*うぅ……そうだけど、別にわざわざ言わなくても良いじゃないかぁ。
*ふっ、私はつまらん背伸びをしてる奴を見てると茶化したくなる性分でな?
*も~性格悪いなぁ。それじゃあアズに嫌われちゃうよ?
*きさま……しにたいらしいな?
うぐぅ……僕達が泣き止んだ後、キャラからフライパンで頭を叩かれるという不当な暴力を受けた僕は頭をさすりながらクリスから聞いた
「そっか……プレイヤーに創造神かぁ。観測者さん達以外にも僕達の手が届かない所にはそんな人達が居るんだね……」
「うん、だからやっぱり君の願いは僕には叶える事が出来なかったんだ……ごめん」
本当は僕にも何か出来たのかも知れないけれど……僕はその道を進む事が出来なかった。
クリスにまだ間に合うと言われた時に僕は此処が最後の分岐点である事を理解した。
もうFriskに会えなくなる……少なくともフリスクとしては。
その事が頭に過った途端に静まっていた筈の僕の心が形容し難い恐怖に打ち震えた。
今思えばクリスが僕にまだ間に合うと言ったのは僕自身の気持ちがまだパリスに残っていた事を見抜いていたからかも知れない。
そんな彼のおかげで僕はまたFriskに会うことが出来たけれど……代わりにFriskの願いを犠牲にしてしまった。
「僕にもっと覚悟があれば……」
だけどFriskは頭を下げる僕を今度は優しく抱きしめて言ったんだ。
「フリスク、君が謝ることなんて無いよ。僕の方こそごめん」
「なん……で?君こそ何も謝ることなんて無いじゃないかっ」
君は取り返しが付かなくなる前に僕を止めてくれた。
一方的に君を痛めつけた僕に恨み言一つ言わずに僕に全てを委ねてくれた。
なのに僕はその期待に答えられなかった……なのに……なんで……。
それでも彼は首を横に振って続けた。
「フリスク、ずっと負担を掛けてしまってごめん……僕は我儘で酷い人間だった。君と一緒に居る為に此処まで来たんだって事を君を一度失うまで忘れてしまっていたんだから」
「Frisk……」
「だから……君が帰って来てくれて……本当に……よかっ……た……」
良かった……一緒に居たかったのは僕だけじゃなかったんだ。
心の奥底で燻っていた不安が解けていく感覚に僕は何度めか解らない安堵の息を吐く。
そして再び泣き出しそうになっている彼の頭を撫でながら僕は彼に言葉を返した。
「ありがとう……僕を待っていてくれて」
僕は未だ枯れぬ涙をまた零しながら互いに強く抱きしめ合った。
……今度こそ落ち着きを取り戻した僕達はこれからの事について話し始める。
「クリスが言うにはFriskの決意があれば僕達が初めて会ったあの時間軸まで戻れるらしいけど」
「リセットみたいなものか。だが私やアズリエル達はどうなる?」
そこが問題だ。
それぞれの世界線に戻れるのか?それとどのタイミングに戻るのか?
そういった諸々の問題が解決しない事には実践する訳には行かないだろう。
だが、そんな事を知っているのは……
『ヨビマシタカ?』
「「!!?」」
僕達が頭を悩ましている所に不意に響いた機械音声に慌てて振り向くとそこにはメタトンを連想させるような四角い金属ボディの機械がバランスを取るように左右にゆらゆらと揺れていた。
「き……きみは?」
「ワタシハフェイタルエラーデバッガーシステム、イレギュラーノハイジョヲモクテキトシテソウゾウサレタソウチデス。カンソクシャサマニハ【謎の機械】ヤ【例の機械】ナドトヨバレテオリマス」
「例の機械……?まさかお前が観測者が気にかけていた存在か」
どうやらキャラは心当たりがあるのかポーチからダガーナイフを取り出して警戒している。
僕は不思議な既視感を覚えつつも念の為、同じ様にダガーナイフを構えた。
だけど僕の記憶が正しければあの機械の中には……。
「ハハハ、そノ通リさ。チョっとマってて。素体構成プログラム起動……」
「え……?」
僕の心を読んだかのように答えを返すその機械は何かを呟くとその姿を徐々に変えていった。
そうして完全に姿が切り替わった時、そこに居たのは先程ガスターを引きずって消えていったクリスであった。
「や、さっきぶりだね?Frisk君とは初めましてだね」
「え、っと……はい」
「なんだただのフリスクか」
「キャラ?姿が変わる=僕じゃないからね?」
僕のは人の身体を借りてただけ……ってそっちの方が良くないか。
まあそれは兎も角として、彼が来てくれたのは恐らく今の状況を把握しての事だろう。
だから僕は早速彼に聞いてみることにした。
「ねぇクリス、僕らが元の時間軸に戻るとしてさ──」
「そうだねぇ、その辺りは正直彼の決意を以てすれば大体の事は可能だろうさ」
「……質問が解ってても言葉で話そうよ」
「はは、そうだね。ごめんごめん」
彼が割り込むように答えてしまったが、どうやらFriskの決意はそれくらい簡単にやってのけるらしい。
僕はFriskの決意の強さを改めて認識し思わず喉をならす。
「どうしたんだい?」
「なんでもないさっ」
そう、なんでもないんだ。
彼なら大丈夫だと信じている。
