B組でヒーローアカデミア!   作:ジャンボどら焼き

1 / 2
始めましたヒロアカ。
一応自分なりに解釈はしていますが、何かアイディアがあればよろしくお願いします。



プロローグ:入試試験

 名前も知らない同い年の少年少女たちが共にバスに揺られ走ること数分。訪れたのは巨大なコンクリートの壁に囲まれた、もはや街と呼べるほどの大きさの()()()()()

 一人また一人とバスの乗降口から降り、グラウンドへと入るための入口へと集合する少年少女。人により差はあるものの、一様にして緊張の表情を浮かべている。

 

 それもそのはず。これから行われるのはとある高校の入試試験、しかも合否を左右するといっても過言ではないほどに大事な実技試験なのだから。

 試験開始までの時間、準備運動をするものや集中力を高めたりするものと、それぞれがベストなコンディションで試験に臨もうとしている中。

 

「ふー……やっぱり緊張するなぁ」

 

 スポーツウェアに身を包み、緊張を和らげるために小さく深呼吸するサイドテールの女子の名前は拳藤(けんどう) 一佳(いつか)

 

「大丈夫大丈夫、この日のためにちゃんと準備してきたんだから」

 

 自分へ言い聞かせるように呟きながら、胸のあたりをトントンと優しく叩く。

 受験をするにあたり事前から準備はしてきたが、やはり本番を目の前にするとわずかにだが、心の端っこに不安が顔をのぞかせてくる。

 

 少しでも緊張を和らげようと、拳藤が周りの受験者たちに目を向けたその時。ひらりと、風に乗せられた一枚の赤い紙が彼女の目の前へと落ちる。

 何だろう、と拳藤はその紙を拾い上げ確認すると

 

「……『斬』?」

 

 紙に書かれていたのはその一文字のみだけが書かれており、再び拳藤が首を傾げ紙に視線を落としていると。

 

「あーそこのサイドテール女子」

「ん?」

 

 自身の髪型ということもあり、ついその声に反応し顔を上げる拳藤。するとそこにいたのは自身と同じくスポーツウェアに身を包んだ少年の姿が。

 男子にしては珍しいポニーテールの髪型をした彼は、申し訳なさそうにしながら拳藤へと近づき

 

「拾ってくれてありがとさん。それ俺のなんだ」

「それって、この紙のこと?」

「そう、その紙のこと」

 

 拳藤から紙を受け取った少年は、腰につけたポーチへとそれをしまう。ちらりと見えたその中には、先ほどの紙と同じものが何枚も入っており、拳藤は不思議そうにそれを見つめる。

 そしてポーチへと紙をしまい終えた少年は「よしっ」と満足そうに笑みを浮かべ

 

「改めて、拾ってくれてありがとう。俺は文貫(ふみぬき) 字現(じげん)、お前さんは?」

「私は拳藤 一佳。別にたまたま目の前に来ただけだから、礼なんていいよ」

 

 快活に笑う文貫につられ、自身もまた笑みを浮かべる拳藤。

 

『はいスタートー‼︎』

 

 すると唐突にそんな合図が聞こえ、二人はもちろんのこと、周りの受験生の誰もが声の聞こえてきた方角へと顔を向ける。

 

『実戦じゃカウントダウンなんざねえんだよ! 際はとっくに投げられてんぞ⁉︎』

 

 なんとも雑なスタートコールだと、受験生たちは心の中で思うがすでに試験は始まっている。

 彼らは一斉に会場へと向かって駆け出し

 

「んじゃ拳藤、互いに悔いないよう頑張りましょうや」

「だね!」

 

 文貫と拳藤もまた、彼らの後に続きグラウンドへと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

「デヤァ!」

 

 ビルのそびえ立つグラウンドの一角。拳藤の”個性”により巨大化され、力任せに振り下ろされた平手がロボットを押しつぶす。

 

「ふぅ……これで50P!」

 

 ロボットが動かなくなるのを確認し、腕で汗を拭う拳藤。試験が始まりかれこれ6分が経過しようという頃、会場を動き回ったおかげでだいぶ疲労が溜まってきた。

 

