Muv-Luv Alternative ~take back the sky~   作:◯岳◯

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14.5話 : 心の中で

―――気づけば、廃墟だった。

 

瓦礫と材木が地面に散らかっている、周囲からは生き物の気配が全く感じられず、静寂だけがあるのみ。ここは、紛うこと無き建物の墓場だった。なんで、こんな所に。武はいきなりの事で意味が分からないと、戸惑いを隠せないでいた。先程まで、陽炎のコックピットの中にいた、京都へと向かっているはずだった。クソッタレな基地司令と、クソッタレな問答をした挙句の出頭命令だ。監視の衛士と一緒に今頃は匍匐飛行で西に行けと命じられたから。

 

「説明が欲しいんだけどな………そこのアンタ」

 

武は自分の目の前にいる、壁にもたれたまま目を閉じて動かない男を呼んだ。年の頃は自分と同じぐらいか、あるいは少し上とみていた。

そして目を瞑ってはいるが、酷く見覚えのある顔だった。具体的にいえば、早朝の洗面所の鏡などでよく見るような。

 

『………やっと、来たか。マジで待ちくたびれたぜ』

 

武はその言葉を――――マジ、という言葉が引っかかったが流して――――噛み砕いた。

何となくだけど、意味が分かったからだ。そして“待つ”とは、一体どういうことか。考える武に、目の前の男は呆れたように言った。

 

『考えても無駄だって、俺。俺達ァどうせバカなんだからよ。それより巻き進行で頼むぜ、時間がないんだ』

 

「………何かお前に言われると、滅茶苦茶腹が立つな」

 

そしてマイペース過ぎる。人の話を聞いていないし、雰囲気というか話し方もどこか軽い。だけどそれよりも、武には聞きたいことがあった。

 

「お前は俺なんだな」

 

『そうとも言えるし、そうではないとも言える。どっちでもいいだろう。もし違ったからってどうなるんだよ』

 

「どうにもならないな。どうにも、できそうにない」

 

馬鹿らしい現象の産物だ。武も、腕力で強引に解決できそうにないことは分かっていた。

 

『まあ、座れよ。腰据えて話でもしようぜ』

 

「………分かった」

 

廃墟にあるボロボロの机、それを境として二人は面と向い合って座った。武は間近で相手の顔を観察しながら、考える。どう見ても自分の顔であるが、どこか異なっているような。

どちらであっても、迂闊な言葉を発すればその時点で取り返しのつかないことになるかもしれない。同じ顔をしているとしても、意味不明な存在なのだ。

 

十分な注意を払いながら、慎重に言葉を選んだ。

 

「知りたいことがある」

 

『ああ、聞こう』

 

「夢の中で見る、あの光景は何なんだ。特に初めての出撃の前に見た、兵士級は………あれは、あり得ないだろう」

 

夢に見た兵士級の姿のことだ。だがその当時は、兵士級はまだ戦線には展開されていなかったことは覚えている。もちろんのこと、それまで直にBETAを見る機会があるはずもなく、だからこそあり得ない。その他の光景の数々も。誰かが死ぬ夢は見た。だけど中には、見たことのない機体があった。不知火、タイフーン、そしてその両方よりも高性能な機体。

極めつけは、鑑の一家が死ぬ瞬間の光景。武は、あれだけは、決して夢想の類なんかじゃないと確信できていた。そして自分の成長の速さも。思い出すように操縦の技量が成長する自分は、他人と比べ明らかに異常だということは分かっていた。

 

一体、原因は何なのか。そしてあの光景は、知るはずもないことが見えたのは何故なのか。

その問いに、男は答えた。

 

『――――あるはずだった未来の光景、と答えれば信じるか。手が届かない程に遠く、息がかかるほどに近い世界。そこで起きた結末の一端だと言えば』

 

未来の、別の世界で起きた出来事だと。それを聞いた武は、まず否定の言葉を浮かべた。BETAは神の使いであると、与太話を信仰する脳無しの人間を見るように。

 

