genocidertale   作:上新粉

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*彼女らが来るのも時間の問題か……


NERVELESS TALE ~るいんず~

僕が決意を新たに持ち直したあの日からリセットをせずにこの世界で一年が経過した。

当然ながら元の世界線に帰るのを諦めた訳じゃ無いよ。

僕達は皆を救う為にサンズやアルフィーと相談しながら様々な方法を試したり、皆と共に過ごしながらこの世界の過去について更に詳しく調べていた。

 

その結果、幾つかの有益な発見があった。

一つは地下世界に落ちてきた人間の数とその行方。

最初に落ちてきた人間を含めて七人。

その内の六人はニューホームでアズゴアが保護していたらしく、その六人は力を合わせて結界を抜け出した様だ。

 

もう一つの発見は僕達のソウルに関して。

サンズが言っていたようにこの身体には彼と僕、二つのソウルが存在している。

そんないままででは有り得なかった状況を利用出来ないか試した所、結界を壊す事は出来なかったが僕達だけで結界の出入りなら出来る事が分かった。

とは言え、人間のソウルを奪い下手にLOVEを手にすればまたサンズを敵に回しかねないから止めておいた。

 

そこで僕が次に考えたのが近々落ちて来るであろう人間についてだ。

他の世界線と共通しているのであればその人間は僕達と同じく決意のソウルを持っている可能性が高い。

 

だから僕はその子が来るのを待つ事にしたのだ。

本来モンスターのソウルを奪うか、この世界の六人が力を合わせて漸く出る事が出来た結界を二人で抜け出せる僕達に、もう一人決意のソウルを持った子が加われば結界の破壊も出来るのではないかと考えて。

 

そんな僕の考えにアルフィーとFriskは賛同してくれた。

サンズだけは苦い顔をしていたが、得に反対意見は出なかった。

 

 

 

──といった具合に話は決まり、今日遂に七人目の人間が落ちてきたのだ。

その日も僕達はママの代わりにルインズの庭を散歩していると、嘗て僕等が落ちてきたゴールデンフラワーの花畑に横たわる人間の子供の姿があった。

 

「あれって……」

 

近付いて見てみるとその子はとても見覚えのある黄緑色の生地に黄色っぽいボーダーが1本入ったタートルネックに、同じく黄緑色のズボンを着用した茶髪ショートボブの見慣れた女の子だった。

 

「キャラ……?」

 

いや、彼女では無い可能性があるにも関わらず私は驚きの余りつい言葉を漏らしてしまっていた。

 

「……だれだ!どうして私の名を知っている」

 

どうやら聞こえてしまった上に同名だったみたいだ。

彼女は僕に不信感を抱きつつも聞き返してきた。

さて、どう答えたものかな。

 

「僕の知り合いに君に似た姿の子が居たものでね?つい声が出てしまっ──」

 

「っ……おまえか……!」

 

僕は弁明を試みるも彼女は既に僕の話など聞いて居らず、僕の事を殺意の篭った瞳で睨み付けていた彼女は僕が話し終えるのも待たずに近くにあった棒切れを握り締め、一足飛びで僕の左目を突き刺しに来た。

 

「死ね──うぐっ……これはぁ!?」

 

だが、僕が一瞬遅れて避けようとした時には彼女の体は後方の壁に叩き付けられていた。

 

「サンズっ!ありがとう。だけど此処は僕に任せてくれないか?」

 

僕は彼女を吹き飛ばしたであろうモンスターに声を掛けた。

すると何も無かった僕の隣に彼は突如現れこう伝えてきた。

 

「フリスク。奴は駄目だ、此処で殺さなければ絶対に良くない事になるぜ」

 

僕は一瞬彼が伝えた言葉の意味を理解出来なかったが、彼女がポーチから取り出した赤黒く染まったダガーナイフを見て納得がいった。

 

「成程ね……サンズ、彼女は()()()だったんだい?」

 

彼は彼女から目を全く離さずにこう答えた。

 

「奴のLOVEは99だ……殺すにしろ話し合うにしろ相当骨が折れるだろうな」

 

99か……あっちでなら兎も角、いまの状態でまともに相手をするのは厳しいかな。

Frisk、彼女は協力してくれると思うかい?

