genocidertale   作:上新粉

36 / 41
*…………ヤット君ニ会えた。


GENOCIDER TALE~END~

 僕は今肉体をパピルスに任せて意識と僅かなソウルの欠片だけで何もない空間を一本の糸を手繰り寄せる様に進んでいる。

何処からか感じる彼の僅かな気配だけを頼りに漂っていると不意に相手の方から声が掛かった。

 

*初めまして、フリスク君。

 

初めまして。君の名前を教えてくれるかい?

 

*僕の名前はクリス。僕は君にずっとお礼が言いたかったんだ。

 

お礼?君は他の僕とは会っていないと思うけど、違ったかな?

 

*それは間違いないよ。僕がお礼を言いたいのは僕が居た世界の皆を救ってくれたことさ。

 

皆……あ、そうか!確か君はあの世界で最初に落ちてきた人間なんだっけ。

 

*そういうことだね。だからありがとう、本当に感謝してるよ。

 

君は彼に協力してる訳じゃないのかい?

 

*いや、僕は進んで彼に協力してるよ。あの実験が皆にどんな影響を与えるかも理解した上でね?

 

どうして……って聞いても良いかい?

 

*あれ?僕の事は共有されてないのかい?

 

うん……実験自体に不備があったか、彼が妨害してるんだと思う。

君の事はあまり僕に伝わっていないんだ。

 

*そっか…………僕はね、根本的には君やFrisk君と同じ願いだよ。

 

僕達と?

 

*そう、ただ一つ違うとすれば僕は観測者やプレイヤー達に干渉しない形でそれを行っている事だ。

 

それが今の君の状況に繋がるのかい?

 

*そう、僕はあくまでも落ちてきた人間、それとプレイヤーの良心に訴えかける形で平和な世界にしようとしてきたんだ。

 

でもそれじゃあ……

 

*そうだね、僕の言葉が彼らに届かない事もあるしそれによって救われない世界もある。

 

*現状と然程変わらない。でもそれは仕方ないと僕は思っていた。

 

仕方ない?一体どうして……。

 

*何故ならこの世界はプレイヤーや観測者達あっての世界なんだ。

 

*そんな彼らの決意を妨害し排斥するような事をすれば世界はたちまち創造神イビトによって終焉を迎えてしまう。

 

確かに世界が無くなってしまっては元も子もないけど……でも。

 

*……本当の君はとても優しいんだね。けどこればっかりは駄目なんだ。

 

そうなんだ……なら僕も手伝うよ。

 

*ふふ、ありがとう。でも残念だがこの役目は譲れないな。だから後の事は僕に任せて君は君に戻ると良い。

 

僕に……それは出来ないよ。

僕はもう元の僕が解らないんだ。

 

*それなら心配要らないよ。君はまだ自分を持ってる。今ならまだ君を掬い上げる事が出来るよ。

 

本来の僕を……?本当にそんな事が出来……るの?

 

*今ならまだね?

 

僕は……ぼくは……戻りたい……けど……そしたら君はまた一人に……

 

*はは、僕は一人じゃないよ。

 

*ま、ちょっと一人で暴走しちゃってる相棒に灸をすえてやらなきゃならないけどね?

 

クリス…………

 

*ささっ、僕がちょっとおまけしてあげるから。君は君を待ってる彼の元に帰るといいよ。

 

ありがとう……クリス、僕に手伝える事があればなんでも言ってよ。

 

*そうだねぇ……じゃあ一つお願いしようかな?

 

*君達の世界の皆を宜──しく────ね──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「邪魔が入ったか……だが次こそはっ!?」

 

何だか長い夢を見ていたような不思議な感覚だ……。

そんな風に感じながら僕が辺りを見渡すとそこには壮絶な光景が広がっていた。

背中で唸っている元の姿に戻ったパピルス、正面にはそっぽ向いてるのでこっちの様子に気付かずに僕の胸に手を当てているキャラとパピルスを抱きかかえるサンズ。

そしてその先では黒い触手みたいに蠢く影に貫かれたFriskと背後から木の棒で逆袈裟で切り裂かれるガスター、そして切り裂いている黄色いボーダーの緑シャツを着た僕より二回り程身長の高い少年。

 

あまりの情報量の多さに僕は返って冷静になっていた。

僕は落ち着いてキャラの腕を叩いて声をかけた。

 