武は言う。だって、あり得ないのだ。未来を見るという、そんな便利な事ができるならば何故。世界は、あんなにも惨劇に見舞われなければならなかったのか。

 

その訴えに、返ってきた回答は嘲笑だった。

 

『出来るのは見ることだけだ。知識としてな。そして、そんなに便利なものじゃないぜ』

 

「………どういう事だ」

 

『簡単さ。例えば、そうだな………王の奴が、“僕は未来を知っています”と言ったとして、お前はその情報を信じることができるか。もたらされた情報を元に出来た作戦に、命を賭けることが』

 

「いや、できない」

 

あるいは戦況を左右しかねない情報には、ソースと確度が問われるものである。

軍隊ともなれば尚更だ。武は長年の軍務の中で、それは理解できていた。いくら情報が正しかろうが、それを信じるには根拠に足るものが絶対に必要となるのだ。未来のことが見えるという。そのような子供の妄言など、信じる人間の方が狂っているのだ。誤った情報という名前の銃弾が、大勢の部下を殺すこともある。だから特に責任ある軍人が、子供の寝言に左右されることはあり得ない。例外があるとすれば、百聞は一見に如かずという言葉の通り、映像と因果関係がはっきりしているもの。嘘がないと確信できれば、そもそもの疑念など湧いてこようはずもない。

 

「だから、俺を動かしたってのかよ。わざわざ悪夢を見せて」

 

『………激しく誤解をされてるようだけど、俺はそんな事できないぜ。第一、明確に行動しはじめたのはスリランカに渡ったすぐ後だ』

 

「亜大陸撤退戦の直後………?」

 

夢を見たのは、その前である。嘘をついている様子はない、だけどそれでは何が原因なのか。

武は悩みながらも、話を進めた。少し緊張した声で、問う。

 

「時間がないって言ったな。じゃあ………次だ。俺の、消えた記憶について聞きたい」

 

最初は、マンダレーハイヴに攻め込んだビルマ作戦の中盤の後、基地の中で目覚めるまでだった。そして次は、義勇軍の部隊長と二人で極秘任務を与えられた時。何かを見たことは覚えているがその記憶はすっぽりと抜け落ちており、気絶したと悟った次の瞬間には出撃した基地のベッドの上だった。その次は中国で。統一中華戦線になる直前の頃、大陸の戦闘において誰かが死んでしまったこと。

 

そして記憶が消える度に、何故か衛士の一部からは化け物を見るかのような視線を浴びせられた。

 

―――“凶手”という名前で呼ばれたこともある。

 

「思い出せないんだ。何かをしたのは間違いない。だけど、何があったのかが思い出せない。お前はそれを知っているんだろう」

 

『ああ。だけど、それがどうしたんだ』

 

知っているとして、お前はどうしたい。その問いかけに、武は即答した。

 

「取り戻したい。きっと、必要なことなんだ」

 

『………辛い記憶ばかりだぜ。重たくて、持てないと思ったから投げ捨てた。それをお前は今更になって拾いたいと言うのか』

 

「ああ、拾いたい。いや、きっとそうしなければいけないんだ」

 

覚悟を強めるために。答えた武の胸中にあるのは、ある人間の懇願だった。大橋が落ちて、基地に戻って、援護に奔走して。その後に、意識不明の状態から回復した戦友がいた。

喜んだ。不甲斐ない自分をかばって傷ついて、それでも死んでいなかったのだ。

片腕はなくなっていた。だけど、少女は言ったのだ。助けた理由を問うと、彼女は少し言いづらそうにしながらも答えた。

 

『………そうだな』

 

声の主が片手を上げる。次の瞬間、その時の情景が浮かんできた。

 

 

◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ●

 

顔を土気色に染めた少女がいる。彼女は白いシーツで体を隠し、顔だけをこちらに向けて言うのだ。

片腕はないけど、悲しい顔は見せないままで。

 