 

*やってみよう。きっと彼女だって何か事情がある筈だよ。

 

うん、君ならそう言うと思ってた。

 

*君だってそうするつもりで聞いたんだろ?

 

まぁ、そうなるかな?

……それじゃあ行くよ。

 

*僕達はキャラを説得する決意を抱いた。

 

 

 

 

 

「ちぃっ……!ちょこまかと鬱陶しい奴め!」

 

「キャラ!その手を止めて話を聞いて欲しい!」

 

僕達は彼女が放つ一撃必殺の斬撃を紙一重でどうにか避けながら説得を続けている。

しかし彼女はいつかの自分を見ている様に飽きる事なくそのナイフを振り回し続けた。

 

このままでは攻撃が当たるのも時間の問題だろう。

Frisk、次の直接的な攻撃が来たら敢えて受けるから覚悟しておいて。

 

*僕は大丈夫だけど……君の方こそ大丈夫なのかい?

 

……大丈夫、即死レベルの攻撃は屑の奴から嫌という程味あわされてるからね?

 

「キャラ、君なら解ると思うが飛び道具は僕には当たらないよ?」

 

「……ふっ、既にこの戦いも幾度も繰り返してるという事か」

 

「数えては居ないけどね?」

 

自身の記憶に無い=リセットはされていない。

きっと彼女ならそんな安易な結論には至らないだろう。

そして彼女は次に僕の言葉の意味を考える。

だが聡明な彼女は僕が飛び道具を危惧している可能性に気付く。

だから此処からが僕達の正念場だ。

 

「だがおまえの体力は確実に私より先に底を尽く。ならばどう足掻いても私の勝ちは揺るぎはしない!」

 

そう言うとキャラの斬撃は更に激しさを増していく。

正面から飛んできた斬撃をしゃがんで躱し、直ぐに後ろへ飛び退く事で上から降り注ぐ無数の斬撃を避けた。

 

「まだまだ行くぞ!」

 

僕が着地する直前に背後から十字の斬撃が飛んでくるので身体を無理捩じる事でどうにか避けきった。

 

*フリスク、まだ来るよ!

 

解ってるよ!

空中で無理に体勢を変えた僕は錐揉み状態で地面に叩き付けられられるも直ぐに手足を着いて体勢を立て直し、正面から水平に飛んでくる斬撃をハンドスプリングで飛び越え足から着地してみせた。

 

「成程、確かに手慣れているようにもみえるな」

 

「ははっ、これでも結構苦労したんだからね?」

 

キャラに返事をしてみせたが、実際にはサンズとの戦いを幾度も繰り返した事で慣らした動きを二人の決意で補助してるに過ぎない。

彼との戦いやFriskの助けが無ければ今頃何度もロードし直し、屑との戦いを再現する事となっていただろう。

 

「だったらおまえの切れる札を全て潰せば良いだけだ」

 

だが幸いな事に彼女は半信半疑とはいえ、僕がリセットしている可能性を植え付ける事が出来たようだ。

キャラは何かを企む様な笑みを浮かべると再び僕の足を狙って斬撃を飛ばしてきた。

 

「おっと、そんな単調な手段じゃ僕の手札は奪えないよ?」

 

僕は敢えて余裕を持って飛び越えた。

すると案の定彼女は僕の体勢を崩そうと背後から斬撃を飛ばして来た。

僕が再び身体を捩じりその攻撃も躱した直後、彼女は姿勢を制御出来なくなった僕を上から飛び掛る様に突き刺してきた。

 

「ふん、おまえがどう動こうとこれなら決して外しはしない」

 

「うっ……ぐふぅ……確かに……反応は……かはっ…………出来ない……ね」

 

僕のソウルが音を立ててひび割れて行くのを感じる。

 

