*あ〜あ、ここじゃニンゲンも期待出来ないしなぁ。
真研究所に入った僕達はこの世界に来て何度目かになる自分の知ってる世界との違いに戸惑っていた。
ここの研究所は廃墟みたいな雰囲気が全くと言っていい程感じられず、真研究所というより新研究所という方がしっくり来るほどであった。
照明も真っ白な壁や床に反射してとても眩しい。
さて、何処にいるかな?
取り敢えずいつもの部屋から探して行こう。
*ねぇ、あっちから誰かの話し声が聞こえるよ?
決意抽出機へ向かう廊下でFriskがそう言った。
君は前からそんな耳が良かったのかい?
*そういえば。以前はそんな事なかったと思うけど……なんでだろう?
どうやら本人も分かっていないらしい。
それじゃあ誰にも分らないし考えても仕方ないか。
僕が彼の案内に従って決意抽出機の横を通り過ぎビデオがしまってある部屋の扉に耳を当てた。
『………………』
「うん……だ……うぶ…………アン……ン……」
この声はアルフィーかな?
誰かと話してるようだったけど、電話越しなのか相手の声までは聞き取れなかった。
暫く様子を見ていたが、話し声が聞こえなくなったので僕は扉を開いて中へ入る。
「えっ!?にに、ニンゲンッ!どどどどうやってこの研究所に入ったの……?」
「へっ?普通に研究所のエレベーターで降りてきただけだよ?」
「あ、あれっ!?ももしかして切り替え忘れてた……そんなはず……」
僕がここに来るのが予想外だったのかアルフィーは取り乱しながらブツブツと何か呟いていた。
「ねぇ?そんなことよりさっきの電話ってもしかしてアンダインだったり?」
「え、えぇ……そうよ。あ、あなたの話はアンダインから聞いたわ」
おぉ、それなら話が早そうだ。
僕はアンダインに話した事を思い浮かべながら早速話を切り出した。
「それは良かった。それじゃあアンダインには僕が君達が知ってるニンゲンじゃないって伝えて貰えるのかな?」
「…………そうね、それはあり得ない事はアンダインに伝えたわ」
ほうほう、それなら目的の一つは達成したね。
けどアルフィーにはもう一つ答えて貰いたい事があったんだよねぇ?
*えっ?
「ありがと。そしたらもう一つ聞いてもいいかな?」
「え、えぇ。なな何かしら?」
僕は薄く目を開き口元を吊り上げつつアルフィーに
「その僕に似たニンゲンはどんな最期を迎えたのかな?」
「……え……ええと…………その……」
アルフィーは青ざめた様子で目を逸らして口篭もった。
*ね、ねぇ……やっぱりやめようよ。
何を言ってるんだい?これはこの世界を救うのに必要な事だよ。
ニンゲンとアズリエルが行方不明になってからモンスター達は変わったんだ。
どうだい?この二つが無関係に思えるかい?
*た、確かに……だけど……
今回は好きにさせてくれるんでしょ?それとも今から替わる?
*……そうだったね、余計な口出ししちゃったかな。
別に余計だなんて思わないよ。
ただこの先に繋げる為にも此処の
僕が間違ってると思ったら何時でも言ってくれて良いからね?今度はちゃんと話し合おうよ。
*フリスク……そうだね、折角こうして逢えたのにまたすれ違いたくないからね。
Friskが僕へと笑い掛けたので僕はウインクで返すと、アルフィーの方へ向き直す。
アルフィーは未だに狼狽えていたが、やがて大きく深呼吸をすると伏し目がちながらも話し始めた。
「彼女が捕まえたニンゲンは……そう、貴方の言う通り……亡くなったの」
この話をした時のサンズの動揺具合で何となく察していたけどやっぱり死んでいたみたいだ。
パピルスには話せないかなぁこれは。
サンズが止めるだろうし僕だって彼にこんな事実は伝えたくない。
そんな事を考えながら話の続きを聞いていたがここから先は更にパピルスには伝えられない真実が眠っていた。
「……ニ、ニンゲンは…………博士の実験の犠牲になったのよ。ただニンゲンは皆に愛されていたから私と博士とサンズ以外には行方不明って事にしてるの。アンダインにも死んだ事は伝えていないわ」
「そっか……その、博士……って?」
その言葉を聞いた僕は背筋に嫌な寒気を感じながらその名を訊ねた。
「あ、あなたが知ってるか解らない……けど……W.D Gaster……ガスター博士の事よ」
*……っ!?ガスター……!
ちっ、観測者もどきも本気だって事かな。
まさか奴が自分で世界を掻き乱すなんて思わなかったよ。
僕は苛立ちを抑えられず親指の爪を強く噛んでいた。
「ガスターね。彼の実験がどんなものだったかは聞いてるかい?」
「え?えぇ……確か、それぞれの時空間連続同位体の情報を共有出来る記録媒体空間の創造……って言っていたわ」
…………?
*…………?