「私じゃあ、無理だと思ったから」

 

うん、と。彼女はそう言った後に、頷きながら。

 

「ついていけない。分かるんだ、私にはもう此処が限界なんだって。所詮はこの程度が精一杯。だから、私じゃあ無理なんだよきっと」

 

「………何が、無理だって言うんだ」

 

「この国を守ること。BETAを倒して、田舎にいるおばあちゃんを守ること………私には、できそうにないな」

 

その前に、殺されて死ぬと。塵芥のように散ってそれきり。だからと、彼女は懇願した。

 

「BETAは強いし、多い。理不尽過ぎるんだよ。あんなの反則だ、卑怯だよ」

 

英雄でもいなければ、日本は守り切れない。

 

「だから死なせられないって、そう思った。貴方だけは死なせちゃならないって」

 

「違う。俺は、俺なんか、そんな大した奴じゃ、英雄なんかじゃないんだ」

 

「うん、そうかもしれないね。初めて会った時からずっと暗い顔して。ずっと迷っているんだね。物語に出てくるような、英雄とは違って、すっぱり割り切れないで。いつも悔やんで、誰かが死ぬことに苦しんでる」

 

それはあまりにも普通の男の子、民間人に等しい思考だった。

だけどね、と風花は笑った。

 

「―――それでも、戦おうとしてる。私は、そんな君が立派だって、そう思うな」

 

「っ、違う! 立派だったらもっと上手く………誰も死なせないで、怪我なんかさせなくて!」

 

「それは無理だよ。できるとすれば神様だけ………って、変なの」

 

「何が、変なんだ」

 

「私よりも戦場を知ってるくせに、私なんかに諭されてる君が。無理だって、数回しかBETAと戦ったことがない私がそう結論を出したのに。諦めないで足掻いてる。無理だって言い捨てないで、暗い顔しながらも一生懸命に」

 

一息で言って、そして笑った。これ以上ないというように、嬉しそうに。

 

「守れて良かった………だから、お願い」

 

 

この国を、お婆ちゃんを頼みます。

 

懇願を眠る前の最後の言葉に、彼女は夢の中へと旅立っていった。

 

 

 

◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ● ◯ ●

 

 

そして意識は元に戻る。武は、真っ直ぐに見つめながら告げた。

頼む、と。頭を下げる武に、声の主はため息をついた。

 

『俺達は一人だ』

 

「分かってる」

 

『所詮は個人にすぎない。一人でこの絶望的な戦況を覆すことなんて、できっこない』

 

「承知の上だ。だけど、何もしないままじゃ耐えられない」

 

だから、より多くの力を。失った記憶は辛いものであろうが、それでも貴重な経験である。

欠けたピースの中には、自分が強くなれるものが眠っているかもしれない。

 

『………全部は無理だ』

 

「っ、何故!」

 

『早合点するな。いきなり全部じゃ、記憶がパンクしちまう。徐々になら可能だし………』

 

「何か問題があるのか」

 

『受け止めきれるかどうか分からない。お前だって大陸で腐るほど見てきただろう。心を壊して廃人になった人たちを』

 

心が許容できる応力には限界がある。それを越えて、人格が破壊されてしまった人間ならば武も見たことがあった。壊れすぎて植物のようになった者も。

 

『ゆっくりと時間をかけながら、どうにかする。負担の軽いものから見せていこうと思う』

 

「最初の記憶は?」

 

『ビルマ作戦の記憶だ。泰村達の記憶について』

 

聞いた途端、武は固まった。マンダレーハイヴ攻略作戦で戦死した、かつての同期たちの記憶を戻すのだという。それはつまり、敵中深くに突っ込んで自爆したマリーノ達。

そして、地中より出てきた母艦級の口に突っ込んで自爆した泰村とアショークの記憶を思い出すことを意味していた。

 