「まだ諦めるつもりは無いようだが、おまえの努力の全ては徒労に終わる。此処で諦めた方が身の為だぞ?」

 

「は……は……邪魔者である僕の心配をしてくれるなんて君は優しいんだね」

 

「っ、馬鹿な事を……もういい。さっさと死ね!」

 

そう言ってキャラは突き刺したナイフに更に力を込めて僕のソウルを呆気なく突き割った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラは確実に目の前の人間のソウルを砕いた事を確信していた。

しかし彼女は直ぐにその表情に曇りを見せた。

 

「何故生きてる?おまえのソウルは砕け散った筈だ。それに涙を流している理由も解せぬ」

 

確かに彼女の言う通りソウルは砕け散った、僕が涙を流しているのならそれが理由に違いない。

辛うじて親友のソウルが霧散する前に保護出来たからまだ生きているが、一歩間違えれば取り返しのつかない結果にだってなり得たのだから。

 

でも今は大切な親友が作ってくれた機会を無駄にしない様に僕はしっかりと彼女の右腕を捕まえた。

 

「漸く君と落ち着いた話が出来るね」

 

「くっ……どうするつもりだ」

 

彼女は僕の手を払おうと必死にもがいているが僕達の決意を振り払う事は出来ない。

 

僕は彼女の腕を掴んだまま聞いた。

 

「君はどうしてここまで来たんだい?」

 

唐突な質問に彼女は怪訝な目で僕を見るが、やがて呆れた様子でこう答えた。

 

「初めはこの山の地下にモンスターが封じ込められている噂を聞いてな。目の色が他人と違うというだけで私を差別し虐げてきた人間(クズ)共に復讐する為に奴らを地下から解き放とうと考えた」

 

僕やフリスクも外では近い境遇だったから人間に不信感を抱く気持ちは解らなくも無かった。

 

「でもここの皆は……」

 

「そうだ……全員腑抜けだった。だから私は計画を変え奴らを殺し、力を手に入れ人間を滅ぼすつもりだった……だが奇跡が起きたのだ。それまではそこの骨に邪魔をされて殺された後はまた此処に戻されて居たが、今回は私が人間(クズ)共の町にいた頃まで戻っていた」

 

その原因は恐らく僕等がこの世界にやって来た事だろう。

そうか、だから彼女のLOVEが……

 

「だから私は国ごとその町の人間を殺し尽くした。そしたら他の国からも追手が掛かってな。身を隠す為に仕方なく此処に降りてきたんだが……ふふ、お陰でおまえという障害を取り除く機会に恵まれた」

 

「っ…………君が今までどれだけ酷い目にあってきたのかが解るなんて簡単には言えない。けど人間もモンスターも皆悪い奴ばかりじゃないと思わないかな」

 

人間もモンスターも間違いは起こす。

けどその理由は心の弱さから来るもので、周りが支えてあげればきっと改める事が出来るものなんじゃないかなと僕は思う。

 

けれどそれはやっぱり簡単な事じゃ無くて、だから争いは簡単には無くならないのだとも思う。

 

「くく……くっ……あはははは!」

 

「!」

 

「おまえはどうやら考え方までガキの様だな!」

 

その直後、キャラは僕に刺さったナイフを左手で引き抜くとそのまま自分の右腕を二の腕から切り落とした。

 

「なんて事をっ!」

 

「ふんっ、貴様を殺せるなら右腕の一本くらい安いものだ!」

 

そう言ってキャラは僕から距離を取ると斬撃を飛ばして来る。

それは僕が尻餅を着いた事で運良く避けられた。

 

フリスクが身体を張って作ってくれた機会を活かせなかった……僕では彼女の攻撃を避けきる事など出来やしない。

もうロードし直すしか……いや、でも彼女の記憶が残るなら状況を悪くするだけかも知れない……どうしよう。

 

「なんだ、おまえの切り札はあんな安い説得だけか?随分と呆気ない幕切れだな?」

 

キャラはそう言ってつまらなそうに斬撃を無数に放ってきた。

この状態からじゃ躱す事も出来ない。

僕は直ぐに訪れるであろう痛みを受け入れる覚悟を決めて、次に託す事にした。

 

……………………?