それに彼がそれを望むのなら僕は最後まで共に居る覚悟はもう決まっているのだから考える必要もない。
「…………ふふっ」
「?」
「ま、そういう事だからさ。あ、そうそうFrisk君。僕からも一つ頼んでも良いかな?」
「へ?えと……なんでしょう」
「君達が救ってくれたこの世界をそのままにしてくれないか?」
クリスはそう言ってFriskに頭を下げた。
「あ……その……はいっ!」
Friskは突然の出来事に動揺していたが、クリスの思いを受け止めて力強く答えた。
それを聞いたクリスはゆっくりと頭を上げて彼に笑顔を返した。
「ありがとう!これでキャラちゃんの笑顔も守られるよ」
「へ?キャラ?」
「そ、君達のお蔭で彼女は漸くLOVEじゃなく
そっか……彼女にも居場所が見つかったんだね。
僕はママと幸せそうに眠る彼女の姿を夢想し思わず笑みを溢した。
「ふんっ!」
「痛っつ!?」
だが同じキャラとしてはそんな僕の姿が気に入らないのか、落ちていた石を拾い上げて僕に投げつけてきた。
「ちょ、石を人に投げつけたら危ないでしょ!?」
「うるさいっ、貴様なんぞさっさと帰れ」
「あんなに一緒に居たのに酷くない!?」
「あはは、女の子同士仲良くしなきゃ駄目だよ?それじゃあ僕も今度こそ帰るよ、じゃあね!」
僕がひたすら石を避けてる内にクリスは言いたいことを言ってさっさと帰ってしまった。
せめて仲裁してからでも良いのに……
僕は心の中でクリスに愚痴りながら彼女を宥めるのであった。
彼女の近くにあった小石が大方こちらへ移った辺りで漸く彼女からの弾幕は終わりを迎えた。
といっても僕がちょくちょく余計な事を言わなければもう少し早く終わったんだろうけどね?
「はぁ……はぁ……わかった、もう余計な事は言わないし考えないよ」
「はぁ……はぁ……それで良いんだ。分かったらお前達ももう帰ると良い」
「そうだね……皆と少しだけ話したら帰るよ」
Friskはどうやら僕がキャラと石合戦(一方的)をしている間に皆と話していたらしく、今は息を切らせているキャラにスパイダーサイダーを手渡している。
僕は先ずはキャラの後ろに居る二人に声を掛けた。
「アズリエル、フラウィー。君達にも本当に酷い事をしてしまった。本当にごめん」
「僕は……今でも君を赦せない。君だって色々抱えていた事はなんとなく解ったけど……やっぱり今更仲良くは出来ないや」
アズリエルはそう言って困ったような笑みを僕へ向けた。
和解出来ずに別れるのは悲しいけれど、やっぱり仕方ない事なんだ。
彼にとって僕は親の敵であり平和を崩した張本人なのだから。
「うん……そうだね。ごめんねアズリエル」
「そうだそうだ!お前が幾ら反省したって僕はお前のした事を永遠に忘れないからなジェノサイダー!」
「フラウィー……ありがとう。僕の事を忘れないで居てくれるんだね」
「は……はぁ!?ち、ちげーし!お前なんか直ぐに忘れてやるからなバーカバーカ!」
フラウィーはそんな捨て台詞を吐いて地中に潜っていった。
僕はそんな彼の様子をみてふっと笑みを溢す。
ありがとうフラフィー。なんだかんだ言っても君は僕に付き合ってくれたし、キャラを此処まで連れてきてくれた。
最後まで素直じゃなかったけどそんなところも僕は好きだったよ。
僕は彼に感謝の念を伝え、次にスケルトン兄弟の所へ向かった。
「やあサンズ、君にも本当に苦労を掛けたね」
「全くだぜ。本当に骨使いの荒い奴だよお前さんは」
「はは、返す言葉もないよ。だけどありがとう。君の協力が無くても今の結果には辿り着けなかったよ」
「はっ、そうかい。そりゃ骨を折った甲斐があったってもんだ」
あはは、彼のジョークも今なら笑える気がするよ。
「後は、まぁ……オイラからもお前さんには感謝しなきゃならならねぇな」
「サンズが僕に?」
「ああ、沈んじまっていたオイラ達の世界を救い上げてくれてありがとな」
「そのお礼ならFriskに伝えて欲しい。僕は彼とパピルスの為に動いただけだからね」
「それでもだ……だからな、お前さんのLOVEについては気にしないでおいてやるよ」
そう言ってサンズは白い瞳孔を消し深淵のような眼窩を映して笑って見せた。
僕は彼の言葉を聞いてホッと息を吐いてお礼を述べる。
「ありがとうサンズ、そうしてくれると助かるよ」
「ま、他のオイラがどう反応するかまでは知らないけどな?」
ははは……まあ、それに関してはその時になってから考えるとしよう。
僕は苦笑いを浮かべながらパピルスの方へ向き直る。
「パピルス、記憶の方はどうだい?」
「あ~、実はもうあんまり覚えていないのだ」
「まあそっか。でも色んな記憶があっても大変だからね。それにどの世界でもパピルスはパピルスだから何も心配は要らないよ」
「うむっ、それもそうだな!俺様はどの世界でもグレートだから記憶がいっぱいある必要など無いのだ!」
ふふふ、やっぱり彼と居ると元気を貰えるよね。
あ、そうだ!元の世界の彼は流石に僕の事を覚えてないかも知れないし今のうちにパピルス成分を補給しておかなければ!