 今回の試験の内容は『どれだけ目標の撃破できるか』というもの。1~3Pが振り分けられた三種のロボットを倒し、より多くのポイントを稼ぐのが目的。

 しかしロボットの数には恐らく限りがあるはずと拳藤は予想する。なのでこの試験で求められるのは単純な戦闘力だけではなく、機動力や情報力などの力も合格の(かなめ)となる。

 

(運良くロボットが固まってたから良かったけど、さすがにここからは今までのように上手くはいかないはず)

 

 情報力や機動力が別段ずば抜けているわけではない拳藤。ここから試験終了までの間、どうやってポイントを稼ぐのかを考えつつ会場を走り回る。

 幸い、と言えば良いのか。他の受験生の口にするポイントが自身よりも高くはない。

 

 新たなロボットを探すため足を進める拳藤だが、闇雲に動いて見つかるものでもなく。どうしようかと頭を悩ませていると。

 

「おーい、拳藤ぉー!」

 

 どこからか自身の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。この会場でその名前を知っているのはただ一人だけ。

 拳藤は周りを見渡しその姿を探すが、しかし如何してか姿が見当たらない。すると突如拳藤を影が覆い、ふと見上げると

 

「文貫!」

「よっ、さっきぶり」

 

 そこには宙へ浮かび、自分へ試験開始前と同じ笑顔を向ける文貫の姿が。

 自分に気づいたことで地面へと降り立ち、拳藤へと近づく文貫。

 

「結構急いでるんだけど、何か用?」

「いやね、ちょいと見かけたから声かけただけ、ってちょちょちょ待った待った!」

 

 この場を立ち去ろうとする拳藤を慌てて引き止める文貫。だが時間に限りがある以上、この場で無駄に時間を消費するわけにはいかない。

 そう目で訴えてくる拳藤に、文貫は相も変わらず笑みを浮かべ

 

「んな闇雲に走っても無駄に体力消費するだけでしょうが。一度気持ちを落ち着けなさいな」

「そんなことして言っても、私の”個性”じゃどこに何がいるのかわからないし。それに悠長なこと言ってる場合でも」

「別に”個性”が全てじゃないでしょ。ほら、よく耳を澄ませてみ」

 

 文貫にそう言われ耳をすませる拳藤。するとかすかにだが、遠くから爆音に似た音が聞こえて来る。

 

「爆音が聞こえるってことは、そこにターゲットが集中してると言ってるようなもの。あとはそこに向かえば、勝手にターゲット(あっち)から出向いてくれるでしょうよ」

「そっか、音でターゲットを引き寄せて」

「そういうこと」

 

 目標を捕捉し近寄るタイプのターゲット。つまり派手な戦闘が行われている場所に自然と集まるのだ。

 あれほどの爆音がなっているのだから、ターゲットの多くはあそこに向かっているはず。

 

「どこの誰だかはわからないが、あれだけ派手な戦闘ができるなんて相当な”個性”持ちでしょうね」

「というかゆっくりしてないで、わかったんなら早く行かないと!」

「おお、そうだったそうだった。ささっ、レッツゴー」

 

 

 

 

 爆音を目指して走ること1分と少し。目的地に到着した二人の前には、多数のロボットに囲まれながら戦闘を繰り広げる逆立ったベージュ髮の少年が。

 彼は迫るロボットを上手くかわしながら、手のひらから生み出す爆発で一体、または数体まとめて吹き飛ばす。

 

「なるほど、爆発の”個性”ねぇ。こりゃ強いし派手なわけだ」

「んなこと言ってないで、私たちもいくよ!」

「おうおう、こっちもやる気十分なことで」

 

 爆破の少年のおかげで集まったターゲットに向かって走り出す拳藤。近づいてくる彼女を捕捉したロボットは迎撃するが

 

『目標発見! ブッ殺ス!』

「できるもんならやってみな!」

 

 突き出された拳が突如巨大化。予想外の出来事にロボットはなすすべなく、一矢報いることもできずに戦闘不能に陥る。

『大拳』。それが拳藤の持つ”個性”の名前だ。能力は名前の通り『拳の巨大化』。シンプルだが強力かつ応用の効く”個性”だ!