 

しかし、いつまで経ってもその衝撃はやって来なかった。

僕がゆっくりと目を開くと、辺りは真っ白な骨に囲まれていた。

 

「サ……ンズ?」

 

「おまえさんの親友とやらから託されちまったんでな。奴の欠片だけで何処までやれるかは分からねぇが……時間を稼がせて貰うぜ」

 

そう言ってサンズはキャラの斬撃に合わせる様に骨を飛ばして相殺しきった。

 

「今更骨が出しゃばった所で何が出来る!」

 

キャラはサンズへと一直線に斬り掛かるがそれを易々と躱し反撃とばかりに四方から彼女目掛けて骨を飛ばす。

煩わしそうに躱して行く彼女だったが、その内の一本が右肩を掠めた瞬間に顔色が一変した。

 

「貴様ぁ……何をした!」

 

「はは、どうやらおまえさんはオイラの事なんか眼中に無かったらしいな」

 

キャラが憎らしげにサンズを睨み付けている理由は、恐らく彼の能力の意味を理解したからだろう。

僕は知らなかったけれど親友が彼の能力をこう呼んでいた。

 

『業の報い』と……。

 

「オイラの攻撃は相手のKR値、つまり業の深さに比例して追加ダメージを与える事が出来る。おまえさんみたいなクソガキを地獄に突き落とすにはうってつけの能力って訳だ」

 

「ちっ……今の私には無視出来ない能力という事か。ならば望み通り貴様から葬ってやろう!」

 

そう言ってキャラは再度サンズへと駆け出した。

目にも止まらぬ速度で振り抜かれたナイフをサンズはショートカットで回避し先程と同じ様に反撃を行おうとした直後、既に二刃目を振るっていたキャラによって中断され、彼はもう一度ショートカットを使い距離を取った。

 

「ちっ、オイラの行先を読まれたってのか?」

 

「ああそうだ。これこそが私の決意の使い方だ!」

 

サンズの疑問にそう答えた彼女は既に彼の目の前でナイフを振り翳していた。

 

「クソったれが!吹っ飛──なにぃ!?」

 

「サンズっ!!」

 

辛うじて反応したサンズが左目を青く光らせキャラを床に強く叩き付けた。

だが地に伏した筈の彼女はいつの間にか手に持ったナイフでサンズの事を切りつけていた。

 

「モンスターなどに私の決意が敗れるものか」

 

「サンズっ!!」

 

どうしよう、サンズ……サンズが……!

 

「さて、邪魔者は後はお前だけだ人間」

 

キャラが近付いてくる。

フリスク…………フリスクッ!

返事は無い……サンズも死んでしまった……どうすれば……どうしたら。

 

…………リセット……いや、ロードをすればサンズもフリスクも無事だった時まで戻れる。

きっとキャラの記憶も引き継がれるだろうけど今よりはマシなはずだ。

 

僕は彼女が来る前に世界を巻き戻す決意を固めようとした。

その時……

 

*あきらめるな!

 

*ケツイを ちからに かえるんだ……!

 

僕の心に聞き覚えのある言葉が響いた。

フリスクの声よりもずっと低く厳かな声……だけど僕が諦めそうになった時に何時も支えてくれた優しい声。

 

誰が何処から呼びかけているのかも解らないけど、この人の励ましが僕に勇気をくれるんだ。

 

わかった、逃げたりしないよ。

フリスクもサンズも僕を信じてくれたんだから僕はそれに答えなきゃならない!

 

「フリスク、サンズ……見てて……僕は負けないよ!」

 

「今更だな、これで終わりだ」

 

拳を握り立ち上がろうとする僕の前に来ていた彼女はそう言って頭上に掲げたナイフを僕へと振り下ろした。

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