「ええと……ごめん、もうちょっと解りやすい言い方ってあるかい?」
「あ……ご、ごめん。私も全ては把握していないんだけど……此処とは似た別の世界があると仮定して、そこの博士の記憶等の知識を全てを一点に集約し何時でも確認出来る空間を作る実験を行ったの。その最終段階として博士は私達の静止を振り切り抽出したニンゲンの決意、そしてモンスター達の気力と共にコアへ飛び込んで行ったわ。」
皆の無気力はその実験が原因か。
それにしても別世界の記憶の共有か……そういえば以前本人がそんな事を話していたっけ?
あの時はガスターが元々そういった存在なのかと気にして無かった、だけど世界を一つ狂わせてまでその空間を作りたかったのであればその理由はぼくたち僕達にあると見て相違はなさそうだね。
*だとすれば一体何時から僕達に目を付けていたんだろう?
わからない……けど、考えられるのは最初に屑が僕の前 に現れた時か……君が僕を飛ばした時か。
他にもあるだろうけど可能性としては後者が一番あり得るだろうね。
*えっ!そんな最初の頃から目を付けられてたの!?
たぶんね?僕達の存在に気付くような事象なんて僕が世界軸を超えた時くらいしか考えられないからね?
ただこれは想像以上に不味い状況に落とされたようだね。
僕は先の事に頭を抱えたくなる気持ちを抑えながらアルフィーにお礼を述べる。
「ありがとうアルフィー。お陰で良く分かったよ」
「あ……あの…………こ、こここの事は……」
「大丈夫だよ、アンダインや他の皆には言わないから安心して?」
アルフィーの言わんとする事を理解した僕は笑顔でそう答えるとサムズアップしながら振り向き、部屋を出て行った。
アルフィーと別れ、真研究所を離れた僕はニューホームへ続く道を歩いていた。
*これからどうするの?
ん?ああ、このあとは一応アズゴアに挨拶してから暫くこの世界で何が出来るか試してみるとするよ。
結界を抜けたり壊したりしてもリセットされる可能性があるし、そもそも結界を壊すには外で人間のソウルを六つ集める以外に方法がなさそうだからね。
*そっか……そうだよね。
今までの彼はアズゴアが集めたソウルをアズリエルが使ってバリアを壊していたからその辺りの認識が薄いのかも知れない。
その事実を理解したFriskは悲しげに俯いていた。
他人を傷付ける事を拒み続けた彼にとっては少々酷な事実かもしれないが、これを暈してはいけない。
誰の犠牲も無く皆を救うなんて出来ない。
モンスター達の解放は六人の人間の犠牲を元に完遂するという事を僕等やモンスター達は決して忘れてはならない。
*彼らを救う事は……
皆を地下世界に閉じ込めて置くのなら出来ない事はないよ?
僕や君が落ちた穴を結界で閉じれば子供が落ちて来る事は無くなる。
……もしかしたらそっちの方がお互いにとって良いのかも知れないけどね。
*……そうだね。ありがとう、僕は大変な思い違いをしていたよ。
うん?
*僕は君と最初に皆を解放出来た時に後は君さえ救えればと思っていた……けど、それまで此処に落ちてきた子達やアズリエルもあの時点では救えていなかった。
えと、だからそれは避けられない犠牲で……
*フリスク、本当は君の望みに口を挟みたくはないんだけど……僕のお願いを聞いてくれないかな。
……言ってみなよ。
*僕は……僕は全ての世界の全ての人間とモンスターを救いたい。
それは……駄目だよ。
*も、もちろん簡単じゃないだろうし……君が嫌なら強制はしないよ。
違うんだFrisk、その思想は嘗て僕がやろうとしていた事と同じだと理解してるかい?
君は僕が世界を壊さないと信じてたから身体を貸してくれたんだろうし僕も今更世界を壊そうとは思っては居ない。
けどそれが君の願いなら……僕は。
*ち、違うんだ!僕はただ……
Frisk!君が望む犠牲の無い世界というのが自分の知覚出来る範囲なら僕は協力する。
だがこの世界やその他の世界全てを望むのならそれは世界のあるべき姿に対する否定だ。
それを理解してなお君がそれを望むのなら僕は直ぐにでも全てを壊そう。
*でも……僕等や周りの皆が救われても他の世界の僕等が皆を傷付けてるのを知らないふりなんて……
知らないふりなんかじゃない、僕達は知り得ない事なんだ!
僕達はあくまでも別次元の世界が存在する事を知っただけでそれ以上は全て想像に過ぎない!
だから……君が気に病む事じゃないんだ。
*…………ごめん、少し考えてみるね?
そう言ってFriskは黙り込んでしまった。
はぁ……知覚出来る範囲ってだけでも世界線を三つも跨いでるから簡単な話じゃないんだけどね。
ただまぁ、本当にやるのであれば再び奴に会って話をしなければならないかな。
彼の事は心配ではあるけれど、一先ず放っておく事にして僕はニューホームへと入って行った。
*ふむ、アレは何処だったかな?
*いやはや、情報もここまで膨大になると探すだけでもひと苦労だな。