~雛視点~
今日は土曜日。
図書館に読書でもしに行こうかな……
わたしは、思いついたことはすぐにやるタイプだ。
つまり、そろそろ雨が降る、という時間に図書館に行ったのだ。
もしかしたら、運命の人に会えるかも……
傘2本持ってこうかな~~
わたしは、そんな呑気なことを考えながら歩いていた。
鼻歌でも歌いながら歩いていると、10分程度で市立図書館についた。
意外とあっという間だったなぁ、運命の人いなかったか……
なんで一人なのに傘を2つも持っているんだろう……
周りはそう思っているだろう。
はぁ……持ってこなきゃよかったなぁ……
そのまま、気になっていた本を1時間程度読み、帰宅しようと席を立った。
図書館を出て1分程度たつと、ぽつぽつと、雨が降り始めた。
「あ、もう降ってきちゃった……」
わたしは、片方の傘をさすと、ゆっくりと歩き始めた。
もと来た道をゆっくりと、なるべく時間をかけて……
大きな通路に出ると、歩いている人は誰もいなかったが、道路の真ん中で雨に溺れている同年代くらいの男子を見つけた。
あれは………誰だろう…なんであんなところに……
不思議に思い、少し近づいたその時、パッと思い出した。
大輝くんだ…!
大輝くんは、隣のクラスで、中1のころからあこがれていた……
あの時は、すごくかっこよかったな……スポーツもできるし、勉強もできるし……彼の事を好きになる子は少なかったが、陰でずっと彼の事を想ってた。
だけど、大輝くんには1年生のころから彼女がいるとうわさされていた。
それがほんとかは分からないが、話したこともないし、フラれると怖いから告白する勇気など0に等しかった。
そして、彼の人生を大きく変化させたであろう出来事、両親が死んでしまったのだ。
それからは、クラスメイトからもいじめられ、彼女にもフラれ、今までの輝きはなくなってしまった……
「こんな世界なんて……」
きっと、そう思っているだろう…
彼にとって、もう生きる希望も何もないのだろう。
誰からも愛されることなどなくなり、誰かを愛することもなくなっただろう。
彼にとっての生きる理由……
わたしが、彼の生きる理由になれるかな………
わたしは、思い切って話しかけた。
「大輝くん」
ものすごくドキドキした。
だけど、彼を救ってあげないと。
もしかしたら、彼は誰でもいいから味方になってほしいのかもしれない。
わたしが、それになろう。
わたしは彼にもう1つの傘を渡した。
わたしが彼の生きる理由になるためには、まず仲良くならないと……
彼に死んでほしくない………
わたしは、彼に少しでも好意を持ってほしかった……
彼に、愛してもらいたかった。
愛を失った彼に、愛を取り戻してもらいたかった………
わたしは、そっと彼の手を握って、隣を歩いた。
ほんとは、わたしが彼を愛する理由がほしかっただけなのかもしれない。
だけど、彼に生きてほしいという思いは本当だった。
大輝くんは、わたしが手を握っていることなど気付いていなかった。
ふと、わたしが彼の立場だったら……と考えてみた。
親は亡くなり、学校ではいじめられ、愛する人には捨てられ………
こんな現実だったら、間違いなく自殺しているだろう…
希望を持って…大輝くん……