タイムラインに流れてくるミスティアにインスピレーションを受けて、まさかの続編です。
みすちー尊い
しんしんと雪が降り積もる、冬のある日。
もう夜も更けてきた頃合いに、彼女……ミスティアは自らの営む屋台へと来ていた。
煌びやかに飾り付けられ、普段より遥かに活気づいていた人里。
そこから少し離れた所にあるこの場所は、打って変わって非常に静かであった。
「……ふぅ、すごい熱気だったなぁ」
少々疲れを滲ませた声で呟き、衣装を脱ぐ。
サンタクロースを象った衣服から、いつもの女将姿へ。
今日はクリスマス。先程までは、人里で聖夜を祝してのライブを開いていた。
無事、大盛況のうちに終わったことは、喜ぶべきことだろう。
少なくとも、こんな日に人里に招かれてまで歌を披露するなど、以前の自分では考えられなかった。
どれもこれも、彼のお陰……かな。
私が変わるきっかけをくれた、一人の青年に思いを馳せる。
彼が、最初に私の声を綺麗だって言ってくれたんだっけ。
びっくりしたけれど、嬉しかったなぁ……
あれから、他人に聴かせるっていうのを意識するようになった。
聴いてくれる人の心に届くように。丁寧に、想いを込めて。
私がこうなれたのも、全てあの人のお陰。
そう言えば、彼は今日のライブには来なかった。
やっぱり、忙しいのかな。
新しく作った曲、聴いてほしいのだけど……
何故だろう。どこか、胸がチクりと痛む。
最近、良くある。元気だとは思うんだけど、原因が分からない。
いつもの通り鼻歌を歌いながら、屋台の準備を終える。
尤も、今日は人里がお祭り状態だし、まさかこんな所まで来る人はいないだろうけど。
それでもなんとなく今日も開くのは、落ち着くからっていうのと……ほんの少しの期待。
表の、のぼりをかかげる。開店中のしるし。
誰か来るかなぁ? そんなことを思いながら、時を過ごす──
◇◇◇◇◇◇◇
暫く時間が流れた。もうそろそろ、里の宴も終わる頃だろうか。
店仕舞いかな?結局一人も来なかったな……
少しだけ残念に思いながら、片付けに入る。
手始めに火を消して──
「すみません、まだ、やってますか?」
暖簾をまくりながら、一人の青年が入ってきた。
まさか、本当に来てくれるなんて。
「いらっしゃい。別に、大丈夫だから」
ちょっとだけ、素っ気なく返す。
安心したように息を吐き、席につく彼。
「……聖夜にこんな所に来るなんて。もっと大事なことがあるんじゃないの?」
今日は特別な日なんだから。他に行くべきところに行かなくて良いのか。
何故か、聞かずにはいられなかった。
彼としても意表をつかれたのだろう。キョトンとした表情になる。
けれど、それも一瞬で。
「大事なことなら、いま、まさに」
そう言って微笑む青年。
今度はこちらが呆気に取られる番だった。
「……そう。物好きな人」
辛うじてそれだけ返して、そっぽを向く。
なんでだろう。頬が、熱い。
なんとなく気恥ずかしくなって。彼の顔をみないままに調理を進める。
注文は、わかってる。いつも同じだから。
彼は、静かにして待っていた。
「……はい。お待ちどうさま」
「ありがとうございます。いただきますね」
自信作である、ヤツメウナギのどんぶり。
一口食べた彼の顔が綻ぶ。
よく味わって食べてくれる彼の邪魔をしたくないから、その間は話しかけない。
笑顔で食してくれる彼の顔を見ている時、凄く心が温かくなるんだ。
「……ねえ、新しい曲を作ったの」
食べ終わったのを見計らって、声をかける。
「へぇ、今日のライブで歌ったんですか?」
今日ライブだったことは知ってくれていたんだ。
そんな小さなことでも、何だか嬉しい。
「ううん。まだ、どこでも歌ってない。
……貴方に、一番に聴いて欲しくて」
これは、本当。
前々からずっと作っていた曲。ようやく、完成したばかりの新曲。
誰よりも先に、彼に聞いて欲しかった。
「……それは、なんというか……照れますね」
頬をかいて気恥ずかしそうにする。
私も、胸の高鳴りが止まらない。
「……今、聴いてくれる?」
「もちろん」
ありがとう、と言って、屋台から出る。
彼も付いてきてくれた。
「……じゃあ、いきます」
一面真っ白の、特別なステージ。
私と、彼だけの、プライベートライブ。
ありったけの想いを……今、貴方に──