結末というか、彼らがどうなったのかは武も知っていた。東南アジアでは有名なことで、アルシンハからも聞いていた。

 

“年若い衛士の、蛮勇”と言われた事件である。

 

『逃げた理由は、分かるよな』

 

「ああ………“気づけなかった”。そして母艦級に突っ込んだ二人は………」

 

唯一の打開策と、武が言った通りに行動したのだ。そして準師団規模のBETAの多くを屠った。

二人の命を引き換えにして。単純なコストで考えれば、これ以上ない戦果ではある、だけれどもだ。

 

「おれが、殺した」

 

俺の提案があって、二人はその通りに行動して死んだ。代わりに大勢の人間が命を救われただろう。

だけど、あの二人の死は紛れもなく、自分の言葉によって引き起こされたのだ。

 

『間接的。かつ、殺したようなもの、だな。手は下してない…………けど、そう割り切れるもんでもない。だからって逃げてちゃ世話ねーけどな。最後に託された言葉さえも忘れてよ』

 

「………そうだな」

 

忘れた以上、何を反論できるはずもない。武はその言葉を噛み締めながら、拳を硬く握った。託されたものがあるはずなのに、それを捨てるなどとは。そう思い、また自分が情けない男であることを実感する。

 

『って、イジけてても何も変わんねーぞ。いいから顔上げろよ』

 

「分かってるよ、くそ」

 

武は、言われた通りに顔を上げた。そして、改まって問いかける。

 

「それにしても、今日は色々とはぐらかさないんだな。何だかんだいって会話は成り立ってる」

 

『ここに来たからだ。でなけりゃあ、回れ右してお家に帰れって言って終わりだったさ………落ち込んで逃げてるだけの頃より、ちったあマシになったんだ。それには応えてやらねーと何が何だか分かんないだろ』

 

内容によっては答える。それを聞いた武は、さっきの会話の中で引っかかった部分があると、顔を上げて問う。

 

「………さっきの、母艦級のこと。提案したのは俺だった。あの時のことは覚えてる、だけどあれはどうしてだ? 俺は母艦級なんか知らないし、聞いたことはない。だけど、何でか自然に出てきた言葉だったぞ」

 

『あの頃はまだ事の前だったからだ。俺とお前が、まだしっかりと繋がっていた時だからな。今の曖昧になってるお前じゃ、意識しても無理に決まってるだろうけど』

 

「あの、頃は?」

 

また引っかかる物言いに、武はどういう意味かを聞いた。しかし目の前の男ははぐらかすだけで、答えを言うつもりはないことに気づき、苛立ちを顕にしてぶつけた。

 

「隠し事が多すぎるだろ」

 

『じゃあ、全てを知りたいってのか――――本当に?』

 

疑問であり、問いかけるような。武はそれに、答えを用意できなかった。

ただ、銃口をつきつけられているような。なにか、致命的なものが近くに降って湧いたような気配だけを感じ取れた。

 

とても直視できず、視線をずらしながら愚痴るようにして、質問を変える。

 

「………そもそも未来の記憶ってなんだよ。何で俺にそんなもんが見える」

 

『原因はあるけど、言っても理解できないだろうな。というか、目の前で見せられでもしなけりゃ、誰も信じねーさこんなもん』

 

「見ても信じられねーけどな」

 

『はっ、よく言うぜ。半ば分かってたんじゃないのか。お前はずっと、夢に見た機動を追ってたんだから、気づいていた部分はあるだろ』

 

「………それは、確かに」

 

実利に繋がる夢の機動。何とも荒唐無稽な話だが、現実主義者が蔓延る軍隊で有用であると証明された今、あれがただの夢だと言い張るのには無理があった。

 

『まあ、それも衛士になったからか。でなけりゃあ、よく出来た夢か何かで片付けてたろうさ』

 

「ああ。あるいは、精神病棟行きか」

 

