エアフォース・オンライン:フェアリーズ 作:Bishop1911
マリーが峡谷に立ち込める霧の中へ姿を消したのを見送った俺は、
レーダーにマリーが映っている事を確認して
雲の中から飛び出した。
向こうの1機は俺を待ち伏せしていたらしく、
かなり距離はあるが俺の正面をこちらに向けて飛んでいる。
途端、視界が真っ赤に照らされ、続いて正面から
ミサイルが何発も接近しているのがレーダーに映った。
俺の目にも敵機からこちらに伸びてくる6本の白煙が見える。
戦闘開始と同時に先手を打たれるとは予想外だったが、
俺はただの囮で、必ずしも攻撃を当てる必要はない。
回避行動を取りながらフレアをばら撒く。
6本のミサイルがそれぞれ迷走し始めるのを確認した俺は
もう1機の敵機を探す。
レーダーを見れば、かなり低空を飛んでいることがわかる。
「チッ…」
思わず舌打ちをした。
もう1機の敵機はレーダーに映るマリーの後方に迫っている。
峡谷の外から狙われたらまともに回避機動を取れないマリーは
良いマトだ。
俺は特殊兵装の4AAMに切り替えて
マリーの背後に迫る敵機にロックオンする。
しかし、その俺も背後からロックオンされるという
あまり良くない状況になってしまう。
幸いなことに4AAMは誘導性が低い代わりに
撃ちっぱなし機能が付いている。
俺は回避機動に移りつつ、4発のミサイルを一気に放った。
敵がマリーの追跡を中断して回避しようとする傍らで
俺も右へ左へとミサイルを躱す。
今回のミサイルは2発だけだったようで、
難なく2発のミサイルを躱した俺は反撃のために
スロットルを下げて機首を斜め上に上げる。
俺の体はわずかに緩やかに起き上がって螺旋状に一回転。
急減速に対応できずに俺を追い抜いた敵機の背中を捉えた。
バレルロールと呼ばれる技で、
普通なら機銃を使うが俺の機銃はもう使えない。
さっきと同じく4AAMでロックオンして4発を一気に撃つ。
「きゃあっ!!」
機銃の射程内、無線なしでも声が届く距離で放たれたミサイルは
回避する隙すら与えずに敵機に喰らい付き、爆発した。
背中のエンジンや主翼を被弾エフェクトだらけにした敵機は
そのまま岩肌を晒す峡谷に落ちていく。
「1機撃墜。」
念のため、無線で報告した俺の耳にすぐさま返事が届く。
『え…?うそ…!?』
「お前は俺をなんだと思ってんだ。」
『鈍チン』
「お前ちょっとミサイルかますから顔出せ。」
戦闘中ではあるがいつものように会話をしていた俺は、
高度を落として峡谷の霧に飲まれるギリギリを維持する。
位置はマリーの頭上だ。
再びオープンチャンネルで生徒会長的な女声が割り込む。
<仲間を落としたようね。でも…まだ終わらないから。>
アラートが鳴る。ロックオンされた。背後からだ。
背後を見ると、太陽を背に上空から降下しながら
俺に狙いを定めるタイフーンが見える。
「今だ、マリー!」
<何!?>
突然のロックオンアラートに驚いた敵の挙動が
一瞬の隙を作った刹那、峡谷の霧を突き抜けて現れた
マリーが機銃を連射する。
照準がズレているせいで初弾を外すが、
ホースで水を撒くように左右に機銃を振ると
数十発が敵プレイヤーの腹を食い破った。
エンジンから煙を吐きながら緩やかに滑空していく
敵機をよそに、マリーが俺の斜め後ろに着いて編隊を組む。
滑空しながら峡谷の中へ墜落していく敵機の周りを
旋回していると、再度オープンチャンネルで呼びかけられる。
<まだ…まだ終わらないわ。これは始まりに過ぎない。
また近いうちに会うでしょう。その時は必ず…>
峡谷の霧の中で爆発が起き、無線が途切れた。
「いや、終わりだ。」
無意識のうちにポツリと呟いた俺は、
ニヨッテ基地に進路をとる。
「これゲームだし、絶対再戦する。」
「おいおい…、今ので雰囲気ぶち壊しじゃねえか…。」