうかとしていたが、突如呼ばれたその名前に僕は反射的に手を止めていた。

僕の視線はパピルスから外れ、声のした方向へと目を向ける。

 

「……君にその名前を教えたのはキャラだね?」

 

僕は視線の先にいるモンスター、アズリエル・ドリーマーを殺意を込めて睨み付ける。

その質問に奴は敵意でもって返した。

 

「そうだよ。気に入らないのかい?自分の名前だろ?」

 

「ああ、気に入らないからこそ付けたんだ」

 

虐殺者……好き好んで付ける様な名前ではない。

だから僕は敢えてその名を選んだんだ。

決して諦めない様に……何時までもジェノサイダーでいる為に。

 

アズリエルは敵意剥き出しのままで話を続ける。

 

「ふ〜ん?まぁいいや。僕は君と戦いに来たわけじゃない。もし君を殺せるのなら殺してやりたいけどね」

 

そうだね、お互いに殺し切る事は出来ないのだから時間の無駄だ。

実際それをされると僕はちょっとだけ困るけどね。

 

「……じゃあ何しに来たのかな」

 

「僕はただ役者を集めてきただけさ」

 

役者……?まだ他にこの世界に知り合いなんて居ただろうか?

そう思いながらもアズリエルの方を見ているとその背後から不敵な笑みを浮かべた今の僕そっくりな少女が現れた。

 

「こうして会うのは久しぶりだな」

 

「っ……ああ、久しぶりだねキャラ。けど身体は君達の家で僕が奪った筈だよね?」

 

しかし、見てる限り彼女の姿は本来のキャラと比べても遜色無いものであった。

キャラは僅かに目を細めたかと思うとスッと表情を戻して疑問に答えてくれた。

 

「……ルインズでは世話になったな。お前の言う様に私の身体はそいつで間違いない。これはアズが自分の魔力で造った仮の肉体だ。私は必要ないと言ったんだがな」

 

「えっと、まぁ……自分で動けた方が便利だろ?」

 

「ま、それもそうだな」

 

そうか……アズリエルの目的なんて別に興味は無いけど僕の知ってる彼女みたいで安心したよ。

 

「それで、今更君がやって来てどうする気かい?悪いけど決意を固め直した僕に干渉する事は出来ないよ」

 

僕は腕を下ろして彼女に目的を訊ねた。

だが彼女は余裕を崩さずに質問を返してきた。

 

「ジェノサイダー。前にお前が『僕以外に僕を止められる奴なんて存在しないのさ!』って心の中で言ってたのを覚えてるか?」

 

キャラの今言った台詞には覚えがある。

まさか聞かれてるなんて思って無かったけど、だからどうしたのだろう?

 

僕が無言で頷くとキャラは我が意を得たりとばかりに悪どい笑顔を浮かべて続けた。

 

「つまりそういう事だ。入れ『Frisk』」

 

僕は彼女が何を言い出したのか暫く理解出来ないでいた。

だが彼女に呼ばれてアズリエルの後ろから現れた存在に僕は言葉を失った。

 

「な…………っ!?」

 

そいつは紫のボーダーが二本入った青のシャツに青のズボンを着用したボブヘアーの少年……この場に居るはずのない存在(Frisk)そのものだった。

 

何故お前がいる。

お前はこの世界には来れない筈だ。

 

「………………わかった。ジェノサイダー、こいつがお前に話があるそうだ」

 

キャラがあいつの言葉を代弁すると、フリスクは未だ頭が追いついていない僕に近付き右手を差し出してきた。

 

「…………は?逢いたかっただって?」

 

おいおい、本気で言ってるのかい?

目の前のガキは僕に仕出かした事も忘れて手を差し出してきやがる。

 

ふざけんるんじゃないよ。

 

「……っ!?」

 

僕は鬱陶しい目の前のガキの心臓にナイフを深く穿った。

 

「Frisk、君は僕にした事を覚えて無いのかい?」

 

止まることなく血液が零れ落ちる胸を抑えながらFriskは首を左右に一度だけ横に振る。

 

「…………ごめんだって?謝って赦される様な事だとでも思ってるのかい!?」

 

僕はこのガキを絶対に赦さない。

()()()()でリセットした数だけ君を殺し続けてあげるよ。

 

僕は決意を漲らせてこの場でセーブを行う。

そしてFriskの胸からナイフを抜き、勢いを付けて再度振り下ろした。

そうして奴が息絶えたのを確認してから僕はロードを行おうとした。

だがしかし、何故かロードは失敗に終わってしまった。

 

「ロードが……なぜ?」

 

理由は解らず目の前の絶命した存在を見るも血の気が引いて顔色が青白くなっているだけだ。

続けてアズリエルの方に目をやるが、奴は目の前の状況に開いた口が塞がらないといった様子で見ているだけだった。

 

ソウルレスであり現在仮の身体を使ってるキャラや普通のモンスターであるパピルスが僕の決意を阻めるとは思えないな。

……まあいいさ、あのガキを一度しか殺せなかったのは気に入らないけれど余計な事をされるよりはましさ。

 

僕は気持ちを切り替えて本来の目的を進める事にした。

 

「パピルス、さっきは邪魔が入ってしまったが今度こそ終わらせてあげるよ?」

 

「ニンゲン……貴様はそっちのニンゲンと何かあったのか?今の貴様はなんだか悲しそうだぞ?」

 

パピルス……別に君が知らなくてもいい事だし言っても理解出来ない話だろう。

けど、最期に彼の期待に答えてあげようじゃないか。

ジェノサイダーである僕なんかより最低最悪な存在がいた事を。

 