『マッドな医者に、実験体として使われてたかもな………切っ掛けはどうであれ、感謝しなけりゃなんねーか』

 

そうでなければ夢は夢想のままで終わり、白銀武の未来は閉ざされていただろう。そう語る相手に、武は問いかけた。お前は何を言っている、と。

 

「感謝、だって? 衛士になった切っ掛けは、インドに行ったのは親父の………俺が望んだからだろう。誰に感謝するってんだよ」

 

『そっちの要因もある。お前が夢を見て、行動に移したことも原因の一つだ。だけど、なあ考えてみろよ………10やそこらの子供が望んだとしてよ。あの時期のインドに行くことを、国が許すと思うのか?』

 

「………いや。あり得ない、かも」

 

武は、東南アジアでの、難民の動きや残っている国々の公務を司る人間を想像した。

そういった人物達は慎重で、安全を重視するはずだ。何よりこの日本ではあり得ないように思える。

止めに入るはずだ、認可されるはずがない。義務教育の途中ならば、余計に。

 

「そういえば、いつだったか樹も言っていたな。あの頃のガキな俺がインドに行くことを許されること自体が、あり得ないって怒ってた」

 

『見逃されてたら、誰かの怠慢だよな。だけど、怠慢ではなくそれが許された――――そう思ったら見えてくる部分がないか?』

 

「………回りくどいな。一体何だってんだよ。あり得ないことが許されたって?」

 

軍か国か、その中で権力を持つ人間がそうなるように行動した。そういった上の人間がする行動には、常に何かしらの理由がある。アルシンハ・シェーカルが良い例だ。清濁合わせて事を起こし、常に何らかの利益に繋がるように彼は動いていた。

 

「そうなると、誰かが………俺が危険な土地に行けるように、先生か校長か、とにかく教育委員会か何かに口を利いたってのか」

 

何だよ、それは。武は苦い顔をしながら、言う。今ならば分かる、あの頃のインドに行くのは半ば以上に自殺行為でしかないことを。

 

「そうなると、まるで………その権力持ってる誰かが俺に死んで欲し、かった、みたい、に…………っ!?」

 

是非ともに死んで欲しいと願われていると。命が狙われているという、聞きたくもない事実。

だけどそれは、最近はよく聞いたことのある話だった。何せ今は、その“真っ最中”なのだから

 

「俺の命を狙う誰か………まさか、5年も前から動いていたってのか!?」

 

俺を殺すために。その問いに返ってきた答えは、肯定であった。

 

『だからこそ、俺達はインドに行くことを許された。死地に行くことを望まれていたから、あの船に乗れた』

 

つらつらと溢れ出てくる、誰かの殺意。気づいた武は、背筋に冷たいものを感じていた。5年ごしの見えない悪意。それはずっと自分の知らない所で動き、常に自分を見据えていたのだと知ったから。

 

『と、長話するにも時間がないな。そろそろ戻る頃だ』

 

「っ、待て! 何で俺はそこまでして………っ!」

 

『必要だったからだと思うな。見逃せなかった。無差別なものじゃない、それでも白銀武には死んでもらわなければ困るって、だからさ』

 

「だから何でだよ!」

 

そんな、権力者か誰かに狙われるような真似をしたつもりはない。武は叫びながら、机を叩き、原因を知っているような素振りを見せている目の前の男に、答えを教えろと訴えかけた。

 

しかし、応えるつもりはないようだった。明確な回答は返って来ないと、武は察した。

 

そこに、ただ、とだけ前置いて。答えを知る男から予言のような言葉が放たれた。

 

 

『原因となる人物は、京都にいる。このままだと、再会は免れないだろうな』

 

 

そして、と薄れていく記憶の中、武の耳に届いた声は。

 

 

『泰村良樹が遺した、最後の言葉。その中の一つだけは教えよう――――“兄貴を頼んだ”、だ』

 

 

言葉を最後に、武は現実へと引き戻されていった。

 

 

 

 


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