「キャラ、こっちは大丈夫だからFriskを助けて欲しいな」

 

「ん、ああ……あぁ!?なっおまえいつの間に!」

 

「えと、悪いけど先にFriskの事を頼んで良いかな?」

 

「あ、ああっ。それもそうだな……」

 

キャラには悪いけど今の僕とパピルスには怪我はない様だし、Friskの方が見るからにまずい状況だからリアクションは後回しにさせて貰うよ。

 

僕はパピルスの上からどいて未だ動揺の色を隠しきれないガスターへと近寄る。

ある程度近付くとガスターは僕に気付いたのか、敵意剥き出して僕に黒い触手のようなものを伸ばしてきた。

だがそれは僕の元に届く前に彼によって悉く切り落とされる。

 

「貴様が……連れてきたのだな?」

 

ガスターの問いに僕は首を横にふる。

 

「彼自身の意思だよ。僕達を消すためとは言え君はやり過ぎたんだ」

 

「なっ……ありえん!奴はシステムに組み込まれただけで主導権など握れるはずが……」

 

そんなガスターの疑問に答えるかの様に彼は口を開く。

 

「ギジジンカクプログラム……DELTA-K0103……Codename:KRIS……解ったかいガスター?」

 

「ク、クリス……!?まさかお前まで私の邪魔をするつもりか!」

 

「ガスター、話はもう済んだんだ。今の彼女にイレギュラー性は認められない」

 

「なに……?……お前は何も解っていない。ジェノサイダーの異常性だと?そんなものは前口上に過ぎん!」

 

そう言ってガスターは再びFriskへ触手を伸ばすもクリスと僕によってあっけなく阻まれた。

 

「私が本当に危惧しているのはもう一人の人間、Friskの方なのだ!」

 

「Friskが?それは何かの間違いじゃないか?」

 

僕はガスターにそう尋ねた。

確かに彼の決意は僕以上だけど、彼は虫一匹殺そうとしないし彼一人では世界に致命的な影響を及ぼせるとは思えない。

 

しかし彼はそうは思わなかったようだ。

 

「Frisk君か……確かに彼は世界を崩壊に導くだけの力を持っている。それは僕も認める所だ」

 

「クリス……?」

 

「フリスク君、きみには納得し難い話かも知れないけどこれは事実なんだ」

 

Friskが世界を崩壊に導くなんてにわかには信じられない。

だが彼が話を進めていくにつれ、それは段々と真実味を帯びていった。

 

「まず君を別の世界線へ飛ばした事についてだけど、君が会った中で他にそんな事が出来る存在を思い浮かべてくれ」

 

それはつまり世界線を越える事が出来る存在という事だ、となると……。

 

「ガスターとキャラ……くらいかな、他の皆はあくまで彼女達の力で越えてるだけだよね」

 

「そう、そしてその二人でさえ飛ばす際に自分以外のソウルの力を用いているが彼は自身の決意のソウル一つでそれが出来るんだ」

 

「確かに……けど逆に言えば他にソウルがあれば彼じゃなくても世界線を越えられるって事じゃないか!それだけで彼が危険だなんて」

 

「それだけならね?だが問題はそんな事が出来るほど彼の決意は計り知れない物だと言うことなんだ」

 

彼の決意の強さについては僕も思うところはある。

だけどそれもあくまで僕や彼らと比べて頭一つ抜け出ているだけだと思っていた。

しかしその予想は大きく裏切られる事となる。

 

「僕も初めの内はどうにか出来ない程じゃないだろうと考えていた……だけどLOVEを得れば君の決意ですら7つのソウルを持ったガスターを一撃で倒せる程の決意なんだよ?そんな君を上回ってる時点で充分イレギュラーなんだけど……更に彼はLOVEを得る事無くそれ以上の事をやって退けた」

 

「それ以上の……事?」

 

「そうだ。と言ってもこれは今さっきガスターから共有した情報で僕が直接見たわけじゃない。だけど……凡そ数十億ものソウルを手にしたガスターが居るにも関わらず彼はセーブとロードの力を行使したそうだ」

 

「ま、まさか…………?」

 