「僕の心のオアシスだった君の為に特別に少し昔話をしてあげよう。キャラとアズリエルも、君達が連れて来た奴がどんなニンゲンかよく聞いてるといい」

 

 

 

あれはまだ僕がジェノサイダーと名乗る前の出来事だ。

 

 

 

 

 

 

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僕はそこの世界では最初に落ちてきた人間だった。

ここの世界で言う所のキャラの様な立ち位置だったんだけど、その時の名前こそが『Frisk』だったんだ。

 

僕の人としての生は素敵なモンスター達に囲まれた素晴らしいものだった。

この世界とは違って我が家がルインズだったり庭に居る『ファイナル・フロギー』とかに危うく殺される所だったとか色々あったけどね。

とはいえそこは本題じゃないから割愛させて貰うよ。

 

あの頃の僕は地下に閉じ込められた皆を解放する為に結界を壊して欲しいとアズリエルに全てを託して己の命を絶った。

まぁ残念な事に彼は僕の願いを叶えてはくれなかったけどね。

 

それから何人かのニンゲンの終わりを見送った後、七番目に僕の前に現れたのが彼だった。

 

死ぬ事も誰かと話す事も出来なかった僕は暇つぶしに今までと同じようにそのニンゲンの後ろをついて行こうと近づいた。

だけどその子供は今までのニンゲンと違いじっと僕を見つめ続けていた。

 

*君、僕が見えるのかい?

 

僕の問いに子供は首を縦に振った。

初めての会話は緊張しながら自己紹介をしたら彼が自分の名もFriskだと答えくれたのを覚えている。

 

あの時の僕は久々に他人と話す事が出来た嬉しさについ舞い上がって僕の事や皆の事を一杯話した。

きっと彼にとってはあまり面白くもない話もあっただろうにそれでも頷いたりして確りと話を聞いてくれて相槌も打ってくれたんだ。

 

その時僕は落ちてきたニンゲンに初めて好感を抱いた。

以降僕は彼を助ける為に動き始めた。

だけど彼は今まで落ちてきたニンゲンの中でも圧倒的に不器用だし弱かった。

なのに誰にも曲げる事の出来ない固い決意を抱いていた。

 

だから僕はとても苦労させられたよ。

()()()の君達に分かりやすくいうなら『こうどう』せずに『にがす』で戦いたくないと意固地になり続けたんだ。

ダミー人形にもそれをやり出した時は僕もママも同じ気持ちで彼を見てただろうね。

だから僕は何度も彼に言ってやったし、身体を借りてやって見せたりもしたんだ。

 

それでも彼は自分のやり方を変えようとはしなかった。

その事で何度も口喧嘩をした、僕だって彼が無意味に傷付く姿を見たくなかったからね。

だが彼は一歩も譲ろうとはしなかったよ。

彼の決意に負けた僕は妥協案として彼が命の危機に晒された時に相手を殺さない事を条件に身体を借りると伝えたら、彼は渋々納得してくれたよ。

 

身勝手かもしれないがあの時の僕はそれだけ親友である彼が大切だったんだ。

けれどどうやら親友だと思っていたのは僕だけだった。

 

笑い合ったり時には喧嘩しながらも僕達は長い時間を掛けてついにモンスター達を地下世界から解放する事が出来たんだ。

僕は長年の夢が叶った事で感無量だった…………なのに、彼は考えられない事を言い出したんだ。

 

*Frisk……冗談……だよね?

 

僕は笑えない冗談だとしても冗談だって言って欲しかった。

だけど彼は真面目な顔で首を横に振ると、恐ろしい言葉を放った。

 

この世界はやり直す──と。

 

そして彼はその言葉の通り世界をリセットした……僕をこの世界に飛ばして。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それから僕は一人で……いや、正しくはキャラと二人でこの世界で生きてきた。最初の内は再び結界を壊して幸せな世界へと進んだよ。けど……どうしてか次の瞬間には僕はルインズのゴールデンフラワーに寝そべって落ちてきた穴を見上げていたんだ」

 

「……お前がリセットしていたのでは無かったのか」

 

キャラからすればそう感じるだろうね。

僕も最初は記憶を引き継いでる彼女を疑ってたからね。

そうじゃなかったって気付いたのは僕が皆を殺し回り始めて少しした頃だったかな。

 

「そう、僕じゃないんだ。そしてそいつが此処に来た事で犯人が漸く分かった」

 

「それがFriskだって言いたいのか?」

 

「その通りさ。とはいえ死んでしまったから理由も方法も解らないけどね?」

 

けれどそんな事は今更気にする必要もない。

僕を止められる存在はもう居ないのだから。

 

僕は死に体となったFriskの前を通り過ぎ、パピルスへと近づいていく。

 

「パピルス。誰も信じられなくなった僕が唯一信じられると思えたのが君だったんだ。だから本当は君を此処まで苦しめたくはなかった……ごめんね」

 

「ニンゲン……大丈夫だ。俺様も貴様を信じてるぞ!けど……今度は兄ちゃんやアンダインと一緒に四人でパズルとかして遊ぼうな」

 

パピルス。少しでも君を疑った僕に言う資格なんてないけど……ありがとう。

 

僕は笑顔で受け入れてくれる慈愛に満ちた英雄へと終わりのナイフを突き立てる。

そして彼の笑顔に少しでも答えられる様に心からの笑顔を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




*まっすぐにゆがんだやさしさに だれかのケツイがみなぎった。
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