 

 ”個性”を用い次から次へとターゲットを破壊する拳藤。だが試験も終盤で走り回り体力的にも限界が近づいており、わずかにだが集中力が途切れてしまう。

 

『隙ダラケ! マヌケメ!』

「しまっ──」

 

 背後から迫っていたロボットに気づいた時にはすでに遅く、迎撃しようにも間に合わないところまで来ていた。

 鉄の拳が振り下ろされ、拳藤を背中を殴りつける直前

 

「おいおい、女の子相手にそりゃいかんでしょう」

 

 突如振り下ろされたロボットの腕が三等分に切断。音を立てて地面へと落ちると砂埃を巻き上げる。次いで本体が斜めに切り裂かれ、上部分が滑り落ち、ロボットはその機能を停止させる。

 動かなくなったロボットの後ろからは、いつの間に用意したのか、棍棒のような武器を持った文貫がひょっこりと姿を現した。

 

「大丈夫だったかい?」

「うん、助かったよ……ありがとう」

「なに、紙拾ってくれたお礼をしたまでさ。それよりも、まだいけるかい?」

「うん、大丈夫」

 

 もう大丈夫。油断はしない、と拳藤は拳を握りしめて気合いを入れ直す。

 そんな彼女に文貫は笑みを向け、目の前に並ぶ幾つものロボットを見据える。

 

「そんじゃヒーローらしく、この場は共闘といきましょうや」

「オッケー、背中は任せたよ!」

 

 これまでよりも一際強い爆音を合図に、二人はその群れの中へと身を投じた。

 

「まずは俺が気を引いてきましょうかい」

 

 拳藤よりも早くロボたちへ肉薄した文貫は、あらかじめポーチから取り出していた灰色の紙を手にし

 

「この紙にはタネも仕掛けもございません」

 

『ブブ、ブッ殺ス!』

『目標排除、ハイジョ!』

 

 標的を文貫に絞ったロボット数体が襲いかかる。

 振り下ろされる鉄の拳を前に、されど文貫は慌てることなく紙を地面へ叩きつけると。

 

「まずは『壁』」

 

 突如、文貫とロボットたちを隔てるように、コンクリートの壁が天へと向かって伸びる。ロボットの拳は現れた壁によって防がれ、甲高い音を鳴らしながら形を歪ませる。

 対人用に威力は抑えてあるらしく、壁にはわずかにヒビが入っただけで収まり

 

「お次は『爆破』」

 

 壁に赤い紙を貼り付け後退。すると紙が発光し、あのベージュの少年ほどではないが爆発を起こすと壁を破壊。衝撃で砕け散り吹き飛んだコンクリートが弾丸となり、近づいていたロボットたちへと襲いかかる。

 正面にいたロボットはコンクリートの弾丸で破壊され、周りのロボットたちも衝撃で体勢を崩す。さらには煙での視界不良のおまけ付きだ。

 

「もらったぁ!」

 

 次いで煙の中から現れた拳藤は、両拳を巨大化させ身近なロボットをまとめて叩き潰す。その後は近づいてくるロボットへ両手を振り回し牽制、一定距離から近づけさせない。

 拳藤が時間を稼いだ間に次なる準備を整えた文貫が、片方のロボットの群れへと突撃する。

 

「見ての通り、ごくごく普通の棍棒ですがあら不思議」

 

 またも灰色の紙を手にした文貫は、それを地面ではなく棍棒へと貼り付ける。そしてロボットたちへ向けて棍棒を振り抜くと、ロボットたちの体はバラバラにされ。しかもその断面はまるで斬られたかのように綺麗なものであった。

 崩れ落ちるロボットたち。しかしその向こう側にまだ2体のロボットが残っており

 

「ありゃ、残ってたか。なら──」

 

 文貫は棍棒を左手に持ち直し、空いた右手の人差し指を立てる。すると指先がかすかな光を灯し、文貫は指先を棍棒へと向け素早く指を動かす。

 その動きに合わせ宙には光と同じ色の線が走り、ものの3秒とかからず『伸』の文字が完成する。最後に文字を棍棒めがけて指で押すと、文字は縮小しながら棍棒に吸い込まれていく。

 

 準備を整えた文貫は棍棒を居合するかのように構え、

 

「伸びろ如意棒ってね!」

 

 横薙ぎに振り抜くと、なんと棍棒がその長さを何倍に増し、数メートル離れたロボットたちを横一文字に切り裂く。

 ロボットたちを倒し終えた棍棒は元の長さへと戻り、文貫は背後で戦っているであろう拳藤へと顔を向ける。

 