クリスの言った事が一瞬理解出来なかった……いや、理解することを拒んだ。

何故なら僕……いや、パリスがあのガスターと相対した時、絶対に勝てない事を悟ってしまっていた。

あの時は僕以外の僕の記憶があったからどうにかあの場から抜け出す事が出来たが、ロードやセーブはおろかキャラが行っていた肉体のみのロードですら行えなかったのだ。

クリスの言っている事が事実ならそんな正真正銘の化物すら上回る決意をFriskが持っている事になる。

もはや知識なんか無くても解るほどに危険な存在である事が解ってしまった。

 

「分かったかい?つまりこの世界(UNDER TALE)は彼の気分一つで呆気なく終わりを迎える。それでも君は彼を生かしたいと願うかい?君は世界の命運を背負うだけの覚悟はあるのか?」

 

「僕は……」

 

Friskがどれだけ危険な存在なのか思い知らされた。

彼がその気になったら僕に止める術は無いのかも知れない。

それが即ち世界の崩壊に繋がるという事も。

 

「けど……だけど……そんな事は関係ない、彼は僕にとって掛け替えの無い存在だ!彼と居るためなら僕は例え全てを敵に回そうと構わない!!」

 

それが例え彼自身が望んで居なくたって知った事か!

彼だって我侭なんだから僕がそれ以上に我侭だって良い筈だ!

 

「…………そっか、わかった。じゃあFrisk君の事は君に任せたよ?」

 

「えっ……?」

 

予想以上にあっさりと引き下がった彼に僕は思わず言葉を漏らした。

だが彼は特に気にする様子もなくFriskに近付き、彼の傷を塞いでいく。

 

「──これでよしっと。ん~?どうしたんだい?」

 

「え、いや……だって……いいの?」

 

「良いわけないだろう!クリス!お前は何を考えて──うぐっ!?」

 

当然クリスの提案にガスターは普段の余裕のある大人びた雰囲気を崩してまで猛反対してきた。

だがそれをクリスは鬱陶しそうに木の棒をガスターの腹部に突き入れて黙らせた。

 

「全く、君は気にし過ぎなんだよ。Frisk君の願いは彼女と生きる事なんだから彼女が居れば何も心配することなんてないってば」

 

「うぐぐ……しかし……イレギュラーを放置するなど……もしこの事がプレイヤーに伝われば……」

 

「それも大丈夫だろ?知覚するものが居なければ彼らの目には止まらない、そうだろ?」

 

「いや……だが……」

 

「もう時間切れだ、帰るよガスター」

 

「待てクリスっ、まだ私は認めたわけじゃ──」

 

「じゃあまたね?Frisk君の決意があれば君達も問題なく()()()まで戻れるからね。後は頼んだよフリスク?」

 

最後まで反対の意を示すガスターに業を煮やしたクリスは、ガスターを引きずりながらそう言い残して目の前から去っていった。

と、その時。渦中の人物が漸く目を覚ました。

 

「んぅ……あれ……フリスク?僕ら死んじゃったの?」

 

「Frisk……大丈夫、皆生きてるよ」

 

「え……あれ……でも…………ほんとに!?本当にフリスクなの!?」

 

「わっ!?」

 

段々と頭が冴えて来たのかFriskは飛び起きて僕の両肩を掴んで聞いてきた。

僕は彼が元気そうな事に安堵しながら満面の笑みで答えた。

 

「うん、()()()()()

 

「あ……ああっ…………本当に……フリスクなんだね……おかえり…………おかえりフリスク……!」

 

「わわっ!?いきなり抱きついて来ないでよっ!」

 

流石に心の準備がまだっ…………ふぅ、全く仕方ないなぁ。

声を震わせて涙ぐむFriskを僕は抱きしめ返すと彼が泣き止むまで優しく背中を擦ってあげたのだった。

 

 

 

 




*……どうするつもりかね?

*なに、後は観測者達(みんな)にはこうやって伝えておけば大丈夫だよ。

*【この物語はフィクションであり実在する人物・団体とは関係ありません】ってね?

*…………はぁ、好きにするといい。こっちはこっちで手を考えておく。

*はは、悪いね?

*ああそうそう、観測者の皆に報告だ。

*ENDなんて紛らわしい事この上ないサブタイトルだけど彼らの物語はもう少しだけ続くから良かったら最後まで付き合ってくれるかな?それじゃあまた後でね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。