Friskを捕らえた黒い何かは徐々にその姿を現す。
「ガスター……まさか貴様から出てくるとはな」
「おっと、私は君達と交渉しに来たのだ。彼を捕らえたのはその間の安全を確保する為に過ぎない」
ガスターはそう言って自身の身体からFriskの顔だけを出した。それでもキャラは拳を握ったまま一部の隙もなく様子を伺っている。
だが、その二人に割って入る様にパリスが一歩前に出てきた。
「ガスター、話を聞こう。君の要望はなんだい?」
「なに、分かっているのだろう?君達がこれ以上他の世界線に干渉しない事だ。そうすれば私は彼らに干渉しない事を誓おう」
「皆をこの場所に留めておきたいって訳か」
「理解が早くて助かる。どうだね?君達にとっても悪い話ではないと思うがね?」
いつかフリスクが話していた事と同じ要求にパリスは少し考える素振りを見せるも、次の瞬間にはガスターの目の前に飛び込みその顔目掛けて掌底を突き出していた。
ガスターは咄嗟に後ろに下がり攻撃を避けるも、パリスはその隙にFriskを奪い返す。
「残念だけどその話には乗れないね。どうやらその
「ふむ、やはり一瞬すら抑えておけないか……だが良いのか?確かに君達は排除しなければならないが、そこの彼女達の安全は守られるんだぞ?」
「その必要はない。貴様が諦めれば良いだけだからな」
背後から聞こえる声にガスターは振り向こうとするがその身体は金縛りにあったように微動だに出来なかった。
「なんと……君達に私を諦めさせる事が出来るとでも?」
「勿論そのつもりだ。だがその前に……」
キャラはガスターの後頭部を掴むとそのまま地面に全力で叩き付けた。
「ぐぅっ……!」
「貴様に好き勝手に振り回された私の怒りを思い知るがいい!」
今度はそのままガスターを頭上へ放り投げるとポーチからおもちゃのナイフを取り出しガスターに全力で投げ付ける。
「ぐっ……」
「まだくたばるには早いぞ」
投げられたナイフがガスターを天井に突き刺した所で今度は空の銃に魔力を込めてガスターブラスターの様な極大レーザーを放つ。
それでもキャラは満足していない様子で今度はバレエシューズを履いて高く飛び上がり、自由落下するガスターの背に踵落としを見舞いそのまま地面に強く叩き付けた。
そして最後に既に満身創痍に見えるガスターの上に着地すると、取り出した本に魔力を込めて呼び出した蜘蛛の糸でガスターを簀巻きに仕上げ身動きが取れないようにした上でダガーナイフを首元に突き付けた。
「ちっ、死んで逃げられては困るからな。貴様にはこれをやろう」
そう言ってキャラはポケットから取り出したモンスターのあめを一粒だけガスターの口に放り込む。
「ぐっ……う……ふ、ふふ……力に任せたやり方で私を丸め込めるとでも……?」
今にも力尽きそうな状態にも関わらず不敵な笑みを浮かべるガスターをキャラはヒールで踏みつけて答える。
「本当は直ぐにでもブチ殺したい所だがな」
「フフフ……ならば殺せばいい。例え今私を説得出来た所でもう遅いのだ。私の計画は既に最終段階まで来ているのだよ」
「なに?それはどういう事だ!」
キャラは語句を強めながらナイフをガスターに押し付けて問いただした。
だがガスターは依然笑みを崩すことなく続ける。
「私が
「なんだ、そんなもの見つけ出して阻止すれば──」
「それも不可能だ。何故ならアレは既に私はおろか観測者にすら知覚出来ない段階へと入っているからな。君達は抗う事も出来ずに
「馬鹿なっ、幾ら貴様とて観測者に干渉出来るものか」
「干渉ではない。私を含め知覚している者が居なければ観測者へ情報は伝わらんのだ」
彼の話を聞いていたパリスは共有した記憶からその話が事実であると理解し苦い顔を見せた。
それでもパリスは記憶の一つから望みがゼロでない事を把握していた。
「だが、奴のことを知覚しうる存在だけは私の手で消しておかねばならんのだ。なぁジェノサイダー……いや、今はパリスと言っていたかな?」
パリスはその切り札をいつ何処で切るかを考えていたのだが、その考えを既にガスターは見抜いていた。
「……やっぱりそうなんだ。あれには彼の決意が組み込まれているんだね?」
「概ね正解だ。だから彼が目覚める前に私は君を殺す。勿論やり直しなんてさせないさ」
そう言うや否やガスターの体は突然輝きだした。
「うっ……ぐぅ!」
「キャラ!?」
更にその光はエネルギーを伴って激しい衝撃波を放ちガスターを踏みつけていたキャラを壁の方まで吹き飛ばす。
「フハハハハッ!今の君を殺すにはこれくらいの準備は必要だろう?」
「おいおい……どうしてこう化物ばかりがオイラの周りに集結するかねぇ?」
衝撃波を避けるためにショートカットで何処かへと離れていたサンズが目の前の光景をみてそう愚痴をこぼすがそれも仕方ない話である。
何故ならゆっくりと立ち上がったガスター
その無数に漂う手をなんと天使の羽のように展開し六色の輝きを見せながら羽撃かせていた。
「さて、時間も惜しいのでね?先ず君には死んでもらおうか」
そう言ってガスターは紫色のソウルを輝かせ全員の足を封じる。
「くっ……まさか全ての世界線から人間のソウルを!?」
「そういう事だ、幾らイレギュラーである君とて叶うまい」
「ガスター、それでは君の願いに反してるんじゃないかい?」
「フフ、無用な心配だ。核さえ残れば世界線など幾らでも増えていく」
ガスターは続けて無数の水色のレーザーをパリスの体に浴びせる。
「サンズっ、彼を頼む!」
「えっ、うわぁぁぁ!?」
「は?ちょ、おまっ!?」
パリスは咄嗟に脇に抱えていたFriskをサンズに放り投げて彼が巻き込まれるのを避けたが、話し合いで少しでも時間を稼ごうという作戦は今のガスターには効果が無かった。
「なに、心配する事はない。君の大切なFriskも君より後に消えるだけだ」
「彼は僕ほどイレギュラーじゃないんじゃないかな?」
「はは、面白い事を言う。自身のソウル一つで君をあの世界線へと送った彼がイレギュラーではないと?私としては彼こそが真の意味でイレギュラーな存在だと踏んでいるよ」
ガスターはパリスの周りに黄色のソウルと橙色のソウルの手を配置しながらそう答えた。
そして更に全方位にガスターブラスターを配置し、その周囲を緑色のバリアで囲った。
「さて、これだけ用意すれば君を殺せるかね」
「さあ?もしかしたら耐えられるかもね?」
「時間を稼ぎたいのだろうがそうはいかないさ」
パリスの挑発はガスターに見破られており、これ以上の時間稼ぎは望めそうに無かった。
「ではさらばだジェノサイダー。もう二度と会うことは無いだろう」
「だから僕はパリスだって────」
パリスが言い終える前にガスターは黄色の魔力弾、橙色のレーザー、そしてガスターブラスターを一斉に放ちパリスを視界から消し去った。
*……こッチだヨ