「お、そっちも終わった?」

 

 ちょうどのタイミングでロボットを倒し終えた拳藤が笑みを浮かべ振り返る。

 

「途中チラチラって見てたけど、凄い”個性”だね。なんていう”個性”なの?」

「共闘したよしみだし教えるのはいいが、そこまで大層なもんじゃないですぜ?」

 

 期待に胸を膨らませる拳藤を前に、頬をかきながら自身の”個性”を説明する文貫。

 

文字力(もぢから)』。自身の指から出る光で書いた文字が持つ意味を具現化させる”個性”。直接書き込むことも、空中に書くこともできるぞ! 紙に書き置きしてストックすることも可能だ!

 

「文字を具現化か。やっぱり凄い”個性”じゃん」

「そう言ってくれると嬉しいねぇ。俺からしたらお前さんの”個性”もシンプルで強いと思うけど」

 

 そんな風に二人が会話をしていると、ズズンッ、という地鳴りが話を遮る。

 何事かと二人が音のする方へ顔を向けると、視界を埋め尽くすほど並ぶ高層ビルの一端が崩壊。崩れ落ちるビルの向こう側から巨大な影が姿を見せる。

 

 ──0Pのお邪魔虫! 所狭しと大暴れしているギミックよ!

 

 試験の内容を説明したヒーローの言葉が頭をよぎる。お邪魔虫とは聞いていたが、だがこんな大きさだとは聞いていない。

 

「あれはー……ちょいとデカすぎやしませんかい?」

「てか、あんなのどうやって対処しろっていうのさ」

「んー、とりあえずポイントにはならないんで、まぁ逃げる一択でしょう」

 

 他の受験者たちも文貫の考えと同じようで、巨大ロボットから逃げるように走り去っていく。

 

「俺たちもさっさとトンズラこきましょうや。あんなもん、相手にするだけ無駄ってやつさね」

「それはそうだけど……ってあれ!」

 

 敵を相手にして逃げるという選択肢を取ることを渋る拳藤。

 すると彼女は何かを見つけたようで、文貫がその視線の先を追うと、そこには怪我をしてうまく歩けずにいる受験者の姿が。

 

 あの歩行速度ではすぐにロボットに追いつかれる。そうなれば崩壊したビルの瓦礫に巻き添えになる可能性も高い。

 

「ちょっと行ってくる!」

「行ってくるって……あらら行っちゃった」

 

 すぐさま受験者の元へ走り出した拳藤。傷ついた者のために行動できる姿勢は立派だが、如何せん今は状況が悪い。

 負傷者を助けることはできるが、人を抱えたまま逃げ切るのは難しいだろう。

 

 見ていて危なっかしいとは思うが

 

「まぁ俺としてはそういう人間、嫌いじゃないかな」

 

 笑顔を浮かべながら、文貫は近くに転がっているロボットの残骸へと近づく。拳藤のように危険に身をさらすつもりはないが、助力程度ならば請け負うつもりらしい。

 

「俺もちょいとだけ、本気出しましょうかね」

 

 そう言い、骸と化したロボットへ指を伸ばし”個性”を発動させる。

 刻むは上から『徹』と『甲』そして『弾』の三文字。

 

「文字は綴れば意味を持つ。より具体的に、より強く」

 

 文字を繋げ、さらに強い力を引き出す。

 その名を

 

「文字力『(つづり)』──三連」

 

『徹甲弾』。その文字を刻まれたロボットの残骸は、堅牢な鎧を貫くための銃弾と化し

 

「よし、飛んでけ!」

 

 地面を離れ巨大ロボめがけて一直線に向かい、胸部へとぶつかり甲高い音を立てる。その衝撃で巨大ロボットはたたらを踏み後退。

 その隙をついて負傷者を抱えた拳藤が逃げ切るのを見て、文貫もまた他の受験者同様にロボットへ背を向けるのだった。

 

 

 

 

 




個性:文字力(もぢから)
文貫の指先から出る光で書いた文字の意味を具現化させる。
光はものに直接書き込むことも空中に書くこともできる。
紙に書いてストックも可能。ただし一文字のみ。

一文字でも発動はできるが文字を繋げることで力は増していく。


こんな感じの”個性”です。
他にも質問ありましたら遠慮なく聞いてください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。