「パピルス、最後に一つ頼みを聞いてくれないかい?」
「どうした?なんでも俺様を頼るがいい!」
「あの……ね?僕を抱いて欲しい、な?」
「「……っ!!?」」
その瞬間、場の空気が変わった。
全員の視線が注目する中、真っ先に声を上げたのは勿論サンズだった。
「おいてめっ、あんま調子乗んなよ!部屋でした約束を忘れたとは言わせねぇぞ!」
はははやだなぁ。僕が約束を忘れている訳無いだろう?
僕がパピルスに変な事をしないなら僕の安らぎを邪魔しない。
だからサンズ、今は君こそがその約束を破ろうとしているんだよ。
何故なら…………
「おおそうかっ!やっぱり貴様も寂しいんだな!案ずるな……俺様もだからなぁぁぁぁぁぁ!!」
そういってパピルスは号泣しながら僕を抱き上げるとその長い腕で確りと抱きしめてくれた。
「ありがとうお兄ちゃん、僕が寂しく無くなるまでこのままでいてほしいな?」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!俺様もずっとこうしていたいぞぉぉぉぉぉ!」
「……このガキ」
ははははは、何を勘違いしたんだろうねぇ?
僕はパピルスに抱きしめられる心地よさとサンズを出し抜いた優越感で至福なひとときを過ごした。
……まぁ、その後で顔を赤くしたキャラとの石合戦(一方的)第二ラウンドが始まったのは予想外だったけどね。
……さて、いざ別れとなると名残惜しいものだけれど何時までもこうしている訳にも行かないからね。
僕はFriskの元に戻って彼と話し合いを始めた。
「Frisk、準備の方はどうだい?」
「うん……ええと、この世界は今のままで……キャラ達の世界はフリスクが来る前……で良いのかな?」
「そうだな、フリスクが作り出した世界は私達の記憶とは異なる世界だからな。強いて言えばアズの戻る時間軸を私が落ちてくる前にしてくれると助かるな」
「うん……複雑な心境だけど……やっぱりパパとママ居ない世界は嫌だな」
「解った。後は僕達だけど……」
Friskは意見を求める様に僕の方を見る。
僕は少しだけ考えてから2つの案のメリットとデメリットを彼に伝えた。
「結界を壊した後に戻ればママ達を地下から解放する事が出来る。ただその先の世界が幸せだという保証はない。結界を壊す前に戻れば少なくとも未知の苦難や恐怖が待ち受けている事は無いし不幸が訪れる事もほぼないかな?そのかわり未体験の喜びや楽しみも限られてくるけどね」
僕は実際の所そこまで外の世界にこだわりがある訳じゃない。
ただそれがママ達の願いだったから叶えたかったんだ。
けどFriskと一緒なら外の世界もまた見え方が変わるかも知れない。
だから僕は彼に任せる事にしたんだ。
そして彼は悩みに悩んだ末に遂に答えを出した。
「僕は君と……皆と……外の世界を生きたい!」
*ハウディー!みんな元気かな?
*此処まで読んでくれてありがとう!
*え?ガスターを殴り足りない?
*そうだね、結局僕は彼を殴れてないけど彼もきっと大変な立場なんだろうし赦して上げようよ!
*私は奴もお前も絶対に赦さんがな。
*キャ、キャラ?ほら、折角大団円なんだしさ……殺意を漲らせるのは止めない?
*……ま、それもそうだな。
*だがこんな中途半端な終わり方は認めんぞ。私達がどうなったかも解らないしな。
*だ、大丈夫だよ!物語中最大のメタ発言をさせてもらうなら次の話が後日談だからね!
*おお、世界観からして割とメタいこの物語の中でも未来の情報を持ってきたのは初めてだな。
*ほんとに良かったのか?
*……まあ、最後だし?